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- 2024/11/16
Martin / 00-28、00LX1AE、DSTG、DCRSG
好評連載「MARTIN TIMES〜It’s A Beautiful Day」。10回目となる今回は、2017年ウインターNAMMショウとミュージック・メッセで発表された、興味深きニュー・モデルをピックアップしてみました。00が2本、ドレッドノートが2本の計4本ですが、すべてシリーズが異なり、オーセンティックなスタンダード・ラインから、新技術や新素材を積極的に駆使したモデルまで、そのキャラクターは多岐に渡ります。各モデルの個性の違い、同時に通底するマーティン・サウンド&プレイアビリティを、斎藤氏の試奏とトークでじっくりとご確認ください!
息の長いメーカーというのは、そのブランドを代表する定番のモデルを大切にするいっぽうで、常に新しい製品の開発や製造技術の導入に取り組んでいる。マーティンも例外ではなく、新しい技術や素材、デザインを取り入れた製品を毎年発表している。というわけで、今回はさまざまな価格帯の2017年ニュー・モデルをご紹介しよう。
まずはスタンダード・シリーズの00-28だが、これはある意味、もっとも意外な新製品と言えるかもしれない。ローズウッド・ボディのダブル・オー・サイズということで、マーティンとしてはごく普通のモデルのようにも思えるが、実は00-28としては初の14フレット・ジョイントで、“ありそうで実は無かった”モデルなのである。00LX1AEは、ハイ・プレッシャー・ラミネート材のボディにシトカ・スプルース単板のトップを組み合わせたXシリーズのエレアコで、00-28と同じく14フレット・ジョイントのダブル・オーだが、ボディの肩に丸みをつけたラウンド・ショルダーと呼ばれるタイプで、12フレット・ジョイントのようなクラシカルな味わいを持っている。これら2機種は、アメリカーナと呼ばれる1920~30年代のアメリカの音楽のリバイバルに応じたモデルと言えそうだ。
DSTGはスペシャル・エディションズのドレッドノートで、ボディがマホガニーに近いサペリ材ということで、仕様としてはD-18に近いが、バインディングやヘッドプレートなどにべっ甲柄の素材を使用するなど、お洒落に仕上がっているのが特徴である。DCRSGはロード・シリーズのカッタウェイ付きドレッドノートのエレアコで、ボディにはムテンイェという、絶滅の心配のない材が使用されている。
今回はXシリーズからスタンダード・シリーズまで、さまざまな価格帯のモデルを取り上げているが、マーティンのキャラクターやクオリティがどんな形で維持されているか、この連載の動画や記事はもちろん、できれば店頭で実際に手に取ってご確認いただければ幸いである。
ボディ幅が36cm強のダブル・オーは、マーティンのギターの中ではかなりコンパクトである。ボディにイースト・インディアン・ローズウッドを使用した00-28は、これまで12フレット・ジョイントのものしかなかったが、この2017年モデルは初めての14フレット・ジョイントとなる。12フレット・ジョイントに比べてハイ・ポジションが弾きやすいのが特徴だが、これはソロだけでなく、カポを使用した際に使えるポジションが増えるというメリットもある。体の小さな人の弾き語り用としても最適な1本だ。ローズウッドは製品も含めてワシントン条約で国際間取引が制限されたが、マーティンの材はCITESの認可済なので安心できる。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:450,000円(税抜)
僕は14フレット・ジョイントの00-18を持っていたことがあって、持った感じはそれに近いと思いました。ボディがローズウッドでサウンドは違いますが、今回試奏した中ではいちばん経験がありそうなギターでした。敢えてコード・ストロークだけの曲に使ったのは、ローズウッドのロックな感じが伝わってきたからです。この手のギターは、繊細に弾こうと思えば弾けるんでしょうけれど、明るいサウンドが明るい曲を助けてくれた感じです。今回試奏した中ではいちばん上位の機種ということもあってか、鳴りはパワフルでしたが、それでいてちゃんと落ち着いた部分もあるし、1弦から6弦までのバランスもいちばん良くて弾きやすいギターですね。
ボディには木材繊維を原料とする合成材のハイ・プレッシャー・ラミネート、ネックも集成材であるラスト・バーチ・ラミネートを使用するいっぽう、サウンドの要となるトップ材にはシトカ・スプルースの単板を使用し、環境保護策とサウンド・クオリティを両立させたXシリーズのモデル。00-28と同様、14フレット・ジョイントのコンパクトなダブル・オーだが、こちらはボディの両肩に相当する部分に丸みを付けた“ラウンド・ショルダー”と呼ばれるデザインで、古風で優雅な雰囲気を湛えている。フィッシュマンのソニトーン・ピックアップ・システムを搭載し、ライブに即対応できる実戦的なモデルとなっている。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:HPL(ハイ・プレッシャー・ラミネート/マホガニー・パターン)●ネック:バーチ・ラミネート ●指板:リッチライト ●ブリッジ:リッチライト ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:ハイブリッドX ●ピックアップ・システム:フィッシュマン・ソニトーン ●価格:130,000円(税抜)
今回のデモ曲の中で唯一、指弾きのアルペジオの曲に使いました。そこが僕のひねくれているところで(笑)、いい意味でチープ感の漂う楽器の方が、指弾きの単音が太く前に出てくるような感じがしたからです。ソニトーンの音も太いので、生音とラインの音を両方聴いてもらえるなら、こっちを指弾きにしたほうがいいなと思ったんです。予想通り、ラインでも太い音がしました。トップがスプルースの単板なので、僕のリトル・マーティン(LX1)と同じように、弾き込めば成長するのは間違いないですね。ナット幅は00-28と同じですが、こちらはネックの断面が丸い感じでした。重量バランス的にはネックがやや重い感じですが、個人的には安心感があって好きですね。
シグネチャーや特別仕様のモデルが揃うスペシャル・エディションズのドレッドノート。マホガニーに近い性質を持つサペリ材をボディに使用しているので、D-18に相当する位置付けとなる。とはいえ、ピックガードやバインディングばかりでなく、ヘッドプレートやブリッジ・ピンのドットにまでべっ甲柄の素材を使用したり、ボディ裏のバックストリップに緻密でカラフルなモザイク模様のスタイル45タイプを奢ったり、ペグがゴールドのロトマチックだったりと、豪華かつ品の良い外観になっている。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:サペリ ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:フォワードシフテッド・スタンダードX・スキャロップト ●価格:380,000円(税抜)
このギターをジャーンと鳴らした時に、これならチューニングを下げてもちゃんとした音が出るな、と思って、ドロップDの曲はこれで弾きました。6弦をベンドした時の沈み込むような低音は、やっぱり小さなギターじゃ出ませんからね。ドレッドだとその振動が自分のお腹にも伝わってくるから、弾いていても気分が盛り上がるんですよ。ストロークをやるだけで、アメリカの荒野の土臭いものを感じるでしょ? 行ったことないけど(笑)。日本人が憧れるアメリカの音ですよね。で、サペリは音もマホガニーっぽくて、硬いピックで弾いてもギターが負けずに、アーシーな感じを出してくれるんですよ。DADGADチューニングでアイリッシュをやるのも良いでしょうね。
オール単板を使用したギターとしては最もお手頃な価格で提供される、ロード・シリーズのカッタウェイ付きドレッドノートのエレアコ。ボディには、伐採しても森林破壊の恐れの無い、ムテンイェと呼ばれる材が使用されている。Guibourtia amoldianaという学名からすると、オバンコールやブビンガに近い材で、サウンドのキャラクターはローズウッドに近いものと考えられる。ボディは全面がグロス仕上げ、バインディングは白という具合に、ボディ材の明るめの色調を生かした華やかなデザインになっている。ピックアップはフィッシュマンのソニトーンを搭載。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:ムテンイェ ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:リッチライト ●ブリッジ:リッチライト ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:ハイブリッドX ●価格:230,000円(税抜)
黄味がかった珍しい色のボディですね。このギターには、ドレッドのふくよかさを活かして、しかもエレアコの楽しみ方も表現できるように、スケールっぽいリズム・カッティングや、細かいハンマリング・オン/プリング・オフの装飾音を絡めた曲を選びました。生で弾いた時とエレアコとして使った時とでは楽器の聴こえ方が違うので、プレイも変わってきますが、その2種類が楽しめました。エレアコは生との違いを気にするよりもむしろ、それでしかできない表現を求めてみるのが面白いと思います。カッタウェイですが、個人的に最初の頃は嫌いでしたが、今は大好きになってしまっています(笑)。ハイ・ポジションが楽に弾けるのは良いですよね。
今回試奏した中で、自分が持っていたことのある楽器に近いのは00-28でしたが、細かいテクニックや手数の多い曲はあえて自分の知らないギターで弾こうと思ったので、00-28はざっくりとしたシンプルな曲に使いました。オーソドックスなマーティンの気分で弾けたし、000やOMとも比べられると思います。00LX1AE もそうですが、14フレット・ジョイントなので、7カポの曲でも大丈夫ですね。00LX1AEは、同じソニトーンが付いているDCRSGよりもボディが小さくて詰まっている感じがする分、音が太く感じられました。ライブでPAから大きな音を出すと、こういうわかりやすいサウンドだとひとつひとつの音がしっかり伝わるから、かえって説得力が出るんですよ。トップは単板なので、弾き込めばより鳴ってくるでしょう。あと、今回は本企画10回目にして初めてドロップDの曲を作ってきましたが、マホガニーのギターに近いアーシーな音のDSTGはそれにぴったりでした。DCRSGのようなエレアコは、たとえば僕が勝手に“ニール・ヤング弾き”と呼んでいる、右手のミュートを絡めたコード弾きを、生と同じようにやると低音が出過ぎるので、タッチをかなり弱めに弾くという調節を自然にやっています。ただ、大会場でギターを弾く機会がある人は少ないでしょうから、バンドなど趣味で音楽を楽しんでいる人たちは、大きな音でアコギが弾けるという利点を生かして、自由に弾いてもらいたいですね。
今回で10回目となる「Martin Times~It's a beautiful day」。毎回マーティン・ギターの魅力を深く、楽しく伝えてくれている斎藤誠さんのセルフ・カバー・アルバム『ネブラスカレコード ~It’s a beautiful day~』が好評発売中です! トークセッション動画でも語っていただいていますが、なんと全曲マーティン・ギターによる弾き語り。1996年からスタートした弾き語りライブの集大成とも言える、もっとも“素の斎藤誠”の歌とギター・プレイを堪能できる素晴らしい作品になっています。使用されたギターはトレードマークとも言えるOM-28 CUSTOMをはじめとして、000C-16GTE、000C-16NEGT、OM-28、000-17 Black Smoke、0-18、0-21の全7本。マーティンの多彩なサウンドをSHM-CDの高音質でじっくりと味わってください。
斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポートギターをはじめ、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。2013年12枚目のオリジナル・フルアルバム『PARADISE SOUL』、2015年にはアルバム「Put Your Hands Together!斎藤誠の嬉し恥ずかしセルフカバー集」と「Put Your Hands Together!斎藤誠の幸せを呼ぶ洋楽カバー集」の2タイトル同時リリース。そして2017年4月26日には全曲マーティン・ギターによる弾き語り&セルフ・カバーの待望の新譜、『ネブラスカレコード〜It’s a beautiful Day〜』をリリース! また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!