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- 2024/11/16
F-Bass / BN5-BC
少数精鋭のスタッフが良質の材を使用し、完全なハンドメイドで製作するカナダのハイエンド・ベース・メーカー、F-Bass。60〜70年代のビンテージ・サウンドを基調とし、それを多弦ベース(ここがポイント)で上質な音色を奏でるためのさまざまなアレンジに早い時期から取り組んできたメーカーのひとつであり、今回紹介するF-Bassの代表的な機種BN5はその回答とも言えるモデルでしょう。
スケールは34.5インチという絶妙な長さに設定されていて、34インチからの持ち替えでも気が付かないほどに微妙な差でありながら、35~36インチなどのスーパー・ロング・スケールのようにタイトでしっかりとした低音弦の『鳴り』を狙ったものです。ネック・グリップは低音弦側と高音弦側で厚みの異なる非対称グリップとなっていて、4弦からの持ち換えでも違和感が少なく、フィンガリングや押弦もスムーズになっています。
ボディはスワンプ・アッシュ、ネックは3ピースのメイプルと、マテリアルのセレクトは比較的オーソドックスですが、全体に軽量で、バランスが良いという印象です。やはり材のセレクトと加工、組み込み技術に大きなアドバンテージがあるのでしょう。因みにネックには音色が濁るという理由でグラファイト補強が入っていませんが、グラファイトを入れなくても十分な強度が得られるとの自信の表れでもあるかと思います。
BN5のデザインはモダンでポップな印象がありますが、実用面でも充分で、立って弾いた時でもネック落ちせず、カッタウェイの処理が絶妙でハイ・ポジションでもストレスがありません。F-Bassの代名詞とも言える杢目の陰影を活かしたフィニッシュは、存在感が抜群でステージ映えしますね。一見オイル・フィニッシュに見えますが、艶のあるクリアで仕上げられており、触った時の感触も良く高級感があります。
ピックアップはハムキャンセル機能付きのオリジナルのシングルコイルで、プリアンプのサーキットもオリジナル。アクティブEQの効果はナチュラルで、環境の変化などによる微妙な補正用途はもちろん、積極的な音作りにも使い勝手が良さそうです。パッシブ・トーンを備えているので、いわゆるパッシブのJBのようにフロント、リアのバランスを変えつつハイをカットするなど、往年のロックやレゲエに合いそうな音色作りも可能です。
試奏してみての印象ですが、高域から低域までバランスが良く、ストレートかつ素直でクリアな音色という印象でした。34.5インチ・スケールの効果も高いのか各弦の音色がかけ離れることもなく、弦を跨いだフレーズでもスムーズに音色が繋がってくれます。ルックスがモダンでイケイケなので音色も派手なのではないかと思われがちですが、普遍的に「良いベース」の音色が出せるという印象です。もちろんEQで派手な音色を作ることもできますが、素性を活かしたシンプルでストレートな音作りをすると良さそうです。指弾き、ピック弾き、スラップ、どの奏法でも破綻することなく音色がまとまってくれるので、特定のジャンルに限らずオールマイティに使える実践的な楽器として活用できるでしょう。
価格:オープン