AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
ESP Exhibition Limited 2017
オーダーメイド・ギターの先駆者として知られるESPが、その魅力をユーザーにわかりやすく伝えるために製作されるワンオフ・モデル、Exhibition Limited。1970年代から続く国産ハイエンド・ブランドの草分けでもあるESPが有する知識、技術と経験のすべてを駆使し、長年蓄積してきた豊富な木材ストックの中から希少材を惜しげもなく使って製作。見た目の美しさはもちろん、サウンドや演奏性にも妥協が一切ない、まさしく究極のギターに仕上げられている。ここでは、2016楽器フェアにて先行展示され、その全容が2017 NAMM SHOWにて発表されたExhibition Limited 2017の中から3本を厳選し、ROLLY氏に試奏してもらった。“木”をトータル・コンセプトに掲げたExhibition Limited 2017を、稀代のギター・エンターテイナーはどう評するのか、また世界に冠たるこの匠の技の数々を、本特集から味わっていただきたい。
メイプル・トップ+マホガニー・バックのボディ構成とセットネック方式を採用し、トラディショナルでシンプルな仕様ながら極めてポテンシャルの高いギターとして知られるESPオリジナルのAMOROUS(アモロス)。ボディ・トップは美しいアーチを描き、コントロール類は掘り込み式でセットされたゴージャスなギターだ。カタログ・モデルもフレイム・メイプル・トップとホンジュラス・マホガニー・バックという高級材を使っているが、このExhibition 2017ではトップ(21mm)とバック(5mm)に滅多に見ることがないほどグレードが高いキルテッド・メイプルを採用。ボディのセンター(26mm)にはホンジュラス・マホガニーを使ってミッドに厚みを持たせ、さらにローズウッド・ネックが音抜けの良さとサステインの良さを際立たせている。ネック・バインディングもキルテッド・メイプルを奢るというこだわりようだ。
特筆すべきはハンドメイドで製作された金属パーツ。ブラス削り出しのエスカッション、テイルピースには美しい装飾が施され、このギターが特別な1本であることを物語っている。金色のフレットはJescarnのFW55090-EVOで、色味のマッチングはもちろん、正確なピッチと豊かな倍音の構成に一役買っている。
【Specifications】
■ボディ:キルテッド・メイプル/ホンジュラス・マホガニー/キルテッド・メイプル ■ネック:ローズウッド ■指板:エボニー ■フレット:24 ■ナット:ブラス ■ピックアップ:セイモア・ダンカン59/Jazz Hybrid(フロント)、セイモア・ダンカン59/JB Hybrid(リア) ■コントロール:1マスター・ボリューム、1マスター・トーン、ピックアップ・セレクター ■コントロール/スイッチ・ノブ&ピックアップ・カバー:ホンジュラス・ローズウッド ■フィニッシュ:インディゴ・パープル
◎価格:1,180,000円(税別)
木部へのこだわりがすごいですね! バインディングも木製で、まるで高級家具のような佇まいです。美しい木材が組み合わされていますが、美しいだけでなく、それぞれの木材の特性がひとつになることで複雑で味わい深い鳴り方をしています。このギターを弾いて感じたのは、「ピアノのように鳴る」ということ。上から下までのレンジが広く、バランスが良くて、ミッドだけが出るような変な癖がないんです。弾いていて、本当に気持ちがいいギターですね。
サウンド面ではレスポンスの良さ、アタックの明瞭さ、ボリュームを絞った時の高域の残り方などが印象的で、通常のハムバッカーを搭載したギターの反応が鈍い感じとはまったく異なります。それと、ネックにローズウッドが採用されていますが、それによってサステインが優れていると感じました。金属パーツも凝りに凝っていて、所有する喜びをさらに高めてくれそうです。
ESPの看板モデルのひとつ、SNAPPER(スナッパー)。STスタイルながら、よりパワフルかつ精度の高さに定評のあるモデルだ。ESPオリジナルのフリッカーIIIトレモロを搭載し、スムーズなアーミングと安定したチューニング、ロング・サステインを実現。また、ヘッドにわずかに角度をつけたCTシステムを採用し、リテイナーを排除しチューニングの安定を図っている。これによりフラット・ネック/ボルトオン・ジョイントの弱点である1&2弦の鳴りを良くしていることも特筆点だ。
このExhibition 2017モデルでは、殊に木材への徹底したこだわりが見てとれる。ひと目見た瞬間に、トップのキルト・メイプルの美しさや、木製の各パーツ類に目と心を奪われる。またネック材にはこちらもローズウッドをセレクト。重く堅いネック材を採用したことで、レスポンスの速さ、サステインの良さがさらに向上した。ピックアップはフロント&センターにセイモア・ダンカン APS-2を採用。柔らかい音色が特徴で、堅いネック材とのマッチングは抜群だ。リアには同じくダンカンのTB-16を搭載している。
【Specifications】
■ボディ:キルテッド・メイプル/ライト・アッシュ ■ネック:ローズウッド ■指板:ローズウッド ■フレット:22 ■ナット:牛骨 ■ピックアップ:セイモア・ダンカンAPS-2(フロント)、セイモア・ダンカンAPS-2RW(センター)、セイモア・ダンカンTB-16(リア) ■コントロール:1マスター・ボリューム、1マスター・トーン、ピックアップ・セレクター ■コントロール/スイッチ・ノブ:バーズアイ・メイプル ■ピックアップ・カバー:キルテッド・メイプル ■ピックガード:ウォルナット ■トレモロ・パネル:キルテッド・メイプル ■フィニッシュ:オリーブグリーン・サンバースト(トップ)、ブロンド(バック)
◎価格:720,000円(税別)
なんと言ってもこのローズウッドのネックの心地良さは、できれば皆さんにも体験してもらいたいですね! 本当に最高の握り心地で、最初からしっとりと手に馴染んできます。長年弾き込んだビンテージのような感触が最初からある上に、硬質なネックの影響でサステインも良いです。
サウンド面では、ボディ・トップにメイプルを貼っているせいか、カリッとしたニュアンスがあるのが特徴ですね。このカリッとした成分がボリュームを落としても残っているのが素晴らしい! 僕が一般的なハムバッカー・モデルをあまり好きではないのはボリュームを絞ると音がこもってしまうからなんですが、このギターはまったくそんなことはなく、僕の好みの音が出せます。それからこのギターに搭載されているフリッカーIIIトレモロは非常に動きが滑らかで、もちろんピッチも狂いません。僕は以前フリッカーⅡを使っていたことがあるんですが、久しぶりにフリッカーを使ってみてやはり完成されているなと思いました。このギターは木部のこだわりもすごいですし、作り手が愛情を持って製作したことがよくわかる、一生モノのギターだと思います。
アーチトップのAMOROUSをフラット・トップに変更し、フリッカー・トレモロを搭載したスペシャル・モデル。仕様的には“より攻撃的になった”とも受け取れるが、ボディ・トップに木の瘤部分を活かした銘木、バックアイバールを採用して工芸品のような美しさを演出し、AMOROUSらしい優美さをうまく継承している。
AMOROUSは全機種ボディ・テーパーを採用し、ネック側は薄く、ボディ・エンド側が厚く作られているが(フィット感の向上、フロント・ピックアップの軽快な鳴り、ブリッジ付近の厚みの確保によるサステインの向上が狙い)、本器はフラット・トップにしたことでその利点をより明確に感じとれる。ネック及び指板材にはパープルハート(マメ科の硬質な材)を採用し、ロング・サステインと、独特の色味を活かした美しさを獲得。ピックアップ・カバーも特別にパープルハートで製作され、カバー自体に指板に合わせたRを付けるなど、やはり細部までこだわり抜かれている。リア・ピックアップにはダンカン・カスタム・ショップのBroBuckerを、そしてフロントには特別に作られた59/Jazz Hybridを搭載し、材構成やテーパーとの相乗効果で濁りのないハムバッカー・サウンドをアウトプットする。
【Specifications】
■ボディ:バックアイバール/ウォルナット/キルテッド・タモ ■ネック:パープルハート ■指板:パープルハート ■フレット:24 ■ナット:牛骨 ■ピックアップ:セイモア・ダンカン59/Jazz Hybrid(フロント)、セイモア・ダンカンSSL-6RW(センター)、セイモア・ダンカンBroBucker(リア) ■コントロール:1マスター・ボリューム、1マスター・トーン、ピックアップ・セレクター ■コントロール/スイッチ・ノブ&ピックアップ・カバー:パープルハート ■フィニッシュ:ナチュラル
◎価格:830,000円(税別)
このトップのバックアイバールの美しさは、もう美術品ですね。高級ホテルにある調度品みたいな感じです。この杢目は一日中見ていても飽きないでしょう。フラット・トップなんですが、ボディがネック側は薄く、エンド側が厚く、テーパーが付けられています。それによって身体に馴染むのはもちろん、サウンド面でもフロント・ピックアップの音がブーミーにならずに抜けます。甘くはなるんですがこもらないというこの感じは、テーパーの影響も大きいと思います。
そしてこのギターも、レンジが広いですね! クリアでシャープな音、濁りがない音がします。調整も完璧ですし、すべてが最高としか言いようがないですね。僕は、ギターは買った段階では完成品ではないと思っていて、買ってからバラすくらいに調整するんですが、これは最初から完璧ですね。しかも、これを長く弾いているとさらに良いサウンドになると思いますよ。
今回3本のExhibition Limitedギターを弾いてみて、僕の中でハムバッカーのギターのイメージが変わりましたね。どうしてもハムバッカーにはブーミーな印象があるんですが、どのギターもフロント・ピックアップのいらない低音がない、濁りのない音がとても良かったです。それと3本とも銘木を使って美しい見た目とサウンドを両立させているのも印象に残りました。僕が子どもの頃に育ったところの近くに“銘木団地”(※かつて大阪府摂津市鳥飼銘木町に100軒以上の銘木を取り扱う店が並び、当時の日本の和室における銘木の需要を支えていた)と呼ばれる場所があったので銘木の価値はわかるんですが、どれも本当に素晴らしい木を使っています。高級ホテルのロビーか、お金持ちの家にしかないような銘木です(笑)。
高い時計と安い時計は、どちらも同じ時を刻みますよね? 同じように高いギターと安いギターも、どちらもとりあえず“ギターの音”はします。では、何が違うのか? 僕はズバリ、精度の高さだと思います。今回弾いたESP Exhibition Modelは、どれも世界最高峰の精度の高さを持つギターだと感じました。とにかくロー・ポジションからハイ・ポジションまで、ピッチがいいんですよ。こういうギターはニュアンスが出しやすいですし、弾いていると耳が鍛えられて自然と上手くなります。僕は昔からESPのギターと言うと“ネックが素晴らしいギター”という印象を持っているんですが、この3本はネックやフレットの処理もメチャクチャ滑らかで、とにかく心地いいですね。Exhibitionはどれも簡単に買えるギターではないかもしれませんが、買ったら間違いなく一生モノです。
本特集でExhibitionモデルに興味を持った方、自分だけのオリジナル・モデルを製作したいという方は以下よりスペシャル・モデルのオーダーが可能です。“夢のギター”をぜひ手にしてください。
◎ESP Exhibition Limited 2016のオフィシャルページ
2月13日(月)発売のギター・マガジン2017年3月号では8ページにわたって「Exhibition Limited 2017 〜ESPが誇る技術の結晶〜」を展開予定。Exhibition Limited 2017モデルの中から計35本を掲載しているので、ぜひ本特集と併せてご確認ください。
ROLLY
ローリー(本名:寺西一雄) 京都府生まれ/大阪府育ち。エンターテイナー、ミュージシャン、音楽プロデューサー。1990年、ロック・バンド「すかんち」のボーカル&ギターとしてデビュー。1996年バンド解散後、ソロ活動を開始。音楽活動の他、唯一無二なキャラクター性をもってタレントや役者としても活躍しお茶の間での人気を博する。ソロ・アルバム最新作は2016年8月にリリースされた『ROLLY’S ROCK THEATER ~70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその光と影~』(キングレコード/KICS-3396)。
※今回の特集動画の演奏では、同上作品と2015年作『ROLLY'S ROCK CIRCUS~70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光~』(キングレコード/KICS-3207)よりバッキング・トラックを用いています。