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- 2024/11/16
モニターヘッドホン
今回のイヤホン☆王子の耳ログ!は、前回のSONY MDR-CD900ST特集に引き続きモニターヘッドホン(リファレンス・ヘッドホン)にスポットを当てて、3万円以下で買える機種をイヤホン☆王子ことたっくんが厳選してご紹介! 仕事で使う方も、普段使いの方も、試しに聴き比べてみるのも楽しいですよ!
今回の耳ログは3万円以内で買えるモニターヘッドホン7機種聴き比べをご紹介します! モニターヘッドホンと言えば、前回ご紹介したSONY MDR-CD900STがスタンダードと言えますが、ここ数年で多くのモニターヘッドホンが登場しています。そこで今回は、人気のあるモニターヘッドホンを中心に聴き比べを行ないました。今回ご紹介する機種は下記の通りです。
■Roland RH-300 ¥14,580-
■SONY MDR-CD900ST ¥14,850-
■SHURE SRH840 ¥17,580-
■audio-technica ATH-M50x ¥18,770-
■beyerdynamic DT250/80 ¥19,271-
■YAMAHA HPH-MT220 ¥22,450-
■JVC HA-MX100-Z ¥24,800-
この7つのヘッドホンを高音、中音、低音、細やかさ、迫力、音場、遮音性、装着感で評価してみました。
それではさっそく聴いてみましょう!
RH-300は、最新の電子楽器/デジタル機器に最適化された密閉タイプの高音質モニターヘッドホン。ネオジウム・マグネットを採用した新開発の45mmドライバーを搭載し、豊かなダイナミック・レンジを確保しています。また、アルミハウジングを採用し、高い剛性と軽量化を実現。
各帯域のバランスが良くまとまっているヘッドホンです。CD900STと比較される方も多いかと思いますが、一番の違いは音圧の強さです。RH-300のほうが若干音圧が強い印象ですね。また、CD900STと比較するとわずかに音が柔らかいです。万能で欠点はありませんが、汎用的と言う言葉が良く当てはまる良いヘッドホンだと思います。前述の通り打ち込み系の音との相性も良好です。経年でパッドが硬化しやすい傾向があるようです。
1989年に登場して以降、日本でスタンダードとなったモニターヘッドホン。必要最低限のパーツのみを使用することで、ケーブルを含まずに本体重量を200gと軽量に仕上げています。40mmのドライバーにはCCAW(銅クラッドアルミ線)を採用。これはアルミのワイヤーの表面に銅をコーティングした線材で、銅だけの線材よりも50%以上軽量化することができます。また、CCAWをボイスコイルに用いドライバーの可動部を軽量化することで、ドライバーのレスポンスを向上させ、より正確な音源再生を可能にしています。
やはりこのヘッドホンの一番の特徴には音の分離、聴き分けのしやすさが挙げられます。輪郭のしっかりとした音で、全域に渡り音が近くで鳴る印象ですね。中高域は抜群に良いですが、低域が他の帯域と比べると少し聴き分けしにくい様に感じます。ボーカルのチェックには最適なヘッドホンです。
SHUREから2009年に登場したヘッドホン「SRH840」は、同社のエンジニアとプロミュージシャンが共同開発したというプロフェッショナル・モニターヘッドホン。40mmのダイナミックドライバーを搭載する密閉型モデルです。ケーブルは長さ3mの片出し式カールコードで、着脱にも対応しています。
全域のバランスは良くまとまっていますし、音の粒立ちが良く、聴き分けしやすい音です。強いて言えばヌケは良いが少し控えめで、もう少し伸びて欲しいと思う高域。側圧はほどほどにありますが、かなり緩めの装着感で、顔を動かすとヘッドホンが高確率で前後にずれてしまいます。スライダーを伸ばせば伸ばすほど、その傾向は顕著に……。反面、メガネをかけながらでも違和感なく装着できるのは好印象。他のヘッドホンに比べ、リスニングでの使用を意識されたヘッドホンで、若干の残響感というか余韻を感じる様な音でした。モニタリングにもリスニングにも使いたいという要望を叶えてくれるヘッドホンですね。
大口径の強磁力φ45mmCCAWボイスコイルドライバーを採用し、情報量豊かで高解像度な音源再生を可能にしているATH-
かなりクッキリ、ハッキリとした音で、MDR-CD900STよりも出音はタイト。全域に渡り音圧が強く出てくるサウンドで、特に低域はかなりの量が出てきます。量は多めですが、芯のあるサウンドで、ベース、ドラム系の音のチェックには相性が良いと思います。MDR-CD900STと比較すると音場は広いですが、抜群に広いという訳ではありません。立体的な音の鳴り方で定位がつかみやすい印象ですね。パッドも柔らかく装着感は良い方ですが、側圧が強めなので長時間の使用だと耳の周囲が痛くなりやすいと感じました。
DT250は、高磁束密度型マグネット採用、海外のスタジオで使用される機会の多いヘッドホンです。本体は比較的コンパクトなサイズで、放送局やスタジオ、フィールドでの収録などオールラウンドに対応できます。
バランスの良い音で、最近のヘッドホンの様な音の硬さはあまりない感じで、あっさりとした音かなと思いますが、モニタリングには丁度いい音です。今回紹介するヘッドホンの中で唯一のベロアパッドですが、肌当たりの良さも好印象です。他のヘッドホンと比べ、ボーカルがかなり前に出て聞こえる印象で、高域も青天井で抜けていく様なヌケの良さも印象的です。幅広く万能に使えるヘッドホンですね。
ヘッドホンの中では比較的インピーダンスが高いので、出力の足りない機材で鳴らすと音の印象がかなり変わり、抜けの悪いこじんまりとした音になります。また1曲でも耐え難いほどに側圧がかなり強いので、そこだけが難点でした。
HPH-MT220は独自にチューニングされた45mmのダイナミックドライバーにCCAWボイスコイルを採用。伝導性に優れる銅をアルミニウム線にコーティングした軽量なボイスコイル設計により、再生周波数15Hz〜28kHzというワイドレンジでフラットな音源再生を実現しています。また、このヘッドホンの最大の特徴は、他機種にない快適な装着感です。長時間の試聴にも耐えうるイヤーパッド・カバーにはプロテインスキンと低反発クッションを採用し、他機種と比較しても圧倒的に優れた快適な装着感が魅力です。
MDR-CD900STと比較すると、柔らかめの輪郭でより自然な音の印象。低域はしっかりと鳴っていますが、強調されているわけではなくナチュラルです。音場が広めで立体的な音の鳴り方で、打ち込み系の音楽との相性が良く、モニター用としてもリスニング用としても使用できるヘッドホンです。長時間の使用が多い方におすすめしたいヘッドホンですね。
JVCとビクタースタジオの共同開発により、2011年1月に発表されたスタジオモニターヘッドホン「HA-MX10-B」。開発力や独自技術を背景に、スタジオ・エンジニアが一切の妥協なくサウンドチューニングを行ない、これまでにない原音再生能力と高耐入力・高耐久性・高メンテナンス性で、多くの音楽制作現場や音楽ファンに支持されてきました。その「HA-MX10-B」を更に進化させ、ハイレゾ対応となって誕生したのが「HA-MX100-Z」です。
分解能がかなり高く、特にボーカルのリアリティは目を見張るものがあります。ボーカルの距離が近めで、聴き分けしやすい音ですが、全体的に若干音が柔らかく、特に低域のアタックが少し丸い音の印象なのが気になるところ。パッドの硬さは装着してみるとさほど気にはならない印象でした。本体が少し重めなので、長時間使用すると頭頂部が痛くなる感じでした。
ということで、モニターヘッドホン7機種を一気に聴き比べましたが、いかがだったでしょうか? 今回の評価はあくまでも私、たっくんの印象ですので、興味のある方は是非ご自身の耳で確認してみてください! どのヘッドホンも人気のある機種なので、モニター用、普段使い用を含め、自分の使うシチュエーションを考慮して好みのヘッドホンを選んでみてください。価格も比較的手が届きやすい3万円以下なので、違ったモニターヘッドホンを試してみたい方にもオススメですよ!
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岡田卓也(おかだ・たくや)
イヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」CS推進部課長。帰省時にイヤホンが断線し、たまたま購入したSHURE E2cでイヤホンにハマる。これまでに試聴したイヤホン・ヘッドホンの数は数千機種に及ぶ。日本人で初めて(おそらく)beats本社やUltimateEarsのラボ見学をしたことが自慢。