アコースティックエンジニアリングが手がけた“理想の音楽制作を実現する”環境
- 2024/11/25
VOX / AV15
モデリング・アンプと言えば「デジタル技術で往年の名機アンプ・サウンドを再現する」というのが一般的だ。老舗アンプ・ブランドのVOXからも、VXシリーズ、VTXシリーズなど複数のデジタル・アンプ・シリーズがラインナップされている。さらに「VALVETRONIX」というVOXブランドならではのアプローチで、アナログ「真空管サウンド」をデジタル・サウンドに上手くミックスした独自のチューニングにはファンも多い。そんなVOXがまた新しい手法でアンプを生み出した。このAV15を筆頭にバリエーエションを揃えるAVシリーズは、アナログ回路で構成された複数のサウンドを持つアンプだ。
このアンプには8種類のアンプ・キャラクター(プリアンプ)が搭載されている。しかも、アナログ回路によって8台分のプリアンプ回路がこのアンプの中に納められている。アンプ8台? そう、VOXの技術によってダウン・サイジングしたリアルなプリアンプ回路を使用した、新しい発想のアナログ・アンプなのだ。そのアンプの種類は定番のアメリカン・クリーンからVOX伝統のAC15/AC30モデル、そしてブリティッシュ・スーパーリード・サウンドやモダン・ハイゲイン・サウンドまでもが用意された。
さらにVOXのこだわりとして真空管(12AX7)が搭載されており、プリ部/パワー部での真空管の回路特性をモディファイできる4つのモード切り替えスイッチを備えている。まずプリ管に対して、高域をブーストする「BRIGHT」と低域をブーストする「FAT」2つを備えており、あらかじめ選択したアンプ・モデルのサウンドに味付けを加える事ができる。BRIGHTをONにすると歪み感が上がったりするのもリアル・アンプならではの反応だと言えるだろう。
そしてパワー管に対しては「BIAS」と「REACTOR」という2つのスイッチを備えている。「BIAS」では真空管の動作点を変更することで、クリアでモダンなサウンド(ノーマル)と、どちらかと言えば歪みやすいビンテージ感溢れるサウンド(ON時)を選択可能だ。そしてもうひとつ、聞き慣れない「REACTOR」というスイッチは、簡単に言ってしまえばパワー・アンプ部の帰還量とダンピング・ファクターを切り替えることで、よりダイナミックでワイド・レンジなキレのあるサウンドを得られるモードだ。これらのスイッチはマニアックな仕様ながら、アンプ・モデルによって作られたトーンをさらに追い込むサウンド・メイクには必須のポイント。このスイッチの組み合わせを変えるだけでサウンドは大きく変化し、さらに多彩なバリエーションを楽しめる。
エフェクトも必要度の高いモジュレーション、ディレイ、リバーブを搭載している。それぞれ独立してエフェクト効果の深さやタイム、フィードバック量を調整する事も可能だ。自宅で楽しむだけでなく、ちょっとしたセッションやライブ時にも具合の良いプリセットは非常に「現場的」で、お飾りエフェクト効果ではない。このあたりも好印象だ。
そしてVOXならではのこだわりはヘッドフォン・アウトにも隠されている。VOXブランドで人気のamPlugシリーズのアナログ・スピーカー・シミュレーターが搭載されているのだ。これにより、ヘッドフォン使用時にも冷たいライン・サウンドではなく、ウォームなスピーカー・シミュレート・サウンドが楽しめる。レスポンスも申し分なく、プラクティス・アンプとしても最適な1台。もちろん、手前にエフェクター等をおいて同時に使用しても良い。アナログ・アンプならではの歪み感を味わえば、このアンプのポテンシャルの高さが実感できるだろう。
※使用ギター:Crews Maniac Sound / OST-60
価格:¥30,000 (税別)
価格:¥45,000 (税別)
価格:¥57,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。