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- 2024/11/16
Paul Reed Smith / S2 30th Anniversary Custom 24
より良いギターを製作する事に「命を懸ける」というと「また、そんな大げさな!」と思われるかもしれない。だが冗談でも何でもなく本当にそう考えているギター・メーカーは存在する。その代表とも呼べるのがポール・リード・スミス社(PRS)だ。
まず代表のポール・リード・スミス本人が持つ、ギターに対する情熱というか熱量が半端なものではない。良いギターをどうやって安定して製作し、世界中に供給できるか? そしてどうすればさらに良いギターが作れるか? たぶんポールはそういう事しか考えていないと思う。設立当初からパーツを含めてほぼ全てを自社ファクトリー内で製作するというこだわりや、ピックアップ等においてもトラッドな形式には敬意を表しながらも、独自の視点でオリジナルなモデルを生み出してきた。しかもビジネス面で成功している点でも素晴らしい。
またPRSは、ラインナップの最上に位置する「プライベート・ストック」と同じぐらい、細部にこだわって製作されるコストパフォーマンスに優れた「エントリー・クラス」の製品開発にも情熱を注ぎ続けてきた。USAファクトリー以外で製作されたKOREAメイドのSEシリーズ等でも、SantanaやMarty Friedmanといったアーティスト・モデルを多くリリースし、ギターを始めたばかりのユーザーが手に取れる価格帯を実現しながら、プロ・ギタリストが使用しても問題ないぐらい高水準な楽器をデザインしてきた。
そんなPRSが新しく発表するのが、レギュラー・ラインと同じくUSAファクトリー内で製作されるエントリー・クラスのギター、S2シリーズだ。シンプルで精悍なルックス、すぐに馴染む高いプレイアビリティ、そしてサウンド。確かに、どこをとってもPRSスピリットが感じられる。それだけでなく、弾き心地やパーツのセレクトからもビシビシとこだわりが伝わってくる。
このS2 Custom 24は、PRSを代表するオリジナルのCustom 24のデザインを継承しながら、ボディ・トップのアーチを簡素化する事でコストパフォーマンスの向上を狙っている。サウンドはキレが良く、オリジナルCustom 24に比べて「ネチっこさ」が控えめに感じる。この辺りはボディ厚等の関係だと思うが、S2ラインは音が前に飛んでくる感じが心地良い。同じCustom 24でもこの違いは面白い。
ピックアップはS2ライン用のオリジナル・モデル、S2 HFS-TREBLE(リア)とS2 VINTAGE BASS(フロント)を搭載。フル・ハムバッカーのサウンドはもちろん、コイルタップ時のトーンも綿密に計算されており、ハーフトーンやミックス・ポジションの音色は本当に「使える」という印象だ。さらにペグやトレモロ・ブリッジもレギュラー・モデル同様のスペックを持たせながら、このS2ライン専用に製作されている。動画でもアーミングを多用しているが、メーカー出荷状態のまま使用してもほとんど狂いがない事が確認できると思う。
Custom 24と言えば、やはりハード・ロック・スタイルやテクニカルなプレイでその真価を発揮するギターだ。ハーフトーンでのクリスタル・クリーンからフロント・ピックアップのウォームでナチュラルなリード・トーン、リア・ピックアップのガッツあるドライブ・サウンド等、全てにおいてPRSギターの魅力を体感できる点はさすが。あとはPRSらしい魅力的なカラーリング/ルックスの中からお好みの1本をチョイスするだけだ。
価格:¥185,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。