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- 2024/11/16
ネットワーク対応CDレシーバー
長年買い込んだCDもまだまだ聴きたいけど、ハイレゾも楽しんでみたい! という望みを叶えてくれる「ネットワーク対応CDレシーバー」を今回はご紹介。メリットやデメリットも含めて、選び方などその魅力に触れていきます。
このコラムでは常にハイレゾの魅力をお伝えしてきましたが、いまでもCDをメインで聴いている方は多いと思います。私も、青春時代に買った思い出のCDをなかなか手放せません。ふとした瞬間にジャケットを眺めるだけで、なんとなく当時の思い出が蘇ってきます。特に少ないお小遣いをためて買ったCDは、そういった記憶を呼び覚ましてくれるようでもあり、収録された音楽以上の価値を生み出してくれるように思っています。そんなことを繰り返していると、なかなか物が減らなくて置き場に困ってしまうのですが……。
さて、これまでハイレゾ音源がCD以上に情報量が多く、音質的にメリットがあることをこのコラムでも幾度となく採り上げてきました。しかし、前回のコラム(第23回『山下達郎〜ラブライブ!まで手がけた原田光晴氏が語るハイレゾ時代のマスタリングとD/Aの重要性』)でマスタリング・エンジニアの原田光晴氏が「16bit/44.1kHzのCDフォーマットもよくできた規格」と話していた通り、CDが一律ハイレゾ音源に劣るということはありません。なぜならば、CDが発売されてから30年以上も経過し、その過程で作り手側のテクニックも蓄積されているため、パッケージ・メディアとしてはハイレゾに比べると成熟していると言えるからです。それ故、音源の情報量や周波数特性ではハイレゾに分がありますが、音楽作品としての完成度という意味ではCDもかなり高いレベルにあると言えます。さらにCDプレーヤーに至っても各メーカーに長い技術の蓄積があるため、再生クオリティの高い機器が数多く生み出されてきました。
今回のコラムでは、思い出のCDも再生できるネットワーク対応CDレシーバーを紹介したいと思います。ハイレゾも試してみたいけど、CDも再生したいという方にぜひお薦めのプレーヤーなので、いま新しいリスニング・システムの購入を考えている方には、ぜひ参考にして頂ければと思います。
ネットワーク対応CDプレーヤーのメリットは、先にも述べたようにハイレゾ/CDの両方の音源を楽しめることです。さらに音質に優れたインターネット・ラジオも聴けるため、様々な音楽に出会うこともできます。またネットワークに対応しているため、NASやPCに保存された大量の音源を一括で管理、聴くことが可能です。リビングやオフィス等で、常に音楽を流しっぱなしにしておきたいユーザーにも最適です。
さらに本体内部にアンプを内蔵している機種もあり、単品でリスニング環境を構築するよりも、シンプルで省スペースなシステムが組めます。さらにオーディオ初心者であっても、本体にスピーカーを接続するだけで音楽が楽しめる環境ができるため、導入時の煩わしさがありません。また独自のアプリなどを使って、iOSやアンドロイド端末などをリモコン代わりに使用することもできます。
それから、デジマート・ユーザーの中にはバンドを組んでいる方も多いかと思いますが、Bluetoothなどのワイヤレス再生に対応していれば、メンバーのスマホなどに収録されている音源を手軽に再生することもできます。これはとても便利で、カバーする曲決めやデモ音源などをみんなで共有する際に役立ちます。ネットワーク対応CDレシーバーが1台あれば、様々な活用法が考えられます。
メリットが多いネットワーク対応CDレシーバーですが、デメリットも存在します。まず、オールインワンのモデルなので、単品のオーディオ・システムのように音質を追い込むことができません。アンプ内蔵のモデルに関しては、スピーカーの選択などで、自分好みの音質に仕上げていく必要があります。また、ネットワークでの再生にはNASやルーターなどが必要なため、最初のセッティングに手間取ってしまうこともあります。この辺りは、説明書やこのコラム(第13回『ネットワーク・オーディオの世界〜CDに代わるオーディオのスタンダードに?』)も参考にしてみて下さい。さらにメンテナンスに関してですが、例えばCDプレーヤー部のみの不具合であっても、本体ごと修理に出さなければいけなくなってしまいます。新品購入後、すぐに故障というケースは稀だと思いますが、そういった点も考慮して選んでみて下さい。
もちろんデメリットよりも圧倒的にメリットの方が上回っていて、普段PC等でしか音楽を聴かない方が初めてネットワーク対応CDレシーバーを導入すると、その便利さと音質にきっと驚かれると思いますよ。
ネットワーク対応CDレシーバーといっても、下記に挙げるように様々なモデルが発売されています。どのモデルを購入して良いか迷う方もいるはずなので、選び方のポイントを簡単に説明したいと思います。
まずは、再生したいハイレゾ音源に対応したモデルで絞ってみて下さい。ポイントはDSDファイルの再生です。DSDに対応していても5.6MHzの再生ができない機種もあります。さらに再生できるファイル・フォーマットも要チェックです。特にAIFFやALACに対応していない、もしくは24bit/96kHzまでのD/Aのみしかできない機種もあります。AIFF等の24bit/192kHzを再生したい方は、対応機を選ぶ必要があります。
次のポイントは、アンプを内蔵しているかいないかをチェックしてみて下さい。お気に入りのアンプをすでに持っている方は、アンプ内蔵モデルではない機種を選ぶ必要があります。
最後にワイヤレス機能(Bluetooth等)ですが、これも各社対応が様々ですので、必要な方はチェックしてほしい項目です。他にもUSBでの再生やUSB DACとしての機能、フォン端子を含む入出力端子の種類などもチェック項目として加えて頂きたいと思います。音質や価格も重要ですが、必要な機能が入っていないことを購入後に気付くのは辛いので、ぜひ確認してお気に入りの1台を見つけて下さい。
ティアックから発売されているCD-P800NTは、コストパフォーマンスが高い1台で、入門用としても最適なモデルです。ただし、販売されている価格レンジは、エントリー・クラスですが、とても機能は充実しています。ハイレゾの再生は、ネットワーク(DLNA)に対応し、LAN上にあるパソコンやNASに収録しておいた音源を再生することができます。再生できる音源も、DSDが〜5.6MHz(※NASから再生する場合は、NASがDSDの再生に対応している必要があります)、PCMが〜24bit/192kHz(WAV/FLAC等)まで対応しています。ネットワークでのハイレゾ再生に加え、フロントに付けられたUSBポートでもハイレゾの再生ができ、ネットワークを構築しなくても、ハイレゾの魅力を楽しむことができます。加えて本体をiPhoneなどのiOSデバイスや、アンドロイド端末などから操作できる独自のアプリ『TEAC AVR Remote』も使えます。インターネット・ラジオにも対応し、部屋に1台あれば常に音楽を楽しめる環境を構築できます。
■価格:オープン(市場実勢価格:27,000円前後)
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前述のティアックの製品と近い仕様なのが、日本のオーディオ・ブランドの老舗オンキヨーから発売されているC-N7050です。この機種もネットワーク(DLNA)に対応し、DSDの再生は〜5.6MHz(※NASから再生する場合は、NASがDSDの再生に対応している必要があります)、PCMに関しては〜24bit/192kHz(WAV/FLAC等)まで対応しています。もちろん、USB端子に差し込んだフラッシュメモリーからハイレゾ再生でき、インターネット・ラジオにも対応しています。また同社が特許を取得している「VLSC(Vector Linear Shaping Circuitry)」回路を採用することで、D/Aの際に発生するパルス性ノイズを抑制し音質を高めています。前目に備えられたやや大きめのディスプレイも、曲名をチェックする際などに見えやすいですね。ティアックに似た仕様の本機ですが、本体にフォン端子は付属していないため、本体にヘッドフォン/イヤフォンを挿してのリスニングを考えている方は注意が必要です。このモデルも求めやすい価格レンジながら、幅広い音源を再生可能で優れたコストパフォーマンスが魅力のモデルです。ちなみに同社からは、アンプ内蔵のネットワーク対応CDレシーバー、CR-N765も発売されています。
■価格:オープン(市場実勢価格:28,000円前後)
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好きなスピーカーを追加するだけで、ハイレゾからCD、さらにインターネット・ラジオまで楽しめるのがパイオニアのXC-HM82です。本体に50w+50w出力のアンプを内蔵しているため、直接スピーカーを接続することができます。アンプ部も長年培ってきた技術を生かし、ハイ・クラスのオーディオにも使われている「Direct Power FET」を用いて音質を高めています。また大型トランスや金メッキの接続端子を採用するなど、アナログの回路にも工夫が凝らされているのは、老舗のメーカーならではですね。ネットワークはDLNAやAirPlayなどにも対応し、幅広い楽しみ方が可能です。再生可能な音源は、DSDが〜2.8MHz、PCMが〜24bit/192kHz(WAV、FLAC、AIFF等)となっています。DSDが〜2.8MHzまでですが、どうしても5.6MHzの音を楽しみたいということでなければ、特に問題になることはないと思います。筐体前面には、3.5インチのフルカラー液晶が設けられ、ジャケットやビットレートなども表示できます。こういった配慮も音楽ファンには嬉しいですね。もちろんインターネット・ラジオにも対応し、少ない機器でリビングのオーディオ・システムを備えたい方にもお薦めです。
■価格:オープン(市場実勢価格:38,000円前後)
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ホワイト(※ブラックもあり)の筐体がスタイリッシュで目を惹くのが、デノンが手掛けたネットワーク対応のCDレシーバーがRCD-N9-Wです。上記で紹介した機器のようにDSD再生には対応していませんが、DLNAに対応したネットワーク機能で、PCMに関しては〜24bit/192kHz(WAV、FLAC等)まで再生することができます。またAirPlayやインターネット・ラジオにも対応し、WiFiでも使うことができます。さらにパイオニア同様、内部にアンプを内蔵しているため、スピーカーを接続してリスニング・システムを構築することができます。アンプ部は65w+65wとパワーがあり、幅広いスピーカーを楽しめる駆動力を確保しています。フロントに設けられたUSBポートは、USBメモリーからのハイレゾ再生やiPhone/iPodとのデジタル接続にも対応しています。CDプレーヤーに関しても、長年同社が培った技術を使い、CDの情報を高精度で読み取る低重心のドライブ・メカが採用されるなど、こだわって製作されています。DSD音源を必要とせず、手軽にハイレゾ音源を楽しみたい方にお薦めしたいモデルです。ホワイトのカラーは、女性の方にも好印象ではないでしょうか。
■価格:オープン(市場実勢価格:40,000円前後)
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デジマート・ファンの方には、楽器メーカーとしてお馴染みのヤマハですが、質の高いオーディオ機器も数多く発売しています。その実力は、世界中のレコーディング・スタジオで愛用されているモニター・スピーカー、NS-10M(※通称テンモニ)の開発でも実証済みです。近年では、ヘッドフォン等にも力を入れ、高い評価を得ています。そんな同社が手掛けたネットワーク対応CDレシーバーがCD-NT670です。洗練されたフロント・パネルのデザインやピアノブラックのサイド・パネルなど、高級感を感じさせてくれるルックスも魅力のひとつです。ハイレゾ音源は、DSDの再生ができませんが、PCMは〜24bit/192kHz(WAV、FLAC、AIFF)までD/A可能です。もちろんDLNAのネットワークに対応し、パソコンやNASに収録した音源を再生できます。またWiFiやインターネット・ラジオにも対応しています。さらにヤマハ独自の“Music Cast”機能にも対応し、同機能に対応したヤマハ製品に音楽ファイルの伝送や再生が行なえます。この機能を使えば、離れた部屋に置いた機器からCD-NT670の音を鳴らすことも可能です。この機能のコントロールは、オリジナルの専用アプリ「MusicCast CONTROLLER」等で行なえます。家の各部屋等のリスニング環境を一括で管理したい方などにもお薦めしたい機種です。
■価格:54,000円(税抜)
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“マルチ・オーディオ・プレーヤー”としてソニーが発売しているのが、MAP-S1です。これまで紹介してきた機器と同様に、CDからハイレゾ音源の再生、さらにインターネット・ラジオにも対応しています。50w+50w出力のアンプも内蔵し、金メッキ処理された入出力端子も付けられるなどアナログ回路にも工夫が凝らされています。USBメモリーからの再生にも対応しているため、好きなスピーカーを接続すれば、手早くハイレゾ音源を楽しむことができます。さらにUSB DACとしても機能するのが特徴のひとつです。フォン端子も付属し、イヤフォン/ヘッドフォンでのリスニングも可能です。再生できるハイレゾは、DSDが〜2.8MHzまで、PCMが〜24bit/192kHz(WAV、FLAC、AIFF、ALAC)となっています。その他、CDや圧縮音源の再生時にハイレゾ相当にアップコンバートして聴くことができる独自技術「DSEE HX」も魅力のひとつです。数多くの音源を高音質で再生できるこのモデルは、まさにソニーが標榜するように“マルチ”な再生環境を構築できる1台に仕上がっています。
■価格:63,880円(税抜)
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オーディオ・マニアからも注目を集めるブランド、マランツが手掛けたネットワーク対応CDプレーヤーM-CR611は、音質にこだわったモデルです。ハイエンドなアンプも数多く開発してきた同社らしく、新開発されたフルバランスのデジタル・パワーアンプを内蔵しています。実用最大出力は60w+60w(6Ω)で、4chの出力に対応している点も魅力です。これによって4台のスピーカーを同時に鳴らすことができ、バイアンプ(スピーカーの高域と低域等を複数のアンプで駆動)にも対応し、より質の高い再生音を得ることができます。アナログ部分も妥協なく作り込まれることで、ハイレゾ音源の良さを緻密に引き出してくれています。再生できる音源は、DSDが〜2.8MHz、PCMが〜24bit/192kHz(WAV、FLAC、AIFF)となっています。ネットワークはDLNA1.5に準拠した機器で使用できます。本機をiOSやアンドロイド端末でコントロールできるアプリ「Marantz Hi-Fi Remote」も便利で、プレイリストでの再生にも可能。またUSBメモリーからの再生やインターネット・ラジオにも対応しています。単体で様々な機能を有する機器に、これだけこだわりが詰め込まれているものはまだ数が少なく、やや他のモデルよりも値段は高くなりますが、かなり満足度の高いリスニング環境が構築できるはずです。
■価格:70,000円(税抜)
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今回は、徐々に浸透しつつあるネットワーク対応CDレシーバーの世界をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか? ネットワーク対応CDレシーバーの魅力は、手軽にハイレゾを聴ける環境が得られることと、これまで集めた思い出のCDも楽しめることですね。音楽を聴く楽しみには、もちろん音質を追求するというジャンルもありますが、そればかりに目を奪われてしまうと、音楽の本来の魅力から遠ざかってしまいます。人それぞれ自分に合った楽しみ方で、音楽の持つ魅力を十二分に楽しめる環境を整えられるのがベストですね。その選択肢のひとつやハイレゾの入門機として、ネットワーク対応CDレシーバーがお薦めです。昨今、イヤフォン/ヘッドフォンの目覚ましい発展もあり、そればかりで音楽を聴いている方も多いかと思いますが、スピーカーから空間の空気を振るわせて伝わってくる音には、イヤフォンやヘッドフォンにはない魅力があります。おそらく日頃から真空管のギター・アンプ等を鳴らしているデジマートのファンであれば、何となく共感して頂けるのではないでしょうか? それではまた次回!
菊池真平(きくち・しんぺい)
音楽雑誌「Player」、オーディオ誌を発行するステレオサウンド社で「Beat Sound」、「Digi Fi」の編集に携わった後に独立。現在はフリーランスで、ヴィンテージ・ギター関連書籍/ギターに関する雑誌等に、編集/ライターとして携わる。国内外のミュージシャンへのインタビュー等も多数行なっている。