AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
RME Babyface Pro オーディオ・インターフェース&コンデンサー・マイク
今回のハイレゾ入門は、アコースティック楽器のハイレゾ録音にフォーカスして、発売前から熱い注目を浴びているRME社の高品位オーディオ・インターフェース「Babyface Pro」とエントリー〜ミドル・レンジ・モデルのコンデンサー・マイクのオススメの組み合わせをご紹介します。
一般的にオーディオ・インターフェースと言えば、レコーディングをする際に用います。それ故、主にレコーディング・エンジニアや宅録をするユーザーなど、限られた人が購入する製品でした。しかし、ハイレゾ音源がオーディオ・マニアに浸透し始めた2011年に発売された、ドイツのRME社が開発したコンパクトなオーディオ・インターフェースであるBabyfaceは、ハイレゾ音源のリスナーからも評価され、世界的なヒットとなりました。今回は、オーディオ・マニアも注目したBabyfaceがモデル・チェンジし、より高性能になって「Babyface Pro」として今月発売開始されるということで、ぜひ紹介したいと思います。
Babyface Proは、本体にXLR入力端子が内蔵されている点も大きな特徴で、ファンタム電源を供給でき、高品位なマイクプリも内蔵しているため、コンデンサー・マイクを直に挿して録音することができます。さらにワイド・レンジかつ繊細なADが可能な設計で、アコースティック・ギターのようなレンジが広く、倍音が豊かな生楽器のレコーディングにも最適です。そこで今回はアコギの録音にも最適なエントリーからミドル・レンジ・モデルのコンデンサー・マイクも一緒に、ご紹介させて頂きたいと思います。マイクも一緒に揃えて、レコーディングからハイレゾ・リスニングまで、ぜひ楽しんでみて下さい。これからUSB DAC等を購入しようと考えているユーザーには、選択肢のひとつとして試聴して頂きたい製品です。
RMEのBabyfaceは、現在ほど多くのUSB DACが市場になかった2011年に発売が開始されたモデルです。当時は24bit/192kHzまでDAできるUSB DACがまだ少なく、高価であったこともあり、求めやすい価格ながら高音質であったBabyfaceは、ハイレゾを楽しみたいオーディオ・ユーザーからも注目されました。
またBabyfaceには、背面に設けられたD-Sub 15pinコネクタに、ブレイク・アウト・ケーブルを接続することでRCA出力ができました。バランス出力をそのまま受けられるオーディオ用のアンプは数が少なく、これも支持された理由のひとつだと思います。このブレイク・アウト・ケーブルは、ハイエンドなケーブルを製作するアコースティック・リヴァイブやオヤイデから、コラボレーション・モデルも発売され、より音質を高めることもできました。こういったリスニング用の専用アイテムが発売される辺りからも、Babyfaceがオーディオ・ファンからの注目を集めたことを物語っています。
もちろんBabyface自体が高音質であり、小型/軽量なモデルであったということが、オーディオ・ファンにも人気になった大きな要因だと思います。このBabyfaceは、シルバー、ブルー、さらに30台完全限定の漆モデルも発売されました。現在は生産完了品ですが、中古もすぐに売れてしまうなど、いまでも人気のモデルです。Babyfaceを使ったレコーディングも、RMEならではの高いサウンド・クオリティを感じることができ、様々なマイクを組み合わせることで幅広いソースの録音が可能です。
Babyfaceの登場から約4年が経ち、後継モデルのBabyface Proが7月29日から発売が開始される予定です。場合によっては予約特典もあるようですので、購入を考えている方は、ぜひチェックしてみて下さい。
新たに発売されるBabyface Proですが、24bit/192kHzまでのAD/DA、USBバスパワーによる給電(※DCでの動作も可能)、ジッター(デジタル信号の時間軸の揺らぎ)を抑制する技術“Steady Clock”、独自ドライバによる動作などはBabyfaceと変化が無いように感じます。しかし、新たに練り直されたアナログ回路/デジタル回路により、Babyface以上の高音質化を実現しているようです。特に業務用機器であるADI-8 DS Mk IIIと同じAD/DAのチップを採用していることからも、熱が込められた製品に仕上がっているのが伝わってきます。これによって、ダイナミック・レンジ、S/N比(信号に対する雑音量の比率)、THD特性(全高調波歪)、ジッター、周波数特性は、すべてBabyface以上の数値を実現しています。
今回、内蔵される2つのマイクプリ、ヘッドフォン・アンプも見直されています。マイクプリは2ch分内蔵し、例えば、ch1はオンマイク気味で集音するコンデンサー・マイク、ch2にはアンビエント用のコンデンサー・マイクを立てて、よりリアルなアコギのサウンドを録音することもできます。小型軽量で持ち運びにも便利なので、簡単にリハスタに持って行けるのも嬉しいですね。また、ヘッドフォン・アンプに関しては、ミニ・ジャック/フォーン端子の2つが付き、それぞれに異なったインピーダンスが設定されているのも見逃せません。質の高いイヤフォン/ヘッドフォン等と組み合わせて、高音質なリスニングをしたいところです。
このモデルが前モデルのBabyfaceと大きく異なる点は、背面に付けられたXLR端子と、側面に付けられたライン/インストゥルメント端子です。これによってブレイク・アウト・ケーブルを使わずとも、最大4chのアナログ入力ができます。またオプティカル端子にADATコンバーターを接続することで、最大12イン/12アウトまで対応、さらにMIDI端子も付いています。アナログ出力はXLRとなるため、RCAのみの入力端子しかないアンプと組み合わせて使う際にはXLR-RCAケーブルを使う、もしくはバランス・ケーブルに変換プラグを付ける等の工夫が必要になります。ただし、パワードモニターをリスニング用に使っているユーザーには、バランス・ケーブルで直に結線できるので便利です。ケーブルにもこだわり、魅力的なハイレゾのサウンドをより引き出したリスニング環境を、Babyface Proで構築できれば楽しいですね。
他にも、デジタル・コンソール並の充実した機能があるソフトウェア“Total Mix FX”や、デジタル・オーディオ用メーター/アナライザー/測定ツールである“DIGICheak”といったソフトウェアも同梱されています。これらは、特にレコーディングの際にとても重宝します。
これだけの機能がありながら、予約時の価格は10万円を切っていて、ハイレゾのリスニング+レコーディングもしたいというユーザーの欲求を十分に満たしてくれる製品です。高いデザイン性のアルミ削り出しの筐体は、MacBookなどの隣に置けばとてもスタイリッシュに見えそうです。Babyface譲りのシンプルな操作性も魅力的で、購入後それほど操作に迷う事なく幅広いシチュエーションで使えるはずです。
続いては、プロ用スタジオ・クオリティの音質を誇るBabyface Proと組み合わせて使ってみたい、コンデンサー・マイクを7種類ご紹介します。今回は、コンデンサー・マイクのエントリー〜ミドル・レンジ・モデルで、アコースティック・ギターをメインとした生楽器の集音にも向いたモデルを選びました。アコースティック・ギターの音は、ハイレゾ・クオリティで聴くと、その違いが分かりやすい楽器であるため、録りもハイビット/ハイサンプリングで行なうことで、より原音に近いサウンドを得る事ができます。このBabyface Proと良質なコンデンサー・マイクを使うことで、例えばボディ・サイズの違い、木材の違いなども感じられるような録音ができるかもしれません。
近年では、エントリー価格のコンデンサー・マイクでも、十分なクオリティを備えた製品も数多く出ています。自分のアコースティック・ギターやウクレレ等の演奏をハイレゾ録音して楽しんでみてください!
シュアと言えば、ダイナミック・マイクの定番SM57/SM58が有名ですが、コンデンサー・マイクも多く発売しています。このモデルは、エントリー価格帯ながら、生楽器の集音に向いたフラットな特性のカーディオイド・コンデンサー・マイクです。小型軽量で、設置の自由度も高く、アコースティック・ギターの集音に使ってみたいですね。
価格:オープン(市場実勢価格:16,000円前後)
メーカー製品情報:https://www.shure.co.jp/ja/products/microphones/pga81
オーストラリアのマイク・ブランドであるロードは、非常にコストパフォーマンスに優れたコンデンサー・マイクを幅広く取り扱っています。このモデルは、ロードの名を有名にした名マイク、NT1をリニューアル。大口径のカプセルが使われ、極めて低い自己ノイズを実現するなど、より実用性の高いマイクに仕上がっています。
価格:オープン(市場実勢価格:22,000円前後)
メーカー製品情報:http://ja.rode.com/microphones/nt1
ソントロニクスもロード同様、コストパフォーマンスに優れたマイクを多数取り揃えているイギリス発祥のブランドです。STC-2は、ビンテージライクで高級感のあるデザインも魅力のコンデンサー・マイクで、ヴォーカルからピアノ等の生楽器まで応用範囲が幅広いモデルです。これをベースにしたSTC-2Xも発売されています。
価格:オープン(市場実勢価格:27,000円前後)
メーカー製品情報:http://www.korg.co.jp/KID/sontronics/condenser/
プロのスタジオでは定番と言えるのが、ドイツのノイマン製コンデンサー・マイクです。しかし高価なモデルが多く、なかなか最初の1本では買えません。一方でこのモデルは、ノイマン独自のノウハウを詰め込みながら、エントリーユーザーにも使える価格を実現しています。サウンドも明瞭で、最初の1本として長く愛用できそうなマイクです。
価格:オープン(市場実勢価格:67,000円前後)
メーカー製品情報:http://neumannjapan.com/neumann.user.ItemDetail/id/7.html
ノイマン同様、定番のマイク・ブランドのひとつがオーストリアのブランド、アーカーゲーです。いまではイヤフォン/ヘッドフォン・ブランドとしても有名ですね。このモデルは、AKGの中でも珍しいECC83真空管を内蔵したコンデンサー・マイクです。また付属のコントロール・ユニットで指向性を9段階変えることもできます。
価格:オープン(市場実勢価格:64,000円前後)
メーカー製品情報:http://proaudiosales.hibino.co.jp/akg/2908.html
実用性に優れたマイクを開発しているのがアメリカのマイク・メーカー、マイクテックです。このCV4は、真空管を内蔵したマイクで、ハンドメイドにより丁寧に製作されています。真空管には、貴重なテレフンケンのEF800が使われ、ビンテージ・マイクのようなウォームなサウンドが得られます。新たなモデル、CV3も発売されています。
価格:オープン(市場実勢価格:130,000円前後)
メーカー製品情報:http://www.electroharmonix.co.jp/miktek/cv4.html
イヤフォン/ヘッドフォンでも幅広く知られているオーディオテクニカは、マイクのブランドとしても有名です。このAT5045は、フラグシップのAT5040同様の開発コンセプトで生み出され、とても自然でフラットなサウンドで集音ができるモデルです。アコースティック・ギターの複雑な倍音も、繊細に描き出してくれそうです。
価格:オープン(市場実勢価格:150,000円前後)
メーカー製品情報:https://www.audio-technica.co.jp/mi/show_model.php?modelId=2633
今回は、注目のオーディオ・インターフェースであるRMEのBabyface Proを取り上げましたが、書きながら物欲が刺激されっぱなしでした。まだ発売前ということもあり、今回は実機でのレポートをお届けすることができなかったですが、いずれそのような機会を作れればと思います。このオーディオ・インターフェースを使って、素晴らしきビンテージ・アコースティック・ギターをハイビット/ハイサンプリングで録音したら、どんなサウンドになるのだろうかと妄想していました。また連載コラムの中で、そういった企画もお届けできればと思います。またデジマートには、ここで紹介した以外のコンデンサー・マイクも数多く掲載されているので、興味が沸いたらいろいろと下調べてして好みの1本を探してみるのも楽しいかもしれません。
定額制の音楽配信サービスも何かと話題ですが、ぜひ家では高音質のハイレゾ音源を楽しんで下さい! 涼しい音楽を聴いて暑い夏の日を乗り越えましょう。それでは、また次回!!
価格:オープン
菊池 真平(きくち・しんぺい)
音楽雑誌「Player」、オーディオ誌を発行するステレオサウンド社で「Beat Sound」、「Digi Fi」の編集に携わった後に独立。現在はフリーランスで、ビンテージ・ギター関連書籍/ギターに関する雑誌等に、編集/ライターとして携わる。国内外のミュージシャンへのインタビュー等も多数行っている。