1976年頃より、カスタム・ギター＆ベースのネックやボディを供給するサプライヤーとして登場したシェクターギター。その後、俗にいう「スーパー・ストラト」モデルや、クラシックなスタイルを継承しながらも「ラージ・サイズ・ポールピース」「ハム・キャンセル」といった新しいアイディアを盛り込んだオリジナル・ピックアップを開発するなど、現代ではスタンダードになった仕様やスペックを数多く生み出してきた老舗のギター・ブランドである。源流にあるそのスタンスは、現在でも多くの製品に受け継がれている。

　一見すると「ごく普通の」3シングル・ギターだが、弾いてみて驚くのはそのクオリティ。コンポーネント・ギターと言えば杢の強いメイプルをボディ・トップに配し、見た目にもビンテージ系のルックスとはテイストを変えているモデルが多い。しかしこのギターは本当にオーソドックスなルックスながら、プレイアビリティとサウンドは実にモダンという興味深いキャラクターを持っている。

　動画でも説明しているが、ネック周りの仕上げの丁寧さはもちろん、弦へのテンション・バランスの良さが音に表れている。購入してすぐにギグやレコーディングで使用できるレベルだ。しかも、どんなセッティングに推移したとしても、バランスの取れたセットアップが施されているので、弦のゲージや弦高の調整等を行なう際にもサドルとトラスロッドを少し調整してやれば即座に対応できるだろう。

　そして3シングルの醍醐味と言えばフロント・ピックアップを選択した際の暴れ感や、リア・ピックアップの「ジャキーン」とした派手なサウンド、センター・ピックアップのヌケの良さに加えて、ハーフトーンのクリアなサウンドが外せない。このN-ST-ALにはエキゾチック・ピックアップとの共同開発によるオリジナル・ピックアップが搭載されており、60’sスタイルのパワーと70’s以降のブライトさが同居した様なトーンで、非常に音抜けが良い。またノイズも抑えられているのでハイゲイン・アンプやライン・レコーディングでも威力を発揮するだろう。バンド・アンサンブルに混ざった際に、特にその良さを実感できると思う。

　さらにシェクターならではのオリジナル・デザインによるブリッジが良い。ベース・プレートとブロック・タイプのサドルにはブラス素材を使用し、力強さとファットなミッドを生み出している。トレモロ・ブロックにはスティールを採用する事で、ビンテージ・サウンドに重要な鳴りを加えている。精度が高く、ビブラート時のスムーズな動きに好感が持てた。さらにトレモロ・アーム部分はステンレス製で非常にタフな作りとなっている。

　現場で鍛え上げられたカスタム・ギターのノウハウが詰まったこだわりのエレクトリック。老舗ブランドの懐の深さを感じさせるギターだ。

※使用アンプ：Fender '68 Custom Deluxe Reverb

ペグはゴトーSG360-07 MG-Tをマウント。背面のノブを回し弦を固定するフィンガー・ロック・タイプ。安定したチューニングと素早い弦交換を実現している。

ネックはメイプル、指板はローズウッド。比較的細めのフレットが打たれている。

ジョイント部、ネック周り、フレット・エッジの処理も見事な仕上がり。プレイアビリティの高さに貢献している。

ピックアップはエキゾチック・ピックアップと共同開発したチキンシャックⅡをマウント。ピンテージ・テイストを保ったまま出力を上げており、素晴らしい音抜けの良さを実現している。

コントロールはトラディショナルな1ボリューム、2トーン、5ウェイ・ピックアップ・セレクター。

サドルとブリッジ・プレートにはブラス素材を採用し、力強さとファットなミッドを生み出している。ブロックにはスチールを使用することで豊かな「鳴り」を得ている。アーミングの動きもスムーズ。

SCHECTER / N-ST-AL