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- 2024/11/16
Canal Works / カスタムIEM
今回の耳ログ!はカスタムIEMの製造現場を訪ねる、Canal Works(カナルワークス)工場見学の後編をお届けしましょう。前回はインプレッション(耳型)からシェル(本体)が出来るまでの工程を追ってきましたが、後編ではいよいよイヤホンの心臓部とも言えるドライバーの組み込みから、カスタムIEM完成までの工程を一気にご紹介します!
それでは後半の製作工程を見て行きましょう。出来上がったシェルは、下の写真のように蓋をしていた部分にバリが残っているので、まずはリューターを使ってバリを落とし、音導管となる穴を鼓膜側のステム先端に開けます。また、ケーブルとの接点となるコネクターがはまるように、シェルの一部をコネクターのサイズに合わせて削ります。
ちなみに、メーカーによっては左右のシェル・カラーを変える事が可能ですが、Canal Worksでは左右同色でのオーダーとなります。というのも、シェル・カラーが左右で違うと、硬化する時間に差があるため、シェルの厚みに差が出てしまうからです。
続いて、レーザーでシェルの内側に刻印を入れます。オーダーシートに記入された注文者の名前をパソコンに入力し、シェルの位置を調整してスイッチを入れると、一瞬のうちにレーザーでシェルに名前が刻まれます。この刻印にインクを流し込めば名入れが完了します。
作業場内の別の場所では、ドライバーの組み立てが行なわれており、小さなバランスド・アーマチュア・ドライバーに手作業ではんだ付けをしていきます。ちなみに、こうしたドライバーの組み上げ作業は、すべて女性が行なっていました。ドライバーへのはんだ付けや、シェルへの組み込み作業は手先の器用さが求められる重要な仕事ですが、女性の方が適性があるようで、海外ブランドを含めてほとんどのメーカーで女性が行なっていました。
また、注文者それぞれの耳の形によってドライバーの組み方が変わってきますので、耳型に合わせて、適切な場所にドライバー・ユニットを組み込みます。細かいパーツが所狭しと詰め込まれていますね。最後にプレートで蓋をする前に、周波数特性をテスターで計測します。ここでは、特性に異常がないかをチェックします。チェックをパスすると、蓋になる部分のフェイスプレートの取り付け工程に進みます。
取材時はちょうど、シェル・オプションで選択可能なメキシコ貝のフェイスプレート取り付け作業を行なっていました。大きなレーザー加工機で、メキシコ貝のシートからシェルの形に合わせて切り出していきます。レーザーが数秒発光しただけで切り出しが終わります。1つのシートから切り出されるので、仕上がりの模様がすべて違うのですね。
オプションのフェイスプレート以外にも、Canal Worksでは多くのシェル・カラーがラインナップされています。写真のようにフェイスプレートを取り付けたら完成かと思いきや、ここから研磨に入ります。作業ではフェイスプレートとシェルのつなぎ目の段差をきれいにしていきます。
コネクターと音導管に、研磨したカスが入らないようにテープで保護し、リューターで表面を研磨していきます。Canal Worksでは、“何も足さない、何も削らない”をモットーに、コーティングを施さずに研磨だけで表面を仕上げます。丁寧に磨き上げる度に、どんどんツヤが出てきます。
研磨が終わると、最終チェックを行ないます。左右の周波数特性のチェックはもちろん、研磨のムラがないかまでチェックされます。同時に、手元を大きなルーペで拡大し、音導管の内部まできれいに仕上げます。気になる部分には、小さな付箋を貼って細かな再調整の指示が出され、再び研磨に戻されます。こうして厳しいチェックをパスした製品だけが、お客様のもとに届けられているのです。
このように細かな品質管理がなされているのは、日本のメーカーならでは。手間も時間も掛かるチェック工程が多く、記事では伝えきれない程の多くの作業項目があります。製品に自信を持っているからこそ、最高の状態でお客様に届けたいという気持ちが、こうして形になって表われているのだと感じました。
Canal Worksは2010年に設立された新興ブランドですが、国産ならではの高い品質とサポート、用途に合わせて選べるモデルの多さとサウンドで、徐々にユーザーを増やしているブランドです。ぜひ一度ご試聴頂き、その素晴らしさを体感してください!
■e☆イヤホンでCanal Worksを購入
■Canal Works オフィシャル・ウェブサイト
岡田卓也(おかだ・たくや)
イヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」PR本部 本部長。帰省時にイヤホンが断線し、たまたま購入したSHURE E2cでイヤホンにハマる。これまでに試聴したイヤホン・ヘッドホンの数は数千機種に及ぶ。日本人で初めて(おそらく)beats本社やUltimateEarsのラボ見学をしたことが自慢。