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- 2024/11/16
Electro-Harmonix / Big Muff π
今では入手困難となってしまったビンテージ・エフェクターの数々を紹介する本連載。今回スポット・ライトを当てるのはエレクトロ・ハーモニックスのビッグマフだ。本機はその中でも特に人気が高い、“ラムズ・ヘッド”と呼ばれる時期のもので、ダイナソーJr.のJ・マスシスやデヴィッド・ギルモアなどの使用でも知られる。前回に引き続き試奏者に名越由貴夫(Co/SS/gZ)を迎え、歴史的名機のサウンドに迫っていこう。
"ラムズ・ヘッド"の愛称を持つ世界的名器。わずかな間のみ生産された第2期ビッグマフ。
アメリカン・ファズの名作として高い人気を誇るビッグマフの誕生は1969年。エレクトロ・ハーモニックス社の創始者であるマイク・マシューズと、その友人であり、世界随一の開発力を誇るベル研究所に勤めていたボブ・マイヤーによって“なめらかなサステインを作り出すエフェクター”として設計された。初期のビッグマフは現在よりもひと回り小さく、コントロール類が三角形状に配置されていたため、その外観から“トライアングル・ノブ”と呼ばれている。そのトライアングル・ノブは1973年頃まで生産されていたが、唐突なモデル・チェンジによって姿を消してしまう。代わって現われたのが当ページで紹介する第2期のビッグマフ、通称“ラムズ・ヘッド”だ。本体には新たなフォント・デザインとエレクトロ・ハーモニックスのロゴマークである女性の顔の絵がプリントされるようになるが、この女性の顔が羊に似ていたことからラムズ・ヘッドの愛称を持つようになった。
外観には大きな変化があったラムズ・ヘッドだが、その基本回路に大きな違いはない。しかし、搭載されるパーツや基盤レイアウトの変化に起因し、現在でも世界中で愛され続けるラムズ・ヘッド特有の音色を宿すこととなった。また、ロゴに数色のカラー・バリエーション・モデルが存在することもこの時期の特徴のひとつである。ブルー、レッド、ヴァイオレット、ブラックなど、5種のカラー・バリエーションが確認されているが、当ページで紹介するのは中でも流通量の少ないブラック・カラーを纏い、“リアクター(原子炉)”と称される異質な形状のノブを備えた1974年製の個体だ。
その後、1977年頃に2度目の大きなモデル・チェンジが起こり、現在では3rdモデルと呼ばれている現行ビッグマフの基となったバージョンの登場をもって、ラムズ・ヘッド期は終焉を迎えた。
"ほかのエフェクターを併用しなくても、
これだけで空間を支配できる。"
『ギター・マガジン2016年5月号』に掲載中の本連載「ビンテージ・エフェクター・カフェ」に、名越由貴夫のコメント全文、さらにBig Muff πの内部写真とその分析が掲載されています。ファズを愛する手練は本機をどう評したのか。当時のエフェクターはどのような回路やパーツで構成されているのか。是非ご覧ください。
価格:オープン