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- 2024/11/16
Gibson Acoustic / HP415W
ギブソン・アコースティックから、革新的なコンセプトを持った“2017 ハイ・パフォーマンス・ライン”という新しいシリーズが発表されました。週刊ギブソンでは、同シリーズの初お目見えとなったおおはた雄一氏によるイベントをレポートしましたが、改めてここにその詳細をお伝えします。戦前より、ブルースやカントリー、フォークからロック・ミュージックに至るまで、数々の名曲名演を彩ってきたギブソン・アコースティックの表現する“現在=2017”とは? 今回は、ウォルナット・サイド&バックを持つHP415Wの魅力に迫ってみたいと思います。
J-45の長い伝統を引き継ぎつつも、新しい挑戦をしっかりと感じさせるこのギター。第一印象は、伝統を愛するギブソン・ファンの心を想定外のサウンドで裏切りながらも一瞬で虜にし、さらには新たな世代のファンをも取り入れてしまうであろう魅力を携えているという“驚き”でした。
ボディ・トップ材のシトカ・スプルースと、サイド&バック材のアメリカン・ウォルナットの組み合わせは、パワフルかつバランスがしっかりと取れた響きを生み出します。また、このギターのために新しくデザインされた4インチというボディ厚(従来のモデルよりもわずかに薄い)は、素速いレスポンスを必要とする現代的なアプローチにも貢献するでしょう。ネックは24 3/4インチというショート・スケールを採用。フラットなウォルナット指板は、ビブラートやクォーター・チョーキングを、ネックのどのポジションでも自由に表現することを可能にしてくれます。同じくウォルナットで作られたブリッジは、このギターのためにデザインされたもの。ピックガードもこのシリーズのために完全に新しく設計されました。
またL.R.バッグス・エレメントを標準装備しており、レンジの広いこのギターのサウンドをステージでそのまま再現してくれます。まさに“本物のミュージシャンズ・ギター”と呼べる本器ですが、北米で採れる“ジ・アメリカン”な木材を用い、そのまま本土内で製作されているため、輸送コストを削減。高コストパフォーマンスを実現できた点も見逃すことが出来ないポイントでしょう。
シルキーで丁寧に作られたネックを握ってポロンと爪弾いてみると、ギブソンらしい味わい深い枯れた音の中に、高級感のある艶やかな響きを感じられます。自然なリバーブのかかったようなサウンドは、ソロ・ギターでのバラードや、歌モノのバッキングに抜群の力を発揮してくれるでしょう。さらに、パワーコード+ミュート・カッティング+リフ、というロック的なアプローチでは、これぞギブソン!という本領を発揮。開放弦を交えた低音弦フレーズでは泥臭さ全開で、“新品でこの音なら、弾き込んだらどうなってしまうのだろう?”とギター好きの心を捉えて離しません。また、カッタウェイが導入されていることから、高いポジションでのプレイアビリティも抜群です。
目を閉じて、カントリー・テイストのザクザクとしたストロークをすれば、どこからともなくモンタナの風に吹かれる土の香りが(彼の地を思い浮かべて弾いてみてください)! ボディ厚が薄くなっても、ギブソンらしい低音の響きはそのままに、ゴーンゴーンと音の塊が飛び出ていくような印象を受けました。
すべてのギター・ファンに、一度、手に取って弾いてみて欲しいこのギター。歌モノからソロ・ギターでのパフォーマンスまでこなせる、非常に高いポテンシャルと可能性を備えた1本です。
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは9月30日(金)を予定。
エバラ健太
えばら・けんた●1983年、東京都出身。地元と第2の故郷徳島を拠点に、全国各地を旅する弾き語りシンガー/ソングライター。作詞・作曲だけでなくアレンジ・録音・ミックスまでを自ら手がける。的確なギター・ワークと歌唱によるオーガニックなサウンドを、デジタルマシンで即興的に加工しながら情緒的に歌い上げるライブは、既存のジャンルにカテゴライズされない新しい音楽シーンの幕開けを予感させる。自身の活動の他、CM、TVなど、さまざまなレコーディングにも参加。Morris FingerPicking Contest 2015にて最優秀賞、オリジナルアレンジ賞を受賞。最新ソロ・アルバムは初のフィンガー・ピッキング・アルバムとなる『7』。