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- 2024/11/16
Gibson Custom / True Historic Les Paul
ビンテージ・ギターの持つトーン、ルックス、プレイアビリティを極限まで突き詰めた究極のリイシューとして知られるTrue Historicレス・ポール。出荷状態で超即戦力、鳴り抜群のモデルですが、さらに追い込んで鳴らすための公式メンテナンス術を、ギブソン・ジャパンのリペアマンが週刊ギブソンに大公開。True Historicオーナーはもちろん、全レス・ポール・ファン必見のセルフ・メンテ・プログラムをどうぞ!
True Historicシリーズのレス・ポールは、最高の完成度を誇るレス・ポール・リイシューです。メンテナンスの前に、どこがTrue Historicの鳴りに影響するのか、確認しておきましょう。
◎前シリーズで2013年から始めたハイドグルー(にかわ)による接着を、True Historicではボディ部分にも採用。これにより、指板、ネック・ジョイント、そしてボディと弦振動に関わる主要部分のすべてがハイドグルー接着となった。
◎塗装プロセスを一新し、塗装はさらに薄くなり、塗料そのものも見直しを図った。
◎トラスロッドはサイズアップしたチューブレスのビンテージ・ロッドを採用。
◎ボディ形状全体とボディ・トップのカーブ、ネックのシェイプがリファイン。これらのことも生鳴りとプレイアビリティに影響を与える。
◎パーツ類もリファイン。これらが鳴りに与える影響は少ないが、ピックアップ・カバーの材質の変化などは、アウトプットされるサウンドに影響を与える。
以上のような点を踏まえて、どうすればTrue Historicレス・ポールをさらに鳴らすことができるのか、ポイントを見ていきます。
ギターをメンテナンスするには、専用工具があったほうが何かと便利です。メンテナンスは一度行なえばOKというものではなく、定期的に行なうことが望ましいので、必要な工具があればこの機会に揃えてみてはいかがでしょう。解説は写真・左上から時計回りに。
◎ジャック・ザ・グリッパー(※アウトプット・ジャック緩み増締め用)
◎ストップ・テイルピース・レンチ(※テイルピースのネジ回し)
◎プラス・ドライバー 1/4インチ(6.35mm)(※トラスロッド・カバー外し、エスカッション、ジャック・プレートなどの用途)
◎マイナス・ドライバー 4mm(※ポールピース、ピックアップ調整)
◎フレットボード・コンディショナー(※レモン・オイル)
◎マルチ・スパナ(※スイッチ・ナット増締め用)
◎ブリッジ・ジャック(※ブリッジ持ち上げ用)
◎ワイヤーカッター
◎レンチ(※トラスロッド用は5/16インチを、ポット・ナットの増締め用は1/2インチを用意)
◎交換用弦(※ギブソン.010〜.046)
◎スケール(※本来インチ・スケールで作業しますが、mmスケールで代用OK)
◎ウエス(※柔らかい布、お勧めはcarラグラグ)
STEP① 弦交換
●弦をはずす:この時、テイルピースを落とさないよう注意!
●指板周りのチェック:フレット、指板の傷をチェック。ここでレモン・オイルを塗る。
●弦を張る:弦を袋から出したら、巻きグセを取る。弦は次のポスト(6弦を張る時は5弦のポスト)で折り、弦をフックしてから巻く。
●チューニング:弦を伸ばしながらチューニングする。
STEP② ネック調整
●コンディションを見る:左手で6弦の1フレットを押さえ、右手小指で16フレットを押さえ、7フレットの頂点と弦の間の隙間が名刺1枚分になるように調整する。
●トラスロッド調整:トラスロッドはチューニングをした状態でネックの状態を確認しながら、順反り(7フレット上の隙間が大きい)の場合はトラスロッドを6弦側に、逆反り(7フレット上の隙間がない)の場合はトラスロッドを1弦側に回す。
●トラスロッドの回し方:1/8回転ずつ回し、調整していく。
STEP③ 弦高調整
●標準的な弦高:12フレットの頂点から弦の下まで、1弦側は1.2〜1.5mm、6弦側は2〜2.3mmが標準。
●調整法:チェックしながら少しずつブリッジを上げ・下げする(専用器具があると便利! ※動画参照)。
STEP④ オクターブ調整
●オクターブ・チェック:まず開放弦をしっかりチューニングしてから、12フレットの音程をチェック。
●駒の動かし方:12フレットの音が開放弦の音より高い場合→駒をテイルピース側に動かす。
●12フレットの音が開放弦の音より低い場合→駒をピックアップ側に動かす。
STEP⑤ テイルピース調整
●テイルピースの高さ:ボディにベタ付けするよりも、少し上げて弦のテンション感を弱くすることでサステインが長くなり、プレイアビリティも良くなる。
STEP⑥ ピックアップの調整
●全体の高さ調整:ピックアップ・カバーの高さをエスカッションの高さと面一になるように調整する。
●ポールピースの調整:出力を確認できるレベル・ゲージで、各弦の音量をチェック。強く出ている音を基準に、その他の弦のポールピースを上げて音量を揃えていく。
STEP⑦ 保管
●ラッカーは寒暖差に弱い:なるべくケースにしまいこまず、外の環境に慣らす。
●ケースに関して:ケース内にも湿気が溜まりやすいため、晴れた日はケースを開けて定期的に干す。
●演奏後:薄いラッカーが軟化するのを防ぐため、演奏後はカラ拭きをして汗などを拭き取る。
●弾かない時の弦の緩め方:毎日弾く人は半音下げ程度(多くの場合、下げなくともOKですが、持ち運びの際は万が一の転倒や落下の衝撃によるネック折れのリスクを考慮して半音よりも下げておきたい)、1ヵ月以上弾かない人は全音下げ、ほとんど弾かない場合は2音半程度下げる。
いかがでしたか? 例えば、弦の巻き方ひとつでサウンドは変わりますし、テイルピースの高さ、ポールピースの調整法など、驚かれた方も多いのではないでしょうか? 適切な調整を施し、毎日演奏し続けることで、True Historicはさらに豊かに鳴るようになっていきます。ギブソン公式メンテナンス術をマスターして、豊かなギター・ライフをお楽しみください!
【注意】
メンテナンス作業を行なう際は、個人の責任において、細心の注意を払って行なってください。ギター側へのダメージを含む万が一の事故に対して、ギブソン・ジャパン、及びデジマート編集部で責任を負うことは出来かねますので、ご了承ください。
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは10月7日(金)を予定。