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- 2024/11/16
KORG / STAGEMAN 80
コルグと言えばキーボードやシンセ界をリードするブランドとして有名ですが、実はリズム・マシンの世界においても権威であることをご存知でしょうか? 例えば「ドンカマ」という言葉。レコーディング現場では古くから使われているこのフレーズはリズム・パターンを指し、例えばメトロノームのクリック音を大きくしたい時に「僕のモニター、ドンカマをもう少し上げて下さい」という人もいるほどです。このドンカマとはそもそもコルグが1963年の創業当時、最初に製作した製品であり、日本初のドラム(リズム)マシンの名称である「DONCA MATIC」……バス・ドラムの「ドン」とクラビスの「カッ」と言う音、そしてそれをオートマティックで演奏すると言う意を含む……が広く「自動演奏ドラム」のことを指す様になったものです。そう、コルグはリズム・マシンの世界でも独自のアイディアを持っているブランドなんですね。ちなみに、このドンカマティックと言う言葉をフィーチャーしたのがGorillaz(バンド)のその名も「DONCAMATIC」という曲。コルグ創業者である加藤孟氏の「ドンカマティック!」という声をサンプリングして曲中にフィーチャーしたことも話題にもなった曲ですね。
今回ご紹介するSTAGEMAN 80は、コルグ・ブランドならではのサウンドに拘り抜いた逸品。基本的にはモバイル&キャリーオン・スタイルのアクティブ・パワード・サウンド・システムなのですが、圧倒的な出力を持っています。小柄な筐体からは想像できないパワフルなロー・エンドに加えて、AC電源だけでなくバッテリー(電池)でも駆動可能。はっきり言って電池駆動でここまでパワフルなサウンドが得られるモデルは今まで無かったでしょう。さらにマイク入力が1つ、ライン入力を2つ備えており、簡易ミキサー機能も持っています。これは室内/野外問わずにPAとして使用できるポイントですね。加えてSDカードに取り込んだ音源を再生することも可能で、例えば野外でのパーティーに持ち出して純粋にリスニング用として楽しむことはもちろん、SDカードに曲を取り込んで、それをスピーカーから流しながらダンスのレッスンやストリートでのパフォーマンスを圧倒的な音量でサポートすることも可能でしょう。ストリート・ミュージシャンの簡易PAとしても最適。何せこのサイズでこの音量。小規模な店内スペースでのイベント、アコースティックや歌もののインストア・ライブ等にも非常に役立つでしょう。
そして、本体上部に多数配置されたボタン類。ここにコルグならではのこだわったドラム・サウンドが集約されています。新技術“Real Groove Technology”を採用し、何とドラムのリズム・パターン数小節を実際にレコーディングしています。今時のリズム・マシン/ドラム・シーケンスと言えば、ハイハットやキックなどドラムのパーツの各サウンドをサンプリングし、それをあたかもドラム・キットの様に組み込んでリズムを作り出すのですが、この“Real Groove Technology”ではプロ・ドラマーによる実際のリズム・フレーズ・パターンを8小節録音。そのパターンをループ状にすることで、その名の通りドラマーの「リアル・グルーブ」を生み出しているのです。当然、少々のよれ感や突っ込み感も含めて「リアル・ドラマー」がプレイしているグルーブが感じられます。さらにテンポを変えた場合は、そのテンポに近いBPMで録音したリアルなドラム・フレーズが収められているので、間延びしたり、ピッチが変化する等の音色の変化を最小にとどめながら、テンポ・チェンジに対応しています。さらにそのパターンを好みで組み込んで曲にして演奏させたり、または別売のフット・スイッチを使用して足下でリアルタイムに切り替えることも可能。つまり、実際にドラマーが叩いている感覚で、楽曲をフリースタイルで組上げることができるのです。加えて、別途用意したSDカード内に、STAGEMAN 80に入力された楽器やマイクの信号を録音することもできます。もちろん内蔵のリズム・パターンも同時に録音することができるので、ラフなデモテープの製作やバンド・メンバーにシェアする曲のアイディアをまとめたりする際にも威力を発揮することでしょう。
このSTAGEMAN 80、多くの可能性を秘めた多目的なシステムと言えるでしょう。例えばギタリストとベーシストで外に出て、フット・コントロールでドラム・パターンを切り替えながらフリー・ジャムを楽しんでも良いし、自宅で演奏する際にドラム・パターンをガイドとして鳴らしても良し。良音質で最大音量時でも音色が「硬くならない」のも素晴らしい点です。家に置いても店舗に置いてもマイカーに搭載してもストリートに連れ出しても楽しめること間違いなしの1台です。
※使用ギター:Fender / Stratocaster(1957年製)
※使用ベース:Fender / Jazz Bass(1962年製)
価格:¥75,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。