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- 2024/11/16
Gibson Nashville Dealer Tour 2016 Pt.5
ギブソン社トップラインとなるトゥルー・ヒストリックやヒストリック・セレクトを生み出すギブソン・カスタムについては、第90回にてハンドセレクト作業のレポートを行ないましたが、今回はレス・ポールの製作工程のポイントを絞って動画レポートします。特にギブソン・カスタム・ファクトリーの内部にムービーカメラが入ることはなかなかありませんから、ぜひこの機会に動画&記事にてこだわり満載の各工程をお確かめください。
2014年までの人気シリーズ、ヒストリック・コレクションは、2015年にボディ・シェイプ/パーツを含むモデル自体のブラッシュアップと製作工程の見直しが行なわれ、かつてない次元でオリジナル・ビンテージを追求した新シリーズ、トゥルー・ヒストリックとして生まれ変わりました。毎年のようにマイナー・チェンジを経てきた“ヒストリック”シリーズですが、2015年から2016年にかけての見直しはなし。つまり、現段階で完成されたシリーズであると言って良いでしょう。ここではレス・ポールの製作工程を、ポイントを絞ってレポートしていきます。工場ツアーの最後には、ヒストリック・プログラム責任者であるエドウィン・ウィルソン氏のインタビューも行なったので併せてお楽しみください!
ギブソン・カスタム・ディヴィジョン立ち上げ当初のオリジナル・ペインターであり、エイジングのオリジネイターであるトム・マーフィー氏。ディーラー・ツアーの最終日にヒストリック・セレクトのハイライト・モデル “マーフィー・バースト”の実演が行なわれたので、レポートしたい。今回はグリーン・レモン系のカラー・フィニッシュをテーマに2本のレス・ポールが用意され、杢や材色の違いに対するアプローチを説明してくれました。
「2本のギターは材の性質が違うので、対応の仕方も異なります。どちらも見栄えは良いのですが、色が明るめの材の塗料にはグリーンを加えました。塗装する際には、それぞれの個体を見て、こうした微調整が必要かどうかを判断し、1本ずつ塗装します。基本的な作業は同じですが、目的の色に仕上げるために、別な色を加えて調節するわけです」
以上のように個体特性を判断して塗料の調合を変え、最終的には同じ色合いを作っていくそう。“緑がかった色味”について、マーフィー氏は面白い見解も披露してくれました。
「ブラウンとイエローが混ざると、間違いなくグリーンがかった色になります。オリジナルのビンテージ・レス・ポールの色がグリーンに変化するのは、私の見解では、レッドがブラウンに変化して、残りのイエローと合わさるからだと考えています。例えば“アイスティー”と呼ばれる色は、レッドがまだ残っているので、グリーンに変色せず、ああいった色に見えるのでしょうね」
フィニッシュ・ペインター/エイジング技術者としての確かな腕と目利きは、こうした経験と考察を背景にしていることがよくわかるか思います。
──2016年のトゥルー・ヒストリック・モデルについて、前年から変更された点はありますか?
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは3月18日(金)を予定。INTERVIEW Edwin Wilson(Gibson Custom Historic Program Manager)
エドウィン・ウィルソンが語るヒストリック・セレクト
トゥルー・ヒストリック、及びヒストリック・セレクトのモデルについての変更予定はありません。これらのギターを現在の形にするまでに長い時間をかけてきました。ですから、2016年はこれらのギターの継続生産に集中していきます。
──スタンダード・ヒストリック・リイシューについて教えてください。
これらのモデルは2014年のリイシュー・モデル(註:ヒストリック・コレクション)を基にしたもので、ハンドセレクトなどのオーダーに対応しています。
──リイシュー・モデルとしては完成形と言える、トゥルー・ヒストリック・モデルの魅力を改めて紹介いただけますか。
ビンテージ・ギターが好きな方、単純にレス・ポールが好きな方、さまざまな皆様の期待に応えられるギターであることです。これは今日の市場において、インターネット経由で注文をいただいた際にも、あらゆる期待に対して完璧に応えられるギターを確実にお届けするということを意味します。私たちは現存する数多くのオールド・ギターに限りなく近い製品を作るよう努力しています。サウンドやルックス、プレイアビリティといった楽器のあらゆる面において、トゥルー・ヒストリックは満足いただけるギターだと自負しています。
──年4回ほど訪れる日本のディーラーについてはどのような感想をお持ちですか?
時間を割いてギブソンのカスタム・ショップを訪れて、私たちが仕入れた材の中からトップ材やバック材、ネック材を選別し、お客様方の要望に応えようとする姿勢と努力は、他のどの国とも違います。我々は日本のディーラーの方々に心から敬意を払っています。
──あなたも年に2回、日本にいらしていますね。
私の出張で最も重要なのが、日本訪問です。日本自体が大好きですし、日本の楽器店に行くのも大好きです。店員さんも歓迎してくださいますし、我々が気持ちを込めて製作したギターが実際に店頭に並び、吟味されている姿を見ることが、次なる意欲に繋がるのです。そして何より日本のお客様には感謝しかありません。トゥルー・ヒストリック/ヒストリック・セレクトという最高のリイシュー・モデルを作ることができ、私は今、1993年からずっとリイシュー・モデルの開発に関わってきたことを誇りに思っています。2016年はさらに良い年になります。なぜなら私たちも年を追うごとに成長しているからです。日本の皆さんには、私たちが皆さんのための楽器作りを楽しんでいるのと同じぐらい、私たちの楽器で楽しんでいただければ嬉しいですね。