いわゆる「コンポーネント・ギター」というよりは、やはり「カスタム・ギター」という印象が強いブランド、Sugiギター。多くのアーティストとのコラボレーションや、ミュージシャンの声を反映させた楽器作りで、日本のギター・ブランドとは思えないワールドワイドな展開やそのクオリティの高さで、ギター好きであればその名を知らない人はいないだろう。

　そのSugiギターがこれまでのスタイルとは異なるアプローチで製作する「Too good to be…」プロジェクトの第2弾として登場したのが、このStargazer（=星を見つめる者）シリーズだ。コンセプトは「Vintage Chic（ビンテージ・シーク）」。歴史的なビンテージ・ギターが生まれた時はこんなサウンドだったというイメージだ。これまでの経験を生かしたプレイアビリティはキープしながら、ユーザーの求めるビンテージ・フィールを体現したこのモデルには、2種類のラインナップが用意されている。ひとつは54〜55年の3シングル・モデルをイメージしたSGZ SSS、もうひとつは60年代前半の3シングル・モデルをイメージしたSGZ SSHで、SGZ SSHは3シングル・ギターを多くのミュージシャンがSSHモデルに改造していった様なイメージで製作されている。

　SGZ SSSは54〜55年タイプで、とにかく生音が太い。アーリー50’sと言えば、まだ「ロック」は生まれていない時代。その時代のサウンドはもっとクリーンでファットだった。そのあたりのテイストも色濃く残しながら、モダンなネック・シェイプ（非対称グリップ）やロー・ノイズのカスタマイズが行なわれている。ピックアップのコンビネーションも興味深く、各ポジションでポールピースの高さ（凹凸）が異なるキャリブレーション・タイプが採用されている点も面白い。実際のサウンド・バランスも使い勝手が良く、オリジナル・ビンテージにこだわらないアイディアが満載だ。

　ただし、アーリー50’sのギターは簡単には弾きこなせない。その手強さは引き継がれており、玄人向けのチューニングと言って良いだろう。しかし、それこそがこの『Too good to be…』プロジェクトの面白さかもしれない。塗装の薄さも関係していると思われるが、例えばエリック・ジョンソン等のプレイヤーのサウンドが好きな皆さんはたまらない仕様と言えるだろう。音を「伸ばす」と言うよりも、音の「アタック」に重きを置いている印象で、キレのあるフレージングに最適。その分、弾きこなすにはテクニックも必要、と言う印象。右手だけでなく、左手のタッチにも細心の注意を払って、このオーガニックなボルトオンのギター・サウンドを鳴らし切って欲しい。

　もう一方のSGZ SSHは、生音の聴こえ方からして違う。こちらは誤解を恐れずに言えば、随分と「鳴らしやすい」印象で、ブルース・ロック系からちょっとハードめのロックまで順応してくれる。音の伸びも申し分なく、ハードなピッキングでも十分に受け止めてくれる。昨今人気のブルース・ロック系のサウンドに間違いなくハマる。ハーフトーンのはじけ感も素晴らしく、思わず「TS9持ってきて！」と言いたくなるトーン、と言えば皆さんにもわかりやすく伝わるだろうか？

　いずれのモデルも新品でこの鳴り。昨今の手元で「簡単に鳴る」ギターではないことは確かだ。長く弾き込んで、つき合って行く事で50年代／60年代のビンテージ・ギターの様に熟成され、さらに素晴らしい音色を生み出す事だろう。

※使用アンプ：Fender '68 Custom Deluxe Reverb

Sugi Guitars / Stargazer SSS

Sugiギター・オリジナル形状のヘッドストック。ペグはゴトー製、ナットのミゾはU字に切られている。

アクア・ティンバー・メイプルの1ピース・ネック。ネック裏のシェイプは1弦側を少し薄くした左右非対称の形状。

ビテージ・スタイルのカスタム・ピックアップ・ブランドのKlein Pickupsを採用。SSSはJazzy Cat Stratocasterが搭載されている。

各ポジションでポールピースの高さが異なるキャリブレーション・タイプが採用されている。

コントロールはオーソドックスな1ボリューム、2トーン、5ウェイ・ピックアップ・セレクター。

SSHにはKleinとのディスカッションにより生まれた、Klein PU Sugiオリジナル・セットを採用している。