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- 2024/11/16
Gibson Acoustic / Kazuyoshi Saito J-160E
今週は、日本のロック・シーンを代表するシンガー/ソングライター、斉藤和義氏とギブソン・アコースティックのコラボレーションによる新しいシグネチャー・モデル、Kazuyoshi Saito J-160Eを紹介します。ステージで使うことを前提としたデュアル・ピックアップ仕様の即戦力、その実力をぜひご確認ください。
使用シールド:ギブソンInstrument Cable
J-160Eは、CF-100Eに次ぐエレクトリック・フラットトップ・モデルとして1954年にリリースされました。「アコースティック・ギターを大音量で鳴らしたい」という当時のニーズに応えるため、P-90を搭載し、あえて合板+ラダー・ブレイシングでトップの振動を抑制することでハウリングの軽減を狙った構成でした。またフラットトップとしては初のアジャスタブル・ブリッジを乗せたことも、独特の音質を演出しています。
今回、斉藤和義氏とギブソン・アコースティックは伝統的なJ-160Eの仕様を改めて見直し、“生でもしっかり鳴り、エレクトリックとしても幅広い音作りができる新しいJ-160E”を標榜し、作り上げました。動画を見ていただくとわかるとおり、アコースティック・ギターとしての音質、音量は損なわれていないどころか、非常に良質なものです。実はトップ材に話題のサーマリー・エイジド処理を施した単板のシトカ・スプルースを使用し、Xブレイシングを採用しています。また、ブリッジもノン・アジャスタブルのボーン・サドルとすることでアコースティック・ギターとしての基本的なサウンドを飛躍的に高めました。
もうひとつ、Kazuyoshi Saito J-160Eの大きな特徴は、2系統のマイクを持つデュアル・アウトプット仕様であることです。オリジナルのJ-160EはP-90のみを搭載していましたが、本器はP-90とL.R.バッグス・リリックという2種のピックアップを搭載し、出力も2系統に分けています。ぜひ動画で確認していただきたいのですが、甘く太いP-90(フルアコで弾くジャズ・ギター的なニュアンスもあります)と、ブライトで指先のタッチを明確に、繊細に伝えるL.R.バッグス・リリックの違いは必見です!
デュアル・アウトプットの使い方としては、リリックの信号をD.I.経由でPAに送っても良いですし、P-90の信号をギター・アンプに入れて鳴らしても良い感じです。それらをミックスすればこれまでにないサウンドを作ることもできます。斉藤和義氏は本器について「生鳴りも良く、ハウリングも無く、エレキのようにも使える理想的なギター」とコメントしており、まさにその言葉どおりのギターに仕上がっています。ちなみに本器は出荷時にニッケル弦をセットしていますが(P-90ピックアップで拾うため)、アコースティック主体で使う場合にはブロンズ弦に張り替えることで、より厚みのあるアコースティック・サウンドを楽しむこともできます。今回のレビューでも弦を換えてチェックしていますので、そのあたりのニュアンスの違いをお確かめください。
J-160Eのアーティスト・モデルとしては、2010年にリリースされたジョン・レノン・モデル以来2人目となります。また、ギブソン・アコースティックの斉藤和義氏シグネチャーとしては、2013年のKazuyoshi Saito J-45以来、2本目です。Kazuyoshi Saito J-45を彷彿とさせるエボニー・グロス・フィニッシュは、ファンにはたまらないところでしょう。本器は、エレアコ・フラットトップの新たな可能性を示した名器として語り継がれるべき1本だと感じました。初回100本、2016年3月に50本の限定生産ですので、気になる方は“伝説”になる前にチェックしてみてください。
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは2月19日(金)を予定。
価格:¥533,000 (税別)