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- 2024/11/16
Gibson Acoustic / Bob Dylan SJ-200 Player’s Edition
“Bob Dylan SJ-200”は、ボブ・ディランが実際に所有するSJ-200をもとに “Collector’s Edition(現在は生産終了)”、”Player’s Edition”の2種類が2014年に発表されました。2017年までの契約生産となる”Bob Dylan SJ-200”について、これまで週刊ギブソンでも何度か取り上げてきましたが、今年10月ディランにノーベル文学賞受賞が決定したことを記念して、改めて”Player’s Edition”の魅力に迫ってみたいと思います。
1937年に発表され、“キング・オブ・フラットトップ”と呼ばれたSJ-200。50年代半ばに名称がJ-200と変更されてからも、その唯一無二のサウンドと特徴的な形状から、フラッグシップ・モデルとしての不動の地位を築き上げてきました。ボブ・ディランもそのギターに魅了されたひとり。1969年にリリースされたアルバム『ナッシュヴィル・スカイライン』の、微笑みを携えながらJ-200を手にしているジャケットはあまりにも有名でしょう。
2014年、ボブ・ディランが初めてギター・メーカーと協調製作したモデルということで話題になったこのBob Dylan SJ-200は、ふたつのバージョンをもってリリースされました。すでに生産終了となった “Collector’s Edition”はディラン自身がデザインをすべて監修した究極の夢のギターであったのに対し、こちらの“Player’s Edition”は“Collector’s Edition”の意匠を随所に取り入れながら現代のプレイヤーにも対応できるようなアップデートが随所に施されています。
ボディ・サイド&バックにはAAAクラスのフレイム・メイプルが、トップはビンテージ・モデルにも使われていたアディロンダック・スプルースが採用されています。ローズウッド指板には、数あるインレイの中からディラン自身が選定した“ベラ・ボーチェ(イタリア語で「美しい声」の意)”と呼ばれる1930年代のバンジョーに用いられていたインレイが施されています。また、華美に刻まれたダブル仕様のピックガード、本人がデザインしたヘッドの“アイ・ロゴ”に加え、伝統的なマスターシュ(ヒゲ)ブリッジが相まって、エレガントさと渋さが同居したような非常にスタイリッシュな仕上がりを見せています。また、本器にはL.R.バッグス製アンセムが搭載されているので、まさしく即戦力としてすぐにステージで使えるのも嬉しいポイントでしょう。
存在感のある大きなボディを抱え、ネックに手を添えた瞬間、その握りやすさにハッとします。ジャンボ・サイズのギターは“ネックも野球のバットのように太いのでは?”と思う方もいるかもしれませんが、丁寧に仕上げられた本器のネックは、手の輪郭に吸いつくようでとても快適です。
フォーキーな3フィンガーで演奏してみると、抜けてくる中音域に高級感ある高音の倍音成分が同居している印象を受けました。歌モノの演奏で弾く時、決して歌の帯域を占領することなく、後押ししてくれるような、美味しいところを知っているギターだと感じました。
今度は厚めのフラット・ピックを使ってストロークしてみると、ジャンボ・ボディならではの迫力ある低音が表われます。サイド&バックに採用されたメイプルとダブル・ピックガードの恩恵か、暴れ過ぎず、ほど良くまとまったコントロールしやすい安定感のある音。そして、力強く弾いても決してサウンドの肝がつぶれてしまうことのない、懐の広さも持っていると言えるでしょう。
常に時代を見つめ、世代と向き合い、自分自身を変えていくことをやめないボブ・ディランとだからこそ完成した、傑出の1本。伝統と伝説と現代が三位一体となったこのギター、ぜひ手に取って“現在のボブ・ディラン”を感じてみて下さい。
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは12月16日(金)を予定。
価格:¥678,000 (税別)
エバラ健太
えばら・けんた●1983年、東京都出身。地元と第2の故郷徳島を拠点に、全国各地を旅する弾き語りシンガー/ソングライター。作詞・作曲だけでなくアレンジ・録音・ミックスまでを自ら手がける。的確なギター・ワークと歌唱によるオーガニックなサウンドを、デジタルマシンで即興的に加工しながら情緒的に歌い上げるライブは、既存のジャンルにカテゴライズされない新しい音楽シーンの幕開けを予感させる。自身の活動の他、CM、TVなど、さまざまなレコーディングにも参加。Morris FingerPicking Contest 2015にて最優秀賞、オリジナルアレンジ賞を受賞。最新ソロ・アルバムは初のフィンガー・ピッキング・アルバムとなる『7』。