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- 2024/11/16
ギター用ペダル型プリアンプ
エフェクター・ファンのバイブルとして高い人気を誇る『THE EFFECTOR book』(シンコーミュージック刊)。その最新刊であるVol.34では、ペダル型プリアンプがフィーチャーされている。ペダルと言えど、宅録では音作りの核として、あるいはライブなどでは足下で音作りを完結できる便利デバイスである。“本当に必要なの?”“どうやって使うの?”などの問いは出てくる類のペダルであるが、それに対するひとつの回答、あるいは活用法を提案してくれる1冊が本書と言えるだろう。ここでは同企画と連動し、DEAD ENDを始め数々のバンド/プロジェクトで活躍するベテラン・ギタリストYOUを試奏者に迎え、その実力を徹底検証!
ペダル型プリアンプの真価、それは現場でこそ発揮される。というのも、音楽活動をするにあたっては、誰もが常に理想の機材でプレイできるわけではなく、時にはまったく馴染みのない機材に対応しなくてはならない事態に陥ることがあるからだ。そんな時、ペダル型プリアンプがあれば現場に設置されているアンプのパワー・アンプ部を拝借することで、慣れ親しんだ音色で演奏することができるのである。今回、試奏をお願いしたYOUがペダル型プリアンプを核にしたペダルボードを製作したのも、そうした現場への対応を考えてのことだという。自前のアンプ&ペダルボードで構築したフルセットを持ち込める場合には必要ないが、プロとして活動するうえでは小さなギグへの出演依頼も多い。そうした場合、多くが常設のアンプをシェアする形で行なわれていて、自分の好みと正反対のキャラクターを持つアンプが用意されていたりすると、演奏にも支障が出てしまう。なぜなら、音色と演奏は表裏一体。心地いいサウンドでプレイしてこそ、良い演奏が生まれるものだからだ。いつでも、どこでも、どんな環境でも、お客さんに100%満足してもらえる演奏を披露したいと考える向きにとって、ペダル型プリアンプは非常に有効な選択肢なのである。
[Specifications]
●コントロール:Mid、Q、Freq、Vol、Top、Bottom、Gain ●スイッチ:ON/OFF、Boost ●端子:In、Out、Cab Sim Out ●サイズ:198mm(W)×128mm(D)×92mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC
これは音楽を選ばないですね。すごくハイ・ゲインなのに、ボリュームのコントロールがとてもしやすい。どの帯域も均等に飽和していて、輪郭がちょっとぼやけるところもあるんですけど、その分、太さを感じます。通常、歪みがタイトだとちょっと線の細さを感じるんですけど、そういう感じが一切ない。特徴的なのはこのロー。上が出ていてバリッとしていても、硬くなりすぎないのはこの低域のおかげでしょう。ガッシリしすぎていない感じが気持ちいいんです。メタル的なリフを弾きたい感じにはならないですけど、ハードなロックで歌いながらバッキングして、ちょっとメロも弾いたり……そういうプレイが合いそうですね。まさに“万能”って感じです。ただ、繋いだアンプの影響をモロに受けるところは要注意です。JCだとミドルにあの独特のボコボコしたスピーカーの感じが残るし、チューブのフェンダーだとまろやかで輪郭も出るけど、アメリカンな響きになってしまう。僕は逆に、この素直な感じがたまらなく好きですけどね。高級なギターを繋いだらそれがすごく反映されると思うので。それはともかく、ずっとギターを弾いていたくなる楽しさがあるモデルです。
“Bax Bangeetar”は、独特なレトロ・デザインとオレンジ色の筐体で人気の英アンプ・ブランド、オレンジのカスタム・ショップから発売された足下サイズのプリアンプ。“VOL”&“GAIN”コントローラー、高域をコントロールする“TOP”、低域を司る“BOTTOM”、そしてミッド・レンジを詳細に調整することのできる“MID”、“Q”、“FREQ”で構成されたパラメトリック・イコライザーにより、アンプ然としたサウンドを得ることが可能だ。また多くの歪み系エフェクターで使われているダイオード・クリッピングを使っていないため、ナチュラルなドライブが生成されるのも特徴。通常のアウトプットのほか、同ブランドの12インチ×4発キャビネットの特性を模したシミュレーター・アウトも搭載している。
【オフィシャルHP】
【Bax Bangeetarの製品レビューはこちら】
[Specifications]
●コントロール:Drive、Bass、Middle、Treble、Level ●スイッチ:ON/OFF、Favorite、Gain(Low/High)、Push(Norm/Mid)、Presence ●端子:In、Out、Boost、Exp ●サイズ:114mm(W)×102mm(D)×44mm(H) ●電源:9VDC
いろいろな場面で使える工夫が施されていて、音もそういう感じに仕上げてある印象ですね。上質なドライブ・ペダルとのイメージが強いので、エフェクターとして使うのが基本なんでしょうが、パワー・アンプにも挿せるようになっているのがミソ。プリとして使っても歪み自体の雑味が少なくて、素性の良さを感じますね。かなり歪ませても飽和感なく、わりとアッサリしているんですよ。それがこのペダルをすごく弾きやすいものにしている理由でしょう。加えて、ミドルにまったく癖がないのもおもしろい。最近は中域で味付ける歪み系ペダルが多いことを考えると、逆にそれが新鮮だったりします。あえて突出した特徴を持たせていないというか。それは偶発的なものじゃなくて、恐らく狙ってチューニングされているように感じますね。ちょっと弱めの歪みに設定して、何かでローをギュって絞めたくなるアンプっぽい感じの出音なので。だから、ここに一発良質なドライブ・ペダルを繋げると自ずと方向性が決まるんじゃないかな。言い換えれば、実践的──ライブで実際に力を発揮するプリアンプって、繋ぐエフェクト次第で化けるこういうモデルのような気がします。
“Riverside”は、高品質な空間系デジタル・エフェクターが特に高く評価されているストライモンが初めて手掛けた歪み系エフェクター。歪み系としては珍しいアナログとデジタル回路を組み合わせたハイブリッド構造は、デジタルに長けた同社ならではの仕様。クラスA動作のJFETステージからDSPを用いたデジタル・ステージへと繋がる構成となっていて、真空管ライクな響きを生成する。操作系はアンプに倣って、“LEVEL”、“DRIVE”、“BASS”、“MIDDLE”、“TREBLE”を搭載するほか、2モードのゲインと音色の特性を切り替えるスイッチを搭載。ノイズ・リダクションやブースター機能も実装されている。設定をプリセットしたり、各パラメーターやブーストを外部ペダルでコントロールすることも可能だ。
[Specifications]
●コントロール:Clean(Level、Low、Mid、High、Gain)、Drive(CR.Level、LD.Level、Low、Mid、High、CR.Gain、LD.Gain) ●スイッチ:Clean/Drive、Crunch/Lead、DR. Tone Shift、Clean Boost、Crunch/Bright ●端子:Input、Output To Amp、Output To Mix、Fx Loop(Send、Return)、Output Control ●サイズ:104mm(W)×120mm(D)×62mm(H) ●電源:006P(9V電池)×2/18VDC
これは僕も実際に使っているモデルで、ゲインとトーンのバランスがすごく良い点が気に入っています。単体でもリード・チャンネルにするとわりと歪むんですけど、僕はクランチ・チャンネルをメインにしています。というのも、同じくらいのゲインに設定して比べると、なぜかクランチ・チャンネルの方が音が太く感じるんですよ。あと今回、チャンスがあったので、同じシリーズの真空管入りのタイプ“SS-11”と比べてみたんですけど、チューブ入りの方はジャリっとしていて若干低域が膨らみますね。好みの問題なんだろうけど、こうして比較してみると、やっぱり僕はソリッドステート仕様の“SS-30”が好きですね……負け惜しみじゃなく(笑)。実際、バンド・アンサンブルの中でキックや5弦ベースが鳴った時、本当に武器になるのは、これの持つ“タイトさ”だと思います。それに、比べてみて一番違うと感じたのは、巻き弦を弾いた時のレスポンス。チューブ・タイプの方が巻き弦から3弦あたりまで若干ボアボアする感じが付き纏うのに対して、“SS-30”は巻き弦であろうがプレーン弦であろうが、スピード感が一切変わらない。現場で大切なのは、こうした“どの弦も同じスピード感で弾けること”なんですよ。
アンプライクなペダルやプリアンプ・ペダルの数々を製作するロシアのAMTエレクトロニクスが手掛けた“SS-30”は、コンパクト・サイズながら3チャンネル仕様の多機能なモデル。クリーン、クランチ、リード・チャンネルを2つのフット・スイッチを使用して選択でき、それぞれに3バンド・イコライザーやゲイン、レベル・コントローラーを搭載する。各チャンネルにはそれぞれブースト・スイッチやトーン・シフト・スイッチも用意され、多彩なサウンド・バリエーションを実現。本格的なハイ・ゲイン・アンプのような操作性で、幅広く音を作ることが可能なペダルと言える。スピーカー・エミュレート・アウトプット、エフェクト・ループも搭載。
[Specifications]
●コントロール:Master、Bass、Mid、Treble、Presence、OD1、OD2 ●スイッチ:Power ON/OFF、ON/OFF、Voicing(Distortion/Clean) ●端子:Input、Output ●サイズ:127mm(W)×137mm(D)×58.4mm(H) ●電源:12VDC
僕にとっては、これはパーフェクトですね! いやまあ……ロック限定っていう感じではありますけど、抜群にカッコイイ歪みだと思います。このミドルにちょっと癖のある感じと、“コワッ”と鳴るアタック音も好き。音も硬すぎないというのがすごく良いですね。適度にタイトで、適度にちょっと膨らんでいて。そしてウェットな感触まである。やっぱり好きなんですよね、このブランド。僕は普段、同じADAの“APP-1”っていうフロア型のプリも使っていまして、そっちはどこかにピークを感じる響きなんですよ。音が引っ込んでるなって感じて、高域の方を出すと、途端にピーキーになったり……ソリッドステート仕様だからかもしれないけど、EQが1ミリで激変するシビアさを持っているんです。この“MP-1 Channel”みたいに滑らかな──まさにチューブ・アンプ的な絶妙な動き方はしてくれないんですね。さらに、これはクリーンも良い。昔のラック・タイプの“MP-1”はクリーンが全然ダメで、もっと全体的にノイジーだったってことを考えると、これはオリジナルを完全に超えたかな。どんなアンプに繋げても必ず使える音が出るし、何よりもこれ1台あれば歪みの悩みが解決しそうです。本日のNo.1ですね!
ポール・ギルバートやヌーノ・ベッテンコートといった多くのアーティストが愛用したADAを代表するラック型プリアンプの名機“MP-1”のサウンドを、ペダル・サイズで再現したのが本機。内部には“12AX7”を2本搭載し、12Vの電源を内部で270Vにまで昇圧することで、本物の真空管だけが持つ濃密なドライブ・サウンドを生成する。オリジナルと比べると、MIDI機能、コーラス・エフェクト、ステレオ・アウトなどが割愛されていて、シンプルなモノラル・プリアンプとなっているが、ミッド・レンジに感じられる独特のクセ、歪みの質感などはそのまま踏襲。80〜90年代半ばに一世を風靡したハイ・ゲイン・サウンドをいま再び手に入れたい向きには、かなりオススメのモデルと言える。
[Specifications]
●コントロール:Channel A(Gain、Volume、Bass、Treble)、Channel B(Gain、Sweep、Volume、Fusion、Bass、Mid、Treble) ●スイッチ:Channel A ON/OFF、Channel B ON/OFF、Gnd/Lift、Spkr Sim ON/OFF ●端子:Input、Thru、Output、DI Output、Send、Return、MIDI In、MIDI Out、Phones ●サイズ:124mm(W)×189mm(D)×50mm(H) ●電源:12VDC
まず、クリーン・トーンがびっくりするほど良い。特にセッティングをいじらなくても、くっきりとした響きで使いやすいんですよ。このブティック・アンプみたいに存在感のあるクリーンは、チャンネルをミックスできる“FUSION”モードにしても有効で、歪ませていてもしっかり芯のあるサウンドを感じることができます。特に“COLD”モードではより強いクリーンを感じるので、音が前にプッシュされる感じがして、クリーンを生かすスタイルでは非常に効果的でしょうね。リード・チャンネルの方はというと、ゲインは意外に抑えめですが、歪み感はすごく感じます。攻撃的な響きにも聴こえますが、実際は強めのクランチ程度なので、幅広く使えるのでは。ミドルがあっさりしているので、ソロを弾く場合はほかのドライブ・ペダルを繋いでプッシュするのがいいかも。ゲイン量と折り合いがつくなら、あらかじめEQで輪郭を出しておくと、良い感じの切れ味に収まってくれますよ。でも、僕ならこういう歪みはむしろバッキングに活用したいですね。余計なミドルがない分、ドラムとベースが入った時に良い感じでアンサンブルに馴染むと思うんですよ。ボーカルがいるバンドなんかだと、各パートの分離がよく聴こえて、かなり重宝するはずです。
高品質なデジタル・キャビネット・シミュレーターの製作で知られるトゥー・ノーツが手掛けるアナログ・チューブ・プリアンプ・ペダルのシリーズ“Le Preamp”。その中でも本機は、最も高いゲインを作るギター用モデルだ。AとB、2つのチャンネルを搭載していて、それぞれを個別、または直列、並列で選択可能。Aチャンネルには2バンド、Bチャンネルには3バンド・イコライザーを装備し、“FUSION”コントローラーによって2つのチャンネルの混ぜ具合を調整することも可能だ。エフェクト・ループ、ヘッドフォン・アウト、MIDIインプット、そしてトゥー・ノーツのスピーカー・シミュレーターを通すこともできるバランスドDIアウトプットなど、入出力端子も豊富に揃えられている。
[Specifications]
●コントロール:Clean Volume、OD Gain、OD Volume、Bass、Mid、Treble ●スイッチ:Clean/Overdrive、OD Gain Boost、0dbV/-10dbV/Re-Amp、Lift/Gnd ●端子:Guitar Input、Monitor Output、Balanced DI Output、Pre FX Loop(Send、Return)、Post FX Loop(Send、Return)、Remote Control、PSU Out、Main Adapter ●サイズ:132mm(W)×205mm(D)×100mm(H) ●電源:12VAC
これ、歪みの感じがすっごい好き。一瞬、ソルダーノみたいって感じたぐらい。本当に素晴らしいですね。ヨーロッパの製品らしくミドルとローがたっぷり出るので、特にメタル系に必要な整った歪みが欲しい人にとって、この高品位なハイ・ゲインは間違いなく最強の相棒になるはずですよ。アンプとの相性も良く、今回はフェンダーに繋げたので“6L6”管の個性と混じって一気に“アメリカン!”って響きになりました。しかも、こんなによく歪むのにドライブ・ペダルとの相性も完璧です。ギター側のボリュームへの反応も全然悪くないんですけど、そこをあえてギター側全開で弾くようなフラッシーなスタイルのプレイヤーにぜひ使ってほしいキャラクターですね。クリーンの方はローが生きてくる感じで、歌うようなプレイをするスタジオ・ミュージシャンが好きそうな音です。音色は2つしかないのに十分使えるものに仕上がっているのは、すごくプロっぽい設計と言えるんじゃないでしょうか。あえて注文をつけるなら、イコライザーを各チャンネル別に搭載してくれたら、もっとロー・エンドとの折り合いがつけやすいのにな、って感じたくらいですかね。それでもこのポテンシャルには十分に凄みを感じますよ。
本機は、クオリティの高い製品作りで知られるオランダのハンドメイド・アンプ・ブランド、コッホが製作する、80年代風ディストーション・サウンドを得意とするプリアンプ・ペダル。クリーン&ドライブの2チャンネル仕様で、それぞれのボリュームと後者用のゲイン・コントローラー、そして共通の3バンド・イコライザーを搭載。多彩な入出力端子が用意されていて、出力先はパワー・アンプ、アンプのリターン、アンプのインプットの3つから選択可能だ。さらにプリとポストの2つのエフェクト・ループ、バランスド・アウトも搭載。2つのフット・スイッチを外部からコントロールできるリモート・スイッチ用端子も装備しているうえ、ほかのペダルへの電源供給も可能という高機能な1台。
[Specifications]
●コントロール:Level、Bass、Middle、Treble、20-500、220-5,1K、1,5K-16K ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output、Line-Out ●サイズ:95mm(W)×120mm(D)×77mm(H) ●電源:100VAC
今はフロア型のプリアンプもよく歪むので、クリーンだけの製品って正直何を目指しているのか、わからないところがあったんですが……これは、めちゃくちゃ上質ですね! 強烈に素直で、ビックリしました。繋いだだけで音が確実に太くなります。芳醇になるとか、ブティック感といった感触は加味されませんが、例えば、JCに繋げた時にどうしても拭えない、あの“チリチリしたハイ・ミッド”を感じなくなるんですよ。それでいてパンチも適度にあって、すごく滑らかに立ち上がってくる。“音が太くなる”ってこういうことなのかなって感じました。そして、このプリアンプで一番優れているのは、疲れないところ。手元のニュアンスがすごく出るのに、嫌な窮屈さみたいのがないっていう。これはちょっと衝撃的かもしれない。音楽的にもオールマイティで、ピックアップの出力にあまり左右されないので、オーバードライブとかじゃなくて、高品質なディストーションなんかを繋いだらすごく合いそう。だから、これは基本となるトーンを作るためのアイテムとして、かけっぱなしで使うのが正解でしょう。これこそ歪み云々ではなく、真にアンプ的な意味で“プリアンプしている”ペダルと言えますね。
長年に渡って良質なエフェクターを製作し続けているデンマークのブランド、カール・マーチンによる本機は、ラック・エフェクター並の音質をコンパクト・ペダル・サイズで実現するというプリアンプ・ペダルだ。20〜500Hz、220Hz〜5.1kHz、1.5k〜16kHzという広い帯域をカバーし、それぞれを±15dBの範囲で調整可能で、さらに全体の音量も±15dBの範囲で増減できるため、プリアンプとしてだけでなくブースターやイコライザー・ペダルとして活用することも可能。エレキ・ギターだけでなく、ベースやエレアコのサウンドメイクにも対応する。歪みを作るのではなく、イコライジングに特化したスタイルの珍しいプリアンプ・ペダルだ。
[Specifications]
●コントロール:Vol、Treble、Bass、Mid、Gain、Level ●スイッチ:ON/OFF、Boost ●端子:Input、Main Output、D.I. Output ●サイズ:120mm(W)×99mm(D)×56mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC
あんまり歪まないタイプなんですけど、ダイレクト感がすごいんです! 当然、ピッキングに対してかなりシビアに反応するので、気軽に弾けない難しさはありますけどね。それでも、ボトムの響きが高音域の出方と同じくらいピッキングに追従するので、出音に不思議な高級感を感じます。ソリッドステート・アンプを狙った音ということですが、すごく芳醇なので、むしろブティック系チューブ・アンプを弾いているイメージの方が強いんですよね。出音がクリアなのでジャジーなプレイをしたら一気にジャズ風に聴こえますが、基本的なテイストには常にロックを感じます。それもテキサスの荒くれた感じではなくて、ちょっと上品な香りもあるので、これに合わせるドライブ・ペダルのチョイスにはすごく気を遣いそう。あと、繋ぐアンプによって、出音にハッキリとした違いが出るのもおもしろいですね。僕は、断然チューブ・アンプに繋ぐことをお勧めします。巻き弦を弾いた時のまとまりのある響きがもう、たまらないので。アンプによって一番違いが出るのは、ギターのボリュームを下げた時でしょうね。チューブ・アンプだとしっとりするんですけど、JCの場合はもっとやんちゃというか。反応が速いのは一緒なんですけどね。
プリアンプ・ペダルだけを製作するマニアックなアメリカン・ブランド、トロノグラフィックが手掛けたギター用プリアンプ。コンセプトは70年代製のハイ・ゲイン・ソリッドステート・アンプの響きを再現するというもので、歪み系エフェクターとしての使用も想定した作りが施されている。操作系は“VOL”と“GAIN”に加えて、3バンドのイコライザーを搭載。“LEVEL”は“BOOST”スイッチに対応してブースト・レベルをコントロールする。アウトプットは2系統。片方はステレオ端子を用いたバランスドDIアウトで、常時“VOL”コントローラーをスルーしたフル・ボリューム出力固定だが、バイパス時にはミュートされる仕組みになっている。独特のスタイルを持ったユニークなモデルだ。
[Specifications]
●コントロール:Gain、Volume、Phones ●スイッチ:Re-Amp、Dark、Bypass、Bright、Hot、Emulation、EQ ●端子:Input、Output、Phones、Remote、AUX In、USB ●サイズ:95mm(W)×120mm(D)×80mm(H) ●電源:12VDC
コントロール・ノブが2つしかないことでもわかると思うんですけど、いろんな音が出るわけではありません。でも、それがすべてを表わしている。こいつを使うなら、細かいことをしない方が本領を発揮できる気がします。プレイでもそう。コード・ストロークのリフとかパワー・コードでガンガン押すみたいな人に向いている音だと思う。“HOT”を入れてもそんなにゲインは高くならなくて、飽和しているわりにはタイトにガッシリは鳴らないので、そうしたオールド・スクールなブリティッシュ感を生かした“大きなプレイ”こそがすごく合う。アンプは、あえてJCに突っ込んだ時のワイルドさを活用したいですね。フェンダー・アンプだと、もっと音楽的になるんだけど、この製品が目指してるのはそこじゃないだろって気がするので。やっぱり極悪に行かないと(笑)。これを使って繊細な歪みを作るっていう人は少ないと思うんです。トランスみたいな無骨なルックスが物語っている通り、本質は“暴力的な歪み”ですよね。この音でこの価格というのも驚異だけど、不器用さの中にある一本筋の通った意思を感じる音に惹きつけられます。あとインプットがフロント側に搭載されていますが、それはレコーディング機器として設計されたからなのかもしれません。
英国の老舗ギター・アンプ・ブランド、レイニーによるコンパクトな真空管プリアンプ“IRT-Pulse”は、フット・スイッチを廃したデスクトップ型スタイルが特徴(リモート端子経由でフット・スイッチを接続可能)。音色を司るコントローラーは“GAIN”、“VOLUME”の2つのみだが、“HOT”、“DARK”、“BRIGHT”、“EQ”、“BYPASS”スイッチのON/OFFを組み合わせることにより、歪みキャラクターを微調整可能だ。ヘッドフォン・アウトやAUXインプット、USB端子を介したオーディオ・インターフェイス機能、リアンプ機能なども搭載しているので、レコーディング・プリアンプのほか、ヘッドフォン・アンプ、ブースターなど、さまざまな用途で活用が可能だ。“ECC83”真空管を2本搭載。
[Specifications]
●コントロール:Master、Loudness 1、Loudness 2、Treble、Middle、Bass ●スイッチ:ナシ ●端子:Channel 1 Input×2、Channel 2 Input×2、Output ●サイズ:121mm(W)×70mm(D)×56mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC
これ、音、速いですね! ギターの音がモロに出ますもん。このスピード感ある音色で練習していたら、めっちゃ上手くなりそう。というか、むしろ本物のマーシャル“1959”アンプよりも音のテイストがクリアかもしれません。とにかく、ペダル的な音の出方は一切しませんね。このオールド・マーシャル特有のクリアな歪み方、そしてコントローラーを回してもあまり変わらないEQなんかに対峙すると、“マーシャルは歪んで当たり前”みたいに思ってる人たちは、“壊れてる?”って誤解するかもしれません(笑)。本物同様にチャンネル・リンクして、“LOUDNESS1”と“LOUDNESS2”のバランスをうまく計ると、ローが出てきて弾きやすくなりますが、僕の場合、ライブ用のセッティングとしては、あえて音抜けを重視してチャンネル1のみの硬質なガシッとくる音色で勝負したいですね。ギターのボリュームを下げてもまったく音がヘタることなくそのままの音で鳴ってくれるので。とにかく刺激的なペダルですが、ピッキングにムラがあると途端に粗が出たり、メチャメチャ力量を試される音でもあります。プレイ・スタイル云々じゃなくて、これを弾いていて気付かされることも多いと思いますよ。
現在、最も勢いのある日本のハンドメイド・エフェクター・ブランドの1つ、フライング・ティーポットを代表する人気モデル。“59 Preamp”という名称が示唆するように、プレキシ・マーシャル風のサウンドを狙ったオーバードライブ・ペダルで、プリアンプとしての使用も想定したバーサタイルな設計が施されている。一目で音色が想像できる分かりやすいデザインのみならず、スタンダードなコンパクト・エフェクター・サイズに味付けの異なる2チャンネルを内蔵し、オールド・マーシャルに倣った4インプット・スタイルも再現。たすき掛けによるチャンネル・リンクにも対応している。ディスクリート回路を使用し、アダプターのみならず9V電池での駆動も可能だ。
【オフィシャルHP】
【59 Preampのデジマート地下実験室動画はこちら】
プリアンプとかパワー・アンプというキーワードから連想するのは、やっぱり巨大ラック・システムだよなーと。現在40歳以上の機材マニアにはお馴染みのラグジュアリーなシステム、ステージ上で派手な速弾きを披露するギタリストの後ろでピカピカ点滅していたアレですね。80〜90年代ぐらいに流行ったプロ用機材で、10代のアマチュアはみんなアレに憧れたものでした。「オレもいつか冷蔵庫を背負ってステージに立ってやるんだ!」と。プリアンプはADAの“MP-1”で、そこにVHTのパワー・アンプ“2502”を組み合わせて……おっと“MP-1”のクリーンはイケてないから、クリーン専用に別のプリを用意して。となると、やっぱりリバーブにも何か良いのが欲しいな。レキシコンの“PCM90”かな。ディレイは当然、TCエレクトロニックの“TC2290”の一択でしょう。あとイーブンタイドのハーモナイザー“H3000”もマスト。そいつらを全部足下で制御したいから、カスタム・オーディオ・エレクトロニクスの“4×4”と“RS-10”を導入して……そうだ、トラブルが怖いから、それぞれバックアップ用にもう1台ずつ用意しなきゃ! さて、そこまで揃えると総額いくらでしょうか? うん百万ぐらい? あの「冷蔵庫」はバカみたいに高額なシステムでした。
そんなバブリーな時代を経て、2000年代に入るとギタリストの足下はペダルボード・システムが全盛に。でも、これだけペダル・エフェクターが流行した先には、いつかきっと再びラック・エフェクターが注目される未来が来るに違いない!なんて予想していたら、全く逆でした。むしろラックの方がペダルにすり寄ってきたという。“MP-1”もペダル化され、レキシコンのアルゴリズムはデジテック製ペダルに受け継がれ、TCの“Flashback”には“TC2290”以上の機能が詰め込めれてます。スイッチャーも爆発的進化しちゃって、BOSSの“ES-8”があればスイッチ一発でたいていのことが実現可能。パワー・アンプですらフロア・タイプのものを見かけるようになってきました。そうなってくると、足下に往年のラック・システム並みの機能を構築するのも夢ではないわけで……。しかもより安価で実現可能という。
いやー恐ろしい時代になりました。というわけで、みんなが愛憎を込めて「冷蔵庫」と呼んでいたあのクソ重くて巨大なシステムに対して、軽くて小型なペダルボード・システムにも何か素敵な愛称を付けてあげたいな、と。本を編集しながらずっとそんなことを考えていたんですが、なかなか良い命名が浮かばず。うーん、足下に置く家電だから、「ホット・カーペット」? 「ロボット掃除機」? いっそのこと「台車」とか?……いろいろひねり出してみるものの、なかなかイメージに合うものが見つかりません。そしてグーグル検索をしてやっと発見したのが「足温器」。いやーコレ、ピッタリだわ。足が冷えると良いプレイも望めませんからね! そんなわけで、これからは最新型のペダルボードのことを、親しみを込めて「足温器」と呼ぶことにしましょう。「ギタリストの足下に巨大“足温器”を!」。やべえ、ウルトラかっこ悪いよ……(泣)。
本記事はシンコーミュージック刊『THE EFFECTOR book VOL.34 AMPLESS WINTER 2017 ISSUE』での特集企画「現行ペダル型プリ・アンプ試奏分析」の中でより詳しく紹介している。ここで紹介した各機種を内部写真とともに、より詳細に解説。加えて、ビンテージの名機たちの紹介、ペダル型プリを活用したボードの構築法や、ラインの音色とアンプの響きの比較企画など興味深い企画を多数収録している。ギターの音作りにおける核となり得るペダル型プリアンプを使いこなすためには、まさに必携。さらにアンディ・ティモンズへのインタビュー、FREE THE TONE、KORG/Nutubeの特集など、その他見どころも満載だ。本記事とあわせてぜひご一読いただきたい。
項数:112P
定価:1,620円(税込)
問い合わせ:シンコーミュージック
・「THE EFFECTOR book VOL.34」のページ・サンプル