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クラムボンがカスタムIEMを製作体験!〜前編 @ e☆イヤホン[FitEar編]

カスタムIEM

自分の耳型を採取してオーダーメイドする“イヤホンの最高峰”カスタムIEM(カスタム・インイヤー・モニター)の魅力を伝えるべく、ミュージシャンやエンジニアがカスタムIEMを実際に製作しプロの耳で語ってもらう本企画。デジマガでもお馴染みのイヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」にご協力いただき、今回は今年結成20周年を迎えた(メイン画像左から)クラムボンのミト、原田郁子、伊藤大助にカスタムIEMを製作体験してもらった。

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e☆イヤホン秋葉原・カスタムIEM専門店で製作体験!

 いまコアなリスナーから注目されているのが“イヤモニ”だ。イヤモニは、インイヤー・モニターの略で、以前は主にプロ・ミュージシャンがステージ上で演奏をモニタリングするために使っていた。しかし、プロ・ミュージシャンが納得する高音質を体験しようと、一部のイヤホン/ヘッドホン・マニアからその音質の高さがブームとなり、現在では広く一般のリスナーでも愛用する人が増えている。そのため、求めやすい価格の製品も登場し、各社が力の入った製品を投入しているのだ。そんなイヤモニの中でも、自分の耳型を採取し、より音質を追求したカスタム・インイヤー・モニター(以下:カスタムIEM)と呼ばれる製品が話題になっている。

 カスタムIEMは、自らの耳型を採取することにより得られる抜群のフィット感はもちろん、好みのデザイン、カラー、仕様までもオーダーメイドで自分専用のイヤホンを製作する、まさに“イヤホンの最高峰”。しかしオーダーメイドゆえに敷居が高いと感じる方や、実際のオーダー方法や製作過程がよくわからない、という方が多いのも実情だ。そこで今回の企画では、カスタムIEMの世界をより身近に感じてもらうべく、音にこだわりを持つミュージシャンやエンジニアなどトップ・プロの方々にカスタムIEMを製作してもらい、その製作過程から感じたことや、実際の使用感などカスタムIEMの魅力を語っていただこうと思う。

 今回カスタムIEMを製作体験してもらうのは、今年結成20周年を迎え、アニバーサリー・イヤーのライブ活動などで多忙な日々を送るクラムボン。早くからハイレゾ音源をリリースするなど、音へのこだわりが強いクラムボンがカスタムIEMにどんな魅力を感じるのか興味深いところだ。そしてカスタムIEMの製作にご協力いただくのが、昨年秋葉原にカスタムIEM専門店をオープンさせた、デジマート・マガジンでもお馴染みのイヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン秋葉原」。早くからイベントなどを通じてカスタムIEMの普及に力を入れてきた同店だが、カスタムIEMの魅力をもっと多くの方に伝えていきたい、という思いから今回の企画にご賛同いただいた。

2014年にオープンした「e☆イヤホン秋葉原・カスタムIEM専門店」。(写真:e☆イヤホン ©)

幅広いカスタムIEMを展開するFitEarの実力と魅力

 今回クラムボンが製作体験でチョイスしたイヤホン・ブランドは、銀座/千葉に店舗を構える須山補聴器が手掛ける、カスタム・インイヤー・モニターを主力とするイヤホン・ブランド「FitEar」。補聴器製作、歯科技工のノウハウを生かし、さらに一流エンジニアの意見などを取り入れながら生み出される製品は、数多くのプロ・ミュージシャンからオーディオ・マニアまでを唸らせている。耳型を採取して製作するハイエンド・モデルのMH335DWをはじめとするカスタム・インイヤー・モニターから、Parterre(パルテール)などのユニバーサル・モデルまで、現在は求める音の好みや使うシチュエーションに合わせた様々なバリエーションが販売されている。

多くの著名アーティストも使用する須山補聴器の「FitEar」。

マスタリング・エンジニア・原田光晴氏をアドバイザーに迎え開発されたFitEarの代表機種「MH334」。

カスタムIEMを製作

1. モデルを選択する

 カスタムIEMはFitEarだけでなく、もちろん他のさまざまなメーカーでも取り扱っているので、ブランド、デザイン、カラー、仕様などの幅広い組み合わせ/選択肢から選択する必要がある。価格的にも手軽に作れるものでもないため、音の好みや方向性、デザインやカラーなども含めてじっくりと吟味して選んでほしい。e☆イヤホンでは、そういったアドバイスも的確に行ない、さらに試聴できる製品も多いため、まずは気軽に足を運んで試してもらいたい。

今回e☆イヤホンにご用意いただいたFitEar製品。サンプルをじっくり試聴して選ぼう。

 今回クラムボンの3人にはFitEarが展開しているほぼすべてのカスタムIEMを、メンバー自らが用意したポータブル・オーディオ・プレーヤーに繋いで試聴してもらった。それぞれ求める音のテーマを決めて、製作するモデルをじっくりと選んでもらったが、皆ギリギリまで悩んでいたのが印象的だった。さらに音質に深いこだわりのあるミトは、ハイレゾ対応のAstell&Kernのポータブル・プレーヤーを用いてチェック。最初は3人とも違うモデルを選択したが、最終的には、バランスの良さと音楽を聴く楽しさを追求したモデル「Aya」を原田郁子とミトが選択、そしてダブルウーハー化により低域の質感をより高めたハイエンド・モデル「MH335DW」を伊藤大助が選んだ。

ハイレゾ対応のAstell&Kernを使い真剣に試聴するミト。

仕事とプライベート両方で使えるモデルを選ぶ伊藤大助。

時折、発声をしながら選んでいたのが印象的な原田郁子。

FitEar MH335DW

FitEar MH335DW[伊藤大助's choice]

 非常にワイド・レンジでフラットな音質が得られるMH334をベースに、さらにダブル・ウーハー化することにより、より迫力とレンジの広い低域が得られるハイエンド・モデル。3ウェイ・3ユニット、5ドライバーという、バランスド・アーマチュア型のイヤホンで、低域から高域まで繊細なサウンドを描き出す。
この製品をe☆イヤホンでチェック!

FitEar Aya(※写真の試聴機に装着されてる金色のフェイスプレートは「きせかえ工房」製のアクセサリーであり実際の製品には含まれません)

FitEar Aya[ミト&原田郁子's choice]

 FitEar初の3Dプリンタを使ってカスタム・シェルが製作されるモデル。ユニット構成などは非公表だが、MH335DWほど高繊細かつワイド・レンジではないものの、特にボーカルものなどに向くようなサウンドが得られる。インイヤー・モニターの素養は残しながらも、純粋に音楽を聴く楽しさも追求しているバランスの取れたモデルだ。(※写真の試聴機に装着されてる金色のフェイスプレートは「きせかえ工房」製のアクセサリーであり実際の製品には含まれません)
この製品をe☆イヤホンでチェック!

2. インプレッション採取(耳型取り)

 カスタムIEMは、自分の耳の形に合った製品を作るため、耳型(インプレッション)を必ず採取する必要がある。通常、20〜30分程度かかる耳型の採取工程を簡単に見ていこう。インプレッション採取は補聴器店等で認定技師が行うのだが、e☆イヤホン秋葉原・カスタムIEM店ではインプレッション採取会を定期的に行っている。まず医師が検診し、異常がないかをチェック。この段階で耳に異常が見つかった場合や事前に病気などがわかっている場合には、耳型を採取できないので注意が必要だ。問題がなければ専用のシリコン材料を耳の中に注入し、耳型を作っていく。作業中の写真はなかなかインパクトがあるが、耳型採取は特に痛みなどは感じず、身構える必要もなくスムーズに終わる。よりプロ仕様で精度を高めるためには、2回両耳の耳型を採取する必要があり、2度目はマウスピースを噛みながら行なう。クラムボンも今回は、2回耳型をを採取していた。尚、インプレッション採取料金はカスタムIEM本体の料金の他に別途必要となるので、こちらもあらかじめ確認しておこう。

写真のように注射器を使って、耳の奥までシリコン材を注入。

両耳を塞ぐと、周りの音がほとんど聴こえなくなる。

ある程度固まったら、写真のように耳型を取り外していく。

3. インプレッションが完成!

 注入したシリコン材が固まると、耳型採取が終了する。普段自分の耳型を見ることができないので、この機会に写真を撮っておくのも楽しいかも。左右で耳の形が違っていることにも驚かされる。実際にクラムボンの3人も自分の耳型を興味津々に見ていた。両耳20〜30分程度で耳型の採取は終了するが、実際に行なう場合には時間に余裕を持って望んだ方が、気持ちにもゆとりが持てて良いだろう。

 自分の耳型ができることで、新たなカスタムIEMのイメージも膨らみ笑顔がこぼれるクラムボンのメンバー。

4. e☆イヤホンを体験しよう!

 続いては、今回取材にご協力いただいたe☆イヤホン秋葉原店4F(カスタムIEMのフロアは同ビル1F)の売り場を、セールスプロモーション担当・西さんの案内で散策。フロアには、最新のイヤホン/ヘッドホンから、ポータブル・ヘッドホン・アンプ、さらには便利なアクセサリーの数々まで、魅力的なポータブル・オーディオ関連製品が所狭しと並ぶ。また、多くの製品が試聴可能で、じっくりと自分好みの製品を選べるのも嬉しい。さらには中古商品も取り扱っているため、予算に限りがあるようであれば、そちらをチョイスするのも良いだろう。クラムボンのメンバーは、カスタムIEM向けの便利なアクセサリーに驚きつつ、リケーブル製品(着脱式イヤホン・ケーブル)のコーナーでは自らのプレーヤーを持ち込み、先ほど選んだばかりのFitEarでじっくり試聴。そのサウンドの変化の具合に、“これはヤバい”という感想も挙がるほど。e☆イヤホンは、ミトに「2日間泊り込んでも、足りない」と言わしめるほど、圧巻の商品ラインナップを誇る。

e☆イヤホン秋葉原店の“ヘッドホンの壁”前でセールスプロモーション担当・西さんの説明を聞くメンバー。

充実のリケーブルを試すミトは“これはヤバい!”と音の変化に驚きも。

クラムボンが語るカスタムIEM

 最後に、ハイレゾ音源をリリースするなど、音質に深いこだわりをもつクラムボンの3人に、今回のカスタムIEM製作体験について伺った。プロとしての高い次元の意見は、カスタムIEMの魅力を知り、選ぶ際の手助けにもなるはずだ。ぜひ参考にして、e☆イヤホンに足を運びカスタムIEMの世界に飛び込んでみてほしい。いまより上質な音楽リスニング体験の扉が開けるはずだ。

 なお、製品が完成してからのインプレッションもお届けする予定なので、乞うご期待!

クラムボンの3人にカスタムIEMの製作体験を語ってもらった。

──これまでカスタムIEMを作った経験はありますか?

ミト 3人ともFitEarを使っています。2012年によみうりランドで行なったライブの最後に、会場内を練り歩きするので、ワイヤレスのモニター環境が必要になったんです。そのためには、モニターはインイヤーじゃないと駄目だねって話になって、FitEarを作ったんですね。

──その時は、どのモデルでしたでしょうか?

ミト 3人が同じモデルだったかは忘れましたが、フラットな特徴のモデルをお願いしました。僕のはMH334ですね。

──普段もそれをお使いですか?

ミト それとこの後に、“Parterre(パルテール)”も使い始めました。カスタムIEMだと人に聴かせられない(装着できない)ので、これがすごく便利で。このモデルは意外にレコーディングでも使えるというのがわかり、郁子さんも使うようになって。

原田郁子
 レコーディングの途中で買ったんだよね?

ミト そう、そう。それこそ新作の『triology』のピアノの音を録っている時に、900(ソニーMDR-CD900ST)とか普通のヘッドホンだと、音漏れがすごく気になってしまって。で、クラムボンって音の大小がすごく変わるバンドなので、すごく小さい音を録ろうと思うと、ガイドのクリックと聴いてる音でS/N(静音性)が悪くなってしまうんですよね。だから、音の漏れにくいインイヤー・モニターが良くて。でも、MH334とかフラットなものだと、音を分析する時にはすごく適しているんだけど、プレーヤーの気持ちが盛り上がらないところがあるんですよね。逆にパルテールはMH334に比べて少し音がナローなので、なんて言うか、あまり細かいことを気にしないで、熱量を保ったままある程度できるっていうのがあるんですね。それがすごく良くて。最初334を作った時は、フラットであることが重要だと思ったし、僕もそこから入った人なんですが。でもいまは、いろんなことを経験したので、フラットだけじゃないものにも目が行くんです。だから次は、イヤホン/ヘッドホンの音楽の楽しみ方を模索して、それをレコーディングにフィードバックできないかって探し始めていたところなんです。

──なるほど。大助さんはカスタムIEMに対しては、どうですか?

伊藤大助 イヤモニは作業に使うのでフラットさも大切ですが、今日は直感的に聴いて楽しいものを選んでみようと思いました。やはり生の楽器を演奏しながら、その音をモニターするために使うんですが、あまり作業的になり過ぎないようにしたい思いと、最低限のレベルはクリアしつつ、聴いていて気持ちがいいなって思う要素を入れていきたいですね。

──郁子さんはイヤモニを選ぶ基準はありますか?

郁子 うーん、いつも先に目的がありますね。何かをやるためにイヤモニが必要なんですけど、そもそもは苦手なんです(笑)。完全に耳を密閉するってことに、まだ慣れていなくて。ピアノのレコーディングの時に、ベロシティの加減を耳の中だけで掴んでいくのが、すごく難しかったですね。すごく時間がかかっちゃったんですけど、音圧とか空気感を感じる場所が違うから、「これはこれ」と面白さを見つけて、早く慣れたいって思っています。だからできるだけ、レコーディング用に買ったイヤモニを普段のリスニングにも使って、だいぶ仲良くなってきました。

──イヤホン/ヘッドホンは、何個かお持ちなんですか?

ミト 状況に合わせて使い分けるので、ヘッドホンを3つ、インイヤー・イヤホンを3つ持っています。例えば、DJ用に使うためのものは、細かいことを気にせずワッーっと盛り上がれるものを使いますし。あとは音楽だけじゃなく、映画とかアニメを観る時に、流れている音楽の構造を知りたいと思ったら、すごくフラットなイヤホンを使ったり、そういうのを忘れて楽しく『バットマン』を観たいと思ったら、ものすごいダイナミック・レンジの広いもので、大爆音にして聴くっていう。

郁子
 楽しそう(笑)。

──そのためにも、多くのイヤホン/ヘッドホンが必要なんですね。

ミト そう、そう。イヤホン/ヘッドホンの特性によって、用途が違ってくるんですよね。

──今日選んだイヤモニも、その辺りが選択のキーワードになっていましたよね?

ミト 今回、選ばせていただいたFitEarのモデルに、どれひとつとして駄目なものはないんですよ。これがすごく重要なんですけど。僕が今回選ぶにあたって決めたテーマですが、“とにかく楽しく聴ける”やつを選びました。もうね、フラットはいいんです、仕事で聴くし持っていますから(笑)。今回は、歌が気持ち良く聴けたので、選んでみました。ケーブルとかを交換することで、好みの音色にすることもできますしね。

──それで、今回はAyaを選ばれたんですね。

ミト そう。今回選ぶにあたって、花澤(香菜)さんの音源を聴いていたんですが、いちばん花澤さんの声が近かったっていうのが決め手ですね。もう「花澤さん近い」で、“ウホッ、気持ちイイ”ってなるわけですよ(笑)。その喜びがあるかないかで、判断しました。すごく独特だなぁって思って、レンジがあっても歌は正面にある。自分の曲でこういう風にしていきたいって思っている音に近かったんですね。自分がこれを使って混ぜたら(ミックス)、歌は正面にあって、周りもしっかり鳴っているんだけど、邪魔しないみたいな、そういう音に仕上がりそうです。このイヤモニで自分のミックスを聴いたら、「今日のミックスは、すごくいい」って気分で聴けそうですね(笑)。

──郁子さんがAyaに決めた理由は?

郁子 最初、ライブのモニター用として選んでいたんですよね。鍵盤を弾くポジションがだいたい中域から低域にかけてなので、その辺りの具合と、歌を聴くときの高音の伸び具合。低域が膨らむ会場だと、ある程度ちゃんとハイがないと縦が見えなくなるから、ハイも奇麗に聴こえつつ、ミッドの辺りもムチっと居てほしい、とかあれこれ聴いてて……で、その後に「ここからは主にリスニング用です」と渡された、Ayaを聴いたら、「わ、気持ちいい」って。さっきまで細かく細かく聴いてたのが、なんだったんだろうって、全部吹っ飛ぶぐらい(笑)。でも。「そういうことかもな」と思って、Ayaにしました。

──大助さんは、MH335DWを選んでいますが、これを選んだ理由は?

大助 僕の場合は、聴き分けやすいということと、聴いていて気持ちがいいっていうことを、1機種でできないかなって思い選びました。仕事用、リスニング用、と分けなくても使えるものという視点で、これだったらできるんじゃないかなって思った感じですね。

ミト
 クリックとかそういうのがあっても、MH335DWはレンジがすごく広いから、他の音もちゃんと聴けるよね。そういった意味では、335も素晴らしいと思うんだよね。今っぽい音楽を鳴らして気持ちいいと思う音ではありますしね。

──レンジ感は、MH335DWが広く感じますか?

ミト なんかすごくパワフルに聴こえます。上も下も逃げないというか、バチッとしていて。だからインストとか聴くのには、すごく向くと思います。

──郁子さんはMH334と悩まれていましたよね?

郁子 モニター用で考えると自分の声の息の部分「サァー」っていうところも聴きたくて。だとすると、それなのかなって。いや……悩ましかったですね(笑)。

──耳型を取って作るカスタムIEMですが、装着感についてはどう思われますか?

ミト 装着感は良いんですが、考え方がふたつあって、すごくシビア過ぎると感じることもあります。それと頭蓋骨に伝わる振動に干渉することも少なからずあるので、体調の部分もシビアにその日の音に影響するとも思うんです。こういうことは、直接レコーディングをやって気付いたことなんですね。たぶんライブとかは、そんなに厳密なピッチ感はいらないので、それでもいいんですけど。ただレコーディングの時にフラットな特性のものを使うと、シビア過ぎてピッチの的が狭くなるんです。だから特に歌入れの時とかには、あまり薦めないですね。でも今回、少しナローなAyaを選んだので、もしかしたら自分が演奏したりする時のモチベーションに近い音を引き出してくれるのかなって気が少ししているんです。それにMH335DWは、楽器ものとかを録る時に使ったら、これもまた違ってくるんだろうなっていう……“チクショー、どっちを選ぼう”っていうのもあって、すごく考えてしまいました。

──これだけのモデルからひとつを選ぶのは大変ですね?

ミト そのあげく、4Fのフロアに行けばリケーブルがあって、プレーヤーとポタアンでまた違ってくるし、その接続のケーブルでも音が変わるし……もう“オイッ”って(笑)。

郁子 無限大(笑)。

ミト 音を追求し始めたら、e☆イヤホンに2日寝泊まって、製品を試してみても終わらないと思います(笑)。

──4階にいると楽しいですよね?

ミト もう“沼”ですね。楽しいとかよりも、理性のない動物のように探求しそうです。

──郁子さんもイヤホンのケーブルを交換して試していましたね?

郁子 あれは危ないです。帰りに、4階に寄りそうで、すごく危ないです(笑)。

ミト
 このフロアはケーブルに留まらないじゃないですか。歌入れはヘッドホンを使っているので、どれがいいとかも考えちゃいますし。

──大助さんは、普段もイヤモニで音楽聴いているんですか?

大助 そうですね。レコーディングで使っているものを、そのまま使うようにしています。

──3人とも普段から、イヤモニを使っているということで、クラムボンにはなくてはならない機材になっているんですね。

ミト でも、まだトライ中なんですよ。どこまで使えるのかという可能性は、まだ試行錯誤している段階です。ただ、明らかにドラム、ピアノ、アコギ、ガット・ギターとかをレコーディングする時には、普通のヘッドホンをすることに比べたら、3人がイヤモニを使うことで、数倍も音が良くなる。数倍どころか、確実に3dBぐらい演奏が違って聴こえる。それぐらい、違うんですよ。そういう風になってきていますよね。

──今日、イヤモニを作って、リスニング環境の向上に対する可能性も感じていますでしょうか?

郁子 これがひとつの入り口で、どんどんカスタマイズできるっていうことなんですね。「音の聴こえ方が変わる」っていうドアが開いて、そこからどんどん世界が広がるのは、面白い。

──イヤモニを仕事として使わなくても、新しいリスニング体験ができますからね。

郁子 音楽を聴いて、“うわー!”って思いたい(笑)。何歳になっても感動したいですよね。

ミト
 そう。どのタイミングもそうで、感情を揺さぶられたいわけですよ。そのために、イヤモニも試してほしいです。

──今日は、揺さぶられまくっていましたからね。

ミト たしかにそうですが、もともとが感情の振れ幅が激しいので(笑)。でも起伏を激しくさせてくれる音だからいいですよね。

大助
 なんとなく、できれば仕事用で楽しく聴けるイヤホンがあったらいいのになって、贅沢なイメージを思っていたんですが、“あっ、あった”みたいなことが起きました。なんだ、これだみたいな。こういう音のイメージで、ライブや作業ができたらいいなって思っていたものが、もうすでにあったんだと思いました。

──イヤモニを選ぶとしたら、何を基準にすれば良いと思いますか?

ミト その人のブームとか、センスもあると思いますが、まずは何が良い音かというのをわからないと選べないと思うんです。だから、そういうところから入っていくべきだと僕は思うんですね。僕らは、それを散々やり尽くしていて知っているから、いよいよ次のシフトというかフェイズに移行しているだけです。

──今日は、e☆イヤホンさんでの取材でしたが、売り場を観ている時にすごくイキイキとしていましたよね。

ミト ここにいたら、店員さんに「話しかけないで」って言いそうで怖いです(笑)。特にアクセサリーとか、ポタアンとか終わらないですよ。機能をチェックするのに最低30分は必要ですし、それに見合ったケーブルも探さないといけないし……。つまり2日の休みが欲しいっていう結論になりました(笑)。

大助 わからない人が行っても、入門用からスキマ的なものまで用意されているので、泊まりには来れないですが、通ってもう少しイヤモニのこととかを勉強したいと思いました(笑)。

郁子
 フロアに行った時に、できるだけ見ないようにしてたんですけど、できるだけ薄目で(笑)。でも今、ちゃんと使えるヘッドホンを持っていないので、例えばキーボードをこちらに持ち込んで、片っ端から試聴してみたいという妄想にかられてます(笑)。

それぞれ思い通りのカスタムIEMをチョイスできた様子。あとは完成を待つのみ!

2014年にオープンした「e☆イヤホン秋葉原・カスタムIEM専門店」。(写真:e☆イヤホン ©)

イヤホン&ヘッドホン専門店「e☆イヤホン秋葉原店」

●店舗紹介:
東京・秋葉原と大阪・日本橋に店舗を構えるイヤホン&ヘッドホンの専門店。常時約2,000機種以上の試聴が可能。新品販売はもとより、修理やチューンナップ、中古買取/中古販売まで、イヤホン&ヘッドホンのビギナーの方からハイエンド・ユーザーの方々まで、幅広いお客様にご愛顧頂いております。また、2014年にオープンした1FのカスタムIEM専門店ではオーダーメイド・イヤホン等、世界でも当店のみの取り扱い品を揃えたイヤホン&ヘッドホンのテーマパークとなっております。皆様のご来店を心よりお待ちしております。

●住所:〒101-0021 東京都千代田区外神田4-6-7 カンダエイトビル1F&4F
●営業時間:11:00-20:00/年中無休
●TEL:03-3256-1701
●アクセス:JR各線 秋葉原駅より徒歩5分、地下鉄銀座線 末広町駅より徒歩2分(地図を見る
●ウェブサイト:http://www.e-earphone.jp
●【デジマート店】eイヤホン 秋葉原店 カスタムIEM専門店(1F):https://www.digimart.net/shop/4942/

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プロフィール

クラムボン
1995年、ボーカル/キーボードの原田郁子、主にベースを担当するミト、ドラムの伊藤大助により結成。浮遊感と常に変化に富んだポップ・サウンドが、幅広いリスナーを惹き付ける。99年、シングル『はなれ ばなれ』でメジャー・デビュー。01年には、亀田誠治を共同プロデュースに迎えた3rdアルバム『ドラマチック』をリリース。同アルバムにはライブでもよく演奏される代表曲「サラウンド」ほか、「便箋歌」、「ララバイ サラバイ」などの名曲が収録され、多くのリスナーを魅了した。また翌年からは、小淵沢でのレコーディングも開始。常に数々のミュージシャンとも共演/コラボし、フェスなどへの参加も多い。05年に発売した6thアルバム『てん 、』は、モノラルとステレオ両バージョンを発売し、音質へのこだわりが結実した作品となった。09年には、Jポップ・アーティストとしていち早く、シングル「NOW!!!」のハイレゾ音源(24bit/48kHz)をOTOTOYより無料配信。結成20周年を迎えた今年発売された9thアルバム『triology』は、ハイレゾ、ブルーレイ・オーディオ、アナログなどを含む5種類のフォーマットでリリースするこだわりだ。各メンバーはソロ活動も精力的にこなし、また音質に対する意識もとても高く、原田郁子はDSDでの録音/配信も行なっている。今後も、日本の音楽シーンの先端を走る彼らから目が離せない。

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