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  • Dr.Dの機材ラビリンス 第30回

ギター・スタンド〜柱梁のテクニシャン

ギター・スタンド

今回の機材ラビリンスのテーマはギター&ベースを支えてくれる必須のパーツ「ギター・スタンド」である。標準的な立て掛けタイプ、吊り下げタイプ、両者が組み合わさったタイプ、コンパクト・タイプ、複数ラック・タイプ、ネックホルダー・タイプ……さまざまなスタイルのギター・スタンドを徹底的に吟味してみた。用途に合うスタンドを探す良きガイドとしてほしい。

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プロローグ

 ギターという楽器は、実に“座り”の悪い楽器だ。

 置いておけない。良いコンディションを保ったまま保存することも難しい。人が持って弾く時にはあれほど美しい姿態を見せつけるというのに、それだけになると何と無様なことか。そのくせ、レス・ポールをたった2時間のスタジオで抱え続けるのも、意外としんどいときている。

 何故こんなにも自立しない形なのか。何故ネックへの負担をカバーしきれないほど重いのか。──誰もが、ギターを置きたくて仕方がないというのに。練習の合間にタバコを一服する間にも、アンプに立て掛けたギターに猫が盛大にタックルをかますかもしれない。電話にあわてて出ようとして、Tシャツの袖で余った弦の“髭”を引っ掛けてしまうかもしれない。そして、その2秒後に待っている光景は……考えたくもない。恐ろし過ぎる。

 今でこそ、ギター・スタンドというツールは種類も機能も充実し、ギター自体の保全に関して一般ユーザーの知識や関心がかつてないほどに高まっていると言えなくもない状況であるが、その昔、ほんの半世紀前には、大抵のユーザーはギターを直に床に転がしておくか、椅子などに立て掛けておく以外は、演奏するたびに几帳面にハード・ケースから出し入れを繰り返すのが普通だったのだ。そう考えると、簡易とはいえ初心者セットにもスタンドが付属する現代は、ギターに優しい時代と言える。

 そう、楽器に対する「優しさ」こそが、スタンドという機材を発達させた原動力なのだ。ギターに限らず、材と塗装のコンディションが弦楽器のサウンドや演奏性を大きく変化させることは誰もが知っている。そのハンディを乗り越えるために、ギターそのものの耐久性を向上させたり形状を変えたりするのではなく、サポート器具をハイテク化してそれに対応したところに、なんとも不思議な因果を感じずにはいられない。

 誕生以来、異常なほどの原理信仰を貫いて進化から取り残されたアナクロな楽器であるギターが、本来批判を浴びるべき内向きのリスペクトの中から、新しく生まれた新世代のギターを含めた全てに「優しさ」を分け与える機材を発展させたのだ。スタンドの発達は、優れたギターを人々に預けることに対する不安から、多少なりともルシアーの心を解放したに違いない。そして、それがさらに未来のギターの質を向上させることに繋がっていく。この歪(いびつ)ながら美しいカルマの連鎖こそ、今日までギターという楽器が止まらず歩み続けられたことを示す、歴史に隠されたひとつの真実であることは、もはや疑う余地はない。

 今、我々の目の前には、ギターを「優しさ」で受け止めてくれる素晴らしいスタンドたちがある。迷うことはない。暗く狭いケースの中からギターを取り出し、その安全な御柱に全てを預けてやって欲しい。光と空気を浴び、材が息を吹き返すのが伝わってくるはずだ。

 その誇らしき神采を見よ。まるで、ギターが微笑んでいるように見えないか?

商品の選定・紹介にあたって

 今回は、自分の大切な愛器を預ける『ギター・スタンド』を特集する。スタンドはギタリストにとっての必須アイテムである。良いスタンドを選ぶことは、ギターのネックへの負担を減らし、転倒や落下といった致命的な事故を防止することにも直結している。
 今回もリストの選別はデジマートの在庫に準拠している。通常の床に立てるスタンドだけでなく、ハンガー・タイプのものも含め、なるべく用途やスタイルの違いが出るようにラインナップとした。あえて、ギターを買った時のおまけで付いてくるような安価なものは避け、ワン・ランク上のギター・スタンドを選びたい時に目安となる定番のモノの中から、中級クラス以上のクオリティや特性を持った製品に注目してみた。
 ひとつ注意点として、公式にラッカー塗装対応をうたった製品があっても、真に受けない方が良いということを憶えておいて欲しい。基本的に、どんなスタンドでもラッカー塗装のギターに対してはやはりKIKUTANIが提供するBD-S/BD-Lや、KC(KYORITSU)のGS103BSLARIAのAGB-S/AGB-Hといったヨークやネック・ハンガーを被う専用のスタンド・ブラが別途必要不可欠であることを胆に命じておこう。特にニトロセルロースは塗装の状態によって必要な対策が細かく変わるし、ハンガーの形状によってはそういったカバーが使えないタイプもあり、悩みは尽きない。軍手を被せただけでもOKなパターンもあれば、クロスと同じセーム皮で保護した方が良い場合もある。そればかりは当人のギターのコンディション次第なので、よくよく吟味して塗装にダメージを与えない独自のパターンを編み出していく他はない。
 だが、それでも、ラッカーだからと言ってソファに直置きするよりは、スタンドを使った方が遥かに安全なことだけは保証する。最前線のプレイヤーだけでなく、上級者から初心者まで、ギターに携わる者ならば必ず一度は手にする最重要アクセサリー、ギター・スタンド。その価値について今一度考えるきっかけにしていただければ幸いである。

ギター・スタンド:吊りもたれタイプ(ネックホルダー/標準タイプ)

GS415B 写真:chuya-online.com FUKUOKA

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01 HERCULES [GS415B/GS414B/GS455B]

 独自の規格と機能的なアイディアにより、コンシューマー層を中心に爆発的に浸透したスタンド専門ブランドHERCULES STANDS。近年では、プロ・ミュージシャンのみならずエンジニアやローディーの御用達となり、ステージやレコーディング現場で頻繁に見かけるようになった。HERCULES(ハーキュレス)は、「ヘラクレス」とも読める通り、そのタフな仕様はどれもが大切な楽器を預けるのに十分な安全性と耐久性能を完備していると言って良い。

 GS415B、GS414B、GS455Bは、ギター・スタンドとしては現在最もポピュラーな「吊りもたれ」方式によるシングル・タイプ。「吊りもたれ」は角度を付けた上部のハンガーにネックの“エラ”を引っ掛け、クッション材で保護した三脚のうちの2本の脚でギターのボディ底部を補助的に支える、“半掛け半置き”とも言える簡易的な機構ながら、さすがは人気のHERCULES、そのシンプルな構造の中にワン・タッチの手軽さと、明らかに他とは違う高級感を同居させているのが素晴らしい。まず、フレームの太さだけとっても、当然のように束で売られているスタンドとはその強度が明らかに違うのがわかる。自重もこのシングル・スタイルのもので2kg前後はあり、がっしりとしていて非常に低重心な印象だ。三脚にはサブ・フレームがあり、脚が自重でたわんだりねじれたりすることもなく、ギターを乗せるだけにしてはやや大げさとも言える強度に仕上がっている。背軸とギター下部を支える三脚の仰角バランスが特に秀逸で、上部のハンガー・セクションをどこまで上に伸ばしても、ギターを掛ければ全体の重心が三脚の真ん中に寄るのがわかる。一旦ギターを載せてしまえば、どちらから力が加わっても地面に根を張ったように吸い付き、直接脚を払ったりしない限り倒れる気配は微塵もない。

 上部のハンガー部にはHERCULESの象徴とも言える「AGS(Auto Grip System)」が採用され、ギターを掛けると先端のアーム部分が下降し、落下防止用の爪がネックを自動的に掴んで保持してくれる。GS414やGS415(GS415Bと414Bの違いは、ハンガー部分の首が折り畳めるかどうかだけ)に付いている標準のものは爪が下向きから水平になるタイプなので、ギターを掛ける時、また、外す時に邪魔にならないのも地味に嬉しい。HERCULESの「吊りもたれ」式をうまく使いこなすコツは、ハンガー部分よりも、むしろ下部の三脚に付けられた下支え用のグリップ力のある特殊クッション──「SFF(Specially Formulated Foam Rubber)」をうまく活用することにある。上部のハンガー部分は、ネック自体にくびれの少ないテレキャスや一部のバナナ・ヘッド、コンコルド・ヘッドも基本問題なく保持できるが、ボディ形状が多様なエレキ・ギターの場合は、必ず三脚のSFF部分に置く安定した左右の2点を確保することが重要になる。エクスプローラーやケリーもSFFの幅を目一杯使いながら、ハンガーの高さを細かく調節していけば必ずしっかり固定できるポジションが見つかる。ただ、その場合、少しギターが斜めを向くことになるが、AGSの爪のおかげで落下の危険はないので安心して使用して欲しい。

 あと、ラッカー塗装への対応だが、ウェブサイトにも記載があるとおり対応していない。ラッカー塗装の楽器に使用する場合は個人の責任となるが、HERCULESのハンガーや三脚には市販のスタンド・ブラジャーは形状的にマッチしない場合が多く、個人的には、早めにセーム皮のクロスなどを切って、接触部を全て被ってしまうことをお勧めする。
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GS412B 写真:イシバシ楽器 デジマート店 WEBSHOP

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02 HERCULES [GS412B]

こちらは「吊りもたれ」タイプの中では少し特殊な形状を持つフリー・スタイル仕様。ギターのボディ部分を背軸から直角に伸びたバック・レストで支えるので、ボディの形状や厚みを気にすることなくギターを立て掛けておくことができる。特に、Vシェイプに代表される様な変形ギター、ボディ・エンドが左右対称でないジャズ・ベースなどでは、三脚で下部を支えるものより遥かに使いやすい。DEANのRazorback等、ボディが大きくて通常のスタンドでは全く置くことができないものも自立させられるのは、この機種ならではのメリットと言える。

 このようなバック・レストを持つタイプの製品は他のメーカーからいくつも種類が出されているが、やはりHERCULESのものは抜群に安定性が良い。上部のハンガー部にはAGSが装備されているので、万が一バック・レストが外れる様な衝撃がかかっても、しっかりとネックはホールドされたままで、左右に傾いた重量バランスの中でも横倒れするようなことは全くないので安心だ。バック・レストのヘッド部分にはGS415等の脚部クッション材であるSFFと同じ材質のものが使われておりグリップ性能は上々だが、それでもボディ部分を一カ所で支えているため、バランスは3点保持のタイプよりも崩れやすいことは憶えておく方が良い。塗装に配慮してそのヘッド部分にクロスを置いたりすればSFFのグリップ力は効力を発揮しないため、さらにバランスは失われやすくなる。ラッカー塗装のギターを置く際には、スタンドでの固定力を取るか塗装を守るか……悩ましい限りである。いっそ、ストラトのようにスプリング・キャビティがあるものは、キャビティ蓋にレストのヘッド部があたるように調節すると良いだろう。これも蓋の強度次第ではあるが、このスタンドに合わせるために、キャビティの蓋をより頑丈なものにチェンジするのもアリだ。

 HERCULESならではの最大1075mmにも達する背軸の高さからしても、このGS412Bでしか立てられないギターやベースは実際にいくつも存在する。ギター側も含め、より快適に使用するために、個々の竿の特性に応じたカスタマイズに手間ひまを惜しむべきでないことだけは言っておこう。ちなみに、HERCULESにはこの構造を背中合わせにした2本がけ(デュオ・タイプ)のGS422B、3本がけ(トライ・タイプ)のGS432B、さらには2段構造になった最大6本をツリー状にディスプレイできるGS526Bがある。ギターが全てのホルダーに収納された状態でないと最大の安定性を得られないという即席要素の強い製品であるため、それらに高級なギターをいくつも立て掛けるような使い方はお勧めしないが、横に幅をとるGS523BやGS525Bタイプが置けない場所でより多くのギターを持ち替えたい場合には重宝する。
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GS-1000 Pro

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03 Ultimate [GS-1000/GS-1000 Pro/GS-100]

 大口径のスピーカーや照明など、重量物を支える業務用スタンドとして長い実績のある米国Ultimate社だが、ここしばらくは楽器用……特にキーボードやギターの定番スタンド・メーカーとしてもそのブランド名がすっかり浸透してきている。「吊りもたれ」式ではHERCULESと人気を二分するだけあり、Ultimate GSシリーズの使い勝手は実際に手にするとさすがの隙のなさを実感できる。背軸はそれほど後傾しておらず、実際にギターを立て掛けると前方に重量が載る設計だが、バランスは悪くなく、前方に伸びた2本の脚に適度に重さが分散されているのがわかる。フレームは太めで、ジョイント部に用いられている強化樹脂には厚みがあり、いかにも業務用っぽい。三脚の付け根部分が潰された形のパイプ・エンドになっているのに対して、ギターのボディ・エンドからかかる力がその潰された方向に垂直にかからないところは少し気になるが、継手は二重構造になっていて、斜めからの力に対してクッション製を発揮しているところなどは強度をよく計算されていると言って良いだろう。ゴム脚もただの丸ゴムではなく、細かく溝が入っていて、フローリングの床をよく掴む。トータル的に実に精悍かつスタイリッシュなシルエットを持つスタンドに仕上がっている。

 Ultimateのギター・スタンドの特徴として、1台で実に多くの機種に対応することが上げられる。その万能性を支える最大のメカニズムは、深く切れ込んだV字構造を持つこのハンガー部にある。間口が広いので7弦ギターやセミアコも楽々入り、ネックのエラが左右対称でないものもV字の奥目にセットすれば自然と凭角が深くなってグリップ側で固定される構造になっている。空間があることで“ヘッド抜け”を心配する人いるかと思うが、ボディ・エンドがしっかりと二本の前足に載っていれば振動で横を向くこともなく、非常に安定している。また、ボリュートのあるギターも、スタンドの高さを短く調節してボリュート部そのもので下から固定するように支えることもできる。このV字ハンガーがあることで、ほぼヘッド形状を気にすることなく運用できるのは思いの他ストレスがなく、どんなギターを置くかわからないスタジオやライブ・ハウス用にとりあえず置いておいて損のない切り札的1台となるはずだ。GS-1000、GS-1000 Pro、GS-100の違いはこのハンガー部分の違いのみで、GS-1000はスタンダードな自動開閉ゲート(爪)のあるタイプ、GS-100はゲートのないタイプで手軽に掛け戻しがしたい人向け(ゴムの手がけストッパーは付属する)。GS-1000 ProはV字の途中が大きくくぼんでいて、ヘッドが左右対称なレス・ポール・タイプやアコギをより安全に固定できる反面、V字構造が全て均一に使えるわけではないので、くぼみの幅に収まりにくい細いヘッドのギターなどではやや使いにくい場合があることを憶えておこう。

 また、このシリーズは収納時にかなりコンパクトに畳むことができ、それほど目立った突起がなくメッセンジャー・バッグなどにすっぽり入れられる点も優れている。本来開脚時に脚をロックする安全装置である「レッグ・ロック機構」も、持ち歩いている時には脚がばらけたりしないようにできるという利便性に驚かされた。ひとつ注意点として、本国の紹介記事等を見るとラッカー対応のようにうたっているものもあるが、やはり長時間ラッカー塗装のギターを掛けたままにしておくのはお勧めしない。脚の目の細かいウレタン部分はまだしも、ハンガー部分はラバーなので1時間以上掛ける時はきちんとクロス等を敷くようにしよう。いずれにせよ、スタンドのアップ・グレード時に、まず最初に検討すべき平均点の高い製品であることは間違いなさそうだ。
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Hanging Guitar Stand

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04 Fender [Hanging Guitar Stand]

 ギター・メーカーの老舗Fenderも昔から様々なタイプのスタンドを出しているが、このHanging Guitar Standは、木材でできた大柄な組枠を持つ高級感のある据え置き型スタンドとして需要が増しつつある逸品だ。背軸のフレームはぬくもりのある色合いのビーチウッド(橅)で成形されていて、エンプティー状態ではやや反った角度で接地されており、前方に負荷がかかると自然に材のしなりでほぼ垂直に固定されるバンパー構造を持つ。そのため、ヨークにギターを掛けると、楽器はほとんどネックのみで自重をささえることになり、保存方法としてネックのコンディションを最も良好に保ちやすいとされる「ハング(吊り)」に極めて近い状態を安全に作り出すことができるのである。

 一応、フレームの真ん中にギターの背もたれが付いているが、それはあくまで補助的なもので、ボディに厚みのあるアコギなどを掛けた場合に背面の材に触れないようにするするためのキズ防止クッションの役目だと思って間違いない。ソリッド構造のギターを掛けた場合にはほぼ理想的なハンギング・ポジションを、壁に穴を開けることなく任意の空間に設置できるのはかなり嬉しい仕様だ。ヨークはUマウントの回転式で、左右非対称なネックでも自然にアームに段差ができてネックをはさみこむ構造になっているので、よほどイレギュラーなもの以外は問題なく固定できる。ただし、アームの横幅は思いのほか狭めで、7弦ギターだと取り出しに苦労するほどだ。多弦ベースなどは実際に吊れるかどうかを店で確かめる必要はありそうだ。また、最近スタンド・メーカー間で標準化しつつあるゲート機構も備わっていないため、より高い安全性を求めるユーザーには不向きかもしれない。だが、居間でディスプレイされたギターをいつでも気軽にひょいと手に取って使いたいプレイヤーにはそこまでの厳重さは必要ないと感じるかもしれないので、その点においては一長一短といったところだ。

 重量もそれなりにあって移動に向かないことも含め、スペース的にも固定家具の一部として認識するのが正しい。ギターが直接触れる部分にはニトロセルロース・ラッカー塗装対策のセーフ・パッドが使われているが、これもやはり過信は禁物だ。高温多湿の場所で何日も掛けっぱなしにすることだけは避けたいところだ。それでも、部屋の内装にとけこむハイセンスな容姿と、シングルという手軽さ(同じ構造を90度の角度で繋げたダブル・タイプもある)、そして自立式でありながらほぼ完璧なハング性能を持つこのスタンドを、自分の最もくつろげる空間に置く贅沢を、一度ぜひ味わって欲しいものだ。
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ギター・スタンド:標準タイプ

839

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05 Tama [839]

 国内屈指のドラム・ブランドとして知られるTamaがプロデュースするギター・スタンド、839。20世紀の頃からプロ仕様の高級スタンドとして重宝され、2005年以降に大陸の工場で生産されるようになってから(初期の国産モノは、トップのロゴが現行の「TAMA」のみではなく「TAMA AICHI JAPAN」となっている)も、その品質は全く変わらない。まず、その重量。現在の標準的ギター・スタンドが2kg前後以下であるのに対し、このスタンドは単体でその倍の重さがある。見ての通り、パイプを構成する厚みそのものがまず違う。稼働部すらほとんどのパーツが金属のダイキャスト製で、光沢のあるメタル・パーツ同士で組み上げられた堅牢さは、見た目からしても、たかだか5kg前後のギター類を立て掛けるには大げさ過ぎるスペックと言えるだろう。三脚もマイク・スタンド等と全く同じ構造で、重心が低く、上部に横から力が加わっても微動だにしない。

 また、ドラム・メーカーだから自然にそうなってしまったのかはわからないが、高さ調節部に旧式のT型ナットが採用されているのが逆に新鮮だ。今のものはワン・タッチ機構の製品が主流で、羽ネジを回して止めるドラム・フレームの様なスタイルのものはあまり見かけない。しかし、これが意外と手間でなく、むしろ硬く自分の手で締めることで、メカ構造任せの何とも言えない不安感を払拭できるメリットは、ことのほか大きいと感じた。強度以外の特徴として、この839スタンドは、ギターの底部を支える下部のU字ヨークの高さを任意に調節できる点があげられる。しかも、ヨークの回転角度は360度自由に設定できる上、横のラウンド・スクリューにより硬く固定することもできるので、思った以上にスタンドの適用範囲を広げられることがわかった。一例として、こういったクラシック・スタイルではまず立てることのできないランディVなど、左右のボディ・エンドの高低差も重量配分も違う個体に対して、ヨークを高く、さらに縦に90度近くの角度で設定することで、まるでギタリストが膝の間にVの股を入れる感覚でガッチリと固定することができたのは収穫だった。

 そして、もうひとつ──これは長く使う上で地味に重要なことなのだが、このスタンドは、メイン・フレーム以外のワッシャーやネジなどのパーツを、セクションごとに追加注文することが可能なことを知っておくべきだ。経年によるゴム部分の劣化や、稼働部のブッシュの摩耗など、愛着のあるこの頑丈なスタンドを長く使うユーザーのために、メーカーはしっかりとサポート体制を整えている。現代の他メーカーのように、一カ所が壊れたら廃棄処分にするような代物とは作りが根本的に異なっているのだ。ギター・スタンドは決して使い捨てのものばかりではない。この839のように、消耗品の手入れを繰り返せば何十年だって使えるものもあるのだ。そういう視点から見ても、最初は高価でも、このスタンドには“一生モノ”として傍らに置く価値が十分にある製品だと言って良いだろう。
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GS405B 写真:イシバシ楽器 デジマート店 WEBSHOP

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06 HARCULES [GS405B]

 ホーネット・カラーが目を惹く、HARCULES製のクラシック・スタンド。後方固定で、前足の2本は横から回り込むように回転して広げる独特の構造の三脚だが、脚は3本ともスクエア・フレームを採用していて、上からの重量に対する強度は申し分なさそうだ。この製品も背軸が非常に計算された仰角を持っていて、ボディの重さやネックの長さに関係なく、ほぼ真ん中に重心が降りるようになっているこの感触は、さすがHARCULESクオリティと言ったところか。背軸や下部ヨークの高さが変えられなくとも、常に変わらない安定感が得られるのは安モノのスタンドでは決して有り得ないバランス性能だろう。

 このスタンドを使う最大の利点は、背軸全体が後方に向かって傾(かし)ぐダンパー構造を採用していることで、楽器を立て掛けた時の衝撃を吸収する機構を備えている点だ。ギターにダメージを与えるほど激しく置くプレイヤーもそういないと思われがちだが、暗いステージ上での持ち替え時や、汗で手が滑る時にスタンド上でネックが受ける衝撃は馬鹿にはできない。一度や二度の置きミスならまだしも、それが繰り返されれば、ナットのズレやペグの緩みはおろか、最悪指板の接着が浮いてきたりもする。そういう意味でも、このショック・アブソーバーによる「Shock Safe」機能は、ギターの構造や弱点を熟知する玄人ユーザーになればなるほど、その重要性が理解できるはずだ。実際、演奏者よりも、むしろ、より高い安全性を求めるリペアマンやギター・テクニシャンなど、他人のギターを多く扱う業者による利用が多いスタンドでもある。

 下部ヨークの先端にカエシが付いていることや、落下防止のD字ハンガーも含め、シンプルながら高度な安全性を兼ね備えた逸品として、今後も評価が上がりそうな製品だ。また、ヨークの幅がそこまで広くないことで、ボディの小さなミニ・ギターやヘッドレス・ギター(Steinbergerでは、XT-25など一部のギターやベースはうまく立つものもあるが、ボディの形状によって立たないものもあるので注意が必要)を置きたい場合にも重宝する。1台持っていて損はしないギター・スタンドだ。
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GS7465

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07 ON STAGE STANDS [GS7465]

 米国The MUSIC PEOPLE! 社において、イクイップメント関連のアクセサリーやグッズを多数扱うブランドON STAGE。中でもスタンド関連の商品は豊富で、ギターをはじめ、あらゆる楽器用のモデルで独自のアイディアを生かした特許を取得するちょっと“気の利いた”メーカーとしても知られる。GS7465はメーカーのアイデンティティがうまく生かされた製品のひとつで、Aフレーム型(折りたたみを前提とした、両脚を左右に開くことで自立する構造の2軸レイアウトの製品。通常はコンパクト・タイプに多く見られる)スタンド特有の4点バランスに、ベースも置ける上部ヨークを組み込んだハイブリッド構造が売り。1辺が1インチに達する耐久性の高いスクエア・フレームを縦軸に備え、さらに足先が前後に伸びているため三脚のものよりも横押しにも強く、安定感は抜群。それらを含めた脚部全体が厚みのあるスチールで組まれているため総重量は2kgに達しており、軽量さが売りの一般のAフレーム・スタンドとは一線を画す驚くべき重心の低さも同時に達成している。

 この製品の素晴らしいのは、その安定したフレーム設計に、さらに自在に伸ばせる上部ヨークのネック保持力をブレンドした点で、これにより、クラシック・タイプと同等な収容力を持つに至っている点だ。否、むしろ足下のバランスが優れているGS7465こそ、クラシック・タイプのスタンドの正しい進化形と言えるかもしれない。ギターの下部を支えるベンチ・フレームは2段階の深度を持つ構造で、アコギ、エレキどちらでも無理なく対応できる。上部ヨークには同ブランドの名物シリーズの名前にもなっている「Flip-It」構造(D型フレームの長辺側はバネ構造のように根元からぐにゃりと曲がって、ネックを中に入れる隙間を作ることができる機構)のホルダーを装備しており、どんな形状のネックでも、入れやすく、外れにくい。また、背中が丸いエレアコやマンドリンなどを置いた時に、背中が当たる部分にヨークと同じベッチンのラバーが最初から貼ってあるのも地味に有り難い。ギター下部が左右対称でないものが置けないのは残念だが、正しく置けるものであれば三脚タイプのものよりもかなり省スペースかつ安全なディスプレイ・スペースを確保できる。少なくとも「今日市場に出ている最も安全なスタンド」といううたい文句も、それほど大げさには聞こえない。アンプとミキサー台の隙間など、三脚が入らない四角いスペースにギターを置きたいならば、この製品はマストの選択肢のひとつになるに違いない。
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ギター・スタンド:コンパクト・タイプ

PT32

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08 Ibanez [PT32]

 ギター・ブランドのIbanezが提案する、ハイ・コストパフォーマンスなミニ・スタンドPT(Pocket Titan)32。座受け部分の厚みからも推測できるように、ほぼエレキ・ギター/ベース用に特化した製品である。セミアコ・スタイルのものも置けないわけではないが、厚みはともかくボディ幅が広いES335のようなギターには、この製品よりももっと脚の開くタイプを推奨したい。

 PT32の特徴はとにかく小さいのに、しっかりとしたスチールのフレームにより抜群の強度を持っている点だ。450gという重量をこのサイズにして重いと考えるかどうかは別にしても、スタンド本体の重心はきちんと下にかかっていて、Aフレームにありがちなカタカタとした浮き上がる感じは全くしない。脚部分のラバーは柔らかく粘りがあり、ホコリっぽい板面に置いても全く横滑りせず、見事な定位感だ。Aフレームのスタンドにしては珍しくスキー脚ではなく独立した三脚構造になっており、背後への重心のかかりに対して後ろに伸びた脚がダイレクトに裏支えしている感触が常にあり、非常に心強い。実際にギターを置いてみると、こういったフレームにありがちな後傾し過ぎることもなく、ヘッド角のあるSGなどでもスタンドの後ろ足が壁に届くスペース内にネックの占有範囲がほぼ収まるので、誤ってヘッドを壁にぶつけてしまう危険が少なくて良い。また、このサイズのスタンドはベースを置くのに不安が常に付きまとうが、PT32はその中でも数少ない安心してベースを預けることのできるモデルであると言って良い(ボディ下部が水平でないジャズ・ベース等は不向き)。

 ひとつ注意したいのが、ギターのボディを置く前足の高さが、床からそれほど距離がないこと。ボディ・エンド側のストラップ・ピンがロック・ピン・タイプだと、ほぼ確実に床に触れてしまう。シールドのジャック位置があまり後方にあるもの、そして、エレキ・ギターには少ないがピエゾ出力がピンからになっているものも同様だ。これは床にキズが付くことが怖いわけでなく、ネック部を全くホールドしないこの手のタイプのスタンドでは、ボディ・エンドのレストからギターの下部がズレることは、即転倒の危険に繋がるからだ。PT32を使用する際にはそのことにだけは十分な注意が必要となる。だが、それを除けば、ギターのソフト・ケースのポケットにも入るくらいのこの小ささは、スタジオに持っていく手荷物を少しでも削減したいユーザーにとっては代え難い価値を生み出すに違いない。最近では、ライブ用のバック・トラック・コンソールやDL型エフェクト・モジュールのコア・プロセッサーとしてタブレット端末を現場に持ち込むユーザーにも、卓上イーゼルとして重宝されている光景を目にすることがある。まだまだアイディア次第で便利に使えそうなスタンドなので、ギターのハード・ケースの中に1台忍ばせておくと思わぬところで活躍しそうだ。
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17550 写真:chuya-online.com FUKUOKA

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09 K&M [17550]

 創業から半世紀以上を数える、ドイツの老舗スタンド・メーカーK&M。今やどこのスタジオにも置いてある定番のマイク・スタンド21020をラインナップするブランドと言えば、楽器に携わる人間ならば馴染みも深いであろう。彼等が考えるスタンドの理念は、常に普遍的かつ効率的であり続けること。基本的に機能重視であり、信頼性という点において常にリファレンス的立ち位置を崩さないメーカーとしても知られる。

 17550は、折り畳めるコンパクト・ギター・スタンドとして長い実績のある人気機種で、現代のステージ・シーンに適応するために幾度かのマイナー・チェンジを経ながら改良を重ねられてきた。スクエア状のアルミ・フレームの採用や、ジョイント部を強化樹脂製にすることによる軽量化の促進……中でもギターのボディ厚に合わせてサポート・アームのホールド距離を調節するギミックの搭載は、このサイズのスタンドとしては画期的なものとして当時から注目を集めた。さらに、足先、アーム、三脚はそれぞれ全て折り畳める設計で、最もコンパクトな形状では棒状にまとめることができるため、収納スペースに限りのあるユーザーにはその使い勝手に魅力を感じる人も多いことだろう。特に、ボディの軽いフルアコやセミアコ、ホロウ・ボディのエレキ・ギターなどのオーナーに好んで利用されているようだ。

 ただ、マイナー・チェンジによりスタンド自体の高さが抑えられたせいか、ギターを置くと思ったよりも後傾してくるので、使う際には背後に十分なスペースを確保するようにしたい。個人的な感覚では、ロング・スケールのベースでは重心自体も後ろに持っていかれ、バランス自体が不安定になるので、なるべくならギター専用として使用することを薦めたい。とはいえ、トータルのバランスは悪くなく、軽めのギターを練習時などに一時置きするには非常に利便性の高い製品と言える。フル・フレームの製品ながら500gを切る重量はやはり画期的だ。シチュエーションに応じて賢く使い分けていきたい。
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Pro-G

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10 Cooperstand [Pro-G/Pro-Tandem]

 木材のスペシャリストとして、ハワイのウッド・ショップのオーナーやカスタム・ナイフの装飾職人として過ごした半生から、あの9.11を機にミュージシャンへと転身したという異色の経歴を持つダニエル・クーパー氏が立ち上げたプライベート・ブランドCooperstand。自身のツアーで使うアコースティック・ギターのハード・ケース内にあるシェルに収まるサイズのコンパクト・スタンドとして考え出されたその独特のプロダクトは、それまでほとんど重要視されなかった「ギターと共に飾った時のアーティスティックな素養」を持ったアクセサリーとして多くのギタリストから支持を受けただけでなく、2010年のNAMM SHOWでは“Best It Show”の栄誉に輝くという素晴らしい足跡を残している。

 Pro-Gは、上質なアフリカン・サペリ(マホガニーに近い材)の1枚板から削り出した幾何学的な形状のフレームで構成され、スタンドとして広げると直線と曲線を織り交ぜた美しい立位を完成させる。ハの字型の4点脚で、脚のエッジ部分はきちんと開いた時に床面と並行になるなど、丁寧な加工が施されている。しかも、A型スタンドにありがちなトップ・ジョイント部のぜい弱さを補うための補助フレームも装備しており、実用性もおろそかにしていない点に好感が持てる。ギターに直接触れる部分は、置く際に触れてしまいがちなフレームの前方の突端部まで、ラッカー塗装にも優しい不活性シリコン・パッドで被われていて、現場の機材事情を知るミュージシャンの視点がうまく生かされていると言えるだろう。HERCULESのEZ PAC(GS200B)等と同じく畳むと平らになるタイプで、凹凸がほとんどない分ギグバッグのポケットなどにも収納しやすく、さらにこのPro-Gの場合は横幅もコンパクトなので、ステージのセッティングの際には後ろポケットに突っ込んで持ち歩いたりもできる機動力の高さが魅力だ。アコギはもちろん、リゾネーターや、杢目の見えるサンバーストのエレキ・ギターなどにもよく栄える。エレキ・ベースも置くことができるが、やはり背もたれの高さがない分、少しでもボディ・エンドが平行でないものは著しく安定性を欠くので、安易な使用は避けた方が無難だ。

 また、強度面では木製ということもありどうしても鉄製のものと比べるとしなりやすく、特に高温多湿で夏と冬の温度差の激しい日本の様な環境下では杢目割れの可能性もゼロではないので、やはり6kg、7kgといった重いギターやベースを長時間置きっぱなしにすることは考えものだ。その洗練された見た目と同じく、サッと取り出して使い、使い終わったらすぐにしまう……といった颯爽とした使い方が似合うのではないだろうか。持ち替え用として2台のギターを同時置きできるPro-Tandemもあるので、ライブの規模に応じた選択肢があるのも嬉しい。また、ツアーなどでもっとハードな使い方をしたい人向けには、ABS樹脂でできたDuro-ProシリーズやEcco-Gなどもほとんど同サイズ、重さで売られているので、余剰な高級感が必要無ければそちらを検討してみるのも良いだろう。
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ギター・スタンド:複数用ラック・タイプ

GSC

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11 KC(KYORITSU) [GSC]

 昔から複数立てのベーシックとしてある、ハード・ケース型組み立て式スタンド。ツアー・ケースの様な箱モノと一緒の形で組み型を収納して持ち運ぶことができ、現場で中身を立ち上げて固定する。実際にはかさばるので、よほど複数のギターをとっかえひっかえする様なプロのプレイヤーでもない限りほとんど持ち出すことはないだろう。しかし、パイプ・タイプのものよりも省スペースの上、デフォルトでラッカー対応のベロアが敷き詰められているものが多く、室内用のギター立てとして据え置きで使用するユーザーも多い。

 KC(KYORITSU)のGSCシリーズは、このタイプとしては安価ながら機能性のバランスもよく、長年ミドル・エンドのプレイヤーを中心に需要が絶えない人気モデルである。現行品は6本立てのGSC150/6と、8本立てのGSC180/8の2種類。内部は総ベロア仕立てで、天板のスリットにギターのネックを差し込んで固定するスタイルとなる。ボディ部分を埋める底の敷居は一見狭く見えるが、実際にはボアで包んだウレタンの角柱を仕切りとして並べてあるだけで、前後の溝にはめ込む形で横に自由に移動できる。ボディの厚いアコギ、フロイドローズなどの厚みのあるトレモロやアームの付いたギターを収納する時には、その間隔を適宜調整することで最適なホールド感を得られるというわけだ。ただ、その場合には天板のスリット位置の兼ね合いで斜めに立て掛けることになる場合もあるので、特にナロー・ネックのギターへの負荷に関しては常に意識を向けておいた方が良いだろう。天板スリット自体もやや狭めの作りのため、あまり太いネックを入れると弦が常にフレットや指板を圧迫することになるので注意が必要だ。

 また、スリットの端には振動などによってネックが脱落するのを防止するストッパーが付いているが、これ自体はベロア素材を使っておらずただのビニールなので、ギターの塗装を傷める恐れがある。特にラッカー仕様のギターを置こうと思うならば、これはいっそのこと切り取って市販のスタンド・ブラを貼付けてストッパー代わりにすると良いかもしれない(その際には、固定ボタンのかしめやマジック・テープの張り替えも同時に行おう)。それなりの値段のギターを置いて快適に使おうと思うならば多少手はかかるものの、定番のFender等のものと比べると1/3程度の価格で購入できることも含め、値段相応の作り、仕様に納得して使えば、地震等にも強く、部屋の仮置きスペースとして十分に有効活用できるはずだ。ギターが増えて置き場に迷っているユーザーならば、あまり難しく考えず、ソフト・ケースに入れてあるようなモデルを普段使いに卸すつもりで手近に置くのに、このクラスの複数立てケースの導入は検討に値するはずだ。
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無垢 スタンド 写真:Premium Guitar Square

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12 KIGOSHI [無垢 スタンド]

 杢調を生かしたスピーカー・キャビネットやギターでおなじみの職人工房KIGOSHIによる、ハード・ウッドの無垢材を使用した高級ギター・スタンド。最近は部屋の調度に合う木組みのギター・スタンドが流行っているが、さすがはKIGOSHI……木工の意匠に関しては、材の選定、組み上げ、塗装に至るまで一般流通品とはまるで異なる次元の“筋”の通った「作品」に仕上がっている。

 カーリー・メイプル、ホンジュラス・マホガニー、ウォルナット等、そのままギターに使用できるほどのグレードの木が、ほとんど全てのフレームに臍(ほぞ)を入れたネジや釘を使わない(ただし、ネック受けの渡し部分のみネジ止め加工されている)接合を用いて成形されており、まるで調度品の様ながっちりとした精度で作られているのがわかる。“臍接ぎ”工法は材そのものの捻れや反りを防止するので、その耐久性は折り紙付きだ。塗装には安全性の高いセラックニスが使用され、自然な光沢を持つ塗膜の下で波打つ美しい杢目を見ていると、材そのものがしっかりと呼吸しているのが手に取るようにわかる。ボディ受けにはコルクが張られ、ギターを置いたときの衝撃をしっかり吸収するようになっている気配りも素晴らしい。逆に、ネック受けは材がむき出しのままなので、ギターを立て掛ける横柱ごとクロスを被せたりして使うと良い案配だろう。

 また、上下接触部にはストッパーの様な無粋なものは付いていないので、地震の際の耐久性を心配する方もいるかもしれないが、ボディ下部の渡しの間隔が広いのでギターのホールド感は意外に強く、きちんと横柱にネックの重心を預けていればそれほど揺れに対してギターが暴れることもなさそうだ。左右どちらからでも置ける仕様と、この贅沢とも言えるギター同士の幅空間は、ふと現代に忘れかけていた“落ち着き”や“余裕”を呼び起こす様な気さえする。そしてそれ以前に、やはり木材で出来たスタンドは同じく木製のギターという楽器に無条件でマッチするのだ。ここに置かれたギターを見つめる時、楽器に対する距離感は、初心者だった頃と変わらぬあの懐かしい憧憬を取り戻すに違いない。ギターという楽器に勤しみ、より深く理解しようと努めるプレイヤーにこそ、こういったギター・スタンドで自分の愛器を休ませる時間をぜひ持ち合わせて欲しいものだ。
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GS525B 写真:chuya-online.com FUKUOKA

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13 HERCULES [GS523B/GS525B]

 21世紀のギター・スタンド業界に強度革命を起こしたとされるHERCULESにも、当然のように複数立てモデルは存在する。標準3本立てのGS523B、そして5本立てのGS525B──どこにでもありそうなパイプ組みの四つ足スタイルだが、そこはHERCULES製品だけあり、各所にギターを安全に保持するための工夫がちりばめられた仕様となっている。

 まず、これらの製品は完璧な堅牢性を保つため、最初から一式(非分離構造)で組まれている。つまり、フレームなどの基本構造に関わる部分に素人が手を入れることによる強度のばらつきをなくすため、完成品として工場から出荷されるのである。届いた瞬間から、脚をスライドすればすぐ使用できるという利便性以上に、そこにはスタンド自体のクオリティを最高の状態からスタートさせたいというメーカーの強い意志が感じられる。同じ様なパイプ構造の製品として知られるWarwick社のRockStandシリーズ等も安価ながらそこそこしっかりしているし、あれはあれで分解すればストレート・パーツにバラせる利点もあることからプライベートで使うには十分な性能と言えるが、やはりハードな積み替えや運搬の伴う現場で使うには、ネジ締めなどを素人が行なうことによる強度不足への不安は常に付きまとう。加えてHERCULESのスタンドには、安価なタイプにはあまり採用されない両サイドの三角足、そして、全体の捻れを抑制する背後の補強バーがしっかりと備わっており、大切なギターを置くのに足る絶対的な安定性をもたらしている。

 ボディ受けに採用されているお得意のクッション材「SFF」も、他社の簡易スポンジとは違って横滑りせず、並んでギターを置く時のボディ同士の接触をきちんと予防してくれるのも嬉しい。上部のヨーク(ピックを刺しておく溝が打ってあり、思いのほか便利)は専用のエクステンション・パック(HA205)を用いれば増設も可能で、理論上ではGS523Bは最大で6本、GS525Bは最大10本までギターの収容力を上げることができるなど、拡張性の点においても自由度は高い。ただし、ボディ置きタイプの弱点として、やはりエクスプローラーやファイヤーバード、フライングVなどの変形ギターは正しく置くことはできないと思った方が良い。SFFの摩擦係数の高さを生かして無理に収容しても、どこかが床に接触するか、ボディの固定が不十分なまま浮き上がってしまって他のギターに当たるなど、結果的に大切な楽器を傷つけてしまうことにもなりかねないので絶対に無理は禁物だ。また、正しく置けるギターもボディをかなり傾斜して固定することになるので、スタンドの背を後方にベタ付けするとギターのヘッドが壁を擦るので気をつけたい。そこさえ注意を払えば収容力や強度は抜群なので、上部ヨークの間口の広さを利用して、ソフト・ケースごと立て掛けておく様な使い方もオススメだ。あまり隣のギターと密着させると素早い持ち替えには不向きになるが、家に、スタジオに、1台あるだけでギターの扱いそのものが劇的に楽になることを実感できる製品であることは知っておいて損はないだろう。
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ギター・スタンド:ネックホルダー(吊り掛け)タイプ

GSP39WB 写真:chuya-online.com FUKUOKA

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14 HERCULES [GSP WB/GSP SB/GSP HB]

 自重によって常に“引っ張る”状況を作り出す「吊る」という固定方法は、ギターという楽器最大の泣き所であるネックの変形を防止する措置として、今も信者が多いやり方である。ヘッドを専用のハンガーに引っ掛けることになるので、ネックの“エラ”の部分は塗装が禿げる危険もあるが、キズが最も怖いボディは常に浮いている状態となるため、理論的にはトータルの塗装へのダメージは最小限度で済む。また、ニトロセルロースなどのラッカー塗装を施したギターの場合は材そのものの乾燥にも関わってくるため、ハード・ケースでの保存よりも理想的とされている。とはいえ、高温多湿、さらに地震大国でもあるこの国でそれが最適な保存法なのかは判断に迷うところだが、少なくとも身近にあって最も手に取りやすい位置でその美しい愛器のシルエットを眺められることが、精神衛生上プラスの作用をもたらすことに疑う余地はないであろう。

 HERCULESのGSPシリーズは現在最もシェアを伸ばしているハンガー・システムのひとつで、ギターを掛けると自動で落下防止の爪が閉じる「AGS」が標準装備であることや、ワン・サイド・ネック(ネックの“エラ”が片側にしかない、テレキャスをはじめとした一部の細長いネック)を確実に支えるための「AS-yoke(Auto Swivel yoke=軸が回転してヨークに角度を付け、片方の“エラ”だけでほぼ完全にギターを支えることができる機構)」といった安全性の高い機能をいくつも搭載していることが特徴だ。GSP WBはハンガーを壁にネジで直付けする古典的なタイプで、木製のベース・プレートが付属するGSP38WB以外は全て3点ネジ(GSP38WBのみ2点止め)で壁に取り付けられる。ギターの重量が全てこのネジ部分にかかることを考えると3点止めとはいえ油断できないところはあるが、現在、他社の標準仕様が2点方式を多く採用していることを考えると、この堅牢さは実に有り難い。実際、取り付けたものを揺らしてみたが、根元の横揺れにも強く、地震に対しての対策としては十分な効果がありそうであった。機種はアームの長さによってGSP39WB(ショート/155mm)、GSP31WB(ミッド/190mm)、GSP40WB(ロング/320mm)と種別されている(GSP38WBはショート。同じウッド・プレート付きのショート・タイプでも、クラシック・ギターの太いネックに対応したGSP29WBもラインナップされている)。

 いずれも専用スクリューとコンクリート壁用のカールプラグが付属するが、硬い奥壁まで届かせようとするならばいかんせんネジが短い。耐荷重量はいずれも7kgが保証されているが、ビンテージのレス・ポールなど重いギターを吊るす場合はスクリューの強化も視野に入れるとより安心だ。壁からの距離は、ショート・タイプの場合アコギを掛けると後方へのボディの浮き上がり具合によってはエンド側が壁に触れるものもないわけではないが、ドレッド・ボディだったとしてもミッド・タイプ以上のアームを搭載した機種を使えば全く問題なく設置できるはずだ。GSP HBは網などのグリッド・ウォールに直接引っ掛けることができるタイプで、簡単に架け替えができるのが便利だ。自重を利用してバネで挟み込むタイプが主流で、これもGSP39HB(ショート)、GSP32HB(ミッド)、GSP50HB(ロング)と仕様が分けられている。もうひとつのGSP SBは店頭ディスプレイ等に使用されるスラット・レールにマウントするための専用タイプで、GSP39SB(ショート)とGSP40SB(ロング)の2種類のみがラインナップされている。いずれも堅牢にギターを保持してくれるが、長期間の展示などの際には万が一のAGS爪からの脱落を防ぐ意味でも、専用のロック・ユニットHA101等を併用するとさらに完璧にギターを守ることができる。
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GA-250

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15 The Guitar Hanger [GA-250]

 「吊り掛け」こそが理想的なギターの保管方法だと信じてはいても、日本の住宅事情からしても壁に穴を開けられなかったり、部屋が狭くてスタンドを置けなかったりと、何かとスペースにまつわる悩みが尽きない昨今。だが、そんな懊悩の日々を送るユーザーにとって目から鱗の画期的製品が米国から日本に入ってきている。それがこのThe Guitar Hanger GA-250である。構造は単純そのもの。軸を中心に回転するベーシックなスタイルのヨークを、カギ状の柄の付いたバーで吊っているだけ。これをクローゼットなどの中にある衣服用のハンガー掛けなどに引っ掛けて、そのままギターを吊るすというもの。「えっ? それだけ!?」と思う人もいるかとは思うが、これこそが、21世紀の生活環境に最適化された「吊り掛け」タイプの究極の形……もしその部門の賞があれば、まさしくアイディア賞ものの逸品なのだ。

 とにかく、場所をとらない。すぐ躓きそうになる三脚も、面倒な組み立てもなく、これひとつあれば既存のクローゼットというスペースの中で整然とギターを整理することができる。よくよく考えてみれば、クローゼットいう空間は暗所で温度変化も少なく、長時間その中に放置してもほとんどホコリをかぶることもないギターの保管には最適の場所である。しかも扉を閉めてしまえば人が移動して接触してしまうこともない。言うなれば、ギターにとっては理想的なシェルターに等しい。その中に、何の追加設備も必要なく、ボディがどこにも触れないほぼ完全な「吊り掛け」状態の保管空間をギターのために確保できるのは大きい。このギター・ハンガーの優れているのは、例えハンガー・パイプがなくとも、かぎ爪が掛けられる丈夫なフレームやくぼみさえあれば、どんな場所でも手軽にギターを吊るせるところだ。収納用のメタル・ラックはもちろん、押し入れの縁、ダクト・パイプ、壁フックなど全く場所を選ばない。個人的には温度変化が激しいので推奨はしないが、窓際にあるカーテン・レールなどもGA-250を引っ掛けるには十分な耐久性がある。また、“引っ掛けた状態”で一切固定されていないということが、一見すぐに外れそうに見えて、これが意外にも壁に固定されているタイプのものよりも揺れを吸収する構造になっているのが素晴らしい。深度5以上の地震が多発するこの島国においては、どんな頑丈なスタンドに立てておくよりも、実はギターにとっては安全なのかもしれない。

 一方で、ヨークの幅が狭く多弦ギターやベース、アコギ等が掛けにくかったり、掛けれてもペグに触ってしまう場合があること、それに、吊り軸が回転しないことなど、まだまだ改良すべき箇所もあるようにも思うが、実際使ってみると現段階でもこの便利さはすでに手放せない域に達しているのがわかる。ヨークの根元を外せばギター・ケースに入れて気軽にスタジオなどに持って行くこともでき、最軽量の簡易スタンドとしてまだまだ応用が効きそうだ。値段も手頃で場所もとらないので、自分で買うだけでなく、この商品を知らないギタリストの友達にぜひひとつプレゼントしてみるときっと喜ばれることだろう。
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ギター・スタンド:その他

16 ACLAM GUITARS [FLOATING GUITAR(FG)シリーズ]

FG STAND

 2010年にスペインで立ち上がったばかりのブランドながら、先鋭的なデザインを取り入れた機能性と美観を両立させるギター・アクセサリーを発表するや否や、たちまち業界に旋風を巻き起こした前衛技術者集団ACLAM GUITARS。企画から製造までをバルセロナのラボで一貫して行ない、高いクオリティと共に全く新しい価値観をギター・イクイップメントの世界に持ち込んだ彼等の成功は、このFLOATING GUITAR(以下FG)シリーズによってもたらされたと言っても過言ではない。

 FGのコンセプトは、かつてない革新的なディスプレイ方式を用いて、ギターを美しく飾ることからストレスなく使用するまでをスムーズに行なえる環境を提供することにある。そのメカニズムは独特で、専用のブラケットによりギターを背面から完璧に固定しながらも、正面から見るとボディやネックのどこにもハンガーやヨークといったものによって支えられているパーツは見あたらず、まるでギターが本当に宙に浮いているかのように見えるという革新的な機構を採用する。支えているのは、2本のストラップ・ピンを繋ぐステンレス製のマウント・アダプターのみである。ひょうたんを細くした様な形にCNC切削された剛性の強いベース・プレートは、すっぽりとギターの後ろに隠れ、そのジョイントに同じく高級感漂うヘアライン加工された多肢を接続することでギターの両ストラップ・ピンへと接続されるというわけだ。実際、そうした一連のアダプター・キットがギターに触れている部分は、ベース・プレートの裏に張られた衝撃を吸収する特殊なフォーム素材(表面処理されているので、ラッカー対応)と、あとはストラップ・ピン部分のみである。ピンに繋がるアーム(フロント側のアームは、基本的なピン位置に対応した4つの形状──“STRAT”“LP/TELE”“SG/ES335”“ホーン裏ストラップ”が用意されている)をアジャスター溝に沿って長さ調節し、それをレンチで固定してやると、不思議なことにギターは2つのピンと背面のアダプターの3点で支えられて完璧に固定され、上下に60°近く傾けてもびくともしなくなる。それを壁に直接付けるジョイント・アダプター(回転とチルトが可能な「Floating Guitar」と、回転のみの「Floating Guitar Lite」がある)か、あるいは専用の特別な透過素材でできた美しいスタンドに設置すれば、まるで博物館かショー・ルームの様なゴージャスなインテリア空間を作り出すことができるのである。しかも、ギターは軽く指でピンの根元のアームを押さえれば、アダプターも何も付いていないまっさらな状態で取り外すことができ、そのまま使用できる。

 このインテリジェンスに溢れたエポックメイキングなシステムの最大の魅力は、見た目の美しさもさることながら、ギター本体に全く負担がかからないところにある。ネックにすら触れないので、通常の「吊り掛け」タイプのように、一晩たったらチューニングがバラバラなんてこともない。しかも、塗装は全くと言って良いほど傷まないときている。ギター本体への加工は基本的に不要で、ただ、専用のストラップ・ピンに付け替えるだけという手軽さだ。しかもそのピンのまま通常のストラップで使用することもできる。アームのところで書いた公式な対応モデル以外の適性では、ジャガーやPRS、さらにディンキー・ボディのギターの大半は問題なくマウントすることができた。Gretschはピンの加工は必須だが適性はありそうだった。Rickenbackerも今回は実際には試せなかったが、300や600シリーズの一部はマウントできそうな気がする。今後もさらにアームの種類が増え、対応機種が広がると共に、「吊り掛け」スタイルに新たなスタンダードとして認知されていくに違いない。スタンド業界では、今、最も目の離せないブランドだ。
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17 Markbass [MAK-BK]

MAK-BK

 ギターやベースがあれば、寝かすよりもどこかに立て掛けたいと思うのが人間の本能だとしたら、この製品はまさにその欲望だけをシンプルに体現してみせた製品と言って良い。MAK-BKは、ベース・キーパーの名が示す通り、キャビネット・ハンドルに竿(ギターやベース類)のネック部分を簡易的に固定するためのもの。ボディ・エンドは床に直置きになるため場所を選ぶが、スタンドを置けないほど狭いステージの上では意外に重宝する。少なくともシールドや脚で引っ掛けて倒す心配はなくなる。多くの場合はストラップ・ピンを直に床に立てて使うことになるので、床を傷つけないこともそうだが、ギターのピンそのものにかかる負担を分散するために、ゴム製の敷きマットやクロスを底面に挟めばより完璧だ。ただし、キャビネットの脚が動いたりするタイプだと非常に危険なので、エンクロージャーが床に直置きされたものか、ストッパーの着いたキャスターのある方のハンドルに付けるしたいところだ。また、常にキャビネットに接触しているとベース本体の塗装にも良くないので、現場によってはドラム・セットを囲うラック・フレームの末端にでも括ってしまうのがベストかもしれない。

 商品を見てもらうとわかるが、当然、ラッカー塗装されたデリケートな代物をそのまま括って良い素材ではできていない。MAK-BKは、連日ライブ・ハウスを渡り歩く、ゴリゴリの前線プレイヤーの為に用意されたマッスル・アイテムだということを忘れてはならない。それでも、ギターやベースを「絶対に倒さない」という一点においては、条件さえ整えば他のどんなスタンドよりも優れている。特に家庭内で、動物を買っていたり、小さな子供がいたり、また、スタンドが常に掃除機のコードなどで脚払いを受けそうな環境下においては、楽器を転倒から守るという観点から使ってみても損はない品であることはアナウンスしておきたい。また、ツアー先で泊まったホテルなどで、部屋にギターやベースを持ち込んだ際に、ソフト・ケースやギグ・バッグごとストラップを通して壁のタオル・ハンガーや手すり等にぴったりと固定しておくのにも役に立つ。柔らかい素材なので、常にバッグに入れて持ち運び、スタンドのない場所でのギターやベースの縦置き設置に対する意識を高めて使っていきたい製品だ。
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エピローグ

 『ギター・スタンド』特集、いかがだっただろうか?

 なかなかスポットの当たらないこういった日陰の機材をみっちりやるのも、『Dr.Dの機材ラビリンス』というコンテンツの存在意義のひとつだ。あまり詳しく紹介されることもないアクセサリーだが、その重要性についてはもはや言わずもがなである。情報の欲しかった人も多いのではないだろうか?

 かくいうDr.D自身もギター・スタンドに関しては長い期間樹海を彷徨った記憶がある。本当に、近年のスタンド類の発達は凄まじく、種類も格段に増えた。過去に使った中では、今回は在庫の関係で紹介はしなかったが、K&Mのシリコン台座を持つ複数立てスタンド17515や、国産老舗OHASHIの金属スタンドが良かった記憶がある。変形ギターに対応した種類も増え、Vやエクスプローラーだけでなく、SteinbergerやStrandbergといった特殊な形状のギターも専用のスタンドを使わずに立て掛けられる物があったのには驚かされた。紹介しきれなかったが、机の端に設置するものや、マイク・スタンドなどの縦の支柱にハンガー部を取り付けて使用するものなどものもあり、ライフ・スタイルに応じて選びたい放題だ。

 そうそう、最後に口幅ったい話になってしまうが、今回紹介したスタンドに実際にギターを立てる際には、情報だけに頼らず、慎重に自分のギターに対する適性を見定めるようにして欲しい。万が一事故が起こっても、そこは自己責任ということでお願いしたい。ギターは並びのロットですら個体差がある楽器だ。本当にそのモデルを安全に置けるかは、やはりオーナーの手による時間をかけた注意深い検証が必要となる。あの、ギターが倒れる瞬間の、走馬灯のようにゆっくり流れる恐怖の時間を体感したくないのは、皆さんも一緒のはずだ。スタンドだけに、「スタンド・バイ・ミー」の精神を決して忘れないように。

 それでは、次回8/10(水)の『Dr.Dの機材ラビリンス』もお楽しみに。

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製品情報

ギター・ベース用スタンド

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プロフィール

今井 靖(いまい・やすし)
フリーライター。数々のスタジオや楽器店での勤務を経て、フロリダへ単身レコーディング・エンジニア修行を敢行。帰国後、ギター・システムの製作請負やスタジオ・プランナーとして従事する一方、自ら立ち上げた海外向けインディーズ・レーベルの代表に就任。上京後は、現場で培った楽器、機材全般の知識を生かして、プロ音楽ライターとして独立。徹底した現場主義、実践主義に基づいて書かれる文章の説得力は高い評価を受けている。

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