非常にコンパクトなサイズでありながら、12AX7と12AT7の真空管２本を使用したプリアンプと、ソリッドステイトのパワー・アンプを組み合わせたハイブリッド・アンプヘッド、Demeter AmplificationsのThe Mighty Minnie・TGA-1-180D。ペダルボードに入るほどのコンパクト・サイズながら余裕の出力と良質なクリーン・サウンドを生み出してくれる。サイズは幅25.4cm×奥行17.8cm×高さ11.5cmで、ウエイトは2.5kg。一見するとヘッドフォン・アンプの様にも感じられるが、James Demeterの手によりハンドメイドで製作される立派な“ギター・アンプヘッド”だ。

　プリアンプ・サーキットには海外では愛用者も多い、同社TGA-3アンプの回路がそのまま採用されている。パワー・アンプはクラスDで、一般的なチューブ・アンプのクラスAやクラスBとは方法が異なる。クラスDアンプの特長は電力効率が高く発熱量が少ないという点だ。スイッチング方式のデジタル・アンプに多く採用される方式で、熱を持たない＋場所を取らないという特性が、このサイズで十分な出力を持ったアンプを生み出すポイントになっている。そしてオーディオでは嫌がれる“歪み感”やフリケンシー特性をギター・アンプに向けて最適化するために、 特注のJensenトランスフォーマーを備え、本物の真空管サウンドを保ちつつクリーンで歪みの少ない“クリアでパワフルなサウンド”を生み出している。なお、出力は接続するスピーカーに合わせて自動的に変化し、180W(4Ω)、100W(8Ω)、60W（16Ω）と、ライブハウス等でも十分使用できるパワーを備えている。

　コントロールはGain, Bass, Middle, Treble, Master Volumeで、Master Volumeはプッシュ／プル・ポットになっている。ノブを上に引き上げると-20dBのPADが適用され、より小さな音量を得る事も可能だ。特徴的なフット・スイッチ・タイプのスタンバイ・スイッチは、ペダルボードに本体を置いて使用する際にも使いやすい。LEDの色でスタンバイ状態が視覚的に確認できるのもライブ・ステージでわかりやすい機能だ。またレギュレーテッドの9VDC出力が前面に用意されており、エフェクターやチューナーへの安定化電源として使用できる点も非常にユニークだが使い勝手は良い。

　サウンドはクセの無いクリーン・サウンドで、エフェクターで音を作り込みたいギタリスト、特に歪みペダルを愛用しているプレイヤーには相性が良いだろう。手持ちのオーバードライブやディストーション、ファズ等を、まるでプリアンプのチャンネル切り替えの様に踏み替える事で音色を切り替えて欲しい。また、リヴァーブやディレイもアンプの手前で掛けると言う事を考えると、クリーンなアンプヘッドと言うのは意外と使いやすい。昨今のヘッドタイプ・アンプはクランチ〜ドライブが基本になるので、手前で空間系エフェクトを踏むと、音の濁りが感じられると思う。こういったモバイル・アンプヘッドで、エフェクターとの相性が良いアンプは中々貴重な存在だと言える。

　このパフォーマンスとトーン……なるほど、このアンプを愛用する"TONE GOD”サニー・ランドレスの要望を満たす事ができるアンプとして仕上がっているのだな、と実感した。良質なペダルを組み合わせて、滑らかなドライブからスピード感のあるクリーン・トーンまでを生み出す彼の様なスタイルには間違いなくピタリと当てはまる。色々なキャビネットと組み合わせて、スピーカーによるトーンの違いも楽しんで頂きたい。

※使用ギター：Crews Maniac Sound OST-60

The Mighty Minnie TGA-1-180D

The Mighty Minnie TGA-1-180D（背面）