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- 2024/11/16
One Control / Purple Plexifier
ミニ・ペダル・シーンのトップランナーとして知られるワン・コントロールの新作は、パープル・プレキシファーと名付けられたディストーションだ。その名からピンとくる人も多いだろう、本機はズバリ、1969年までのプレキシグラスをコントロール・パネルに用いたマーシャル・アンプ、通称プレキシのサウンドをターゲットにしている。
プレキシといえば、本格的なロックのドライブ・サウンドを備えた初のアンプといっていいだろう。もちろん、それまでも“歪むアンプ”はあった。しかし、他のアンプでは代えがたい少しざらついて奥行きのある歪みの質感、ピッキングを止めたくなくなるほどの心地良いバイト感、少なめの歪み量にセットしても太くよく伸びるサステイン、大音量とそれに伴う圧倒的な音圧など、当時のニュー・ロックに最適な革新的なサウンドを持っており、現代においてもこれぞロックというスタンダードなサウンドとなっている。
このパープル・プレキシファーは、“太く、ドライブ感満点”のプレキシ・サウンドを実によく再現している。まずは動画冒頭の、ストラトでのサウンドをチェックして欲しい。非常に太い音質でありながら、ストラトらしさや低音の巻き弦の質感を損なわず、さらにピックアップの切り替え(リア→フロント)でも、それぞれの旨味をはっきりと表現できている。これだけで、ストラト弾きは“買い”ではないだろうか?
さらにパープル・プレキシファーの特徴は、これだけシンプルな作りでありながら“様々なプレキシ”の音をきっちり再現できる点である。実はプレキシというのは当時のマーシャルの様々なモデルの総称であり、それぞれのサウンドは結構異なる。比較的ロー・ゲインでミドルに寄ったものもあれば、ゲインが高く派手なハイが出るものもある。本機は、それらをきっちり再現できるのだ。動画の3分10秒〜の音と、5分17秒〜の音を比べてみて欲しい。クラプトンのブルースブレイカー・コンボと、EVHの改造マーシャルくらい違うはずだ。ポイントは、筐体横にあるミッドレンジ・トリム。この手のコントロールは“おまけ”として捉えられがちだが、本機の場合はキモと言ってもいい。詳しい音作りは動画で確認してもらうとして、ぜひ積極的にコントロールしてみて欲しい部分だ。
加えて、シングルのみならずハムとの相性も抜群、ピッキングや手元のボリュームに対する追従性が非常に良くペダルをオフにせずクリーン〜クランチまでコントロールできる、そしてワン・コントロールならではの、この大きさ、ローノイズ、電池駆動OK、手が届きやすい価格……なんだか褒めてばかりだが、このペダルのポイントを挙げていくとこうなってしまう。プレキシの音が欲しい人にはもちろん、純粋に良いディストーションが欲しい人にもお勧めしたいペダルだ。
リットーミュージック刊『ギター・マガジン2016年10月号』の連載「The Deep and Dope」では、アメリカン・ルーツ・ミュージックの生き字引とも言えるDr.Kこと徳武弘文氏を試奏者に迎え、本稿とは違った角度でワン・コントロールのサウンド、魅力をインプレッションしています。誌面でもフィーチャーしているPurple Plexifierを徳武氏は「どんな音作りをしても、軸がしっかりしている」と評価。他5モデルの試奏インプレッションに加え、ブランド/機材解説など読み応え十分。ぜひこちらもチェックしてみてください。
価格:¥18,500 (税別)
井戸沼尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジン・チャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。