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- 2024/11/16
Jim Dunlop / CBM95 Cry Baby Mini Wah
「ダウン・サイジング」がトレンドとなっている近年のコンパクト・エフェクター。あらゆるペダルが小型化される中、足を乗せてペダルを開け閉めする特殊性から、大型で重量のある筐体が一般的なワウ・ペダルの小型化は難しいものがあった。各社からさまざまなサイズの小型ワウがリリースされるようになったが、ついに本家ジム・ダンロップから「Cry Baby」を名乗る超小型ワウが2015年NAMMショーで発表されたのだ。その注目度の高さは3月にリリースした製品ニュース「注目度MAX! 小型ワウ CBM95 Cry Baby Mini Wah」の尋常ではないアクセス数にハッキリと表れていた。そこで編集部はCBM95の実力を探るべく詳細な製品レビューの敢行を決定。その完成度の高さを測るため、最もベーシックなクライベイビーであるGCB95と弾き比べる形をとった。テスターは製品レビューの鋭く的確な試奏・解説で定評のある村田善行氏。果たしてCBM95とGCB95には、サウンド、操作性、可搬性などにどれほどの共通点、または相違点があるのだろうか? 試奏・解説動画とインプレッションをじっくりと確認してほしい。
ジム・ダンロップからワウ・ペダルのスタンダード・モデル、GCB95をベースに超小型化されたCBM95 Cry Baby Mini Wahが発売された。2015年のNAMMショーで発表され、日本でも大きな注目を集めているペダルである。
基本設計やFASELインダクター・コイルはそのままに、GCB95の半分近いダウン・サイジングを実現。本家が放つ小型ペダルとしてはファズフェイスに続く第2弾と言えるだろうか。MXRやBOSS社のペダルとほぼ同サイズ、しかもこのサイズにして9Vバッテリーまで収納可能な点はGIG派にとって嬉しいポイント。クライベイビーならではのレンジ感はそのままに、踏みしろ自体がかなり広くなっている。これにより、高域中心、低域中心といったワウ・プレイにも最適で、勿論ダイナミックなクライベイビーならではのワウ感も十分に感じられた。使い勝手のコツとしては踵でコントロールする様なイメージでプレイするといいだろう。
そして、「ワウワウするだけ」がワウ・ペダルではない。ペダルの踏み込みトルクを調整する機能が追加されているので、キツめに調整すれば「半止めワウ」等のスタイルでワウを使用したいプレイヤーにはとても便利だろう。ドライプ・ペダルの後に配置して、可変ブースター的に使用しても良いと思う。勿論、今までのワウでも実現可能だが、その為に重くて大きいサイズのワウを持ち運ぶと……と考えれば、このサイズならではの使い方の一つとして十分なトピックになるだろう。また、前記した踏みしろの深さがあるので、ディレイ等と組み合わせてフィルター的なアプローチをする場合にも便利だ。
さらにCBM95 Cry Baby Mini Wahは内部にDIPスイッチを装備し、ワウのレンジを3段階に調整できる。GCB95モードがHI、ビンテージ・モードがMID、そしてローエンドが強調されたモードがLOだ。前記したブースター的、フィルター的アプローチの際にはLOモードが非常に使いやすいだろう。そういった意味でもGCB95のクラシックなワウ・アプローチとは違った面で非常に使いどころがありそうなペダルだと言える。
前述の9V外部電源対応の他、トゥルーバイパスを採用。さらにワウをペダルボードに配置する際に悩みの種であったゴム足は無く、底面は全面ゴムでフラットとなっている。無改造、オプション・パーツなしで、いつでも確実にペダルボードにマウントできる。迷わずゲットしてお楽しみいただきたいペダルだ。
[CBM95 Cry Baby Mini Wahをデジマートで探す]
サイズはこんなにコンバクト!
■重量
CBM95:440g
GCB95:1700g
■サイズ
CBM95:幅80mm、長さ132mm、高さ63mm
GCB95:幅100mm、長さ250mm、高さ63mm
中身のスペックは同一!
■入力インピーダンス:800kΩ ■出力インピーダンス:10kΩ ●レゾナント・フリーケンシー:350Hz〜450Hz(ヒール・ダウン側)、1.5kHz〜2.5kHz(トウ・ダウン側)■最大入力レベル:-8.0dBV ■最大出力レベル:+10dBV ■最大ゲイン:+19.5dB(ヒール・ダウン側)、+19.0dB(トウ・ダウン側)■バイパス:トゥルー・ハードワイアー ■ノイズ・フロア:-98dBV(ヒール・ダウン側)、-89dBV(トウ・ダウン側)■消費電流:900μA
CBM95のみの装備!
■3ポイント・ディップ・スイッチ:H(GCB95モード)、M(ビンテージ・モード)、L(Lowモード)
クライベイビーには最もスタンダードな「GCB95」をベースとして、インダクターを変更したもの、ワウのQ(ピークの強さ)や周波数のレンジを切り換られるもの、ブースト機能を持ったものなど、多くの個性的なモデルがラインナップされている。その中からスタンダード・モデルとアーティスト・シグネチャー・モデルを5機種ずつ紹介したい。きっと求めているトーンを持ったワウが見つかるはずだ。
Jim Dunlopのラインナップの中でも、最もスタンダードなクライベイビーがこのGCB95 Cry Baby。エリック・クラプトンやジミ・ヘンドリックス、バディ・ガイ、デヴィッド・ギルモアなど、数え切れないほどのレジェンド達が愛用した1966年Thomas Organデザインのオリジナルを再現している。ワウワウ・ペダルの購入に迷ったら、本機を買っておけば間違いないという大定番にして大本命。ギタリストなら一度は体験しておくべき“ワウの基本”と言えるペダルだ。本機を踏めばこれがなぜCry Babyと呼ばれるのか、一瞬で理解できるだろう。
スタンダードなクライベイビーの魅力を踏襲しつつ、ワウの心臓部ともいえるインダクターにFASEL社製品を搭載したモデル。ワウはシンプルな回路構成のため、一つひとつのパーツがサウンドに与える影響が大きい。中でもインダクターはキャパシターと共にワウの特徴であるフィルター効果を決定づけるパーツ。70年代のクライベイビーに搭載されていたFASELインダクターは、当時のサウンドの鍵を握る重要なファクターだ。リイシューされたFASELを搭載した本機は、Classicの名に恥じない、太く艶やかで、押し出しの強いビンテージ・サウンドが特徴。
ワウのQ(ピークの強さ)コントロールとブースト・コントロール(+15dB)を追加し、より幅広い音作りを可能にしたモデル。Qコントロールはかかり具合のニュアンスに影響し、ブースト・コントロールは歪み系のギター・ソロ等でワウを使いたいプレイヤーに便利な機能。また、本機は足を離すとバネで戻り、オートオフ(自動的にバイパスになる)機構を装備。便利なだけでなく、通常のペダルのように踏み込んでスイッチを入れた瞬間(非常にトレブリーな状態)からではなく、マイルドなニュアンスから弾き始めることができる、通好みな仕様でもある。
ワウのQ(ピークの強さ)に加え、変化させる周波数のレンジを6段階で切り替え可能にしたモデル。これによって、ごく浅く軽やかなワウ効果から、シンセのフィルターのようなエグい効果まで作り込むことができる。さらに本機は+26dBまでブーストが可能で、ギター・ソロなどではサイド・スイッチを足で操作してブーストをオンし、強力にゲインを上げることができる。このように音色の幅は95Q Cry Baby Wah Wahより広いが、オートオフ機構は備えていないので、単純に上位機種・下位機種ということではなく個性の違いを理解して選んでほしい。
クライベイビーをベースでも使いたいという要望に応え、周波数レンジをベース用にアレンジしたクライベイビー。ギター用のワウをそのままベースに使うと効果が十分でなかったり、音痩せやノイズが気になるといった問題に対応している。Q(ピークの強さ)コントロールとブーストコントロール(+15dB)を追加し、足を離すとバネで戻ってオートオフ(自動的にバイパスになる)機構を装備。つまり95Q Cry Baby Wah Wahと同じ機能だ。純白のケースも本機の魅力を高めている。
世界初の量産型ワウ・ペダルである“クライド・マッコイ”のサウンドを再現したモデル。クライド・マッコイとは1930年頃に活躍したトランペッターで、開口部のミュートを開け閉めするワウワウ効果を得意とした人。しかし本機のサウンドはトランペットというより、クラシック・ロックど真ん中の音! その秘密は60年代イタリアン・ワウに採用されたHaloインダクターのリイシュー版を搭載している点にある。深いかかりのビンテージ・サウンドを求めるなら、間違いなく本機がオススメだ。
黒と黄色を基調とした一目でそれとわかるカラーリングが特徴の、エディ・ヴァン・ヘイレン・シグネチャー・モデル。エディが使っているCry BabyはハイQで、ワイド・スイープにカスタマイズされたもので、本機はそれを再現している。ローエンドまできれいにかかるカーブは独自のもので、歪んだ音との相性は抜群だ。ワウだけでエディのサウンドが出来ているわけではないが、本機には明らかにエディの音とわかる何かが封じ込められている。ヴァン・ヘイレン・ファンは必携の1台だ。
アメリカのギター・ヒーロー、ジョー・ボナマッサのシグネチャー・モデルは、天才ペダル・ビルダーであるジョージ・トリップスのデザインによるもの。Haloインダクターを搭載したビンテージ系のトーンをベースに、レス・ポールにフィットするようチューニングが施されている。また、トゥルーバイパスのワウを好む人も多いが、ボナマッサ自身はトゥルーバイパスでない方が好みのため、本機は購入者自身がスイッチング方式を選べるというこだわりの仕様。非常に珍しい胴色のペダル・トップにも、強い個性を感じる。
ブルース・ギターのレジェンド、バディ・ガイのシグネチャーは、トレード・マークの水玉模様が目を引く1台。FASELインダクターを搭載したスウィートなサウンドを基調にしながら、サイドのスイッチで2種類のサウンドを選ぶことができる。一つは太く唸るようなDEEPモード、もう一つはもう少し明るいベルトーンのBGモード。どちらにしても、ストラトのクリーンで弾いても全く耳が痛くならず、非常に心地よいワウ・トーンが得られる。ファンならずとも試してみてほしい、素晴らしいペダルだ。
価格:¥18,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。