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- 2024/11/16
Les Paul Custom、ES-Les Paul、J-45
新作リリースにともなう“MAZE Tour”真っ最中のNothing’s Carved In Stoneのギタリスト、生形真一氏による週刊ギブソン特別企画の後編。今回は、生形氏が実際に愛用している属性の異なる3機種のギブソン・ギターについて、やはり新作の楽曲を引き合いに演奏を交えながら語っていただきます。
1952年に誕生したレス・ポールに、上位機種となる“カスタム”が加わったのは1954年のこと。当時はまだ一体型バー・ブリッジを搭載していた“スタンダード”に対し、いち早くABRとストップ・テイルピースによるセパレート・タイプのブリッジを、さらにフロント・ピックアップにはスーパー400などの高級機種に搭載されていたアルニコVを搭載し、最先端の高級機種であることをアピールしていました。
この1954 Les Paul Customは、当時のオリジナル・モデルに限りなく近く、マホガニー1ピース・ボディを採用。フロント・ピックアップにもアルニコVを再現したPUを搭載し、太いがしっかりと高域の出るサウンドを蘇らせました。エボニー指板、グローバー・ペグの影響もあり、レス・ポール・スタンダードとはひと味違う、唯一無二のサウンドを生み出しています。ブラック・ビューティと称される美しいエボニー・ブラック・フィニッシュを、VOS仕上げで再現。ブロック・インレイ、ヘッドのスプリット・ダイヤモンド・インレイも目を引くゴージャスな1本です。
ギブソン・メンフィスが放つ新機軸、ES-レス・ポールは、ES-335とレス・ポールというギブソンのふたつの名器を高いレベルで融合させた新しいギターです。ボディ・サイズ、ボディ形状はレス・ポールですが、ボディの構造はトップ、バック、リムの中空構造にセンター・ブロックを搭載した、まさにES-335のそれ。チェンバー構造のレス・ポールとはまったく異なる仕様なのです。軽やかなセミアコ・ギターのサウンドを持ちながら、小型のボディの影響か、ハウリングに強いのも本器の特徴でしょう。かなり深く歪ませてもハウリングしにくく、レス・ポールに近いサウンドから、よりアコースティカルなサウンドまで、幅広く使えるギターです。
本器は、生形氏好みのビグスビーを搭載し、クラシック・ホワイトで仕上げられたプロトタイプ。生形氏は早速レコーディングやライブで使い始めており、氏の新しい相棒として注目されている1本です。
名器揃いのギブソン・アコースティック・ギターの中でも、圧倒的な人気を誇る名器中の名器、J-45。1942年にシーンに登場して以来、数え切れないほどのアーティストを虜にしてきました。製造年によって仕様は異なりますが、本器のオリジナルとなる60年代のJ-45はラウンド・ショルダー、アジャスタブル・ブリッジ、ナロー・ネックといった特徴があります。プロトタイプの本器ではブリッジにストレート・ボーン・サドルを採用、ネック・グリップにも標準的なレギュラー・グリップを、加えてナット幅もレギュラーの43.8mmとは異なり44.1mmとやや幅広になっているようです。これによって、“ジャキジャキ”としたギブソンらしさは残しつつ、人によっては線が細いと感じる60年代モデルのサウンドを、より豊かなミドル、ローを持ったバランスに仕上げています。
生形氏も、バンド・サウンドの中でもしっかりとした存在感を放つ本器に絶対の信頼を寄せている様子。アコースティックのメイン・ギターとして、レコーディングやライブで愛用しています。
──レス・ポール・カスタムは、どのような場面で使っていますか?
シングルコイルの音が必要な時に、これを使っています。シングルコイル/ボルトオンのギターも悪くないんですが、バンド・サウンドの中で浮くんですよね。自分が思っているレンジの範囲より上に行き過ぎちゃうんですよ。このカスタムはジャキッとしつつレンジがバンドに馴染むんで、新作『MAZE』の「Perfect Sound」のカッティングとか、「YOUTH City」の歌メロのバックとか、結構使っています。
──味付け的な使い方ということでしょうか。
味付けにしては、使っていますけどね(笑)。やっぱりメインはES-355で80%くらいはあのギターなんですけど、それ以外のところで結構使っていますよ。
──このギターはフロント・ピックアップが独特ですよね。
すっごい良い音しますよね。やっぱり、もとはジャズ・ギターなんですよ。そういう音がしますし……(少し弾いて)もう、景色が見えるような音がします。自分にとっては、結構大事なギターです。
──確かにキレイな音ですね。生形さんの独特なアルペジオと絡むと、アコギとの境界線がわからなくなるような感じです。
あー、そこは面白くしたいなと思っている部分ですね。昔からあるモデルで、新しいことをやりたい気持ちがあります。それもあって俺はあまりオールドは使わないんですけど……。このカスタムも昔ながらの作り方をしているギターですけど、これじゃなきゃ出来ないフレーズ、出ない音があって、2015年の音楽でしっかり使える。もちろん、昔ながらのロックン・ロールにも使えます。そこが素晴らしいですよね。
──ES-レス・ポールは新しい作りのギターですが、どうとらえていますか?
確かにこれは、ギブソンのギターの中でも新しいタイプのギターですよね。すごく使いやすいし、使い勝手のいいギターです。まず、音がいい。それが一番大事なことなんですけど、335、355に比べると、もっと空気を感じます。レコーディングではよく空気感をとらえるためにアンビエント・マイクを立てるんですけど、これは生音やアンプを通しただけの音にすでにその感覚があって、すごくびっくりしました。
──エアー感があるギターはハウリングの心配もありますが、その点は?
確かにこういうギターを手にしようとする人が気にするのはハウリングだと思うんですけど、もう、全然ハウらない。かなり歪ませても大丈夫ですね。あとは、軽い! びっくりするくらい軽いですね。ビグスビーも付いていて、俺好みです。
──どういった場面でこのギターを使っていますか?
今のところ、レコーディングでアルペジオをする時に使っていますね。ギター毎にカラーがあるので、そこはカスタムと使い分けています。ギブソンのギターはこれとカスタムだけじゃなく、335でも355でも、レス・ポールでもVでも、どれもそのギターにしか出せないカラーがあると思っていて、このギターにも独自のカラーがあるのがいいですね。このギター1本でライブやってって言われたら、すぐできますね。それくらい完成度が高いし、いいギターです。ウチのバンドは動くから、軽いのもいい。もちろん、重いギターにはそのギターの良さがあるんですけど……。でもこのギターの一番の良さは、やっぱり音ですね。
──どんな人にオススメできますか?
もう、1本目にこのギターを買っちゃうのはアリだと思いますよ。俺が昔335を手にしたのも、人と違うギターを持ちたいって気持ちが強かったから。このギターを持って、自分のものにしていくといいんじゃないですか。
──愛用するギブソン・アコースティックはJ-45だけでしょうか?
このJ-45とJ-35、あとは昔買ったものが何本かあるんですけど、これがメインです。レコーディング・スタジオに行くと他にもアコギはあるんですが、結局これが一番バンド・サウンドに合うんですよ。
──J-45とJ-35の使い分けは?
J-35の方が生音は大きいんですよ。で、J-45は生音は小さいんだけど、ふくよかさがある。J-45はすごくマイク乗りがいいんですよね。バンド・サウンドの中で存在感がある。だから、今
はほとんどこのJ-45を使っていますね。
──新作の中で聴こえてくるアコギ・サウンドはすべて?
これですね。アコギも、音量じゃないんですよ。前は音量が出るアコギが良いものだと思っていましたけど、そうじゃないんだと気づきました。このJ-45はレンジが良いところにあって、存在感があるんです。レコーディングでスタッフに「この曲に、どのギターが合うか?」って聞いてみても、みんな結局これを選びますからね。
──生形流のアコギの使い方を教えてください。
エレキで弾いたフレーズをアコギに変換しちゃったりしますね。新作の「Gravity」なんかも最初はエレキで考えたフレーズなんですよ。ループしているフレーズや、アコギでは普段弾かないようなフレーズで使うのが好きですね。
──このJ-45は比較的厚みのあるグリップが特徴ですが、弾き心地は?
まったく問題ないですね。エレキとの持ち替えでも違和感がないですし。あまり薄いグリップだと音も薄くなりそうで、このくらいが好みです。この見た目もカッコいいですしね。黒いギターは好きなんですよ。ラウドに弾いても反応してくれる。何にでも合うし、新しいこともできる。本当に、ロックなアコギだと思います。
この日は、生形氏が普段ライブで使用しているセットを持ち込んでもらい、アルバム/ライブでの音作りを想定して演奏していただいた。
マーシャルJMP2203
ヘッドは1977年製のJMP2203。キャビネットは1972年製で、スピーカーはセレッションのビンテージ30に交換されている。
エフェクト・ボード
Free The Tone ARC-3(プログラマブル・スイッチャー)を中心に組まれたエフェクト・ボード。ギターからの信号は、まずハンドメイドのバッファー/プリアンプに入り、そこからA/B BOXでエレキ用の信号(ARC-3へ)と、ピエゾ用の信号(ミキサーへ)の2系統に分かれる。ボード内の小型エフェクターは、右上のFree The Tone製オリジナル・ループ・システムから時計周りに、Diaz Pedals Texas Tremodillo(トレモロ)、SUBDECAY Quasar Quantum(フェイザー)、Catalinbread Montavillian Echo(エコー)、XOTIC BB Preamp(オーバードライブ)、Human Gear Animato Forte(ファズ)、Wren And Cuff Your Face 60’s Hot Germanium Fuzz(ファズ)、BearFoot Pale Green(コンプレッサー)、Free The Tone Red Jasper(オーバードライブ)、Z.Vex Fuzz Factory(ファズ)。その下には、DigiTech Whammy(ワーミー)。スイッチャーの上には、tc electronic Alter Ego X4 Vintage Echo( エコー)、t.c.electronic Flashback X4 Delay&Looper(ディレイ、ルーパー)。スイッチャー左には、BOSSボリューム・ペダルとVOXワウ・ペダル、KORG DT-10(チューナー)、そしてBOSSのメトロノーム2台という配置になっている。
10月13日発売のギター・マガジン11月号では、Nothing’s Carved In Stoneの最新作『MAZE』とギブソン・ギターをテーマに、ギタリスト生形真一の魅力を深掘りする表紙巻頭/20ページに及ぶ特集を行っている。本企画で紹介したギブソンはもちろん、生形氏が愛用するすべてのギブソン・ギターも掲載されているので、ぜひチェックいただきたい。
■定価:823円
■仕様:A4変型判/258ページ
■発売日:2015年10月13日
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは10月16日(金)を予定。
生形 真一
1976年生まれ。1998年に、細美武士(vo、g)らとELLEGARDENを結成。同バンド時代よりギブソンES-335、355をメインに使用し、自らのギター・スタイルを確立。2008年にバンド活動休止後、2009年には盟友ベーシスト、日向秀和らとNothing’s Carved In Stoneを結成する。パンクスとロックの熱をはらみながら、ギブソンのオーセンティックなギターでバンド・サウンドに先進性を与え続ける姿勢は多くのフォロワーを生み、発表したアルバムも新作『MAZE』を含め7枚を数える。一方、近年は吉井和哉のライブ・サポートを務めるなど、他方面で活躍している。