Positive Grid Spark LIVE meets Toshiki Soejima & Naho Kimama
- 2024/12/13
HAO / BASS LINER
2012年の発売以来、急速に普及し定番機種となりつつあるHAOのBASS LINERは、果たしてどのような特徴を持ったプリアンプなのか、今一度検証していきましょう。まずは機能の確認から。BASS LINERの概要は5バンドのEQとクリーン・ブースターで構成されるベース用プリアンプです。トップ・パネルの上部には50Hz、160Hz、630Hz、2.5KHz、12KHzの5バンドに対応したツマミが並び、それぞれ±18dBの増減が可能です。BASS LINERはHAOとPhil Jones Bass(以下、PJB)が共同開発したエフェクターということで、イコライザーのバンド設定はPJBのベース・アンプにも通じるものがありますね。大き目のツマミは右側がINPUT GAIN、左側がLEVELとなっており、入力が大きすぎるとCLIPランプが点灯します。フット・スイッチは2つあり、右側がエフェクターのオン/オフ、左側がミュート・スイッチとなっています。出力はDIRECTとOUTPUTの2系統があり、DIRECTはミュート・スイッチに関わらず入力された信号がそのまま出力されるので、チューナー・アウトなどに活用できるでしょう。
さて、実際に音を出してみましょう。まずはイコライザーをすべてフラットに設定します。楽器を弾きながら強く弾いた時だけCLIPランプがわずかに点灯する程度にINPUT GAINを設定し、バイパス時と同じ音量になるようにLEVELを設定します。この状態で音色を比較すると……エフェクターをオンにしてもバイパス時とまったく音色が変わりません! ノイズもなく驚異的に音色特性がフラットですね。LEVELを可変させると、音色はまったく変わらずに音量だけが増減します。原音重視の超クリーン・ブースターという印象です。INPUT GAINはPJBのベース・アンプと同じように、ゲインを上げても(例えば真空管式のベース・アンプのように)歪みが得られるような設計ではなく、あくまでBASS LINERを適切な信号レベルで動作させるためのツマミと考えたほうが良いでしょう。ちなみにBASS LINERはいわゆるトゥルー・バイパス仕様でありながらエフェクト・オフ時でも入力レベルを監視し、過大入力時にはCLIPランプが点灯するようになっています。あくまでBASS LINERは不必要な歪みを発生させないというコンセプトを貫いていることがわかりますね。
さらにイコライザーの各バンドのツマミを増減し音色を確認してみると、±18dBの可変幅を持つこともあり、それぞれのバンドで大きな音色変化と効果を実感できますが、比較的過激な設定にしても音色に不自然さはありません。PJBのベース・アンプと同じようにイコライザーのバンド設定がベースにとって「美味しいポイント」にあり、帯域幅が高域から低域までかなり広くとられているので、多弦ベースでも問題なく使用できるでしょう。経験上、積極的な音色変化が得られるプリアンプは往々にして元の楽器の音色を損なうなどの弊害があるものですが、BASS LINERはそういった傾向はまったく感じられません。
というわけで、BASS LINERは「積極的な音色変化が得られる上に、原音のニュアンスを損なわないプリアンプ」という印象でした。こういった相反する特性を併せ持ったプリアンプはそう多くはありません。電源は9V~18Vに対応し、高い電圧で動作させたほうが、より高いヘッド・ルームを確保できる(歪みにくくなる)ようですし、プリアンプで歪ませずに積極的な音色変化をさせたい、原音のニュアンスはそのままに音色を補正したい、音量だけを変化させたい、といった用途でプリアンプをお探しのベーシストには大変オススメできる機種ですね。
価格:¥26,800 (税別)