AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
12月に入ってから急激に冷え込んできたので、休日は家でゆっくりという方も多いのではないでしょうか? そんな時には、好きな音楽を聴きながらリラックスするのも、素敵な時間の使い方ですね。今回のコラムでは、自宅でのリスニングが楽しくなるような、ハイレゾ音源再生のエントリー・システムを実際に組んで試聴しました。基本的には、デスクで楽しめるシステムを考えましたが、リビングなどでも十分に楽しめると思います。現在、各社からはハイレゾ関連製品が数多く出ているので、どれを購入して良いかわからない方も多いかと思います。最終的には、予算と音質で決めるのがベストですが、なかなか数多く試すことはできません。今回紹介するシステムは、すべて購入しても市場価格で10万円以下に抑えました。まずは、求めやすいシステムを手に入れて、ハイレゾ音源の再生にチャレンジし、徐々にステップアップしていくと良いと思います。楽器と同じで、オーディオ製品も上を見るとキリがないですからね。エントリー価格のシステムでも、ハイレゾの魅力を十分に堪能できるはずです。今回は、4システムをご紹介します!
まず紹介したいのは、最もシンプルなハイレゾ音源の再生システム。PCとUSB DAC(D/A Converter)を繋げて、ヘッドフォンやイヤフォンでハイレゾ音源を楽しむ構成です。手持ちのヘッドフォン等があれば、USB DACを購入するだけで、簡単にハイレゾ音源を楽しむことができます。ここでポイントとなるのは、再生ソフトの問題。Windows、Macとも様々なソフトが出ていますが、できるだけ簡単なソフトで幅広いファイル再生に対応している方が、後々の出費等を抑える事ができます。
そこで今回は、ティアックのUSB DAC、UD-301をチョイスしてみました。今回の企画で多く登場するティアックの製品は、同社オリジナルのハイレゾ音源再生ソフト『TEAC HR Audio Player』を無償でダウンロードして使うことができます。このソフトを使えば、DSD(〜5.6MHz)/PCM(〜32bit/384kHz)までの主要音源ファイルを手軽に再生することができます。MacでもFlacファイルの再生に対応しているため、とても便利です。また違ったファイルやビットレートがプレイリストに混ざっていても、面倒な設定をせずに再生可能です。これでUSB DACを購入してから、再生ソフトで悩む必要はないですね。同様にコルグの製品を購入すれば、『AudioGate』というソフトが無償で使えるので、初めてハイレゾ再生に挑戦する方にはお薦めです。
今回紹介するティアックのUD-301は、求めやすい価格ながらDSD(〜5.6MHz)/PCM(〜32bit/192kHz)までの再生を、PCとUSBケーブルで接続するだけでの簡単な構成でできるようになります。写真を見て頂ければわかるのですが非常にシンプルですね。デュアル・モノーラル構成、電源部にトロイダルコア電源トランスを採用するなど、音質に関わる設計にもこだわりが感じられます。さらにプリアンプとしても機能するため、手持ちのパワード・スピーカーなどと組み合わせての使用でも重宝するはずです。またヘッドフォン/イヤフォンをより良い音質で再生するためには、ヘッドフォン・アンプが必要ですが、このモデルには音質に配慮されたヘッドフォン出力が得られるアンプが最初から内蔵されています。つまり、ヘッドフォン/イヤフォンでのリスニングを最初から考慮されて作られているのです。
この試聴では、ベイヤーダイナミックのDT-1350という、小型のヘッドフォンを組み合わせて聴きましたが、同モデルの良さを上手に引き出してくれている印象を受けました。傾向としては、華やかに鳴らしてくれるわけではないのですが、ヘッドフォン/イヤフォンの素材の良さを、そのまま伝えてくれるような感触です。ベイヤー社のハイエンド・ヘッドフォンにも採用されているテスラドライバーの特徴でもある、音に対する反応と切れの良さ、解像度の高さも感じられ、各音のきめ細やかさなどを実感できると思います。繊細な音の表現が必要とされるソースでも、満足度の高い再生音が得られるのではないでしょうか?
このシステムが仕事のデスクにあれば、ハイレゾ音源の魅力を堪能する事ができると思います。ただし、あまりにも音楽に没頭し過ぎると、仕事や勉強の効率が落ちてしまうかもしれませんが……。それぐらい、細やかなサウンドも聴き取れるシステムなので、よく聴いていた音源であっても、ハイレゾで聴いてみると、また新しい発見があるかもしれません。家で大きな音が鳴らせない読者にもお薦めのハイレゾ・システムです。
次に紹介したいのは、手のひらサイズのスピーカーまでセットになったハイレゾ対応のコンポーネント・システム、ティアックのHR-S101です。この製品には、24bit/192kHzまでのPCM音源に対応したUSB DAC/プリメイン・アンプと、20mmのソフトドームと70mmのウーハーを備えた2ウェイの小型スピーカーが入っています。
試聴をする際に段ボールから空け、PC周りに設置。さらにPCに先ほどの再生ソフト『TEAC HR Audio Player』をダウンロードし、USB/スピーカー・ケーブルなどすべてを結線し、ハイレゾ音源再生までに要した時間は、25分程度でした。おそらく初めてPCオーディオにチャレンジする方でも、1時間もあれば、ハイレゾ音源を聴くことができるのではないでしょうか。DAC/プリアンプ部、スピーカーともに女性でも簡単に持てるほど軽量なので、機器の設置もスムーズに行えるはずです。ただしUSBケーブルは別売りなので、オヤイデなどから販売されているオーディオ向きのケーブルを購入しても良いかもしれません。もちろん手持ちのケーブルがあれば、それを使っても問題なく再生することができます。
試聴は、付属のスピーカー・ケーブルを使いスピーカー、DAC部を接続し行ないました。最初にしっかり確認しなかったのが良くなかったのですが、ヴォリュームが“−dB”表記になっているため、0よりも少しだけ上げたまま再生すると、小型のスピーカーから思いもかけないほどの大音量が出てしまい、驚いてしまいました。0ではなく、数値が大きな方から徐々にヴォリュームを上げていくのが、正しい使い方のようです。ギター・アンプなどに慣れていると、ついゼロからヴォリュームを上げたくなりますね。結果的に小型なシステムからは想像できないほど、迫力のある音量が得られることがわかったのですが。
サウンドも小型スピーカーとは思えない十分な低域が感じられ、楽しく音楽を聴くことができると思います。デスク周りに置いて、パソコンで作業をしながら聴くのには、十分過ぎるほどの音質と音量です。スピーカーの下に、東急ハンズなどで売っているゴムのシートや、エボニーなどの木のブロックなどを置けば、さらに良音で聴くことができそうです。
DAC部は、テレビからのデジタル音声出力が受けられる光デジタル入力、さらにサブ・ウーファー・アウトも付いているので、2.1chのホーム・シアターのシステムとしても活用できそうですね。さらに音質の良い転送ができるaptX コーデックに対応したBluetoothが使え、スマートフォン等からの音源再生もできるので部屋などで使う際にも重宝しそうです。もちろん、ヘッドフォン・アンプもしっかりと作られ、ヘッドフォン/イヤフォンでのリスニングにも十分に対応可能です。
このシステムは、煩雑なシステムを組む事がなく簡単にハイレゾ再生を楽しみたい、さらにスピーカーを介して部屋で音楽を流したいというユーザーにはぴったりだと思います。テレビやプロジェクター、ウーファーと組み合わせてホーム・シアターに生かすのも良いですね。
より満足度の高い音質を求めたいと考えているユーザーにお薦めのシステムがUSB DACとアンプ、スピーカーを別に購入するシステムです。もし手持ちのプリメイン・アンプ等とスピーカーがあれば、USB DACを購入するだけでも、このシステムは完成するのですが、何も持っていない状態から手軽に高音質なPCオーディオが楽しめるシステムを紹介します。
このシステムの核となるのが、ティアックのAI-301DAです。これはステレオ・プリメイン・アンプとしての機能が盛り込まれたUSB DACで、別にアンプを購入せずに、パッシブ・スピーカーと組み合わせるだけで、スピーカーによる音楽再生ができる製品です。他のメーカーからも、USB DAC+プリメイン・アンプという製品は発売されています。例えばデノンのPMA-50、ヤマハのA-S801、マランツのPM7005などが挙げられます。他にも各社から、質の高い製品が発売され続けているので、ハイレゾ再生におけるひとつのトレンドとも言えるかもしれません。もちろん、先にも述べましたが、すでにアンプを持っていれば、USB DACを単体で購入しても良いと思います。
今回スピーカーには、ペアで比較的求めやすい価格ながら、高級感のあるスピーカー、ティアックのS-300NEOと組み合わせて試聴しました。このスピーカーは、比較的コンパクトな2ウェイのコアキシャル・スピーカーで、底面には高価なスピーカーではよく見られる、スパイクが付属します。スピーカーを点で支えることで、余計な振動を設置面に伝えることがなくなり、より音質面でのアドバンテージが得られます。ただし、スパイクは先端が尖っているので、そのまま机に設置すると天板が傷つく恐れがあるので、付属のスパイク受けを置いて、きちんと設置する事が必要になります。何となく、スピーカーにスパイクが付いているだけでも、高級感が高まって、オーディオにこだわりがあるように感じられますね。
さすがにDAC部、スピーカーの素性の良さもあり、普段CDを聴き慣れているユーザーがこのサウンドを聴いたら、高音質を実感して頂けるような再生音が得られました。一緒に試聴していたデジマート編集部の方々も、一様に驚いていたのが印象的です。このシステムが、数万円で購入できるのですから、良い時代になったと思います。一昔前であれば、高級コンポでもなかなか再生できないような、瑞々しいサウンドです。低域もぼやける事なく締まっていて、高域も艶やかに鳴ってくれます。またヴァイオリンの弦が擦れる音、音の減衰感も、ごく自然に感じられる事と思います。このシステムがあれば、多くの方が満足度の高い音楽再生ができるのではないでしょうか。もちろん、USB/スピーカー/電源ケーブル等にこだわれば、さらに好みの音質に仕上げることも可能です。スピーカーも、バリエーション豊かに発売されているので、紹介した以外のスピーカーを組み合わせても面白いと思います。
AI-301DAは、先に紹介したUD-301同様にDSD(〜5.6MHz)/PCM(〜32bit/192kHz)に対応し、現状販売されている音源のほとんどを再生する事ができます。またaptX コーデックに対応したBluetoothも搭載し、リビングなどで、スマートフォンからの音楽再生などにも対応します。このシステムがあれば、仕事部屋からリビング、寝室等まで、どこに置いても快適な音楽再生空間ができあがるはずです。このシステムは、最初からある程度の高音質な音楽再生を楽しみたい、ハイレゾ音源の魅力を堪能したいと考えている方に、お薦めしたいセットです。
最後にご紹介するのは、オーディオ・インターフェースにパワード・スピーカーを組み合わせたシステムです。デジマート・マガジン読者の中には、すでに両方持っているという方も多いのかもしれません。今回は、オーディオ・インターフェースに、ズームのTAC-2を用意しました。このインターフェースは、サンダーボルト接続のため、Macのみの対応となりますが、USB3.0やFirewire800よりも高速なデータ転送ができるため、よりジッター(情報転送時に起こるごく僅かな信号波形の揺らぎ)の少ない情報が送れ、さらにバスパワーも10W/18Vであるため、より高音質なサウンドを生み出すことができます。インプットは、XLR/TRSコンボ・ジャックが付けられ、ファンタム電源にも対応しています。ここにレコードプレーヤーを接続すれば、レコード音源のデジタル化も楽しめるはずです。残念ながらDSDのコンバートはできないですが、PCMであれば24bit/192kHzまで対応し、ハイレゾ音源を楽しむには十分なスペックを備えています。操作も中央の丸いコントロールで簡単に操作する事が可能です。特筆すべきは、スタイリッシュなデザインとコンパクトさであり、これであれば旅行などに持ち出すこともできそうです。旅先でも写真のようにヘッドフォンを使って、ハイレゾ音源を楽しめそうです。ヘッドフォン端子は、筐体のフロントに付いているのが便利で、ベイヤーダイナミックのロングセラー・モデル、DT-880 Proも魅力的な音で駆動してくれました。
このオーディオ・インターフェースに組み合わせたのは、KRK社の小型モニター・スピーカー、ROKIT RP5 G3です。黄色のウーハー部が印象的なこのモニター・スピーカーは、非常にコストパフォーマンスに優れた製品です。求めやすく小型ながら、ツィーターとウーハーを別に駆動するマルチアンプが採用されています。そのため重心の低い低域、瑞々しい高域が出力され、躍動感のある出音が得られます。もちろん各帯域のバランスも絶妙に調整され、やや低域に特徴はありますが、音の解像度も高いと言えます。ただモニターライクな冷たい音の印象は無く、楽しく音楽に浸れるサウンドです。
今回組み合わせた、ズームのTAC-2との相性も良く、どの楽器も元気に鳴ってくれる印象で、マスタリングなどをしていても、楽しみながら作業がはかどりそうです。音量をかなり上げても、破綻なく鳴ってくれる点も好印象です。何よりも、Mac Book Air、TAC-2、KRK ROKIT RP5 G3を並べた時に、とてもオシャレに見えますね。楽器も音だけではなくデザインも大切なので、自分の机に置きたくなるようなルックスは、購買意欲をそそりますね。
このシステムは、聴くだけではなく音楽製作なども趣味で行ないたい方や、レコードのデジタル化などにチャレンジしてみたい方などにもお薦めです。オーディオ・インターフェースにMIDI機器を接続したい場合には、TAC-2Rを購入する事をお薦めします。Windowsの方は、USB接続ができるオーディオ・インターフェースを購入すれば、同じようなシステムを組むことができます。
今回使ったTAC-2と、KRK ROKIT RP5 G3は、ともにフォーンのバランスの入出力が付いています。ゆえに、ふたつの機器の接続にはTRSフォーン・ジャックが付いたケーブルを使いました。このケーブルを使うことで、バランス接続で信号が送れ、ノイズを減らすことができます。もちろん通常のフォーン・ジャックの付いたケーブルでも繋げますが、TRSフォーン・ジャックを使ってみても良いと思います。なかなか楽器ユーザーには、馴染みのないジャックですが、下記の写真で見比べてみて下さい。
今回は、4つのタイプのPCオーディオを提案してみましたが、自分好みのシステムは見つかりましたでしょうか? この企画ではティアックの製品を多くご紹介しましたが、他にもたくさん魅力的なUSB DACなどの製品が各社から発売されています。過去の記事でも、それらをご紹介していますので、参考にして頂きながら、ハイレゾ音源を楽しむシステムを考えて頂ければ幸いです。今年のクリスマスのプレゼント、さらに初売りなどを狙って購入するのも良いと思います。次回は、新年スペシャル企画(スペシャルじゃなかったら、すみません)をお送りさせて頂きたいと思います。今年1年、コラムを読んで頂きありがとうございました。それでは、良い年を素晴らしい音楽・音質でお迎え下さい!
菊池 真平(きくち・しんぺい)
音楽雑誌「Player」、オーディオ誌を発行するステレオサウンド社で「Beat Sound」、「Digi Fi」の編集に携わった後に独立。現在はフリーランスで、ヴィンテージ・ギター関連書籍/ギターに関する雑誌等に、編集/ライターとして携わる。国内外のミュージシャンへのインタビュー等も多数行っている。