AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
T's Guitars
円熟した大人のプレイヤーからテクニカル系の若手まで、“本当に良いギター”を求めるギタリストの熱い視線を集めるT’s Guitars。良質な材、考え抜かれた構造、そして精度の高い技術によって作り上げられたギターは、“国産ハイエンドの雄”と呼ぶに相応しいクオリティを誇っている。今回チェックするのは若手実力派プレイヤーの中でも最注目の菰口雄矢氏だ。T’s Guitarsの魅力を、菰口氏のスーパー・プレイを交えて動画でたっぷりと紹介する。
1985年に設立されたT’s Guitars。当初はリペア等を中心に、その高い技術力で少しずつ名声を高めていった。満を持してオリジナル・ギターの製作に乗り出し、そのクオリティの高さはコアなギター・ファンに熱狂的に受け入れられたが、同時に“知る人ぞ知る”という存在であったことも事実。その状況が変わってきたのはここ数年のこと。Godspeed、a2c等、ネット上のギター・ヒーロー達がT’s Guitarsの弾きやすさ、音の良さに着目し、動画で使い始めてから若手を中心に一気に注目が集まった。同時に、そうした流れの中で自然とT’s Guitarsの露出も増え、若手だけではなく本当に良質なギターを求める大人のプレイヤーも、改めてT’s Guitarsに注目しているというのが現在の状況だ。
T’s Guitarsの製品は基本的にカスタムメイドなので、個々の仕様については後ほど詳述するが、共通しているのは材の良さ、考え抜かれた構造の妙、そして木工、組み込み、塗装等の突出した技術力だ。ほんの一例だが、出荷時の弦高の目安が12Fで1弦側1.4mm、6弦側1.6mmというのは、目安とはいえ量産メーカーではありえないだろう。これだけの低弦高は、ネックの状態、ナットやフレット周りの状態等が良好で、さらにセッティングや検品もしっかりしていなければ実現できない。このことだけでもT’s Guitarsの質の高さが伺えるはず。そしてサウンド面では、材や構造上の特性(ソリッドか、チェンバードか等)を活かした芳醇なトーンと、デッドポイントがなく、どのポジションでも豊かなサステインを持っているのが特徴だ。ピッチの良さも特筆モノである。こうしたT’s Guitarsの特徴を、菰口氏の試奏動画で確認して欲しい。
●試奏動画について
今回の試奏では、定型のフレーズをギターを変えて弾くのではなく、T’s Guitarsの各モデルのトーンをわかりやすく伝えつつも、菰口氏自身が受けたインスピレーションを自由に表現してもらっている。ただし、その中にはクリーン/クランチ/リードの各トーンでの演奏は必ず含まれているので、チェックしてみてほしい。PUの切り替え、タップのON/OFF、ボリューム/トーンの調整は適宜行われている。また、アンプ、エフェクトに関しても菰口氏が普段使用しているものをそのままスタジオに持ち込み、T’s Guitarsの各モデルと組み合わせてトップ・プロのサウンドを再現してもらった。
【菰口's Impression】
まず、これだけロー・アクションでちゃんとボディが鳴っているのが凄いですね。ロー・アクションのギターって、ボディが鳴らずに弦の音しか鳴らないというものがあるんですが、これはちゃんとボディの鳴りやエアー感があります。それとローの成分がクリアで、チューニングを下げたとしても音程感が出ると思います。タップした音もシングルの音としてちゃんと使える音ですし、エフェクトの乗りもいいです。フレットの処理もすごく丁寧で、コードもキレイですね、ピッチがいい。add9thとかsus4系の2弦と3弦の響きがキレイです。それと、サステインも非常にいいですね。24フレットまで使えて鳴りもいい、丁寧に作られたギターだと思います。
[Arc-STD24をデジマートで探す]
Arc-STDは、オリジナルのボディ・シェイプを持つT’s Guitarsの看板モデル。本器は、その24フレット仕様のモデルだ。メイプル・トップ/マホガニー・バックのセット・ネック構造から生まれる太く艶やかなサウンドは、多くのファンに愛されているスタンダードな音色の一つだが、それだけでは終わらせないのがT’s Guitars。ボディをスモール・チェンバード構造にして低域のダブつきを抑え、同時に独特のエアー感を加えている。さらにトレモロ・アームが使えるのは大きなアドバンテージだ。バズ・フェイトン・システムを搭載し、丁寧なフレット処理や剛性の高いネックとの相乗効果で、ビンテージ系のギターには出せない正確なピッチと美しいハーモニーを実現している。元々は22フレットがArc-STDのノーマルな仕様だが、近年はテクニカル系のギタリストから24フレットのリクエストが増加。本器はそうした声に応えたモデルだ。24フレットのギターは広がる音域と引き換えにトーンを失ってしまうものも少なくないが、本器は全くサウンドを損なっていないのが流石である。
[Arc-STD24をデジマートで探す]
[Specifications]
●ボディ:フレイム・メイプル・トップ、ホンジュラス・マホガニー・バック(スモール・チェンバード)●ネック:ホンジュラス・マホガニー ●指板:エボニー ●ネック・ジョイント:セット・ネック ●フレット数:24 ●ピックアップ: オリジナルDH-450n(フロント)/560b(リア)●コントロール:ボリューム、トーン(コイルタップ兼用)、3ウェイ・トグル・スイッチ ●ペグ:ゴトー MG-T ●ブリッジ: ゴトー/ウィルキンソン VS-100N ●フィニッシュ:クリムゾン・バースト、他 ●価格:470,000円(+税)※試奏モデルは5A-フレイム仕様で520,000円(+税)
【菰口's Impression】
Arc-STDに比べるとタイトだし、ローが出ているというか、重心が低いですね。歪ませた時にもローがぐっと前に出る感じがしますし、ハイもストラト的なアタックの明るさ、ブライトさがあって、チョーキングした時に“付いて来てくれる”感じがします。クリーンの時にも、上がきらびやかに出ています。このギターにはストラトとレス・ポールの中間の良さを感じますね。お勧めしたいのは、レス・ポールを使っている人です。レス・ポールとは違うガッツのある音をアピールできると思いますし、アームが付いているのもいい。もちろんフレットの処理も丁寧だし、ギターを手にした時のバランスがいいので弾きやすいですね。
[Vena22をデジマートで探す]
2014年の夏に登場したNEWモデルが、このVENA。ボディの形状はArc-STDそのままであり、トップの材も豪華なキルテッド・メイプルを使用しているが、Arcとの大きな違いはボディ構造にある。Arc-STDがチェンバード・ボディ/セット・ネック構造による太く余韻豊かなサウンドを持つのに対し、本器は同じシェイプを引き継ぎながらも完全なソリッド/ボルトオン・ネック構造を採用。また、Arc-STDのネックはマホガニーだが本器はメイプルを使用しており、ボディとのコンビネーションで、より剛性感のある明るいサウンド・キャラクターを目指した。また、Arc-STDとはフロント・ピックアップが違っており、本器のフロントにはアルニコ5のT’s DH-550nを搭載し、よりパワフルなサウンドになっている。トーン・ノブを引くと、フロント/リアともにタップできるのはArc-STDと同様。また、スムーズな弾き心地やピッチの良さはそのままだ。Arc-STDに比べて明るくロック色の強いトーン、そして価格も抑えてあることから、T’s Guitarsのクオリティを体感したい若手のプレイヤーにお勧めしたいモデルだ。
[Vena22をデジマートで探す]
[Specifications]
●ボディ:キルテッド・メイプル・トップ、アルダー・バック ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●ネック・ジョイント:ボルトオン ●フレット数:22 ●ピックアップ: オリジナルDH-550n(フロント)/DH-560b(リア)●コントロール:ボリューム、トーン(コイルタップ兼用)、3ウェイ・トグル・スイッチ ●ペグ:ゴトー SG381-07,MG-T ●ブリッジ: ゴトー VG300 ●フィニッシュ:トランス・ブルー、他 ●価格:340,000円(+税)
【菰口's Impression】
とてもローが出るギターですね。フローティングにするともしかすると印象が変わるかもしれませんが、これまでの3本の中で最もローが出る印象です。弾き心地やボディのバランスはストラトに近くて、弾いていて違和感がないですね。出てくる音はマホガニー・バック/メイプル・トップのボディの音ですから、アッシュやアルダーとは違います。ただ、マホガニーですけどピックアップがダイレクト・マウントなので、絶妙なタイトさもありますね。とても個性的で、シンガーの声のような存在感や太さがある音だと思います。このギターのピッチもいいですね。ビンテージ系のギターでは、こんなにキレイにコードが鳴りませんから。それとこのセレクターは実用的だと思います。実際にタップしたリアのシングルはあまり使う機会がないので、この5ウェイはすごく現場重視な感じがします。
[DST-DX22をデジマートで探す]
DSTシェイプでありながら2ハムバッカーのサウンドを最大限に引き出すべく作られたモデル。ネック材には一般的なハード・メイプルよりも軽量で太めの豊かな音色が得られる超高級材、柾目取りのジャーマン・メイプルを採用。 ボディ・バックのホンジュラス・マホガニーとも相まって充分な鳴りとパワーを出力する。 ピックアップには比較的出力を抑え、フラットな特性を持つアルニコ2を採用したDH-250を搭載。ゴリゴリのロック・サウンドというよりは、多彩な音作りを得意とする。杢目を活かす意味と、よりモダンなトーンを求めてピックアップはボディ直付けだ。5ウェイのピックアップ・セレクターは、フロント・ハム単独、フロント・タップ、フロント+リア(ハム同士)、フロント+リア(タップ同士)、リア・ハム単体というユニークかつ実用的な仕様だ。タップした際にはポールピース側のコイルが生きるようになっている。今後、このDST-DXをベースにさらなるバリエーション・モデルもラインナップされる予定だ。
[DST-DX22をデジマートで探す]
[Specifications]
●ボディ:フレイム・メイプル・トップ、ホンジュラス・マホガニー・バック ●ネック:クォーターソーン・ジャーマン・メイプル ●指板:ローズウッド ●ネック・ジョイント:ボルトオン ●フレット数:22 ●ピックアップ: オリジナルDH-250n(フロント)/DH-250b(リア)●コントロール:ボリューム、トーン(コイルタップ兼用)、5ウェイ・ピックアップ・セレクター ※1.フロント(ハム)/2.フロント(タップ)/3.フロント(ハム)+リア(ハム)/4.フロント(タップ)+リア(タップ)/5.リア(ハム) ●ペグ:ゴトー SG381-P7,MG-T ●ブリッジ: ゴトー 510TS-FE1 ●フィニッシュ:トランス・ブルー・デニム、他 ●価格:369,000円(+税)
【菰口's Impression】
どこを弾いてもちゃんとした太い音がするというか、基音がしっかりしている感じがします。先ほどのDST-DX22と比べると、ピックガードのあるなしでも随分変わるなという印象ですね。ピックアップをピックガードにマウントすると、独特のエアー感が出るというか……。いわゆる一般的なストラトと比べると、メイプル・トップということやブリッジの構造から、かなり明るいサウンドです。この明るさはT’s Guitarsの個性ですね。材や構造だけでなく、例えばナットの高さとかのセッティングも関係していると思うんです。そういうセッティングも含めて、うまいというか、“明るく鳴るセッティング”が施されていますね。弱い音域がなくて、下から上まで全部シームレスに鳴っています。それと、シングルとハムのどちらかがおまけのようになってしまいがちなSSHですが、このギターは弾いていてそうしたストレスはありませんでした。それに24フレットは高いポジションの音程感が良くないことがあるんですが、これは問題ないですね。24フレット仕様としては群を抜いていると思います。
[DST-Classic24をデジマートで探す]
T’s Guitarsの定番であるDSTモデルの24フレット・バージョンがこのDST-Classic24。ストラト系のシェイプでありながら、アルダーやアッシュではなく、希少なキルテッド・メイプルやフレイム・メイプルをトップに使っているのがT’s Guitarsの基本形で、バックにはサウンドに応じてアルダー、アッシュ、マホガニーなどを採用して充分な鳴りとパワーを出力する。また、ピックアップの配列は基本的には24フレット・モデルはHSH、22フレット・モデルはSSHが基本形。ただしT’s Guitarsはカスタム・ギターのブランドなので、様々なオーダーにも相談のうえで対応してくれる。今回の試奏モデルは24フレットでSSHという仕様だ。シングルのDS-592は少しパワーがあってハムとのバランスが取りやすい、ビンテージというよりはモダンなタイプ。本器はタップ用のミニ・スイッチを搭載しているが、これも標準はトーンのノブを引いてタップする形。ブリッジについても、シンクロ・タイプ、ウィルキンソン・タイプ、フロイドローズ・タイプから選ぶことができる(本器はウィルキンソン・タイプを搭載)。
[DST-Classic24をデジマートで探す]
[Specifications]
●ボディ:キルテッド・メイプル・トップ、アッシュ・バック ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●ネック・ジョイント:ボルトオン ●フレット数:24 ●ピックアップ: オリジナルDS-592(フロント&センター)/DH-560b(リア)●コントロール:ボリューム、トーン(コイルタップ兼用)、5ウェイ・ピックアップ・セレクター、コイルタップ・スイッチ ●ペグ:ゴトー SG381-P7 ●ブリッジ: ゴトー GE1996T ●フィニッシュ:トランス・グリーン・バースト、他 ●価格:368,000円(+税)※試奏モデルは5A-キルト、SSH仕様で396,000円(+税)
【菰口's Impression】
鳴っているまわりの空気が音楽している! やっぱりソリッドとは全然違いますね。フロントを選んでも、上から下まで鳴っています。で、そういうギターはリアにした瞬間にローが無さすぎて心細いんですけど、このギターは下の美味しい部分がしっかり存在しますね。リアでクリーンにしても使える音です。嫌味なピークも全くなく、こもっているわけでもなく、アコースティック・ギターを弾いているような空気感やプレゼンスの成分を感じますし、本当に良くできたギターだと思います。歪ませても全然問題ないですね。コンプレッションは少なめだと思います。クリーンでもクランチでも深い歪みでも、これ1本で空気が埋まるというか、ちゃんと音楽として成立するギターです。
[Arc-Hollowをデジマートで探す]
T’s Guitarsのオリジナル・モデル「Arc」シリーズのフラッグシップとなるホロウ・ボディのギターがこのArc-Hollow。 ブリッジ下以外の部分をバイオリンの様な構造にくり抜き、コンパクトなエレキ・ギターでありながらまるでアコースティックのような豊かな響きを実現。 ホンジュラス・マホガニーのネック、エボニーの指板、ホンジュラス・マホガニーのボディ・バックにフレイム・メイプルのトップと贅を尽くした材を使用。基本的には完全に1本もののオーダー品となるが、本器は2ハム仕様で、出力を抑えたDH-250n/DH-250bを使用。同じ型番だが、フロントとリアでわずかにチューニングを変えており、ホロウ・タイプとしては珍しく、どちらも使えるサウンドになっている。またホロウ系ギターの弱点でもあるデッド・ポイントやピッチの甘さとも無縁で、美しいコードの響きはT’s Guitarsならではのものだ。とにかくこの大きさからは信じられない芳醇な鳴りと、これまでのホロウにはなかった正確なイントネーションに聴き惚れてほしい。
[Arc-Hollowをデジマートで探す]
[Specifications]
●ボディ:フレイム・メイプル・トップ、ホンジュラス・マホガニー・バック(ホロウ構造) ●ネック:ホンジュラス・マホガニー ●指板:エボニー ●ネック・ジョイント:セット・ネック ●フレット数:22 ●ピックアップ: オリジナルDH-250n(フロント)/DH-250b(リア)●コントロール:ボリューム、トーン(コイルタップ兼用)、3ウェイ・ピックアップ・セレクター ●ペグ:ゴトー SG381-P1,MG-T ●ブリッジ: ゴトー FB/FA ●フィニッシュ:2トーン・サンバースト、他 ●価格:510,000円(+税)※試奏モデルは5A-フレイム仕様で560,000円(+税)
T’s Guitarsの印象は、とにかく澄み切っていて“クリア”です。明るくてハイがよく出るんですけど決してピーキーではなく、上から下まで全ての帯域がバランス良く出ています。ピッチもいいし、サステインも十分ある。そして細かいところの作りがすごく丁寧で、メイド・イン・ジャパンの良いところが詰まったギターだと思いました。
今日試奏したのはどれもT’s Guitarsらしさに溢れたものばかりでしたが、最も印象深いのはArc-Hollowですね。このサイズのホロウ・ギターは他にもいくつか弾いたことがあるんですが、どれもジャズにフォーカスしているんですよ。ジャズ・ギタリストが使う小ぶりなギターという感じなんです。でもArc-Hollowは違いましたね。もちろんジャズもできるんですけど、歪ませた時にこんな音がするホロウ・ボディは他にないと思います。ジャンルではない、音楽への携わり方がある楽器だと感じました。
■アンプ:MESA ENGINEERING / DUAL RECTIFIER 100W HEAD & RECTIFIER CABINET
整流部にまで真空管を使用したメサの看板アンプ。本器はクリスタル・クリーンから激しい歪みまでカバーする3チャンネル/100W仕様だ。キャビネットもRECTIFIER純正のもので、12インチ×2発となっている。
■エフェクター
Xotic、VEMURAM、strymonの製品を中心に構成されたエフェクト・ボード。VEMURAMのJan Ray、Karen、そしてXoticのEPブースターが歪みに華を添える。話題の小型ワウ、Xotic Wahにも注目。また配線の美しさも特筆モノだ。
価格:¥470,000 (税別)
価格:¥340,000 (税別)
価格:¥369,000 (税別)
価格:¥368,000 (税別)
価格:¥510,000 (税別)
菰口雄矢(こもぐち・ゆうや)
10代の頃より卓越した演奏と楽曲で注目を集め。「ギター・マガジン誌の誌上コンテスト」などで受賞を重ね、作・編曲を野呂一生氏に師事した後、2007年よりプロとしてのキャリアをスタート。2008年、小森啓資と岡田治郎とTRI-Offensiveを結成し、翌年キングレコードよりメジャー・デビューを飾る。2011年、TRIXに加入後、アルバム『IMPACT』『POWER』を発表。同年監修した教則本ではその革新的なアイデアがギター界に衝撃を与えている。ジャンルを問わず様々なミュージシャンとのライブ、レコーディング、セッションを重ね、2014年には待望の1stソロ・アルバム『picture』をキングレコードよりリリース。今最も注目を集めるギタリストである。