AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
James Tyler Japan / Classic
ハイエンド・ギターの雄として確固たる地位を築いているジェイムス・タイラー。その日本生産モデルがジェイムス・タイラー・ジャパンだ。ギター・デザインのCADデータ(成形マシンのデータ)からピックガードのアルミネジ、配線材に至るまでが本国のジェイムス・タイラーと同品を使用しており、かつすべての仕上げは手作業で行われていることから、単なるライセンス・モデルではなく、ジェイムス・タイラー・オフィシャルの“完璧なライセンス・モデル”の完成度を持つことがわかる。現在、唯一のラインナップとなる“Classic”を試奏して痛感したのはベースになるデザインの質の高さ、そして日本のギター作りのレベルの高さだ。それは例えばネック・シェイプの仕上げの正確さと美しさから始まり、セットアップとテンション・バランス、そしてトーンをチェックしてみれば容易に理解できる。
もちろん、ジェイムス・タイラーが組上げるギターと“全く同じ”という事はあり得ない(彼がつくるギターが間違いなく本物のMade by James Tylerである)が、ジェイムス・タイラー・ギターの真骨頂はそのデザインの精度とバランス、コンストラクションである事を強く感じた。以前にも日本でジェイムス・タイラー・ギターが生産された事があったが、その時の商品とはまるで別物だと考えた方がいいだろう。
今回試奏したレイクプラシッド・ブルーのギターは塗料にメタル成分が含まれるため、より一層力強いボトムが感じられる。これがホワイト・ブロンドのアッシュ・モデルであれば、アッシュ材の持つトーンの明るさが際立ち、“ブラック・クラシック”と呼ばれるアルダー・ボディの黒いモデルであれば、もう少し鳴りも大人しくなるだろう。すべてに共通するのが、ネックに“ビンビン”と伝わる生鳴りや、ハイ・ポジションでのロング・トーンだ。とにかく音にパンチがある。アンサンブルで聴こえるようにチューニングされている、とでも言うべきだろうか。
また、クリーンではファットだったサウンドがドライブさせると急にエッジーなキレと倍音を生み出し、その存在感ある音色はギターのボリュームを絞るとスッとヴォーカルの後ろに下がるという、正に現場のギタリストの意見が組み込まれたエレクトリックにも拘りを感じさせる。
芸術品に対する“クラシック”という言葉は“古い、古典的な”ではなく“最高の、一流の”という意味を持つ。このClassicはジェイムス・タイラーの“オールド・ギターへのリスペクト”をビシビシ感じながら、さらにその上を目指すという意気込みを感じさせる“正にクラシック”な1本に仕上がっている。
価格:オープン
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。