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注目のアナログ&復刻シンセを手に入れる! 〜レジェンダリー・キーボード7機種

キーボード・バイヤーズ・ガイド2016 Part2

昨年も数多くの新製品がリリースされ、大きな盛り上がりを見せたキーボード・シーン。日進月歩の先端技術から恩恵を受けたこれら新製品は、音楽制作や演奏に新たな可能性を切り開く絶好のチャンスとなるだろう。この記事ではそんなキーボード・シーンの現在を一望するべく、『キーボード・マガジン2016年1月号 WINTER』で大特集された“Keyboard Buyers Guide 目的&スタイル別キーボード購入ガイド2016”と連動し、現代市場を牽引する話題の新製品を3部構成で紹介していく。Part2となるこの記事では、アナログを含むビンテージ・ライクな設計を趣旨とした製品群を“レジェンダリー・キーボード”と括り、その性能や使い勝手を詳細に追っていく。

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YAMAHA
reface DX

現代的な感覚で気軽に操れるFM音源シンセサイザーの進化形

価格:オープン

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直感的なタッチ操作と合理的なパネル構成

 FM音源というと、独特な音源方式から、なんとなく近付き難いイメージを持つ人もいるだろう。しかしreface DXは、パラメーターを整理するとともに、最新のタッチ・スライダーによって操作の敷居をぐっと下げた、音作りのしやすいシンセサイザーに進化している。
 FM音源の音作りの単位が、サイン波オシレーターとエンベロープを組み合わせたユニット、オペレーターになる。reface DXでは4基内蔵し、それぞれにタッチパネルを装備する。右側に並ぶパラメーター選択のボタンと組み合わせて操作する仕組みだ。例えば、オシレーター1の周波数を変えたい場合は、フリーケンシー・ボタンを押して、オペレーター1のタッチパネルを操作するといった具合い。4つのオペレーターに瞬時にアクセスできるのが便利だ。
 パラメーターの値は中央の液晶パネルに表示され、タッチパネル上で素早くフリックすると値が急激に変わったり、近い整数値になる。また、上端や下端を長押しすると連続変化する。まるでスマホをスクロールするような感覚で音作りが行える。

フィードバックによる密度の高いサウンド

 音源は、シンセ・グロッケンやエレピなどのキラキラした音色を得意とする反面、アナログ・シンセのような、中帯域にみっしりと倍音が詰まったサウンドは苦手で、作成するには複雑なプログラミングが必要だった。reface DXでは、フィードバック機能によってこの問題をスマートに解決している。フィードバック機能自体はオペレーターが自分で自分をFMする機能で以前のFM音源にも搭載されていたのだが、reface DXでは大幅に機能強化されているのだ。
 フィードバック・パラメーターを選び、タッチ・スライダーを上にフリックするともともとのサイン波からノコギリ波へ、下にフリックするとパルス波に変化する。これで厚みのある波形が実現できる。もちろん、サイン波とノコギリ波の中間、なんてのも自由自在だ。またフィードバックは4つのオペレーターすべてに装備されているので、組み合わせによってさまざまなサウンドになる。reface DXの4オペレーターは少なく感じるかもしれないが、かつてのDX7のフィードバックから遙かに進化し、可能性を秘めたフィードバック機能により多彩な音作りが可能だ。
 エレピやクラビを得意とするFM音源は弾いて楽しいシンセサイザーでもある。シリーズ共通の鍵盤は、ミニ鍵盤では弱点になりやすい黒鍵のフィット感や、鍵盤の奥を弾いた時の強弱の表現も良好で、とても手になじむ。また、エフェクトでも、FM音源と相性のいいコーラスやリバーブに合わせ、プレイヤー向けのタッチワウも装備。音色プリセット(メモリー)も32あるので、まずは音色を選んでプレイしてみる、ちょこっとパラメーターをエディットしてみる、そんなところから気軽に付き合い始めるのもいいだろう。
(高山博)

参考動画

■オフィシャルHP


YAMAHA
reface CS

強力なサウンドとスマートな操作性のアナログ・モデリング・シンセ

価格:オープン

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高機能なオシレーターを簡単に操作

 reface CS は8音ポリフォニックのアナログ・モデリング・シンセサイザー。見た目のコンパクトさとは裏腹に、実に高性能でインテリジェントなシンセだ。
 音作りの出発点になるオシレーターは、1オシレーターのように見えて、2オシレーター以上の実力を備える。しかも、Type、Texture、Modulationの3つのツマミだけで実に簡単に操作できるように工夫されている。Typeは通常のシンセサイザーの波形切り替えに相当するスイッチで、TextureとModulationはTypeによって機能が変わるスライダー。例えば、Typeにノコギリ波を選ぶと、Textureでオクターブ下のサブ・オシレーターが加わり、Modulationスライダーで複数のオシレーターをデチューンして鳴らした状態のSuperSaw波形に変化する。EDM定番の分厚いシンセ・ブラスなどが簡単に作成できるわけだ。パルス波にした場合は、Textureで自由にピッチが設定できるもう1つのオシレーターが加わる。Modulationはパルス幅で、LFOをかけると、柔らかく揺らぐようなアナログ・パッドが作り出せる。
 Typeでは、オシレーター・シンク、リング・モジュレーション、フリーケンシー・モジュレーション(クロス・モジュレーション)といった、複雑な設定も選択できる。いずれも2オシレーター以上を装備する高級機ならではの機能だが、2つのスライダーで簡単に操作でき、強烈にスウィープするシンセ・リード、メタリックな打撃音、エアリーなノイズ・パッドなどが、いとも簡単に作れてしまう。

キレのいいローパス・フィルター

 CS80やCS10など、かつてのCSシリーズは、緩やかな効き味のフィルターとクリアなオシレーターの組み合わせによる、ジェントルなサウンドが特徴だったが、reface CSではエッジの立ったオシレーターに合わせて、キレが良く適度な歪み感のあるローパス・フィルターを装備する。レゾナンスを上げても音やせが少なく、押し出しの強い音がするので、ダブステップやエレクトロなどで耳にするような、存在感のある荒々しいシンセ・ベースやリフなどが作成できる。またエフェクトでもディストーションを装備し、さらにワイルドな質感を加えることも可能だ。
 また、シリーズ共通のルーパーによりシーケンス演奏も簡単に行える。レコーディング・ボタンを押して適当に弾くと、フレーズを記憶してループ演奏する。音ではなく演奏を記憶しているので、アルペジエーターのような使用が可能。ループしながらフィルターやオシレーターのスライダーをいじったり、フェイザーやディレイなどのエフェクトをかけることができる。
 reface CS は、レトロ的にかつての機種をよみがえらせたのではなく、現代のシンセ・サウンドに必要な音を、簡単に作成し演奏できるように考えられている。コンパクトな見かけからは想像できないようなしっかりと迫力のある音を作れるので、ぜひ内蔵スピーカーだけでなくライン・アウトの音もチェックしてほしい。
(高山博)

参考動画

■オフィシャルHP


YAMAHA
reface CP

本格的なエレピ・サウンドを内蔵しエフェクティブな演奏も可能な1台

価格:オープン

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コンパクトでスタイリッシュなボディ

 あの名機の名を冠したreface CP。近年、ミニマムなのに作りがいいプロダクトが、いろいろなモノ作りの現場で人気を博している。そんな折りタイミングを見計らったかのように発売され、話題沸騰しているのがヤマハのrefaceシリーズである。
 refaceシリーズ4機種に共通するのは驚くほど薄く、軽く、コンパクトかつスタイリッシュであるという点。特にreface CPはマットな黒ボディにシルバーのパネルがアクセントとなり、トグル式スイッチ搭載により全体としてシャープで精悍な印象を受ける。ミニマル・スタイリッシュなデザインはミュージシャンにとどまらずスタイリッシュなモノ好きのアンテナをも刺激するものだ。音楽制作のデスクトップ周りもスタイリッシュなデザインが流行であり、そんな風景の中にもジャストフィットすること間違いないだろう。

プロも夢中にさせる音と弾き心地

 さて実際に弾いてみると、reface CPが廉価な遊びのためのキーボードといった指向とは、ベクトルが180度逆を目指していることが分かる。今回のシリーズのために開発されたプロフェッショナル・ハイグレード音源は、高価なプロ仕様のシンセ・キーボードに引けを取らないリアルなビンテージ・エレピ・サウンドである。またそのハイクオリティなスペシャル音源にベストなミニ鍵盤としてMOTIF XFシリーズの鍵盤を継承する新たなコンパクト鍵盤“HQ Mini”を開発。エレピやクラビネットのリアル過ぎるサウンドがこの小さな個体から出てくることに思わず戸惑ってしまうほどだ。本機のサウンドはローズ系が2種、ウーリッツァー系、クラビネット、トイピアノ、CPの全6種類。シンプルだがどのサウンドもポップスやロックにとってずばり的を射た仕上がりと言える。
 エフェクトも究極に厳選されたドライブ、トレモロ、ワウ、コーラス、フェイザー、デジタル・ディレイ、アナログ・ディレイ、リバーブの8種を搭載する。本格エレピ・サウンドで楽曲を演奏する上で、これら定番エフェクトの微妙な設定を使いこなすことこそが、非常に奥が深い。基本の設定例を見ながら少しずつツマミの値を変えて楽曲のテンポや空間の彩り方を探そう。慣れてくるとその極意がお分かりいただけると思う。またDRIVEツマミで歪ませたり、サウンドのプレゼンスを調節したり、あるいはディレイでのフィードバックやピッチ変調など、音響系アーティストのようなしゃれた表現や過激な表現もできてしまう。
 そしてrefaceシリーズ最大のポイントは電池でも駆動し、スピーカー内蔵という点だ。どこへでも持ち運び、極上サウンドをプレイする楽しさを追求している。いつでもバッグに忍ばせていけるかわいい相棒なのだ。reface CPは、コンパクト・ボディに本格的過ぎるサウンドを内蔵し、曲、ツアー、キャンプ、突発的なセッションなど、使える場面や可能性は無限な1台。コンセプトがしっかり伝わる小さな名機の誕生である。
(YANCY)

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■オフィシャルHP


YAMAHA
reface YC

愛らしいルックスながら妥協を許さない本格派コンボ・オルガン

価格:オープン

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ビンテージ名機サウンドの宝庫

 reface YCは、当時のコンボ・オルガンを真っ先に連想させるレトロポップな色やスイッチ類の形状を持つ。つまりビンテージ・ファンがぐっとくるデザインを、コンパクトかつスタイリッシュなボディに見事に再現しているのだ。しかし“レトロ・ポップ・トイ”のような可愛さとは裏腹に、そのコンセプトはほかのrefaceシリーズに共通するハイグレード・コンパクト。つまりお遊びの楽器ではなく、本格的な音と演奏性を追求したモデルというわけだ。
 サウンドはシンプルにオルガンに特化し、ハモンド、ヴォックス系、ファルフィッサ系、エーストーン系、YCなどオルガン・マニアに人気のある機種を網羅し、そのどれもが存在感バリバリのハイクオリティ・サウンド。“そうそう、ヴォックスはこういう音”“YCはこんな音だった”と、実機を知る世代は思わず顔がほころぶに違いない。

スライダーでの自在な音作りが可能

 もちろん、それらのリアルなサウンドをいかに弾きこなしやすくするかも考え抜かれた楽器である。実際のヴォックスやファルフィッサはドローバーではなくタブレットで操作する楽器であったが、本機はハモンド式に9本のドローバーに見立てられたスライダー・スイッチを用い、どのタイプのオルガンも共通の音作りができる。オルガンは、足し算、引き算の世界なので好みの音の明るさや太さがすぐに見つけられる上、どのオルガン・サウンドもハモンドのように、プレイ中にリアルタイムで音を変化させられるのが最大のポイント。搭載されたレスリー・シミュレーター、ビブラート、コーラス、パーカッションA・B、ディストーション、リバーブなどを駆使して演奏すれば、こんなコンパクトなオルガンで行えるとは到底思えないパフォーマンスが可能である。
 また、今回refaceシリーズのために新たに開発されたコンパクト鍵盤“HQ Mini”が、リアルなオルガン・サウンドに抜群のマッチングを見せる。パーカッションを鳴らさないレガート奏法やグリス奏法など、オルガンらしい奏法がこのミニ鍵盤で違和感なくできるのは感動的である。サウンド自体の存在感や太さも素晴らしく、いつまでも弾いていたくなる楽器である。
 refaceシリーズはすべて乾電池駆動が可能でスピーカー付きなので、どこでもプレイできいつでも遊べてしまう。そして、reface YCのサウンドなら本格的なサウンドが求められる現場でも十分使えるだろう。もちろんMIDIやUSB、フット・コントローラーやAUX INまでを装備し、細部までぬかりがない。いつ壊れるかドキドキしながらビンテージ・オルガンを運ぶ恐怖からあなたは解放されたと言える。そして、ビンテージ・コンボ・オルガンの世界を知らない新たな世代にも、その個性的かつキャッチーなサウンドへの扉を開いてくれる1台である。まさに過去の名機にrefaceさせてくれる本機、コンセプト勝利な名機と言えるだろう。
(YANCY)

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■オフィシャルHP


DAVE SMITH INSTRUMENTS
SEQUENTIAL
Prophet-6

伝説の名機が21世紀に進化
圧倒的なリアル・アナログ・シンセサイザー

価格:オープン

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連続可変のオシレーターとハイパス・フィルターを新搭載

 SEQUENTIAL is Back!! アナログ・シンセサイザーの歴史的名機Prophet-5(プロフェット5)を生んだ名ブランド“SEQUENTIAL”(シーケンシャル・サーキット)がついに帰ってきた! シーケンシャル・サーキット社が買収されてブランドがなくなってからも、Prophetシリーズの生みの親であるデイヴ・スミス氏は次々とシンセサイザーやソフト・シンセなどを開発してきたのだが、梯郁太郎氏の仲介によりヤマハからスミス氏に商標“SEQUNTIAL”が返還され、このブランド名を冠してProphet-6が発売されることになったというニュースが、2015年になってから飛び込んできた。それを目にしたとき、MIDI規格開発の核となってきた2人(ついでに言えば、スミス氏はかつてコルグWavestationの開発にもかかわっていた)の友情を見たような気がして、筆者にはとても感慨深いものがあったのだ。
 Prophetの名が付くモデルは、80年代にProphet-10、T8、600、2000、VS、2000年代に入ってから'08、Pro 2、12などがリリースされているが、SEQUENTIALブランドの返還もあってか、今回のProphet-6は(10やT8以来の)最もProphet-5の“血”を色濃く受け継ぎ、進化させたモデルとなっている。ルックスだけではなくサウンドもまさにその言葉どおりで、シンセサイザー開発者ジョン・ボーウェン氏が、かつて自らがプログラムしたProphet-5のプリセット音色を再現し、このProphet-6のプリセット音色の一部としていることからも、それはうかがい知ることができる。サウンドは一聴してウォームかつ抜けが良く、厚みがあり、目の前に迫ってくるような存在感のある音に唸らされる。さすがはProphet-5直系だ。
 そのサウンドの源は1ボイスにつき2系統の、ディスクリート(独立)構成のVCOにある。デジタルではない完全なアナログ・オシレーターである。Prophet-5は5音ポリだったが、数字に合わせたのか6は6音ポリだ(もう1台のProphet-6やそのモジュール版をつなぐことでボイス拡張が可能)。Prophet-5では独立していた三角波、ノコギリ波、パルス波はワンノブで連続可変となっているので、Prophet-5ではできなかった中間的な波形も使えるのだ。LFOを使うことでパルス・ワイズ・モジュレーションも可能。サブ・オシレーターでオクターブ低い音を加えることもできる。オシレーター1からオシレーター2へのシンクも可能だ。さすがに21世紀の機種なのでピッチは安定しているが、SLOPノブを回すとビンテージ・アナログ・シンセのピッチの揺らぎ感も表現できる。グライド(ポルタメント)もポリフォニックでバッチリつながってくれる(コード・メモリー機能を使うととても気持ちいい)。
 そしてもう1つのサウンドの要であるフィルター。絞ったときの音の柔らかさも、レゾナンスのかかり具合いも天下一品だ。Prophet-5同様の4ポールのローパス・フィルター(発振可能)に加え、新しく4ポール・ハイパス・フィルターを装備していて、2つ同時に使うことでバンドパス・フィルターとしても使用できる。
Prophet-6のフィルターやアンプはベロシティや(モノ)アフタータッチでコントロールできるが、これも実はデジタル・シンセの登場以降に普及した仕組みであり、Prophet-5、10、600などにはなかった機能だ(ピアノ鍵盤を持つT8には備わっていたが)。Prophetで作った“コクのある”音色のエレピ系はもちろん、他のシンセらしい音色においても、よりダイナミックなプレイに対応可能になっている。

ポリ・モジュレーションで現代的かつ過激なサウンドを生成

 Prophetシリーズを他機と比べて際立たせる機能の1つが“ポリ・モジュレーション”だ。これはフィルターのエンベロープやオシレーター2(両方を一度に使用することも可能)で、オシレーター1のピッチや波形、パルス・ウィズやフィルターのカットオフ(複数選択可能)を、通常のLFOを超える速度まで変調可能なシステム(廉価版的な機種ではパラメーターが減らされていたが)。非整数次倍音を含むさまざまな倍音が得られ、鈍い金属系の音や、ピッチ感の希薄な音なども作ることができる。サンプリング系の音源を搭載したシンセではなかなか再現できない、魅力的な音色を作成できる機能なのだ。そしてProphet-6に搭載されているのは、変調先に新搭載のハイパス・フィルターも選ぶことができるようになった最新バージョンとなっている。ポリ・モジュレーションを使えばノイズっぽい音を作ることもできるのだが、Prophet-6はさらに独立したディストーションも新しく装備しているので、今風の過激な音もお手のものだ。
 また、アナログ・シンセにはディレイやリバーブ、コーラスなどの空間系エフェクトが欲しくなるもの。レコーディングで外部エフェクターをいろいろ試すのも楽しいのだが、ライブは機材セッティングをシンプルにしたいことも多いし、音色のイメージの一部として他のパラメーターと一緒にメモリーできる内蔵エフェクトのメリットは大きい。Prophet-6は5に搭載されていなかった空間系エフェクトを内蔵している。デジタル・エフェクトではあるが、24ビット/48kHzのハイスペックのせいか、デジタル臭さをほとんど感じさせず、音の迫力や立体感、広がりを増している印象だ。それでもあえて内蔵エフェクトを通したくない場合には、デジタル変換を1度も通さずにバイパスできる“トゥルーバイパス”を使って、オシレーターから出力までアナログ・サウンドを徹底させることもできる。
 さらにアナログ・シンセのカッコいいサウンドと言えば、機械的なアルペジエーターによるフレーズや短いシーケンス(繰り返しフレーズ)を思い浮かべる人も多いだろう(そうやって作った音楽がとても人間的に聴こえたりすることもあるから音楽は面白い)。Prophet-06は5になかったアルペジエーターや64ステップ・シーケンサーも内蔵している。アルペジエーターは通常のアップ、ダウン、アップ&ダウンのほかにアサイン・モードもあり、鍵盤を押した順に、テンポに合わせて1〜3オクターブで繰り返してくれる。シーケンサーの“ステップ”はそれぞれ6音まで記憶できる。つまり最大6音の和音状態で最大64ステップを連続で記憶し、演奏させられるということだ。
 Prophet-6はこのようにとても魅力的なマシンである。Prophet-5を甦らせ進化させた“本物の”アナログ・シンセサイザーとして、音楽シーンでその存在感を示していってくれることだろう。
(堀越昭宏)

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OBERHEIM
Two Voice
Pro Synthesizer

機能と操作性に磨きをかけて現代のシーンに蘇るデュオフォニック・シンセ

価格:未定

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SEMモジュールによる独特で鮮やかなサウンドは健在

 アナウンスがあってから一体どれくらい待たされただろう……半ば諦めかけていたというのが正直なところだったので、製品レビューのお話をいただいたときには本当に何か夢のような気持ちになってしまった。Two Voice Pro Synthesizerこと、オーバーハイム2 Voiceのリプロダクションが遂にやって来たのだ。数年前、オーバーハイム・シンセサイザーの中核を成すモジュール、SEMがトム・オーバーハイム率いるマリオン・システムズから再生産されたとき、うまくいけばここまで来るとは予想していたがやはり手もとに届くと感慨もひとしおである。早速チェックしてみよう。
 Two Voice Pro Synthesizerは、先述したSEM(Synthesizer Expander Module)ユニットを2個備えた、デュオフォニックのリアル・アナログ・シンセサイザーだ。70年代半ばにオリジナル機がデビューしたときは、おもに4つのSEMに鍵盤とコントロール部がセットになった“4 Voice”が最もポピュラーな形だったが、大変に高価だった。今回、リプロダクションされたSEMを2つ使って新生2 Voiceとして改めて発表されたわけだが、当然のことながら各部に新しい機能が盛り込まれている。
 SEMは、1つのユニットに2VCO、1VCF、1VCAと2EGがパッケージされた、それ自身がコンプリートなモジュールである。VCOはそれぞれノコギリ波・矩形波とノイズを持ち、シンクが可能。フィルターはローパス、ハイパス、バンドパスの3モードで、12dB/octのカーブを持つ。今となってはシンプルというか、特筆するスペックはないのだが、コレがどうしてなかなかSEMでなければ出ない独特の鮮やかな音が出るのだ。輪郭がハッキリしていて、鋭い。ここは、実はオールド・ファンも誤解しがちなのだが……ポリフォニック・シンセのパイオニアとしてイメージされることの多い、4 Voiceのあの柔らかい滲んだような温かみのあるパッドから連想されるような優しい穏やかなキャラクターでは決してないのだ。特にエンベロープのシャープさは実機を触らないと分からないと思う。オリジナルの旧SEMとの違いは、オシレーターのピッチ設定ノブがコースとファインに分かれているところ(オリジナルは同軸2スピード・ノブ)、バンドパス・モードのスイッチが独立したこと、あとは残念ながらあのコミカルな旧オーバーハイムのロゴが見当たらないことくらいか。

楽器としての演奏性がアップ
モジュラー・システムにも対応

 SEMにはあまり違いがなかったが、新しいミニ・シーケンサーを含めた全体の構成はかなりアップデートされている。まず、シーケンサーはオリジナルの8ステップから16ステップに増えており、2つのSEMに対して別々にプログラムできる。1つのステップに対して2、3、4ラッチで割ったり、レストしたりすることもできる。さらに、シーケンスを組み合わせ、ソングとして保存することも可能だ。
 説明の順番が逆になってしまったが、2つのSEMは両方を鍵盤からコントロールすることも、シーケンサーからコントロールすることも、1つずつ鍵盤とシーケンサーからコントロールすることも可能になっている。また、鍵盤からコントロールする場合はユニゾンとスプリットが選べ、発音順番もリセットしたりサイクルしたりが選べるようになっている。また、ボリューム、パン、ポルタメント・スピードもそれぞれ2つずつ独立している。
 特筆すべきは、使いやすい普通のピッチベンドとモジュレーションの2ホイールが装備されたこと! これでリード楽器として相当活躍の幅が広くなった。さらに、ベロシティとアフタータッチ(!)もVCA、VCFに対して有効。ベロシティのカーブは8つから選べる。MIDIに関しては、受けも送りも可能になっている。また、2つのSEMそれぞれとシーケンサーに関しては、ほぼあらゆるパラメーターが外部とパッチできるパネルが装備されている。これによって、今まさに盛り上がりを見せているユーロ・ラック・モジュールのシステムのコントロール・センターとして使うのにも非常に適していると感じた。
 実は今回、バンド仲間でもある外池満広氏の持つ旧2 Voiceを引っ張り出していただき、ひと晩差し向かいでいじり比べるというとても贅沢な時間を過ごしたのだが、ハッキリ言って音そのものに関してはオリジナルに全く遜色ない、というかスタティックな状態では全く聴き分けられないというのが正直なところ。ただ、ノブの質感やポッドの回転の操作感にかなりの違いがあり、いじりながら弾くという形を取ると音色変化の手触りにはだいぶ差があった。オリジナルは良く言えば重々しく、悪く言えば若干シブい。実はパネルを開けて基盤も見たのだが、構成はほぼ同じながらオリジナルでは点数の多かった抵抗やコンデンサー、ダイオードなどがかなりICにまとめられており、スッキリ綺麗に整理されていた。ただ、先にも述べたようにそのことで音に深みがなくなったりしていないのはさすがだと思う。キー・アクションはオリジナルの方が若干重く、しっとりしている。
 オリジナルの旧オーバーハイムは、“ポリフォニックであるだけでスゴい!”という時代の名機だったので、完全に独立したユニットが2つ、4つ、あるいは8つあるというメリットをフルに生かしたアーティストがなかなか出てこなかった。なので、その後は“1つのパネルでエディットできてボイス数はキープする”という、ボイス・カード・システムのOB-Xに発展してしまったのだが、今になってみるとやはり完全に独立したSEMを複数持っている方が、面倒かもしれないが“理想に近い”と言えるのだ。
 デュオフォニックのシンセというのはなかなか楽器としての有り様が難しかったりするのだが、新しいTwo Voice Pro Synthesizerは、ホイールの装備によるリード楽器としての完成度のアップ、非常に多くのパラメーターをカバーするパッチパネルの装備によって、単なる高級機ではなく見事に“現代に居場所のある”シンセサイザーとして蘇った。ぜひこれを中心にしてモジュラー・システムを組んでみたい。
(飯野竜彦)

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KORG
ARP Odyssey

オリジナルを細部まで再現し蘇った小型アナログ・シンセサイザーの名機

価格:オープン

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コンパクト化されたボディに強力かつ複雑なサウンドを凝縮

 復刻されたコルグARP Odysseyは、ボディと鍵盤が小型化され(86%に縮小)、都会の住宅事情や可搬性といった現代のニーズを強く意識した作りになっている。また、驚くべきは、アープ・インストゥルメント社の共同創業者であるデイヴィッド・フレンド氏が当時の回路を完全に再現するために今回の復刻Odysseyのプロジェクトにアドバイザーとして迎えられたことだ。ボディ・デザインは、Rev.1及びRev.2の鍵盤が樹脂で囲まれたタイプが採用されており、Rev.3のいわゆる“出っ歯”タイプのデザインは省略されている。しかしながら、ボディ・カラー、操作子などは、それぞれのリビジョンが忠実に再現されており、購買意欲をそそられる。縮小された鍵盤のタッチも電子楽器を発音させるのに最適な心地良さだ。
 ピッチベンドとビブラートをコントロールするプレッシャー・センシティブ・パッド“PPC(プロポーショナル・ピッチ・コントロール)”がすべてのバージョンに装備されているのは嬉しい。3オクターブしかないARP Odysseyは、オクターブ・チェンジ・スイッチを上下するだけで実に7オクターブまでの音域をカバーできる。また、このオクターブ・スイッチをチェンジする際、発音中の音にポルタメントをかけるかかけないかの選択が可能だ。これはRev.1及びRev.2がオクターブ・シフト時にポルタメントが追従するタイプに対し、Rev.3ではポルタメントが付かなかった仕様を忠実に再現している。各操作子も、非常に気持ちの良いトルク感を保ち、縦型スライダーならではのさわり心地、そして抜群の視認性を確立している。
 ホワイト・ノイズ、ピンク・ノイズ、そしてオシレーター・ミキサー(オーディオ・ミキサー)側でチョイスするアープ独特のストラクチャーには基本波形はノコギリ波と矩形波が搭載されている。もちろん、フィルターの発振によりサイン波を容易に生成できる。大まかなノートはクリックのないCOARSEで、そして微妙なピッチ調整はFINEで調整する本機は、まるでアコースティック楽器をチューニングするような微細なピッチ・コントロールが可能であり、繊細なデチューン効果や、後述するリング・モジュレーターによる金属音を発振させるのにとても優れたデザインと言える。
 オシレーター・セクション下部には、LFO、S&H、そしてエンベロープからモジュレート可能なFMを装備し、オシレーター2においては、外部のペダルからのピッチ・コントロールが可能だ。それらのルーティングがすべてボタンで瞬時に切り替えられるのは、ライブ演奏に特化したARP Odysseyならではのユーザー・インターフェースを誇っている。また、オシレーター・シンクを装備しているので、特徴的なシンク・リード・サウンドがいとも簡単に生成できるのは嬉しい(もちろん、ピッチ・カーブはエンベロープからもLFOからもペダルからも行える)。パルス・ワイズもマニュアル、そしてLFO/エンベロープからも操作できるという自由度の高さだ。
 LFO、S&Hセクションの最も驚いた点は、スライダーの内部でLEDがLFO RATEに合わせて点滅することだ。これはオリジナルのOdysseyにはなかった機能だが、LFOのスピードが視覚的に認識できるのは、ライブ時にモジュレーション奏法をする際にとても便利だ。また、S&Hを発生させることができ、オシレーターのピッチやフィルターにかけられる。

効き味の違いを楽しめるRev.1~3のフィルターを搭載

 フィルター・セクションはローパス、ハイパスを装備。ローパスについてはなんとリビジョンごとに特性の違う3つのフィルターを切り替えできる仕様になっている。12dB/OctのTYPE1(Rev.1) 、24dB/OctのTYPE2(Rev.2) 、そしてTYPE3(Rev.3)と、どのフィルターも切れが良く、効き味の違いを楽しめるだろう。また、ハイパス・フィルターでは鋭い特徴的なサウンドを生成する。フィルター・モジュレートには、音程の高低でカットオフを調整する“KYBD CV”が搭載され、切り替えスイッチにより、S&Hもしくは外部のペダルからのCVコントロールに対応。もちろん、LFOやエンベロープからのコントロールもできる。余談だが、フィルターで発振したサイン波には、きちんとポルタメントがかかる。この1つをとっても、“アナログ回路”で構成された本物のアナログ・シンセサイザーということを感じ取れる。
 オーディオ・ミキサーには前述のとおりオシレーター1と2(それぞれノコギリ波と矩形波)のミックス、そしてノイズジェネレーターのボリュームが装備されているが、スイッチを切り替えるとリング・モジュレーターの音量となる。激しい金属音の粒立ちはARP Odysseyの得意とするところであり、まるでモジュラー・シンセサイザーで複雑なパッチングによって組み立てられたようなゴージャスな金属音を生成できる。ホワイト・ノイズ、ピンク・ノイズともに、まさにARP OdysseyをSEシンセサイザーにするための最強のセクションだ。
 エンベロープにはADSRタイプとARタイプの2種類が用意され、それぞれアンプや、オシレーター、フィルターなど別々のルーティングで多彩な音色合成が可能だ。エンべロープ・ジェネレーター下部にはADSR、ARそれぞれへ対してパッチングできるAUTO REPEATスイッチが搭載され、LFO RATEで設定したスピードで自動発音をさせられる。また、オリジナルにはない“DRIVE”スイッチを搭載しており、よりアナログらしい歪みのあるサウンドを容易に作り出すことが可能だ。
 また、リビジョン中、最も充実したRev.3のリア・パネルをもとに復刻Odysseyの拡張端子は配備されている。標準のフォーン・アウトのほかに、XLR端子による出力、外部からのオーディオ入力端子(内部のフィルターなどで加工が可能)、ポルタメント・フット・スイッチ・CVコントロール入力(PEDALコントロール)、そして、ボリューム調整可能なヘッドフォン端子を装備。さらには昨今のユーロ・ラック・シリーズや、往年のアナログ・シンセサイザー、そしてアナログ・シーケンサーと接続できるCV/GATE/Trigの入出力を装備し拡張性を実現。もちろん、MIDIとUSB端子も用意されている。
 最後に復刻版のARP OdysseyとオリジナルのビンテージOdysseyを真横に並べ、操作子を同じ値にして弾き比べてみたが、驚くほどほぼ同じ音色だった。まるでガリのない、新品のOdysseyを触っているような感覚に陥る。回路レベルから再現されたということが頷ける素晴らしい完成度だ。
(齋藤久師)

参考動画

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 本記事はリットーミュージック刊『キーボード・マガジン 2016年1月号 WINTER』の中でより詳しく紹介されています。ここでは紹介できなかった藤澤涼架、森大輔のインタビュー記事、キーボード・ヒストリーやその他注目キーボードのカタログなども紹介されていますので、ぜひチェックしてみて下さい!


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