AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
〜最強のお菓子箱はどれだ?〜
今回の実験は、地下実験室史上に残る黒歴史「音が出なかった“きのこの山ファズ”」のリベンジ実験です。その次いでと言ってはなんですが、ファズの筐体として最も合う最強の(?)お菓子箱を決めちゃいます!
デジマート地下実験室では、過去に「エフェクターの音はケースによって変わるのか? 筐体差し替え実験」を行なっています。2014年8月、地下6階のことです。……それにしても当時はまだそんな浅い階をウロウロしていたんだ、懐かしいなぁ。まさかこんなにこの企画が続くとは……(遠い目&微笑)。当該実験では同じファズ回路を使いまわし、筐体だけを変えていって音質の変化をチェックしたのですが、最後に明治チョコスナック「きのこの山」を筐体として使用したところ、音が出ないというハプニングがありました。
これ、当時からわかっている人の間では「アース落ちてないだけじゃね?」と囁かれていたようです(恥&気絶)。絶縁体である紙を筐体に使う場合、アルミテープを貼っときゃそれでOKだろうと思っていたのですが、貼り方次第で通電する/しないが決まるとは、前回の地下27階「シールディング実験」までちっとも気づきませんでした(赤っ恥&即死)。ちなみに、アルミテープの接着面は通電しないので、おもて面同士をしっかりと密着させる必要があったんですね(一生勉強)。
私 「……というわけで、今だったら“きのこの山”も音が出るんじゃないかと思うんですよねー!」
赤鬼 「じゃあ次回の実験室でそれをやって、男を上げればいいじゃないですか」
私 「でも、それだけじゃ実験になりませんよね?」
赤鬼 「大丈夫、大丈夫、他にも菓子箱を並べてどれがいい音か確かめれば、もう立派な実験でしょ、maybe」
私 「編集長、あんたって人は……」
というわけで、エフェクター筐体実験リターンズ、始まるよー!
使用機材
◎フェンダー・ストラトキャスター(ギター)
◎フェンダー 68 Custom Deluxe Reverb(アンプ)
◎ベルデン9778(ケーブル)
◎アーニーボール スーパースリンキー(弦)
◎フェンダー ティアドロップ ミディアム(ピック)
◎t.c.electronic Ditto X2(ルーパー)
◎アルミテープ
◎通電チェッカー
◎自作ファズ回路
◎菓子箱、各種
※セッティングなどについて
■ファズの筐体以外、回路、パーツ、セッティング、またギターやアンプのセッティングなどの条件はすべて同じです。
■今回は事前にギターのフレーズをルーパーに入れておき、その信号をファズに入力して音を確かめます。その後、同じファズ回路を別の筐体に入れ替えて、チェックを繰り返していきます。
■ファズの基盤やパーツは、ネット上で売っている自作用キットのものです。
■本企画では、動画再生の際、モニター用ヘッドフォンの着用を推奨しています。
いきなり、問題のきのこの山です。2年前にこれの音が出なかったばかりに、私は都内を歩くと「あ、アイツきのこの山の音が出なかったヤツ」と後ろ指をさされ……、嘘です。残念ですがこのコーナー、そんなに見られていませんし、国民は基本ファズに関心ありません(編註:実は結構見ていただいています、毎回ありがとうございます)。
さて肝心のサウンドですが、なかなかいいじゃないですかっ!! コンプレッション強めですが、太くていい音してます! ただ、問題もあるんですよねー、踏めない、とか。それは置いておいて、今回は波形も付けておきますので、なんとなく眺めてみてください。こちらのきのこの山の音が、今回の基準となります。
きのこの山とくれば、次はたけのこの里ですね。私は、食べる分にはきのこの山派なんですが、ファズとしてはどうかなー? あなたはどちらですか? 知らねーよ? そうですよね。では、サウンドを聴いてみましょう。
あれ? 結構違くないですか? きのこの山より、さらにコンプレッションが強いですね。アタックが潰れて、一度音量が下がってから持ち上がってくる感じです。波形を見比べても、300Hz手前の谷や、2〜3kHzの間の山など、結構違いが出ていますね。でもなぜ違うのか? 現実的な線では、組み込み具合の差とかですかね。くれぐれも明治に問い合わせるのだけは止めてくださいね! キ●ガ●扱いされますよ! とにかく私は、やはりきのこの山派であるということがはっきりしました。
ちょっと大型の筐体です。紙が厚めで、筐体の深さもあるため、筐体のおもて面にパーツをレイアウトできました。ぐっとエフェクターっぽくなって、カッコいいですよね? 回路を外したり付けたりするのはそれなりに手間なので、少しでも効率を良くしたくてノブを付けていないのですが、付けたらかなり素敵だと思います。
サウンドは……むうう、難しいところですが、きのこの山とたけのこの里の中間ぐらいに感じます。私の好みでは、今のところ、きのこの山>パイの実>たけのこの里という感じです。波形は、たけのこの里とそっくりですね。違いがわかりません。きのこの山だけが、特殊なファズ向きの筐体なのでしょうか? この段階では結論を急がず、先に進みたいと思います。
ベルギーの高級チョコですね。高級だけあって、筐体がこれまでで最もしっかりしています。ジャックも含めて、すべてのパーツを上部の蓋にレイアウトしてみました。見てくださいこれ、かっけー!
そのサウンドは全体に雑味がなく、レンジが広いように感じます。波形を見比べてもパイの実とほとんど変わらないのでプラシーボかとも思いましたが、ヘッドフォンで聴き直すとやはりパイの実よりタイトで、ハイも明瞭に聴こえます。やっぱり“高い音”してますよ、これ!
むはぁーっ! きました! これはある意味、今回最大の問題作です。箱ですらないという……袋ですよ、袋。カルビー堅あげポテトの袋をファズの筐体にしてみました。これがエフェクターボードに入れてあったら……対バンのギタリストが二度見すること間違い無しです! ボードに入れずに置いておくと、捨てられてしまうことも間違いないでしょう。
さて、そのサウンドですが、あれ? 意外とまともじゃないですか? やっぱり、少しローは不足しているかな。波形を見ると、基本は同じですが、一番右側の20kHzの手前あたり、他の波形はもう少し複雑になっているのに、堅あげポテトは波形が「……もう、どうでもいいじゃないですか?」という感じで投げやりになっているのが素敵です。
ロッテ・キシリトール・ガムのボトルに、ファズの中身を詰めてみました。これはなんというか、手製の爆弾みたいですね。これを携行して飛行機には乗れないルックスです。見た目は素敵なんですが、音はちょっと奥に引っ込んでいる感じですね。変に密集しているというか、レンジが狭いというか……。これの音を聴いてから他の筐体の音を聴くと、他がオープンな感じに聴こえます。でも、波形で見ると違いがわかりません。……うーん、難しいなぁ。
長さ違いで2種類用意したポテチ界の雄、チップスター。何度かトライしたんですが、これがまったく通電せず。むうう。円柱形はエフェクターに不向きなのか、その真相は謎のまま時間の都合上無念のタイムアップ。しかして中身はおいしくいただきましたー。
おそらく、世界最大のペダル・エフェクターではないでしょうか? 縦65cm、横48cm、厚さ12cmもあります。バンドで使うには移動が大変だし、自宅で使おうにも邪魔でしょうがないという、困ったヤツです。地下6階の筐体実験の時は、筐体の大きさによる音の違いが出たので、今回もこんだけ大ききゃ違いがわかりやすいんじゃないだろうかと考え、お菓子箱ではありませんが番外編として加えてみました。
音は比較的、コンプ感が少なめに感じます。あとは、うーん、思ったほど差が出ません。あ、そうだ、パーツを組み込むための穴あけがとっても楽で助かりました! さすが段ボールです。反対に泣きそうになったのが、キシリトールのボトルです。あれ、いざ穴を開けようとすると、えらく堅いんです。自作したいという人の参考になりましたでしょうか? え? んな人はいない? ですよねっ!
結論:最強のお菓子箱はきのこの山&ゴディバだが、そもそもお菓子箱はファズに向かない!
ええ、ええ、そりゃーそうだろという結論に至りました。音的にはきのこの山とゴディバが良かったですが、なぜ良いのか、理由はわかりません。ルックス的には、堅あげポテトが最強でしょう! しかし、アルミテープをきちんと貼れば、大抵のものはファズの筐体として使えることがわかりました。皆さんはせめて、踏めるもので作るといいかと思います。
ちなみに筐体によって音が変わることは、ペダル・ビルダーやエフェクター・メーカーでは常識中の常識だそうです。回路、パーツ、筐体などトータルでバランスを取りつつ、狙った音にどうやって近づけていくかの勝負だそうで、なんともレベルの高い話だなぁと思います。そういった技術もセンスもない人(私)は、お金を払ってそうした人たちが作ったものを買い、ありがたく使わせてもらうのが良さそうです。さ、原稿も書き終わったし、「ファズ」で検索してみっか。
では次回、地下29階でお会いしましょう!
井戸沼尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジン・チャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。