ギター・シンセでありながら、「ゼロ・トラッキング」で「専用ピックアップは不要」、かつ「和音入力にも対応する」と言われたら？　ギター・シンセを愛用していたギタリストであれば「何だって？　それは本当？」と驚くに違いない。

　SY-300を試奏して感じたのは「今までとは次元が異なる」という事だ。まずはゼロ・トラッキングのスピード。いわゆるレイテンシーは感じない。これこそ多くのギター・シンセ愛用者が両手を上げて喜ぶ仕様であり、BOSSの高い技術力を知らしめるポイントだと言える。これにより、シンセサイザー・サウンドを何の違和感もなくプレイできる事に驚く。プレイヤーはギターを弾いている感覚のまま、エフェクター感覚でギター・シンセ・サウンドを操る事ができるのだ。さらりと書いているが、これがどれだけ凄い事か！

　そして専用ピックアップを必要としないという点。今までは高品質なギター・シンセ・サウンドを得るためには、必ず専用のドライバー・ピックアップを楽器にマウントする必要があった。高価なビンテージ楽器や、変形モデル（フライングVやスタインバーガー・タイプ等）には装着が難しく、楽器のルックスが変わってしまう事にためらう方も多かっただろう。また、ギターからのアウトプットが複数になってしまうため、ワイヤレス使用ユーザーや激しいステージングを行なうミュージシャンも、専用ドライバーのマウントには抵抗があったと思う。しかしその呪縛からついに解放されるのだ。

　和音にも対応するポリフォニック仕様という点も嬉しい。コード・ストローク、カッティングやアルペジオといったギターならではのプレイも表現力豊かに反映してくれるので活躍の場面は更に広がる。さらにチョーキング／ベンドにも驚くほど正確に追従してくれる。ブルースマンの「味わい深いチョーキング」とギター・シンセ・サウンドの両立は不可能と思われてきたが、SY-300を使用すればむせび泣く様なチョーキングでギター・シンセを操る事もできてしまう。

　他にも紹介したい点が多々あるのだが、とにかく、凄い。速弾きはもちろん、スタッカートも和音もチョーキングも全て受け止め、再現してくれる。音はBOSSならではの高品質サウンドであり、これまでのギター・シンセの上を行く事は間違いない。あとは使用するミュージシャンのセンスが、さらにこのサウンドと機材を面白いものにしてくれるだろう。コンパクト・エフェクターを20台数珠つなぎにしても出せないサウンド。それを引き出してくれるのがギター・シンセサイザーだ。新しいサウンド、次の時代の幕開けとも言えるこのSY-300をぜひ手に入れて、新しい音楽／新しいプレイ・スタイルを生み出して欲しい。

※使用アンプ：Fender '68 Custom Deluxe Reverb
※使用ギター：Crews Maniac Sound / OSL

BOSS / SY-300

BOSS / SY-300（背面）