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- 2024/11/16
Ibanez / TSMINI:TUBE SCREAMER MINI
オーバードライブ/ブースターの世界標準機ともいえるアイバニーズのチューブスクリーマー。昨年11月には初期型のTS808を完全復刻した“TS808 35th Model”が3,500台限定でリリースされ、大きな話題を呼んだことも記憶に新しい。今回リリースされたTSMINIは、チューブスクリーマーのサウンドはそのままに、全長10cm足らずという大幅なダウン・サイジングを施した注目の1台だ。
個人的にチューブスクリーマーの魅力は、その“クシュクシュ”とした歪みのテイストと、トーンの頭を丸くしたり、尖らせたり、というサウンドメイクが簡単に行なえる所にあると思う。TONEコントロールを下げれば、一人で演奏する際にはほどよいコンプ感とナチュラルなサステインが得られる。また、バンド・サウンドの中ではTONEを上げてやる事で、アタックのヌケ感を調整する事もできる。ドライブのかかり具合も上品で、ギターの実音を活かしながらチューブ・アンプの倍音感に近いニュアンスを加えてくれる。
もちろん、愛用者であったスティーヴィー・レイ・ヴォーンを持ち出すまでもなく、ストラトとの組み合わせで生まれるトーンは、もはや“テキサス・ブルース・サウンドにおけるマナーの一つ”だといえるだろう。また、ハムバッカーと組み合わせる場合は、ブースター的なセッティングにして、クリアなアタックと音にワシャワシャと絡み付く様な歪み感を加え、アンプのヘッドルームをキックしてやる事で、リッチなドライブとサステインを生んでくれるところも面白い。
そんなチューブスクリーマーがこんなにもコンパクトなサイズになって登場した。筐体が小さくなった事で、トーンもふくらみが抑えられ、かなりタイトに仕上がっている。もちろん、一部の内部パーツがチップに置き換えられた事で、今までのOD808 PROや35th Modelと“全く同じ”と言う訳にはいかないだろう。それでも“JRC4558”オペアンプを搭載し、本物のTSサーキットを備えているところには、Ibanezの気合いも感じられる。愛らしいルックスから生まれる“本物のTSサウンド”を動画で確認してみて欲しい。
手持ちのボードのいかなる場所に配置してもその存在感を発揮してくれるこのペダル、ギタリストならばゲットしない訳にはいかないだろう。
※使用アンプ:Fender '68 Custom Deluxe Reverb
※使用ギター:Crews Maniac Sound / Bottom’s Up “QUARTER-SAWN”
価格:¥9,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。