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  • “高音質”で音楽を聴く楽しみを!ハイレゾ入門〜第27回

DSDが描くアナログ・ライクな音の世界

DSD対応録音・再生機器

  • 文:菊池真平

ハイレゾ音源の中でもアナログ・ライクな音質が魅力のDSD。ここ数年はPCM音源に比べてリリース量も多くはありませんでしたが、最近は音源の数や再生・録音機器も増えてきているようです。そこで今回はあらためてDSDを再生・録音できる機器、さらに編集ソフトの3本立てでDSDの魅力を紹介していきます。

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 つい最近カセットテープの取材に行ってきました。おそらく30代以上の世代には、懐かしい響きですが、また一部で流行の兆しをみせているようです。レコードと同じように、ただのノスタルジーではなく、若い世代からも物質的なカッコ良さもあって注目されているようです。また音質的にも、アナログならではの温かみが感じられ、アメリカではインディーズ・バンドを中心にカセットテープで新譜をリリースすることもあるようです。ただし、新品のカセットテープを日本国内のブランドとして販売しているのは、すでにマクセルのみですし、以前のようにハイポジション、メタルポジションといった音質に特化したようなグレードはもうありません。さらに、カセットデッキもほぼ販売されていないのが実情です。カセットテープを昔のように楽しむには、なかなか難しいように思えます。

 ではデジタル音源でアナログ・ライクな音質を楽しむことはできないのでしょうか。現在アナログのような立体感や空気感が得られるデジタルの録音フォーマットとして、注目が集まり徐々に浸透しつつあるのがDSDです。DSDは現在主流のPCM方式の音源とはやや異なり、デジタルでありながらアナログのような質感を伴ったサウンドが得られます。それ故、いつも演奏に親しんでいるミュージシャンやエンジニアがDSD録音した音源を聴くと、生の音質に近いという感想を抱く方も多くいます。DSDがなぜそのような音質が得られるかという点については、とても混みいった話になってしまうため、DSDについて詳しく知りたい方は2011年に発売された柿崎景二氏が書いた『サウンド・クリエイターのための、最新版デジタル・オーディオの全知識』(白夜書房)等も参考にしてみて下さい。またDSDについての基本的な説明は、以前にこの連載(『よりアナログに近い質感の音「DSD」の魅力とは?』)で採り上げさせて頂きました。ぜひそちらも、チェックしてもらえれば幸いです。

 DSDはまだ広く一般に広まっているとは言い難いですが、前回の連載で採り上げた時よりも、販売されている音源の数や再生機器が増えてきています。また数は少ないですが11.2MHzという、さらに大きなデータで、高密度/高繊細なサウンドが聴ける音源も登場してきています。さらにこれまでは、DSDで録音する機器はあっても、なかなか編集するソフトまではなかったのですが、一度PCMに変換しての編集にはなりますが、DAWの代表ソフトのひとつでもある『SONAR』などがDSDに対応するようになりました。それ故、これまで以上にDSDを楽しめる環境が整いつつあります。今回は、アナログライクな質感も感じられるDSD音源をぜひ体験して頂きたく、改めてDSDを再生/録音できる機種、さらに編集ソフトの3本立てでご紹介したいと思います。難しいセッティングはなしにDSD音源を楽しめる機種も多数出ているので、これまで以上にDSDが描き出す音の世界が身近になっています。もちろんカセットやレコードのアナログ音源も魅力ですが、DSD音源も一度聴いてみて下さい。きっと新たな音楽の可能性を感じると思います。

DSD音源を手軽に再生できる機器

 DSD音源を聴くためには、それに対応したD/Aコンバーター(DAC)が必要になってきます。またPCでの再生の場合は対応するソフトも必須です。中には一度、PCM音源に変更して聴くことができる機種や、ダウン・サンプリングされるものもあります。できればそのまま再生可能な“ネイティブ”を謳っている機種やソフトを選んで下さい。その方が、ダイレクトにDSDの魅力を味わえます。また11.2MHzの音源を楽しみたい方も、それに対応したDACを選ぶ必要があります。ただし、手軽にDSDを聴いてみたいと考えている方は、ポータブルなデジタル・オーディオ・プレーヤー(DAP)でも再生が可能な機種が続々登場してきています。これを手に入れて、イヤフォン/ヘッドフォンで聴くという方法もあります。この方法ならば、DSDの再生に対応する再生ソフトも必要ないので、手軽にDSD入門ができるはずです。それでは、タイプ別にDSD音源を再生できるDAC(DAP含む)をご紹介したいと思います。

据え置き型

 据え置き型のDACは、PCを使ってのDSD音源の再生に向きます。ポータブルなモデルよりも大型のものが多く、内部のアナログ回路等にこだわれるため、音質を追求したモデルも多いです。より高音質な再生を望む方には特にお薦めで、アンプに接続しスピーカーで鳴らす場合に最適です。もちろん品質の高いヘッドフォン・アンプが内蔵されている機種もあります。ただし近年据え置き型であっても小型化しているものもあり、ポータブル・タイプとの境界が曖昧になりつつあります。ここではRCA端子など、簡単にアンプなどに接続できる機種をご紹介します。

TEAC UD-503

 近年ではハイレゾ関連の製品にも力を入れている老舗のオーディオ・ブランド、ティアックのUD-503は、DSDの11.2MHzのネイティブ再生にも対応した同ブランドとしては上位機種のUSB DACです。DSDのみならず、PCM音源も32bit/384kHzまでのD/Aが可能で、チップには旭化成エレクトロニクス社の“VERITA AK4490”が2つ使われています。アナログ部もハイエンド・オーディオでも用いられるデュアル・モノラル構成で、音質にもこだわりが感じられます。また、外部クロックを接続できるBNC端子も備わり、レコーディング時に使う外部クロックを持っていれば、より音質を追い込むことも可能です。さらにヘッドフォン・アンプも搭載し、フルバランス/パラレル・アンバランス駆動ができ、プリアンプの機能も備えています。出力もRCAピンのアンバランスに加え、XLRキャノンのバランスも可能で、パワード・モニターに直接接続して、DSDを楽しむこともできます。DSDを再生するソフトも、同社が無償で提供している『TEAC HR Audio Player』を使うことができます。おそらくこれ1台あれば、暫くは満足できるハイレゾ環境が整うのではないでしょうか。

■価格:オープン(市場実勢価格:税込159,840円)
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PS Audio NuWave DSD

 ハイエンドなオーディオ機器も手掛け、オーディオ・ファンからも一目置かれるのがアメリカのブランド、PS Audioです。このNuWave DSDは、NuWave DACの後継機種で、DSDは5.6MHzまで対応し、PCMは24bit/192kHzとなっています。D/Aは、DSDの11.2MHzやPCMの24bit/384kHzに対応していませんが、両スペックの音源はまだ少ないことを考えると、十分なスペックと言えるのではないでしょうか。上位機種であるDS(DirectStream)DACでも採用されているロー・ジッター・クロック・テクノロジーを用い、低ジッター化を実現して、音場の表現力を高めています。また長年ハイエンドな機器を開発してきた同社ならではと言えるアナログ回路のノウハウも詰め込まれ、電源回路やコンデンサーの質にもこだわりが感じられます。上位機種の定価が66万円(税抜)であることを考えれば、かなりのコストパフォーマンスの高さだと思います。何よりも、ハイエンド・オーディオのような雰囲気が漂うデザインも嬉しいですね。音質も脚色の少ないストレートで繊細な傾向のサウンドです。価格は10万円を超えてしまいますが、満足度の高いUSB DACだと思います。ちなみに同社は、アナログ・レコードをDSDで録音する際に最適な“NuWave Phono Converter”もラインナップしています。これを使ってレコードを、DSD音源にしてアーカイブしても面白いと思います。

■価格:税抜150,000円
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M2TECH Evo DAC Two

 コンパクトな筐体に最先端の技術が詰め込まれたDACがM2TECHのEvo DAC Twoです。M2TECHは、イタリアのブランドで、日本ではサードウェイブという会社が取り扱っています。このEvo DAC Twoは、ESSテクノロジー社のSabre ES9010K2MコンバージョンICを使い、DSDでは11.2MHz、PCMでは32bit/384kHzまでの音源に対応しています。電源はUSBバスパワーでの駆動も可能で、旅先などに持ち出した際にも重宝しそうです。もちろんアナログ部にもこだわって製作され、低ノイズのオペアンプが使われています。またリモコンで、ボリューム、バランス、ミーティングなどの切り替えが可能となっています。この上位機種の“Evo DAC Two Plus”になると、BNC端子が付き、外部クロックを入力することができます。同社からは、同じサイズの外部クロック“Evo Clock Two”も登場し、より音質にこだわるユーザーは、最初からPlusの方を購入しても良いかもしれません。外部クロックは一般的に高額な物が多いですが、このEvo Clock Twoは比較的求めやすい価格で販売されています。さらに同社には、フォノイコライザー入力を備えたユニークな上位機種“Joplin MKII”もあり、アナログ・レコードも聴く方にはお薦めです。音質的には、明るく切れのあるサウンド傾向だと思います。

■価格:税抜100,000円
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Audinst HUD-DX1

 この製品も上記で紹介したEvo DAC Two同様に、非常にコンパクトなDACです。Audinstはコストパフォーマンスに優れた小型のヘッドフォン・アンプやDACを得意としているブランドです。DACには、ESSテクノロジー社のES9018K2Mを使い、DSDは11.2MHz、PCMは32bit/384kHzまで対応可能です。実売で4万円を切るクラスでも、現在市販されている最高スペックとも言える音源に対応しているのは嬉しいですね。またオペアンプには、その音質に定評がある新日本無線社のMUSES8920が使われています。なんとオペアンプは、自分で交換できる仕様になっており音質を変化させることも可能です。エフェクターを自作するユーザーは特に、心惹かれる仕様ではないでしょうか。入出力はシンプルですがRCA端子も付いているため、アンプに接続してスピーカーで音を鳴らしたいユーザーにも対応しています。ヘッドフォン・アンプ部もTI(Texas Instruments)社のTPA6120A2が使われ、イヤフォン/ヘッドフォンでも十分に楽しめる音質です。DSD再生の入門機としても、十分な性能を備えたコストパフォーマンスに優れる1台だと思います。

■価格:税込39,800円
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FOSTEX HP-A4BL

 スピーカーなどにも定評があるフォステクスが手掛けたDACがHP-A4BLです。DAC内蔵のヘッドフォン・アンプとして、人気を集めたHP-A4をベースに新たなスペックで登場しています。このDACは、バーブラウン製のDACチップPCM1792Aを使い、DSDで11.2MHz、PCMで24bit/192kHzまで対応しています。ただし、Windowsで使う場合には専用のドライバーを入れる必要があり、MacではDSDが5.6MHzまでとなります。11.2MHzの音源はそれほど多く出ていないので、いますぐに聴きたい音源がない場合にはMacでも問題ないと思います。この機種の大きな魅力は、ヘッドフォンのバランス出力が付いている点です。バランス出力で接続できるヘッドフォンは高価なモデルが多く、それほど持っている方も多くはないと思いますが、音質という点においては大きなメリットがあり、繊細なサウンドを聴くことができます。もちろんアンバランスの出力もついているので、一般的なヘッドフォン/イヤフォンを接続して楽しむこともできます。さらにRCAピン端子も付いているため、外部アンプへの出力も可能です。ヘッドフォン/イヤフォンは使うインピーダンスによって、HI/LOのゲイン切り替えもできます。DACをこれから購入する方で、ヘッドフォン/イヤフォンでの高音質なリスニング環境を整えたい方やバランンス出力が必要な方にお薦めです。

■価格:税抜48,000円
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iFI-Audio micro iDAC2

 イギリスのiFI-Audioから発売されているmicro iDAC2は、バーブラウン製のチップを搭載し、DSDは256(11.2MHz〜12.4MHz)、PCMは32bit/384kHzまで対応し、縦長のスマートな筐体からは想像できない実力を備えています。さらにUSB3.0にも対応しています。入出力は非常にシンプルでUSB端子と、アナログのRCAピン端子、ミニジャックのヘッドフォン端子、さらにSPDIF RCAといった出力のみです。それ故、初心者でも接続に迷うことはないでしょう。これだけ小さなサイズながら、アナログ回路にもこだわりが詰め込まれ、オーディオ・グレードの高品位なパーツを使って組まれ、アンプ部はクラスA動作のディスクリート回路が用いられており、音質にもこだわりが感じられます。音質は明瞭度の高いクリアなサウンド傾向。非常に軽量コンパクトで持ち運びに向きますが、家でRCAケーブルなどを使って配線する際は、その軽さで動いてしまうのがやや難点。ただし、うまく固定できれば、省スペースでハイレゾ環境を実現できます。ほとんどのソースを再生できるため、今後長く使うことができる1台でしょう。

■価格:税抜55,000円
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ポータブル・タイプ

 すでにiPhoneなどのiOS端末や、Andoroid端末を使ってもDSDの再生が可能になっています。そういった携帯端末でのハイレゾ再生に対応するために、各社からポータブル・ヘッドフォン・アンプにDACの機能を内蔵した製品が登場しています。今回は、その中でもDSDの11.2MHzまで対応(PCとの接続時)している機種をひとつだけご紹介します。

xDuoo XD-05

 ポータブルのヘッドフォン・アンプ、ハイレゾ対応のDAP“X3”など、小型のデジタル・オーディオ機器を中心に展開しているのがxDuooです。このXD-05は、PCとUSB接続をして使う場合にはDSDが11.2MHz、PCMは32bit/384kHzまで対応できます。iOS端末と接続する場合は、カメラ・コネクションキットを介して接続しDSDは5.6MHz、PCMが24bit/192kHzまで、USB OGTケーブルを使いアンドロイド端末と接続する場合も同スペックまでD/A可能です。ヘッドフォン・アンプ部は、様々なイヤフォン/ヘッドフォンに対応するため3段階にゲインを変更でき便利です。内部には4.2Vのリチウムイオン・バッテリーを内蔵し、フル充電で約10時間の連続駆動が可能です。日頃の通勤/通学で、DSDやPCMのハイレゾ音源を楽しみたい方は、こうしたDAC内蔵型のポータブル・ヘッドフォン・アンプを選択してみてはいかがでしょうか?

■価格:税込21,800円
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DSD対応ポータブル・デジタル・プレーヤー

 より手軽にDSD再生に取り組みたい方には、DSD再生が可能なポータブル・デジタル・プレーヤー(DAP)がお薦めです。現在、各社から様々なDAPが登場し、ハイレゾ対応のDAPは戦国時代と言えるような状況になりつつあります。いずれまとめてご紹介させて頂きたいと思いますが、今回は3機種のみ厳選して簡単にご紹介しましょう。

FiiO X7

 コストパフォーマンスに優れたポータブル・デジタル・オーディオ機器を手掛けるFiiOから登場したX7は、ESSテクノロジー社製のES9018SをDACチップに使い、DAPでありながらDSD5.6MHzのネイティブ再生に対応しています。PCMもWAVであれば64bit/384kHzというスペックを誇るFiiOのフラグシップ・モデルです。またアンプ・モジュールを交換することができ、購入後も音質の変化を楽しめます。内部にはCortex-A9クアッドコアCPUを内蔵し、Andoroidアプリも動かせます。さらに音質優先の“Pure Musicモード”も搭載しています。洗練された筐体デザインも秀逸で、やや高価ではありますが、ハイレゾ音源を長く楽しめる充実のDAPだと思います。

■価格:オープン(市場実勢価格:税抜99,900円)
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ONKYO DAC-HA300

 オーディオ・ブランドの老舗オンキヨーから発売されているDAPがDAC-HA300です。このモデルは、“ポータブル・ヘッドフォン・アンプ/SDプレーヤー”として打ち出しており、iOSやAndoroid端末のヘッドフォン・アンプとして使うことも想定されたDAPです。そのためアンプ部へも力を入れて開発されています。ただし、microSDカードに入れた音源の再生にも対応し、DACにバーブラウン製のPCM1795を搭載し、DSDは5.6MHzまでのネイティブ再生ができ、プレーヤーとしても十分なスペックを誇っています。ちなみにPCM音源は、24bit/192kHz(FLACは96kHzまで)となります。またUSB入力も付いているため、PCからの再生にも対応可能です。様々な機器からのハイレゾ再生に対応し、ポータブル・ヘッドフォン・アンプの購入を考えていたユーザーにもお薦めです。

■価格:オープン(市場実勢価格:税込40,000円前後)
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Astell&Kern AK100II

 エントリー・モデルからハイエンドなDAPまで、ポータブル・デジタル・プレーヤーの市場を牽引しているのがAstell&Kernです。このAK100IIは、その中でも、エントリー〜ミドル・クラスの製品となります。シーラスロジック社のハイエンドDACであるCS4398を使い、DSDは5.6MHzまでの再生に対応しています。ただし、再生に関しては176.4kHzのPCM音源にリアル・タイムに変換したサウンドになります。またPCMに関しては、32bit/384kHzまでのファイルに対応(ネイティブ再生は24bit/192kHzまで)しています。ヘッドフォン出力は、3.5mmのアンバランス端子に加え、2.5mmの4極バランス出力も備えているため、バランス接続可能なヘッドフォンを所有している方であれば、解像度の高い音質を楽しめるはずです。

■価格:オープン(市場実勢価格:税込75,000円前後)
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DSD録音対応機

 まだ数は少ないですが、近年では求めやすい価格でDSD録音が可能な機器が販売されています。DSDでの録音はPCMと違い、編集ソフトが充実していないため、それほど多く用いられていないのが実情です。またマルチ・チャンネルで録音するためには、PCMでの録音以上にコストがかかるため、そういった音源もまだまだ数は少ないと思います。しかし、DSDならではの臨場感や奥行きのあるサウンドは、音楽を演奏する立場のプレイヤーが聴くと、とても説得力のある音質で、魅力的に聴こえます。それ故、ライブなどの録音や複数のチャンネルや複雑な編集が必要のないジャンルの録音、さらにマスター・レコーダーとして活用されています。また、レコードのデジタル・アーカイブをするために、DSD録音機を使っている方もいます。最近では、PCMに一度変換した上での編集ですが、下記で説明するように有名DAWソフトでもDSDデータの編集に対応するようになりつつあります。自分だけのDSD音源を制作し、それをDAPなどで聴いて楽しむことも可能です。ぜひDSDでの録音にもチャレンジしてみて下さい。

KORG DS-DAC-10R

 DSDを推進するコルグから登場したDS-DAC-10Rは、求めやすい価格でDSDのAD/DAが可能なモデルです。ただし、本格的なレコーディング用というよりは、アナログ・レコードのアーカイブなどを目的としています。そのためレコード・プレーヤーからの直接入力が可能なフォノ入力端子を備えています。録音に関しては、プロも愛用するMRシリーズで培った技術を惜しみなく投入し、クオリティの高い音質で録音できます。そのスペックも録音/再生ともDSDで5.6MHz、PCMで24bit/192kHzを誇ります。またDSDの録音/再生が手軽にできる同社の『Audio Gate4』を使えるのも大きなメリットです。

■価格:オープン(市場実勢価格:税込60,000円前後)
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KORG MR-2000S-BK-SSD -1bit

 プロ・クオリティのDSD録音が手軽にできるインターフェースとして登場したMR-2000。プロのエンジニアはもちろん、一般のユーザーからも支持されています。その最新バージョンは、記憶媒体として耐久性や信頼性に優れているという128GBのSSDを搭載したモデルです。同時録音は2chまでで、DSDで5.6MHz、PCMで24bit/192kHzまで対応しています。入出力端子は、XLR/RCA両方付いているため、ライブ・レコーディングやバンドの一発撮りから、レコード等のアーカイブまで幅広く対応できる1台です。市場価格もこなれてきた今が買い時かもしれません。

■価格:オープン(市場実勢価格:税込100,000円前後)
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TASCAM DA-3000

 プロ用の音響機器を数多く手掛けてきたタスカムから登場した、マスター・レコーダー/ADDAコンバーターがDA-3000です。DSDは5.6MHz、PCMは24bit/192kHzまで対応しています。コルグのMRとの大きな違いは、内部に記憶媒体を持たず、SDHCカードに記録する点です。またコンパクト・フラッシュにも対応しています。同時録音は2chまで。アナログの入出力は、RCA/XLRに対応し、こちらも幅広いソースの取り込みができます。出力はデュアル・モノラル構成となり、クロックに精度1ppmのTCXO(温度補償型水晶発振器)を使い、音質にこだわったスペックになります。既存音源のバックアップやマスター・レコーダーとしても重宝しそうです。

■価格:オープン(市場実勢価格:税込100,000円前後)
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DSD編集ソフト

 DSD音源が広まらない原因のひとつとして挙げられるのが、編集の難しさです。DSDをダイレクトに編集することが難しく、PCM音源のような成熟した編集環境を整えることができません。そのため音質的なメリットがあったとしても、DSD録音の音源がPCMに変わってメジャーになることは現状では難しいと思います。しかし、徐々にDSDを編集できるソフト(※ダイレクトではないものも多いですが)も登場しはじめ、チャレンジしやすい環境は整いつつあります。もしレコーダーを購入された方は、以下のようなソフトも揃えて、DSD音源を制作してみて下さい。

Cakewalk SONAR Professional

 DAWソフトの代表のひとつと言えるのが、Cakewalk社が提供するSONARです。SONARはWindows専用のソフトですが、最新バージョンは64bit倍精度浮動小数点演算にも対応し、高音質を実現しています。これ1本で楽曲制作、レコーディング、さらにはマスタリングまで対応可能です。またDSDのインポート/エクスポートも可能で、DSDファイルを読み込み、一度PCMに変換し編集、それを再度DSDファイルで書き出すということもできます。同じような仕組みで、DSD音源を編集できるDAWソフトは増えつつあります。

■価格:オープン(市場実勢価格:税込27,000円前後)※パッケージ版
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KORG Audio Gate4

 コルグの音楽再生ソフト“Audio Gate”シリーズが4作目となり、DSDの録音にも対応できるようになっています。さらにレコード・アーカイブを念頭に置き、5種類のRIAAカーブも内蔵しています。これをうまく使うことにより、より録音時に近い音質に近づけることも可能です。Audio Gate4の優れた点は、こういった処理をDSD信号のまま行なえる点です。このソフトは、MRシリーズなど、KORGの1bit対応の機器では無料で使えることも魅力です。

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TASCAM Hi-Res Editor

 フリーダウンロードできるDSD対応の編集ソフトがタスカムのHi-Res Editorです。2chまでですが、DSDは11.2MHz、PCMは32bit/384kHzまでのファイルを取り込み、ファイルの変換、分割、変換などの基本的な編集が可能になっています。TASCAMのDA-3000等を使って録ったDSD音源を、より聴きやすい形でアーカイブすることができます。以前は、Windowsのみでしたが、Mac版(対応OSはOS X 10.9以上)もリリースされています。

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まとめ

 今回は、さらに身近になりつつあるDSD関連製品をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか? DSD録音された音源は、一度聴いて頂ければ、おそらく楽器を演奏する方には生音の感触に近い音質に感じるはず。近年では、DACがDSDに対応していることも一般的になるので、まだまだタイトル数は少ないですが、DSD音源を購入して聴いてみて下さい。

 それから、録音できる機器も増えつつあります。レコードやカセットなどのアナログ音源をDSDでアーカイブして自分だけのDSD音源を作って、普段のリスニングで聴くのも楽しいですね。一度やってみるとわかるのですが、アナログ・レコードの質感を、十分に感じられるようなデジタル・データができあがります。その音質の音源を、DAPやスマートフォンなどに入れて通勤/通学の際に聴くということも可能です。いくらレコードの音質が好きでも、プレーヤーを移動の時に持ち運ぶわけにはいかないですからね。ぜひ多くの方にDSDを盛り上げて頂いて、さらに面白い製品が各社から登場してくれば、より一層リスニング・ライフが充実していきそうです。


【ご愛読い頂いた皆さまへ】

 2014年5月23日に連載第1回目をスタートしてから、ハイレゾの魅力をハード/ソフトの両面からご紹介してきた当連載は、本号を持って最終回となりました。2年間に渡りご愛読頂き、誠にありがとうございました。当連載を通して、皆様にハイレゾ音楽の世界に飛び込むきっかけをご提供できましたら幸いです。今後もハイレゾへの入門にお役立て頂きますよう、是非過去のアーカイブ記事も、引き続きお楽しみください。

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プロフィール

菊池真平(きくち・しんぺい)
音楽雑誌「Player」、オーディオ誌を発行するステレオサウンド社で「Beat Sound」、「Digi Fi」の編集に携わった後に独立。現在はフリーランスで、ビンテージ・ギター関連書籍/ギターに関する雑誌等に、編集/ライターとして携わる。国内外のミュージシャンへのインタビュー等も多数行っている。

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