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- 2024/11/16
Fender / American Professional Telecaster
フェンダー・エレクトリック・ギターの原初にして至高。シンプルゆえになかなかアレンジの余地がないと思われていたテレキャスターだが、アメリカン・プロフェッショナル・シリーズでは伝統と革新の両方面からこのギターを見直すことで、新たなスタンダードを作り上げることに成功した。ストラトと同じくショウバッカーを搭載したモデルもラインナップする同ラインは、日本のミスター・テレキャスター“Dr.K”こと徳武弘文が試奏チェック。テレキャスターを知り尽くした名手から見た、その実力はいかに。
ビンテージ・モデルのテレキャスターは指板アール、サドル、各ピックアップのバランスなど慣れるまでに時間がかかる部分がいくつか存在するが、本モデルはそれらの問題をすべて解消していると言ってよい。トラディショナルなルックスを保ちつつ正確なピッチを実現する3ウェイ・サドルだけを見ても、伝統と革新の両立というコンセプトを見事に体現している。
SPECIFICATIONS
●ボディ:アルダー(写真)、アッシュ ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド、メイプル(写真) ●フレット数:22 ●ピックアップ:V-Mod Single-Coil Telecasterセット ●コントロール:1ボリューム、1トーン、ピックアップ・セレクター ●ブリッジ:3サドル・ストリングス・スルー・ボディ・テレ with コンペンセイテッド・ブラス・サドル ●ペグ:フェンダー・スタンダード・キャスト ●スケール:648㎜ ●付属品:専用ハードケース ●カラー:2カラー・サンバースト(メイプル指板のみ)、3カラー・サンバースト、ブラック(メイプル指板のみ)、バタースコッチ・ブロンド(メイプル指板のみ)、クリムゾン・レッド・トランスペアレント(ローズ指板のみ)、ミスティック・シーフォーム(メイプル指板のみ/写真)、ナチュラル、オリンピック・ホワイト(ローズ指板のみ)、ソニック・グレー(ローズ指板のみ)
出したい音を見つけるまでが
ビンテージよりも早いと思います。
テレキャスターは、特にリアのピックアップの音がストラトキャスターに比べてガッツがあって、それでいてキンキンした音にならないところが魅力ですよね。個人的にはサドルは3ウェイのほうが好きで、6ウェイのものは少し音が軟弱になっている気がします。それと、同じ3ウェイでもダニー・ガットンみたいなスラントしたものは、音程は正確なのかもしれないですけど、あまり好きじゃないです。このモデルも3ウェイ・サドルで、しかもボディもコンターを削っていない。男っぽいサウンドだと思いました。テレキャスターはストラトキャスターに比べてエフェクターを使った音作りは難しくて、やっぱり本体の個性を出すギターなんだと思います。
このモデルは昔のテレキャスターに比べるとまとまっていて、オールマイティな印象がありますね。昔のモデルは使いこなすまでに時間がかかったんですけど、これは持ってパッと弾ける。昔はフレットも薄くて音を出すのが難しかったりサステインに気を遣ったりしていましたけど、そういうことを気にしなくても弾けると思います。
ピックアップは昔のものに比べると極端にノイズが少ないですよ。ノイズを出さないようにって気を遣わなくてもいいし、安心して弾けますね。ポールピースも飛び出ていないからピックが引っかからないっていうのもポイントです。それと、ポジションによって磁石を変えてバランスを取っているということですが、昔は体で制御していたところが最初から整えられている印象です。それも含めてまとまっているギターだなと思います。各ポジションのサウンドは、僕だったらカントリー・リックを弾くならリア、フロントはジャズっぽいフレーズを弾く時で、センターはサイド・ギターでリズミックなプレイをする時に使うかな。ブリッジ・プレートもアッシュトレイ型だけどサイドが少し削れた形なのでブリッジ・ミュートしても弾きやすいです。パッと持って出したい音を出す場所を見つけるまでが、昔のモデルに比べて早いと思いますよ。
テレキャスターは意外とボリューム・コントロールが難しいギターで、フルにすると低音も高音も出すぎちゃうことがあるし、絞ると細くなってしまったりする。このモデルはフルだとちょっとブライトな気もするけど、弾いたそのままの音が出ますね。ボリュームを絞っても高域がこもったりしないし、これまでやっていた“自分の弾き方で補う“っていう技術は必要ないかもしれません(笑)。ビンテージ風な見た目だけど現代的なサウンドや演奏性があるギターだと思いましたし、カラー・バリエーションも多くて、女性にも人気が出るんじゃないかな。
本器は“テレキャスターにハムバッカーを載せただけ”というわけではなく、ボディ・シェイプこそ同じもののまったく異なる個性を持ったギターだ。パワフルかつ明るくクリアなサウンドは思いのほか汎用性があり、あとは弾き手次第でどんなジャンルの音楽にも対応することができるだろう。
SPECIFICATIONS
●ボディ:アルダー(写真)、アッシュ ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド(写真)、メイプル ●フレット数:22 ●ピックアップ:ShawBucker 1T(フロント)、ShawBucker 2T(リア) ●コントロール:2ボリューム、2トーン、3ポジション・トグル・スイッチ ●ブリッジ:6サドル・ストリングス・スルー・ボディ・ストラト・ハードテイル with ベント・スティール・サドル ●ペグ:フェンダー・スタンダード・キャスト ●スケール:648㎜ ●付属品:専用ハードケース ●カラー:3カラー・サンバースト(ローズ指板のみ)、ブラック(メイプル指板のみ)、ナチュラル(メイプル指板のみ)、ソニック・グレー(ローズ指板のみ/写真)
ハムバッキングだけど
フェンダーらしさが残ってますね。
テレキャスターは何本も持っているんですけど、ハムバッキング・ピックアップが載っているものは持っていないんですよ。どうしても、シングルコイルのほうが潔い感じがするんです(笑)。このモデルはやっぱりシングルコイルより太いサウンドですね。実はレコーディングなどでも求められるのはこういう音だったりするんですよ。弾いていて個人的に感じたのは、2シングルコイルのモデルがカントリーとか白人音楽向けなのに対して、この2ハムバッキングのモデルは黒人音楽に合っている印象がありました。ただ、ハムバッキングだけどフェンダーらしさは残っていますね。やっぱりサウンドが明るい。ギブソンのハムバッキングだと暗い感じが出るのに対して大きな違いだと思います。僕が使うとしたらリード用で、パワーはあるけどシングルコイルらしさ、フェンダーらしさを生かした使い方になるかな。ハムバッキングならではのフロントの良さは感じるんですけど、トーン・コントロールが少し難しいところもありますね。うまく使いこなせるならフロント・ピックアップを活用するのがオススメです。
指板のアールは少しフラット目に感じましたけど、ネックの握りも良くて弾きやすいし、ハイ・ポジションでチョーキングをしてもピッチがズレないのは良いですね。これは細めで山の高いフレットのおかげもあると思います。逆に僕としては、これまでの経験から強く押さえ過ぎて、特に低音弦がシャープしちゃわないように慣れが必要でしたけどね(笑)。そういう点では、やっぱりこのシリーズは始めからすごくまとまっているんだと思います。
このモデルに関して、僕はカントリーには合わないと思うけど、それ以外だったら幅広く使えるギターだと思いますよ。特に主張の激しい音楽には向いていそうです。個人的には、やっぱり2シングルコイルのモデルのほうがサウンドにガッツがあると思うし、6ウェイのサドルやボディにコンターがあるのも好きじゃないですけど、エフェクターの乗りはシングルコイル・モデルより良いと思う。今はエフェクターで音を作っていくのが主流だから、その乗りの良さは実際に使う時に重要になってくると思います。そういう意味では現代的なニーズにもしっかり応えてくれるギターですよ。
◎加藤隆志 meets Fender American Professional STRATOCASTER
◎田渕ひさ子 meets Fender American Professional JAGUAR & JAZZMASTER
本記事はリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2017年5月号』の特集記事「鳴らせ、フェンダー新時代。」内のコンテンツ「伝統と進化の邂逅 AMERICAN PROFESSIONAL SERIES」を転載しています。同特集では長岡亮介(ペトロールズ)、田渕ひさ子(toddle, etc)、Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)、加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)によるFender愛に満ちたインタビュー、ハリウッドに設立されたニュー・オフィスや工場の潜入レポート、1986年“以降”の同社の歴史を追うテキストなどを収録。そのほかにも偉大なるギタリスト=ムッシュかまやつの業績を振り返る追悼特集、ピクシーズの機材レポートやサーストン・ムーアのインタビューなどを収めた、注目の1冊となっています。ぜひチェックしてみてください!
価格:¥200,000 (税別)
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