AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Gibson Acoustic / Southern Jumbo VOS
ギブソン・アコースティック・ギターの代表モデルであるJ-45と基本スペックを等しくしながら、随所に豪華な装飾を施しJ-45の上位機種として生まれたのがサザン・ジャンボです。日本でも山崎まさよし氏が使用していたりと、J-45と並んで高い人気を誇るモデルですが、現在レギュラー・ラインナップには加えられていないサザン・ジャンボが世界限定生産モデルとして登場しました。
“サザン・ジャンボ(Southern Jumbo)”と呼ばれるモデルは、1942年に発表されたJ-45の上位機種として同時期に産声をあげました。今回紹介するのは、この機種の世界限定モデルとしてVOSフィニッシュ(ビンテージ・オリジナル・スペック)が施された、一見ビンテージかと見紛うばかりの雰囲気を醸し出す美しい1本です。早速詳しく見ていきましょう。
トップはシトカ・スプルース、サイド&バックにはマホガニーと、サイズも含めてJ-45同様、ギブソン・アコースティック黄金のコンビネーションですが、特徴的なローズ指板のパラレログラム・インレイ(パラレログラム=平行四辺形)や、ヘッドのクラウン・インレイ、そして1955年に導入された大きなピックガードがルックスに華を添え、高級感を醸し出しています。
改めてこのギターを眺めてみると、ラウンドショルダーに真っ直ぐなサドル、グローバー・ペグに少し厚めのピックガード、伝統的なXスキャロップト・ブレイシングと、全ての部位がお互いに影響しあい、“サザン・ジャンボ”というひとつの強固な個性を作り上げているのだなと感じさせます。
シトカ・スプルースとマホガニーの組み合わせ、さらに非常に薄いVOSフィニッシュとの相乗効果からか、ストロークをしてみると張り、コシ、そして迫力のあるサウンドが飛び出します。芯の太い低音と中音域、ビンテージな倍音を感じさせる高音域まで、強く弾いても暴れ過ぎずまとまり過ぎず、パーカッシブで非常に良いバランス感です。自分の好きなコードをフラットピックで順番に弾いてみるだけで、発売以来多くのシンガーやシンガー・ソングライター達がこのギターを愛用してきた理由がわかると思います。カポをつけ、開放弦を交えたフィンガー・ピッキングでも、優しく枯れたようなこのギターのサウンドの醍醐味を味わうことができるでしょう。
メロディを弾いてみると、少し甘くてハスキーなボーカリストの歌声のような音色に包まれます。流れるように歌わせたり、切なくかすれるような音を出してみたり……。音そのものが持っているキャラクターを生かすプレイに挑戦したくなります。
ビンテージの風格を身にまとう本器ですが、ひたすらに年月を遡ろうとするのではなく、ライブ・ステージでの使用に対しては、最新の対応がなされています。搭載されているL.R. Baggsのアクティブ・ピックアップ“Element VTC”は、ボリュームとトーンのふたつのダイヤルを持ち、ライブでの幅の広い音作りを可能としています。芯を残しつつも重た過ぎないように整理されたサウンドは、大音量の中でのストロークや、ラインを通してのリバーブやディレイといった空間エフェクトの処理など、使い勝手の良いサウンドを作りあげることを容易とするでしょう。動画では「マイク録音」と「ピックアップ録音」それぞれの音を比較頂けますので、ぜひ視聴してみて下さい。
レコーディングにライブに、即戦力となってくれるであろう本器、違いのわかるあなたにこそ、一度弾いてみて頂きたい1本です。
1942年の誕生以来、ギブソン・アコースティック・ギターの定番モデルとして君臨するJ-45、その上位機種として人気を二分するSouthern Jumboと言えばラウンドショルダー・ボディが特徴のモデルですが、ここではそのボディ・タイプに注目して新旧織り交ぜたラウンドショルダーの兄弟たちを紹介しましょう。今回のサザン・ジャンボも含めてサウンドを聴き比べてみると面白いかもしれませんよ?
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは5月26日(金)更新を予定。
価格:¥384,000 (税別)
エバラ健太
えばら・けんた●1983年、東京都出身。地元と第2の故郷徳島を拠点に、全国各地を旅する弾き語りシンガー/ソングライター。作詞・作曲だけでなくアレンジ・録音・ミックスまでを自ら手がける。的確なギター・ワークと歌唱によるオーガニックなサウンドを、デジタルマシンで即興的に加工しながら情緒的に歌い上げるライブは、既存のジャンルにカテゴライズされない新しい音楽シーンの幕開けを予感させる。自身の活動の他、CM、TVなど、さまざまなレコーディングにも参加。Morris FingerPicking Contest 2015にて最優秀賞、オリジナルアレンジ賞を受賞。最新ソロ・アルバムは初のフィンガー・ピッキング・アルバムとなる『7』。