AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
MXR / EVH 5150 Overdrive
MXR社とエディ・ヴァン・ヘイレン(以下EVH)のコラボレーション・シリーズは、これまでにフェイザー(EVH90 Phase 90)、フランジャー(EVH117 Flanger)、そしてワウ・ペダル(EVH-95:ブランドはJim Dunlop)の3機種が発表されている。それぞれEVHならではの拘りが盛り込まれており、ファンはもちろん、プロ・アマ問わず愛用者が多いことからも、サウンド・クオリティの高さは実証されている。そんなコラボレーション・シリーズに、ついに真打ちであるオーバードライブ・ペダルが登場した。
多段のMOSFETを採用し、チューブ・アンプのレスポンス感を再現した非常にパワフルなオーバードライブに仕上がっている。サウンドは正にEVHのシグネチャー・トーンと呼べるもので、「ブラウン・サウンド」と呼ばれるエッジーで芯のあるハイゲイン・サウンド。EVHの名に恥じない(例えばEQの設定がどうであろうとも揺るがない)芯の音の「格好良さ」がたまらない。
EVHのサウンドの主なポイントはピッキングとアンプのセットアップだろう。エディは親指と中指、親指と人差指等ピックの持ち方を変え、角度や当て方でサウンド/アタックの質感をコントロールしているが、その微妙なニュアンスも見事に再現してくれる。EQは全てパッシブ・タイプで、派手に音色を変える訳では無く、各帯域の微妙なチューニングを行なう印象。つまり、EQがどのポジションであっても基本的なEVHサウンドには変わりはない。ハイゲインでありながら見事に広がりのあるコード感や強烈なピッキング・ハーモニックスのヌケ感を再現している。特にトレブルEQをアジャストする事で倍音感が変化するのでじっくりと試してみて欲しい。
さらにノイズ対策に使えるゲート機能も秀逸。こちらは同社のエフェクター「Smart Gate」のノウハウを引用している。ナチュラルなノイズ・リダクションは高品質で、音の減衰に合わせてゆっくりとゲートを閉めたり、パワーコードや低音弦リフに合わせて素早くゲートを閉めたりする事も可能。非常に使い勝手も良い。さらにゲイン・アップやコンプレッション効果が欲しい場合はBOOSTスイッチをONにすれば、歪みが若干濁ってドライブ感が増してくれる。ゲインが2時以上に上がっている場合はそれほどサウンドに差は出ないかもしれないが、ギターのボリュームを絞った時には違いが感じられるハズだ。
とにかく、ロック・ギター・サウンドの歴史を変えてしまったEVHの、あの「ブラウン・サウンド」がこの筐体に詰まっている。すべてのHR/HMのルーツとも呼べる極上のオーバードライブ/ディストーション・サウンド。EVHファンでなくともぜひチェックしてもらいたい逸品だ。
※使用アンプ:Fender '68 Custom Deluxe Reverb
※使用ギター:Crews Maniac Sound / Ab's
価格:¥38,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。