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- 2024/11/25
VOX / VT20X
8月の製品レビューでも話題となった「VX II」を含め、リアルなサウンドと高いコストパフォーマンスで人気のVOXデジタル・アンプから注目の新製品VT20Xがリリースされた。
多くのモデリング・アンプが行なう「アンプからの出音」のシミュレートではなく、「アンプの回路そのもの」をモデリングし、チューブ・アンプ内の各パーツの動作やその相互関係/影響を音色に再現するという、VOX独自の「VET(Virtual Element Technology)」は、このVT20Xにも引き継がれている。今まではモデリング対象のアンプのサウンドをできるだけ「忠実に」モデリングする事が良しとされてきたが、実際に使用するミュージシャンの多くは、忠実性よりも「実際の出音の質」を求める傾向にあるだろう。出音の完成度を重視したVET方式からは、リアルな「アンプ・サウンド」への拘りが感じられるだろう。
そしてこのVTXシリーズの最大の特徴は、デジタルとアナログを高度に融合させた点にある。第一にリアルな真空管(12AX7)を用い、多段増幅回路を使用した「Valvetronixプリアンプ」が搭載されていること。第二にパワー・アンプ段には、高性能デジタル・パワー・アンプに加え、アナログ回路も搭載していることだ。プリ部に真空管を用いることで、デジタル技術ではカバー仕切れないチューブ・アンプ独特の歪み、素速いレスポンス、音色変化等を高い次元で再現することに成功している。そしてデジタル/アナログをミックスしたパワー部により、クラスA/ABの違い、バイアス値による音質や真空管の動特性の変化も楽しむことができる。こうしてアンプ部で作られたトーンを出力するキャビネットは、独自のバスレフ構造と高い密閉性を持ち、サイズ以上のロー・エンド、音圧感を獲得している点も見逃せない。
もうひとつのポイントが、ダウンロードして使用できるエディター/ライブラリアン・ソフト「ToneRoom」。本体での各種エディットに加え、より詳細なパラメーターのカスタマイズもアプリ上で行なえる。「ToneRoom」を使用することでアンプ・モデルは20種(本体のみでは11種)に、プリセット・プログラムは60種(同33種)まで増えるのも大きな魅力だろう。さらに自身でカスタマイズしたアンプ/エフェクトは8種(同3種)まで保存可能。Windows、Macはもちろん、iOS版も用意され、あらゆるデバイスでのエディットが可能だ。
そして驚くべきはその価格帯。このクオリティにこの機能、そしてこのサウンド。動画のイントロではクリーン・サウンドから激歪みまで簡単なコントロールだけでエディットを行なってみた。ぜひチェックしてほしい。
※VX40X(40Wモデル)、VX100X(100Wモデル)は、2016年1月発売予定。
※使用ギター:Crews Maniac Sound / Aristoteles V2.
価格:¥28,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。