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- 2024/11/16
キーボード・バイヤーズ・ガイド2016 Part1
昨年も数多くの新製品がリリースされ、大きな盛り上がりを見せたキーボード・シーン。日進月歩の先端技術から恩恵を受けたこれら新製品は、音楽制作や演奏に新たな可能性を切り開く絶好のチャンスとなるだろう。この記事ではそんなキーボード・シーンの現在を一望するべく、『キーボード・マガジン2016年1月号 WINTER』で大特集された“Keyboard Buyers Guide 目的&スタイル別キーボード購入ガイド2016”と連動し、現代市場を牽引する話題の新製品を3部構成で紹介していく。Part1となる本項では、ライブ・ユースに特化した機器を“パフォーマンス・キーボード”とカテゴライズし、藤澤涼架(Mrs.GREEN APPLE)とシンガー/ソングライターの森大輔の試奏所感を交えながらその魅力に迫っていく。
高音質、軽量、簡単操作をコンセプトに掲げたJUNOシリーズの最新モデル。ライブや音楽制作で使える膨大な数の音色を内蔵し、前モデルJUNO-Diのプリセット約1,000音色も搭載。新たにフレーズ・パッドやスライダーも装備し、ライブでの使い勝手も抜群だ。61鍵モデルのほか、同社のピアノ・タッチ・シンセでは初となる電池駆動の88鍵モデルも用意している。
Fujisawa's Comment
“初めて購入したシンセがローランドJupiter-50だったということもあり、コンパクトな楽器に対する抵抗のようなものがあって、どこまでのことができるんだろう、音色的にはどうなんだろうと思っていましたが、JUNO-DSを触ってみて恐れ入りました。こんなにたくさんのプリセット音が入っているのにこんなに軽量で、もうすごいのひと言ですね。ローランドのシンセはプリセット音色が綺麗なのであまり自分でいじる必要がありませんが、このJUNO-DSにもかなりの数の使えるプリセットが入っています。バンド・サウンドの中で重宝するものばかりだと感じました。中でも“Grand Pno DS”という新しいピアノ音色は、EQを変えなくても抜けてくる自分好みのサウンドです。また、電池で動いてくれるので、弾く場所も選びません”。
ピアノを中心とした新音色に加え、前モデルJUNO-Diのプリセット約1,000音色も搭載。音色拡張ライブラリーAxialやサンプルの読み込みにも対応している。
“プリセットのクオリティが高いので、そのままライブでも使えるというところは本当に強みですね。 ギターやブラスの音も充実しているので、これ1台で何でもできてしまいます”。
カテゴリーごとに分けられた音色選択ボタンや、レイヤー/スプリット専用設定ボタン、直感的な調整ができるスライダーの装備など、操作性を第一に考えた設計となっている。
“とても親切なレイアウトだなと思いました。音色名が書かれたボタンは初心者にも分かりやすく、ライブ中でもツマミやスライダーですぐに微調整ができるのがいいですね”。
新搭載の8つのフレーズ・パッドでは、USBメモリーに保存したオーディオ・サンプルや音楽ファイル、2ミックスのオーディオ・データを本体に読み込むことなく直接再生が可能だ。
“僕はサンプラーで効果音を出していますが、JUNO-DSならそれもできてしまう。しかもパッドのカラーを13種類から自分好みにカスタマイズできるので、気分も上がります”。
コードを指定するだけでフルバンドによる伴奏を付けてくれるアレンジャー・キーボード。テンション・コードにも対応している。幅広いジャンルの伴奏スタイルを多数プリセットしており、スタイルの録音・編集も可能だ。またリバプール発の名曲100曲を内蔵しており、聴いて楽しみ、マイナスワン演奏に合わせた練習も可能。もちろん普通のキーボードとして演奏を楽しむこともできる。
Mori's Comment
“まず伴奏スタイルの多彩さとクオリティの高さにびっくり。バリエーションやフィルインなどの構成を考えておけば、かなり凝った演奏ができるでしょう。既存の曲が思い浮かぶようなスタイルもたくさん入っているので、飲食店やストリート、パーティーなど人の集まる場所で、魅せるパフォーマンスが簡単にできそうです。リアルタイムで演奏したい人だけではなく、曲を作りたい人にもお薦めですね。頭の中では音が鳴っているんだけど、それがうまく再現できないうちにアイディアが薄れていくというのはよくあること。でもこの楽器を使えばすぐに具体的なアレンジが見つかるので、曲のスケッチには最適です。バンドで60年代の曲を演奏している人にとっては、練習用にも使える点も魅力でしょう。これまで使ったことのないタイプの楽器ですが、欲しくなりました”。
ミニ鍵盤採用で61鍵ながら4.2kgの軽さを実現。10cmスピーカーを2基搭載しており、オーディオ・インプットから入力されたCDなどの音を鳴らすことも可能だ。
“スピーカー内蔵なので、どこにでも持って行けてすぐにパフォーマンスできるのが魅力です。この楽器のコンセプトを考えると、ミニ鍵盤を採用したことも正解ですね”。
鍵盤をスプリットして、高音側、低音側のどちらでコードを認識させるかの選択が可能。全鍵盤をコード認識に使用したり、オフにして普通に演奏することもできる。
“切り替えによって、メロディーを弾きながらコードで伴奏を付けたり、 左手でベース・ラインを弾きながら右手でコードを指定したりできるのが嬉しいところです”。
ポップスやロックから、ソウル、ジャズなど、さまざまな伴奏スタイルを用意。ポタン1つでリズムを変更したり、イントロやエンディングを付けるといったことも可能。
“弾いていて気持ちの良いスタイルがそろっています。バリエーションやフィルイン、エンディングのパターンも入っているので、十分に1曲を完結させることができるでしょう”。
メモリー容量を大幅に拡張し、スプリット/レイヤー機能や、ライブ演奏に特化したセット・リスト機能などを新たに搭載したNord Electroシリーズの最新機種。オルガン・セクションにはフィジカル・ドローバーを装備し、より本格的な演奏が楽しめる。73鍵モデルには、セミウェイテッド・キーボードの5Dのほか、ハンマー・アクション・ポータブル・キーボードの5HPを用意。
Fujisawa's Comment
“所有しているNord Stage 2では、ボタンでドローバー・チェンジを行う仕組みですが、Nord Electro 5は実際のドローバーで設定を変えられるのがいいですね。新しく搭載されたB3トーンホイール・ベースの音色を使えば、左手の低音部で足鍵盤のパートを弾くこともできます。また、スプリット機能もあるので、アッパーとロワーで違う設定にしたオルガン音色を弾くといった、2段鍵盤のような使い方もできます。弦の共鳴をシミュレートした“ストリングス・レゾナンス機能”など、ピアノ音色も充実しています。バンドで演奏していると、1曲の中でEQを上げたり、逆に倍音を減らして温かみのある音にすることもありますが、やっぱりNordシリーズはボタンやツマミなどで視覚的に操作できるのが素晴らしい。とても満足度の高い1台だと思いますね”。
新たに有機LEDディスプレイを採用し、視認性をアップ。画面上でより多くの情報を確認できるようになり、プログラム選択やエディット時の操作性が向上した。
“これまでNordは画面が小さめという印象でしたが、今回一気に大きくなって見やすくなりました。これなら音色選びやプログラム・チェンジもスムーズに行えますね”。
Nord C2DのB3トーンホイール・シミュレーションをはじめとしたオルガン音色や、ストリング・レゾナンス機能によるリアルなピアノ音色など、こだわりの音を多数搭載。
“以前から定評のあるオルガンとエレピの音色はもちろん、シンセのセクションが充実していたのには驚きました。エフェクトも本格的ですし、とことん作り込める楽器ですね”。
73鍵モデルには、オルガン向けのセミウェイテッド・キーボードの5Dと、ピアノ系の演奏に適したウェイテッド・ハンマー・アクション・キーボードの5HPをラインナップ。
“所有しているNord Stage2もセミウェイテッドで、オルガンとシンセを弾くのにちょうどいい重さなんですよね。同じモデルでも、タッチが選べるのは本当に助かります”。
クオリティの高いサウンドを盛りだくさんに搭載したワークステーション。多彩なエフェクター、16パートのシーケンサー、サンプラー、16個のパッドなど、音楽制作に必要なツールをすべてパッケージしているのに加えて、軽量コンパクトでD-BEAMやアルペジエーターなどライブ・パフォーマンスを演出する機能も網羅している。DAWとの高度な連携も可能な万能型のキーボードだ。
Mori's Comment
“まず印象的だったのは反応の良さです。音色を切り替えても、ほとんどタイムラグなしに追従してくれる。コンパクトでどこでも使えるので、PCによる制作とは別に、パッとスケッチしたいような場合に便利そうです。もちろんシステムのメインにも据えられますが、そういったサブ機としての使い方もできますね。パッドでオーディオ・ループが鳴らせるのは意外でした。オーディオ・ループはシーケンサーでも使えて、ループを並べるような曲作りもできるので、PCベースで作るのとは違ったタイプの曲ができそうです。音色ではストリングスの音(“StringsSect1”)が好みでした。ライブで使いたい音色です。エレピはキラキラした感じの音色が個性的で、“ ’76 Tine”などは万能な印象です。操作も分かりやすいので、ぜひライブでも使ってみたいですね”。
Integra-7のSuperNATURALシンセ・トーンやXV-5080のPCMトーンを継承。Axialからの音色ダウンロードにも対応し、音色の拡張性は無限大だ。
“短時間ではチェックしきれないほど膨大な音色数で、クオリティも高いですね。個性的な音色も多く、シンセ・リードの音色が充実しているのも嬉しいところです”。
数多くの機能を搭載しながらも、合理的なパネル・デザインと大型LCDによって簡単に操作できる。6つのノブにより、音色を変化させながら演奏することも可能だ。
“ボタンの数が少ないので、一度覚えてしまえば簡単に操作できそうです。 起動も速く、画面も見やすいので、曲作りのスケッチにはストレスなしに使えて便利だと思います”。
16個のパッドは本体でサンプリングしたサンプルやPCからインポートしたオーディオ・ループなどをアサインして再生できるほか、数値入力などに使うこともできる。
“リズム音色をアサインして、ドラム・パートの打ち込みに使いたいですね。あらかじめサンプリングしておけば、ステージでコーラスを再生するのにも使えそうです”。
アナログ回路とSuperNATURALシンセ音源という、2つの異なるサウンド・エンジンを搭載したパフォーマンス・シンセサイザー。オート・ピッチやボコーダー、さまざまな録音方法に対応した4トラックのパターン・シーケンサー、高音質のPCMドラム・キットなど、ライブから制作まであらゆるシーンを想定した機能がコンパクトなボディに凝縮されている。
“アナログ・シンセはやはりちょっとハードルが高いイメージがありましたが、このJD-Xiはプリセットが充実しているのですぐにカッコイイ音が出せて、しかも音作りがしやすいですね。フィルターの効きも派手で、思い描いた音が自在に作れます。音は分厚く存在感があって、エフェクトにも深みがあると感じました。また、このサイズ感でありながら、上位機種に搭載されているSuperNATURALシンセ音源が入っている。アナログとデジタルの両方を使えるなんて、今までこんなシンセはなかったですよね。さらにシーケンサーやボコーダーが付いていたりと機能も大変充実しています。発売時から気になっていたので今回の試奏は楽しみにしてましたが、想像以上でさらに欲しくなりました。これ1台で楽曲の幅も広がるし、何より触って楽しい楽器です”。
のこぎり波、三角波、矩形波の3種類のオシレーターや、サブ・オシレーター、アナログ・タイプのローパス・フィルターを実装し、太く存在感あるサウンドを実現している。
“操作性もシンプルですし、オシレーター、フィルター、アンプ、LFOが左からいじりたい順に並んでいて、アナログに不慣れな人にも分かりやすく優しい1台だと感じました”。
オート・ピッチやボコーダーのほか、演奏環境に合わせてマイクの感度などを微調整したり、鍵盤を弾かなくても音声に効果を与えるオート・ノート機能も搭載している。
“シンセ自体のエフェクトも充実しているのに、声まで遊べるという満足感。オクターブで変化を付けたり、オート・ピッチもしっかりしているので、いろいろ使えそうです”。
デジタル×2、アナログ、ドラムの4トラックのシーケンサーは、リアルタイム録音、ステップ録音に対応。パートごとにミュートして構成を練ることも可能だ。
“パッドが横一列に16個並んでいるので、ステップ録音には分かりやすくていいですね。すでに入れた音を抜き差しするなど、直感的に操作してパフォーマンスできます”。
同社のフルコンサート・グランド・ピアノのフラッグシップ・モデル、CFXをはじめCFⅢS、S6のサウンドをサンプリングしたステージ・ピアノ。ピアノ演奏に最適な木製象牙調ウェイテッド鍵盤NW-GH 鍵盤を採用している。パネル面には必要最小限のボタンが合理的にレイアウトされており、ライブでの操作性も高い。
Mori's Comment
“自分のライブで使えるかどうかという目線で試奏しました。アコピ系の音色は、最初自分には少し派手かなとも感じましたが、“CFX Dark”の音をイコライザーで調整すると自分の好みの音色になりました。もともとの音色数も多いし、自分が必要とするアコピの音色はこれ1台で十分にまかなえると思います。エレピ系では“Planet”が気に入りました。“Clavi Wah”も使いたい音色です。ライブではピアノ系以外にパッド音色を使ったりもするので、シンセ系の音が充実しているところも好印象です。シンセ系の音色は、エレピなどにレイヤーさせて使うことが多いので、ワンタッチでレイヤーに切り替えられたり、バランスをスライダーで調整できるところも便利です。それから、この木製のウェイテッド鍵盤は完璧。とても弾きやすいと思います”。
CFX、CFIIIS、S6とヤマハの代表的なグランド・ピアノの音色を内蔵。それぞれのモデルの音色の明るさ、ピアノと距離感、EQ処理などバリエーションも充実している。
“僕が好きなピアノ音色が多数入っている点が最大の魅力ですが、もとになっている楽器やどのような加工を施したのかが音色名に反映されているので、選びやすいです”。
本格的な木製鍵盤を採用しながら17.5kgという軽さを実現。コンパクトなボディは可搬性に優れる。伝統と先進性がバランス良く共存したデザインも魅力。
“ピアノ音色を弾くときはタッチがとても重要。高品位な木製鍵盤の弾き心地は抜群です。それなのにボディは軽量でコンパクト。ライブでの使用を考えると持ち運びの良さはポイントです”。
5バンド・イコライザーのスライダーをパネル右手に装備。細かい音色調整がリアルタイムに行える。11タイプのリバーブや9タイプのコーラスなどエフェクトも充実。
“少し音色のニュアンスが違うかなと思ったときにはイコライザーが便利です。音色を切り替えてもイコライザーの設定がそのまま生きているという点も便利だと思います”。
本記事はリットーミュージック刊『キーボード・マガジン 2016年1月号 WINTER』の中でより詳しく紹介されています。ここでは紹介できなかった藤澤涼架、森大輔のインタビュー記事、キーボード・ヒストリーやその他注目キーボードのカタログなども紹介されていますので、ぜひチェックしてみて下さい!
藤澤涼架
5人組ロック・バンド、Mrs.GREEN APPLEのキーボーディスト。幼いころからクラシック・ピアノを習い、音楽科(フルート専攻)の高校を卒業。活動を行う中で現在のバンド・メンバーに出会う。2013年Mrs.GREEN APPLEに加入、2015年7月ミニ・アルバム『Variety』でメジャー・デビューを果たす。1月13日に1stフル・アルバム『TWELVE』をリリース。
森大輔
シンガー・ソングライター。2004年にデビュー、翌年に1stアルバム『OPUS ONE』をリリース。以後三代目J Soul Brothers、嵐、KinKi Kids、SMAP、MISIA、倖田來未らへの楽曲提供やプロデュースも手がけるなど、幅広く活躍を続ける。“森の音楽会”と題した定期ライブに合わせて、各回のテーマをモチーフとした新曲を配信している。また、オフィシャルファンクラブが発足。最新情報はオフィシャルHPへ。