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- 2024/11/16
Gibson Memphis / ES-355 with Bigsby Ebony
9月にニュー・アルバム『MAZE』を発表し、現在、全国7公演のMAZE Tour真っ直中のNothing’s Carved In Stone。ここでは緻密かつロックなプレイに定評のあるギタリスト、生形真一氏を招き、アルバムやツアーで愛用するギブソン・ギターについて、そしてギブソンを核とする音作りについて、実演を交えながら語っていただく特別企画を2週にわたってお届けします! 今週は生形氏の不動のメイン・ギター、ES-355の魅力を紹介してもらいます。
ES-300シリーズの最高峰として1958年に登場したES-355。ヘッドストックに輝くスプリット・ダイヤモンド・インレイ、7層にも及ぶマルティプル・バインディングなどの華麗な装飾は、まさに最高峰モデルに相応しいゴージャスな雰囲気を醸し出しています。また、グローバーのロトマティック・チューナーを標準装備し、エボニー・フィンガーボード(当時)、スウィング・アウェイ・プル・サイドウェイ・トレモロ(後にロング・ヴァイブローラやビグスビーに変更)といった鳴りに影響を及ぼす部分もES-335とは異なるため、ES-355ならではのトーンを持っていましたが、初年度の出荷数はわずかに10本。初期のビンテージ355は激レア・ギターとして、市場に出ることも滅多にありません。
現在は、Gibson Memphisから限定生産されています。最上位機種としてのオーラ、そしてES-335と異なる材やパーツを採用していることによるソリッドなトーンが“実はロックに合うセミアコ”として、近年改めて評価されています。生形氏はライブ用にピエゾを後付けしたES-355も使用。
──ES-355との出会いについて、教えて下さい。
確か2007年か、もう少し前かな……。それまではチューン“オー”マティックを搭載した黒のES-335を使っていたんですよ。ある時にビグスビーを搭載した355を弾いてみたら、音が全然違っていて。下が少し暴れるというか、ザラッとした歪みですね。そこがすごく気にいって、それからはビグスビー自体を使う・使わないということに関係なく、ビグスビー搭載のギターを使うようになりました。実際にパワー・コードを弾くとわかりやすいと思うんだけど、低音がグワッとくる感じ、スッキリし過ぎない感じが魅力ですね。
──新作『MAZE』の1曲目「YOUTH City」のド頭の感じなどがわかりやすいですね。
そうですね。ギブソンの気持ちいいところは、いろいろあるんだけど、特にコードを弾いた時の音が魅力的なんです。例えば、他のバンドにギタリストとして呼ばれた時に、ステージに立ってコードを一発鳴らしただけで聴いている人をぶちのめすことができなきゃダメだと思うんですよ。それができるのが、ギブソンのギターですよね。
──2曲目の「The Poison Bloom」の単音リフはかなりエッジが効いていますね。
あれは、実は古いマエストロのファズをかましています。
──現代的な音像の中でも違和感がないですね。
ギターは新しいのが好きなんですが、レコーディングでは他の機材は結構古いものも使いますね。あの曲は最初マーシャルの1959に直で弾いたんですけど、そうすると普通の古いロックの音になっちゃうなと思って。それで使ったのがマエストロでした。でもエフェクターって俺の中ではあくまでも付加価値で、本当に大事なのはギターとアンプですね。
──ES-355の弾き心地についてはいかがですか?
もうこれが基準になっているから、これと比べて他のギターの弾き心地がどうかっていう感じですね。ギターって、グリップだとか弾き心地の最初の印象ってあると思うんですけど、長く弾いていることでそのギターに対する弾き方をするようになるし、自分の音、自分のプレイになると思うんですよ。俺の場合は、それがこのギターだったんです。もちろん見た目も、音も好きだし。最初に持ってパワー・コードを弾いた瞬間、誰にも負けない気がしたんです。
──長く使うことで、変わってきた部分はありますか?
やっぱり角がとれてきて、パワーも少し落ちてきているかもしれない。ピエゾ付きの方はそこまで使っていないから、元気な音です。レコーディングなんかだとよくわかるんですよ。メインは少し枯れていい音になっている。自分が好きなだけかとも思ったんだけど、エンジニアさんもやっぱりこっち(メイン)がいいって言いますね。
──ピエゾ付きのES-355について教えて下さい。
これは、見た目はほぼ一緒で、基本的な仕様もメインと一緒なんですが、ピエゾを後から付けてもらって調整しやすいようにボディ裏にパネルを付けてもらっています。アコギから入っていきなりエレキに変わるような曲を、ライブで再現する時に使います。ほぼ完全にライブ用ですね。
──最後に改めてES-355の魅力を教えてください。
やっぱり、このオールマイティさは魅力ですね。トーンとボリューム、スイッチの兼ね合いでどんな音でも作れますからね。ジャジィな音、パワフルな音、キレイなアルペジオの音……このオールマイティさはレス・ポールにもないところですね。やっぱりこのボディのセミ・アコースティックな構造がポイントでしょうね。同じ構造の335との違いは、音の立ち上がりが速いんですよ、355の方が。演奏にすぐ反応してくれるというか……もちろん335もそうなんですけど、レスポンスに関しては355の方が速いですね。あとは見た目も好きなんですよ。やっぱり見た目も大事ですから。これはもう、生涯使っていくギターだと思っています。
この日は、生形氏が普段ライブで使用しているセットを持ち込んでもらい、アルバム/ライブでの音作りを想定して演奏していただいた。
マーシャルJMP2203
ヘッドは1977年製のJMP2203。キャビネットは1972年製で、スピーカーはセレッションのビンテージ30に交換されている。
エフェクト・ボード
Free The Tone ARC-3(プログラマブル・スイッチャー)を中心に組まれたエフェクト・ボード。ギターからの信号は、まずハンドメイドのバッファー/プリアンプに入り、そこからA/B BOXでエレキ用の信号(ARC-3へ)と、ピエゾ用の信号(ミキサーへ)の2系統に分かれる。ボード内の小型エフェクターは、右上のFree The Tone製オリジナル・ループ・システムから時計周りに、Diaz Pedals Texas Tremodillo(トレモロ)、SUBDECAY Quasar Quantum(フェイザー)、Catalinbread Montavillian Echo(エコー)、XOTIC BB Preamp(オーバードライブ)、Human Gear Animato Forte(ファズ)、Wren And Cuff Your Face 60’s Hot Germanium Fuzz(ファズ)、BearFoot Pale Green(コンプレッサー)、Free The Tone Red Jasper(オーバードライブ)、Z.Vex Fuzz Factory(ファズ)。その下には、DigiTech Whammy(ワーミー)。スイッチャーの上には、tc electronic Alter Ego X4 Vintage Echo( エコー)、t.c.electronic Flashback X4 Delay&Looper(ディレイ、ルーパー)。スイッチャー左には、BOSSボリューム・ペダルとVOXワウ・ペダル、KORG DT-10(チューナー)、そしてBOSSのメトロノーム2台という配置になっている。
10月13日発売のギター・マガジン11月号では、Nothing’s Carved In Stoneの最新作『MAZE』とギブソン・ギターをテーマに、ギタリスト生形真一の魅力を深掘りする表紙巻頭/20ページに及ぶ特集を行っている。本企画で紹介したギブソンはもちろん、生形氏が愛用するすべてのギブソン・ギターも掲載されているので、ぜひチェックいただきたい。
■定価:823円
■仕様:A4変型判/258ページ
■発売日:2015年10月13日
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは10月16日(金)を予定。
生形 真一
1976年生まれ。1998年に、細美武士(vo、g)らとELLEGARDENを結成。同バンド時代よりギブソンES-335、355をメインに使用し、自らのギター・スタイルを確立。2008年にバンド活動休止後、2009年には盟友ベーシスト、日向秀和らとNothing’s Carved In Stoneを結成する。パンクとロックの熱をはらみながら、ギブソンのオーセンティックなギターでバンド・サウンドに先進性を与え続ける姿勢は多くのフォロワーを生み、発表したアルバムも新作『MAZE』を含め7枚を数える。一方、近年は吉井和哉のライブ・サポートを務めるなど、他方面で活躍している。