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- 2024/11/16
Line 6 / Helix
この数年で多くのトップ・プロが使用するようになり、次世代を牽引する製品として注目されるギター・プロセッサー。高品質のエフェクト/アンプ・モデリングを多数備え、自身のギターさえあればあらゆるサウンドを出せるという優れものだ。そしてこのたび、最高峰のモデリング技術を持つLine 6が、満を持して発表したのがHelixである。そのサウンド・クオリティはもちろん、操作性も大きなセールス・ポイントで、プロセッサー初心者も容易に使いこなせる逸品だ。ここではギター・マガジン2016年2月号と連動し、DIMENSIONの増崎孝司を試奏者に迎えた同製品のレビューをお届けしよう。
※2016/7/8追記
Helix発売後初のメジャー・アップデートがリリースされました。計9種類の新たなアンプ/エフェクトモデルに加え、最大の目玉である「スナップショット」機能(1つのプリセット内で8種類の異なる設定を保存してシームレスに切替ができる)や、Variaxのコントロール性の強化、エクスプレッション・ペダルの極性変更、デジタル出力のレベル調整など、便利なアップデートが多数含まれています。Helixユーザーは必チェック!
●詳細な内容を記載したニュース・ページはこちら
http://www.line6.jp/news/380/
●ファームウエアのアップデート方法はこちら
http://yamaha.custhelp.com/app/answers/detail/a_id/7602/kw/helix/c/921
PODシリーズでモデリング・アンプ/エフェクターという新世界を切り拓いてきたLine 6による、新たな提案がこのHelix(ヒーリックス)シリーズだ。本機は“Real.Smart.Control.”というキャッチコピーを掲げているように、音色のリアルさ、スタイリッシュで扱いやすい操作性を、これまで以上に追求したペダルボード・タイプのギター・プロセッサー。新開発のモデリング・エンジンによる音色の精度/クオリティはもちろん、ライブ/レコーディングでシステムの中枢と成り得る拡張性の高さ、高機能と反比例する、操作性の複雑さを排除したイージー・オペレーションなど、まさに次世代を牽引する注目の新シリーズと言える。新開発のタッチ・センサー式フット・スイッチなども、ぜひ実際に体感してもらいたい1台だ。
Helixが単なるマルチ・エフェクター/モデリング・アンプに止まらないのは、その拡張性の高さにある。注目なのは4系統を備えたセンド&リターンで、お気に入りのエフェクターなども自由に本機に組み込むことも可能。内部のルーティングで、接続場所なども自在にエディットできる。また、マイク・インや2つのエクスプレッション・ペダル・アウト、外部アンプのチャンネル切替、ライン・アウト、MIDIとの連動、デジタル・アウトなどのほか、オーディオ・インターフェースともなるUSB端子も搭載。ヘッドフォン・アウトもあるので、自宅でも時間帯を気にせず使用することができる。
本機にはマーシャル・プレキシやフェンダー・チャンプ、ヴォックスAC-30といった名機からハイワット、ディヴァイデッド・バイ・サーティーン、Dr.Z、ボグナー、ソルダーノ、メサ・ブギーなど定番アンプのモデリングが全45タイプ内蔵。また、キャビネットは30種類、マイクは16種類を搭載しており、望みのギター・サウンドを作りだすことが可能だ。新開発のHXモデリング・エンジンにより、真空管の動作や電圧の上下によるサウンドの変化など、あらゆる要素が測定・反映されており、各アンプならではのツヤやコンプレッション感なども十分に味わえるだろう。またキャビネットも、2048ポイントのインパルス・レスポンスが用いられたことで、エッジや空気感などをリアルに再現する。エフェクターは、クロンのケンタウルスやフルトーンのOCDなど歪み12種を含む、全72種類を搭載。モジュレーション系やディレイ、コンプ、ワウなども名機・定番モデルがそろっており、音作りには不自由しないだろう。また、前述のとおり4系統のセンド&リターンも備えているため、さらに音色を拡張することも可能だ。
基本操作がジョイ・スティックとパラメーター・ノブだけですむのもHelixのポイント。パラメーターやモデル選択、ルーティングなどは6.2インチの大画面カラーLEDディスプレイにわかりやすく表示されるため、マニュアルなしでも容易に操作できるだろう。また、タッチセンシティブ・フット・スイッチも注目点。スイッチ上部が人肌に反応し、指で一定時間触れると任意のエフェクトをそのスイッチにアサインできる。ペダル・ボードを組む感覚で、欲しいエフェクトを設定できるというわけだ。さらに、ハンズフリー・ペダル・エディット・モードを搭載しており、各パラメーターを足のみでも設定可能。ギターを弾きながら微調整ができるのもうれしい機能である。
架空のアンプを操作しているような感覚。
こういったデジタルのものでは、どれだけヘッドルームを大きく感じられるかをまずチェックするのですが、特にクランチ・サウンドはアナログ・アンプでもなかなか難しく、パフォーマンスを探るのにうってつけなんです。ヘッドルームでどれだけ歪むのか、その歪み方も自分がイメージしているような、真空管に負荷をかけているような歪み方なのか、ギター側のボリュームを下げるとどう変化していくのか、そういった点をチェックしましたが、非常に良くできていましたね。今ここにはない、目に見えない架空のアンプを操作しているような感覚だったことにはびっくりしました。
それと、こういう機器の核はいかに自分のイメージと連動できるかだと思うのですが、Helixは見事にリンクしてくれましたね。しかも難しい操作は必要なく直感的に音を作り込めるからすごい。例えばキャビネットなどは、ひとつひとつのキャラクターを確かめながら選んでいきましたが、モデル名に表記されたキャビネットのイメージと、僕の耳に入って来るサウンドはイコールでした。オリジナルを知っている人はもちろん、知らない人は固定概念がない分より楽しめると思うし、遠回りしないで良い音にたどり着けるんじゃないかな。
手を止めなくて良いのはセールス・ポイント。
操作性はびっくりするぐらい良いです。このイージー・オペレーションというのが、実はHelixの一番の売りかもしれないです。フット・スイッチのタッチ・センサーも驚きました。エフェクターのアサインも、次々に置いていくという感覚でできますし、すごい技術ですよ。各パラメーターの操作をフット・スイッチでできるっていうのもすごいですよね。そういった調整で手を止めなくて良いっていうのはセールス・ポイントだと思います。
どんな状況でもワンタッチで自分のサウンドを出すことができるというのが最大のメリット。
数時間試しただけで、これは仕事で使えると思いましたね。録音で使ってみたらどうなるんだろう、レコーディング・スタジオのモニターだったらどう出てくるだろう、エンジニアが録った音とどうブレンドされるだろうという興味がありますが、音作りの時にイヤフォンで聴いた音、自分の中に聴こえて来る音と、モニター・スピーカーで聴いた音は同じでしたし、問題なく使えると思います。それと、これはすごく重要なのですが、ラインで音を出すことができるというのは、録音であれコンサートであれ、自分のサウンドをまったく変えずに外に出すことができるということです。どれだけ高価なアンプを持って行っても、そこのエンジニアが用意したマイクが合わなかったら、自分の出したい音とはほど遠いものが外に出てしまう。しかしHelixのようなツールを使えば、それが完全になくなる。そこが最大のメリットだと僕は思います。自分のサウンドをプロテクトする意味でも、それをどんな場所でもワンタッチで出せるという点でも、メリットは大きいと思いますね。
自分のギター・サウンドを自分以外の人に聴かせる時には、どうしてもアナログ感が必要だと思うんです。コンサート・ホールでの演奏もそうですし、イヤフォンやヘッドフォンなどもそう。相手は耳で聴いているわけですし、こういったデジタル機器も、どれだけリアルなアナログ感を持っているかが重要だと思います。そういう部分をユーザーは好むと思いますが、このHelixを選んでも失敗はないです。それと、例えば家に帰って来て、ノート・パソコンとHelixのスイッチを入れるだけで自分の世界観がすぐにできあがる。こんなに便利なツールはないわけです。こういう機器はこれからの音楽におけるモチーフとなるような、最先端の道具だと思いますね。ギタリストって、どうしても最新鋭の製品に手を出すのが遅いんですけど、早く試してほしいと思います。
本記事はリットーミュージック刊『ギター・マガジン2016年2月号』の中でも紹介されています。興味のある人はぜひチェックしてみて下さい。
価格:オープン
増崎孝司
ますざきたかし 1962年生まれ。80年代中期にプロとして活動を始め、多くのセッションに参加する。92年に日本を代表するインストゥルメンタル・グループ、DIMENSIONを結成。柔軟かつ個性あるギター・ワークに定評がある。今回使用したギターはサーのガスリー・ゴーヴァン・モデルで、ライン出力のモニター・スピーカーはLine 6のもの。