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- 2024/11/16
Providence Guitar sD-102RVS[今剛モデル]
エフェクター、プログラマブル・スイッチャー、シールドなど各種ギター・アイテムをとりそろえているプロビデンスから、日本のトップ・スタジオ・ミュージシャンである今剛のシグネチャー・ギターが発売された。今回の特集はその魅力に迫るべく、今剛本人に『今剛モデル・sD-102RVS』をたっぷりと弾き倒してもらった。
それでは早速、今剛自身によるシグネチャー・モデル『sD-102RVS』の試奏動画をご覧いただこう。
――今回、プロビデンスからシグネチャー・モデルが発売されますが、本製品を弾いてみた率直な感想は?
いつもの感じだね(笑)。今自分が使っているのと全然変わらないよ。市販品と自分のが混じっていてもわからないぐらい。ネックの感じもバッチリ。アームもいいですね。
――物足りないところはありませんか?
足りないところはないですね。“こういう風にしてほしい” っていうリクエストがすべて反映されているし、文句なしです。これと同じのが4本ぐらいあって、それぞれ微妙に音は違いますけど、基本的にスペアとして入れ替えてもまったく問題ない。
――Vitalizer Gやピックアップを切り替えるミニ・スイッチもこのギターの特徴ですが、普段はどのように使っているのですか?
僕はVitalizer Gを常に入れっぱなしです。どっちにしろ良い音がするんですけど、やっぱりOFFにすると、パッシブの音になりますよね。フラクタル・オーディオみたいなシステムと相性がいいんです。これくらいの規模で弾いているとあんまり変わらないかもしれないけど、大きな会場とかならONにしたほうが良い感じです。それからタップ・スイッチはフロントがシングルで、リアはハムの状態が多いかな。
――カラーリングも特徴的ですが、これにもこだわりが?
ラメは好きですよ。ラメが大きいのやら小さいのやらいろいろ試して、これになりました。手間が大変らしくて、塗装の人がラメを嫌がるらしいですけどね。カラーリングもあまりない色にしましょうよってことで、まずは黒を作ってもらったんです。
――普段から今さんのギターを調整している、志村昭三さんがセットアップしている点もこのギターのポイントです。
そう、彼は不思議でね、どこをどういじっているのかわからないけど、すごく良い音になっちゃうんですよね。“何したの? ” って聞いても、“いや、べつに” って言うけど(笑)。ちょっと魔法使いみたいな人なんです(笑)。音もよく伸びるし、ピッチもバッチリ、全然狂わない。良くできていますよ。
プロビデンスがギター本体の製作に参入したのは05年。同ブランド・プロデューサーの奥野猛氏によって当初Deceiverと名付けられ、試作第1号器から今剛に愛用されていた新ブランドのギターは一部で高い注目を集めていた。そもそも、シールドやスイッチャーなど、ギター周辺機器で評価を確立してきたプロビデンスが、なぜギター製作に踏み込んだのか。その理由を奥野氏はこう語る。
“これまでシールドやスイッチャーで、いかに良い音を生み出すかに取り組んできたように、プロビデンスでは音の入口から出口までトータルにサウンドを提案していきたい。そのうえでプロビデンスに欠けていたのは、入口であるギターやベース本体でした。いつかはギターやベース本体にも挑戦してみたかったんです”。
しかし、いざDeceiverをスタートさせたものの、音や演奏性、見た目などへのこだわりは尽きず、さまざまな仕様変更はもちろん、奥野氏自らがデザインを手がけ、時には粘土で実物大のモックアップを作るなど、試行錯誤は8年間にも及んだそうだ。そのDeceiverに確信を得、この度プロビデンス・ギターとしてリスタートするきっかけとなったのは、ギター・テクニシャンの草分けであり、今剛をはじめ多くのトップ・プロから絶大な信頼を得ている志村昭三氏との再会だった。プロビデンス・ギターの企画段階から携わり、最終セットアップも担当する志村氏の経験に裏打ちされた技術や知識はもちろん、ギターへの考え方などは奥野氏の探し求めていたパズルの最終ピースだったわけだ。
プロビデンス・ギターは、奥野氏というプロデューサーの下、プロビデンスのエレクトリック開発部門と志村氏を中心に、日本におけるギター・ピックアップのイノベーターとも言えるKariya-Pickupsの刈谷稔氏や、米英トップ・ギタリストたちのためにピックアップのリワインドなどを手がけるJ.M.ロルフなど、その道のプロが結集し作り上げる、新しい形のギター・ブランドだ。これまでのプロビデンス製品を見れば、その名の下にリリースされるギターが期待を裏切らないものであることは、想像にかたくないだろう。
Deceiverの今剛モデルDP-01JM/59Dとほぼ同型のSTタイプで、2ピースのライト・アッシュ・ボディ、ローズウッド指板のメイプル・ネックなど、基本スペックを継承したのが、このsD-102RVSである。見た目的にはヘッド・デザインの変更とサイド・ジャックの採用などが大きな変更点だ。また今剛の要望でグリップを少し変更し、パーツ部分ではペグをシュパーゼルの6Lへ、ブリッジをウィルキンソンのVS-100Nへ変更。ピッチ、快適なアーミングへのこだわりが見て取れる部分だ。ピックアップはJ.M.ロルフのハンド・ワイアリングによる’59 P.A.F. Style/Tapped。今剛のリクエストから生まれた特別仕様のこのピックアップは、コントロール部のミニ・スイッチでそれぞれタップすることも可能となっている。また、一般的に音が色づけされてしまうバッファーやプリアンプではなく、プロビデンスが独自に開発したロー・インピーダンス変換回路“VITALIZER”を、ギター内蔵用として改良したVitalizer Gが搭載されている点も大きな特徴。これをONにすることで、ギターからの信号を、余計な音の色づけをせずに、劣化やレベル低下から防いでくれる。
リットーミュージック刊『ギター・マガジン2014年10月号』では「プロビデンスの流儀 Vol.4」と題して、本特集記事を掲載中だ。ここでは紹介しきれなかった写真と、今剛&松原正樹というツイン・ギターを擁するスーパー・バンド=パラシュートの再復活ライブのレポート記事も掲載されているので、是非チェックしてほしい。
また、『ギター・マガジン2014年7、8、9月号』でもプロビデンス製品を毎号シリーズで徹底特集! 7月号ではプロビデンスを深く掘り下げたブランド特集記事を、そして8、9月号では、本特集でも紹介したSHOW-HATEによるエフェクト・ペダル、PEC-2、ALL-IN-ONE Systemの試奏レビューに加えて、ここでは紹介しきれなかった記事と写真も掲載されているので、こちらも是非読んでいただきたい。
■ギター・マガジン 2014年10月号の詳細はこちらから!(リットーミュージック・ウェブサイト)
7、8、9月号の詳細はこちらから(リットーミュージック・ウェブサイト)
■ギター・マガジン 2014年7月号
■ギター・マガジン 2014年8月号
■ギター・マガジン 2014年9月号
価格:オープン
今剛(こん・つよし)
1958年、北海道出身。日本を代表するスタジオ・ミュージシャン。寺尾聰の「ルビーの指環」から宇多田ヒカルの「Automatic」まで、ヒット曲にこの人ありと言われるほど、数多くのレコーディング、ライブに参加。試奏では、フラクタル・オーディオ・システムのAxe-Fx IIプリアンプ、Amcronのパワー・アンプPSA-2、メサ・ブギーのスピーカー・キャビネットで組まれたサウンド・システムを使用した。