AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Fender / American Professional Stratocaster
伝統に軸足を置きながら革新的なアイディアを盛り込んだ、フェンダーの新シリーズ“アメリカン・プロフェッショナル”。その革新の部分、本シリーズならではの独自性を端的に表わしているのがストラトキャスターの3モデルだ。シリーズに共通する各ポジションに最適化されたV-MODピックアップ、小音量時のトーンに配慮したトレブル・ブリード・サーキットの搭載はもちろん、SSSモデルに加えてSSH/HHモデルをラインナップしているのが同ラインの大きなポイント。ここでは、日頃より65年製ストラトを愛用する加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)による試奏&インプレッションをお届けしたい。ハードなアメリカ・ツアーでも本モデルを使った経験から、早くもアメプロ・シリーズに厚い信頼を寄せているようだ。
トラディショナルなルックスを保ちながらも、実際に手に取って弾いてみると各所のアップデートが驚くほど効果的に作用しており、プレイ/音作り両方においてスムーズに気持ち良いポイントを見つけることができる。ビンテージ・ファンにこそ試してもらいたい1本。
SPECIFICATIONS
●ボディ:アルダー ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド(写真)、メイプル ●フレット数:22 ●ピックアップ:V-Mod Single-Coil Strat×3 ●コントロール:1ボリューム、2トーン、5ウェイ・ピックアップ・セレクター ●ブリッジ:2ポイント・シンクロナイズド・トレモロ with ベント・スティール・サドル・アンド・ポップイン・トレモロ・アーム ●ペグ:フェンダー・スタンダード・キャスト ●スケール:648㎜ ●カラー:3カラー・サンバースト、アンティーク・オリーブ、ブラック、オリンピック・ホワイト、シエナ・サンバースト、ソニック・グレー(写真)
アメリカ・ツアーでも使えた、
安心感のあるギターです。
3月上旬に東京スカパラダイスオーケストラのアメリカ・ツアーがあったんですけど、その時はこのプロフェッショナル・シリーズの3シングルコイル・モデル1本ですべての公演を行ないました。まず感じたのは安定感ですね。今回のツアーは転換も10分ぐらいで、会場にあるアンプを使わなくてはいけない状況もあったんですが、ピックアップの切り替えやボリューム操作だけですべて対応できましたし、すごく使い勝手の良いギターです。特に役に立ったのはトレブル・ブリード・サーキットが入ったボリュームで、音量を下げていってもトレブルが埋もれないですし、歪みのリードとバッキングの切り替えなどもこれひとつでできました。いつもみたいにいろいろエフェクターを挟んでないぶん、結果的に音の抜けも良かったと思います。
ピックアップはポジションごとに最適な出力バランスを取っている構造になっていて、僕の場合は6本の弦を全部鳴らすカッティングがメインですが、各弦のバランスがとても良かったです。それと、ストラトはやっぱりリアのシングルコイルの音が特徴的だし、個性だと思うんです。どうしてもここを多用したくなりますし、それを生かす弾き方にもなってきますよね。特に単音弾きの時は左手にも弦の振動を感じたいんですけど、このネックは裏がサテン仕上げでそれがしっかり感じられたのが気に入りました。これなら行けるって思いましたね。今まではいつも使っている65年製しか弾いたことがなかったので、一番最初に持った時は少しネックが太いかなと思いましたけど、ツアーが終わってみると慣れましたね。
サウンド的にはオーソドックスなストラトという印象ですが、レンジが広くてピッキングのニュアンスも出しやすかったです。フロントでも抜けは良いですし、スカパラみたいにホーンの中に入ってもキラッとした部分が残って、その部分ではビンテージよりもギターの存在感を出しやすかったですね。音のスピード感や勢いも若いギターだけあって申し分なしでした。
フレットに関してはすごく印象に残っていることがあって、ライブで1弦の16フレットあたりをチョーキングした時に余裕を感じたんですよ。いつもはギリギリで鳴らしている感じで、それもまた好きなんですけど、これはまだまだ行けるっていう余裕があったんですね。サステインも良くて、広い会場の遠くまで音が飛んでいくようなイメージだったんですが、それはこの細くて山の高いフレットのおかげなのかなと思います。とにかくツアーでしっかり使えたっていう安心感があるギターです。
いわゆるSSHピックアップ・ストラトの魅力は、なんと言ってもそのサウンド・バリエーションの幅広さにある。ハードに歪ませたリフやハーフ・トーンでのクリーン、さらにはギター・ソロまでこれ1本持っておけば間違いナシ!
SPECIFICATIONS
●ボディ:アルダー ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド(写真)、メイプル ●フレット数:22 ●ピックアップ:V-Mod Single-Coil Strat(フロント)、V-Mod Single-Coil Strat(センター)、ShawBucker 1(リア)●コントロール:1ボリューム、2トーン、5ウェイ・セレクター ●ブリッジ:2ポイント・シンクロナイズド・トレモロ with ベント・スティール・サドル・アンド・ポップイン・トレモロ・アーム ●ペグ:フェンダー・スタンダード・キャスト ●スケール:648㎜ ●付属品:専用ハードケース ●カラー:3カラー・サンバースト、アンティーク・オリーブ(写真)、ブラック、オリンピック・ホワイト(メイプル指板のみ)、シエナ・サンバースト、ソニック・グレー(ローズ指板のみ)
このブラッシングの音は
ストラト+ハムじゃないと出ない。
実は去年からハムバッカーの載ったストラトには興味があって、粒がありつつも歪ませると音の壁になるようなトーンっておもしろそうだと思っていたんです。クリーンのカッティングも、シングルコイルのオーセンティックな裏打ちではなく、僕の中で“フィッシュボーン以降”と呼んでいる(笑)、西海岸スカ・パンク的なカッティングのイメージがハムバッカーにはあって、このギターならフロントとリアを使い分けて、その両方ができると思いました。スカパラの「ペドラーズ2014」っていう曲は1曲の中でハードコア・スカからオーセンティック・スカに変わるんですけど、それもこのギターなら1本で対応できますし、音が持つ時代性なども表現できそうです。あと、クリーンの時のブラッシングの音が萌えポイントでして(笑)、この独特の“チャカッ”ていう音はストラトに載ったハムバッカーじゃないと出ないんですよ。プロフェッショナル・シリーズは、フロントとセンターのシングルコイルもパワーがあってハムバッカーに負けていないですし、この組み合わせにはすごく可能性を感じます。
ハムバッカーを生かしたヘヴィな歪みはもちろん、クリーン・トーンでの甘く太いサウンドも大きな魅力。シンクロナイズド・トレモロのスプリングが影響した独特のエアー感はこのモデルならではと言えよう。
SPECIFICATIONS
●ボディ:アルダー ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●フレット数:22 ●ピックアップ:ShawBucker 1(フロント)、ShawBucker 2(リア) ●コントロール:1ボリューム、2トーン、5ウェイ・ピックアップ・セレクター ●ブリッジ:2ポイント・シンクロナイズド・トレモロ with ベント・スティール・サドル・アンド・ポップイン・トレモロ・アーム ●ペグ:フェンダー・スタンダード・キャスト ●スケール:648㎜ ●付属品:専用ハードケース ●カラー:3カラー・サンバースト、アンティーク・オリーブ(写真)、ブラック、オリンピック・ホワイト、ソニック・グレー
ギターが完成されているから
ピックアップの違いで遊べる。
このギターを弾いて、僕が好きなサンタナのギター遍歴がよくわかったような気がしました。ストラトの持つ音色のカラフルさと演奏性、それとハムバッカーのパワフルさや存在感、その中間点を探るっていうのは、このギターの発想と近いと思うんです。個人的には少し箱モノっぽいニュアンスも感じていて、ジャイブとかビッグ・バンドでも使えそうなイメージですね。フロントの音にしても、シングルコイルよりは“黒い”ニュアンスがあります。ハーフ・トーンも良い音でポスト・ロックや弾き語りなどにも合いそうです。このシリーズのピックアップ全般に言えることですが、ハイとローのバランスがすごく良くて、あざとさがないから、どんなプレイでも使いやすい。個人的にはボディのキャラクターに勝っちゃうピックアップはあまり好きじゃなくて、そういう点でもよく研究されていると思います。……でも結局、このボディだから基本的な音のキャラクターはストラトなんですよね。当たり前のことですけど改めてわかりました。ギター自体が完成されているから、ピックアップの違いで遊べるんだと思います。
◎徳武弘文 meets Fender American Professional TELECASTER
◎田渕ひさ子 meets Fender American Professional JAGUAR & JAZZMASTER
本記事はリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2017年5月号』の特集記事「鳴らせ、フェンダー新時代。」内のコンテンツ「伝統と進化の邂逅 AMERICAN PROFESSIONAL SERIES」を転載しています。同特集では長岡亮介(ペトロールズ)、田渕ひさ子(toddle, etc)、Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)、加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)によるFender愛に満ちたインタビュー、ハリウッドに設立されたニュー・オフィスや工場の潜入レポート、1986年“以降”の同社の歴史を追うテキストなどを収録。そのほかにも偉大なるギタリスト=ムッシュかまやつの業績を振り返る追悼特集、ピクシーズの機材レポートやサーストン・ムーアのインタビューなどを収めた、注目の1冊となっています。ぜひチェックしてみてください!
価格:¥200,000 (税別)
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