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- 2024/11/16
BOSS WAZA CRAFTシリーズ
耳が早いギタリストならすでに興味津々と思われるBOSSのWAZA CRAFTシリーズ。既発の定番モデルをBOSSの開発チームが自ら見直し、現代のニーズに合わせて再構築したという要注目の新エフェクター・シリーズだ。9月末にリリース予定の3機種を、西川進と大山純(ストレイテナー)の試奏動画&レポートを中心に、徹底チェックしてみたい。
WAZA CRAFTシリーズの実力を検証するべく、2人のプロ・ギタリストに試奏レポートをお願いした。セッション・ギタリストとして多忙を極める西川進と、ストレイテナーのギタリストとして多くのロック・ファンを虜にする大山純は、この新シリーズにどのような感想を抱いたのか?
コンパクト・オーバードライブの元祖であるOD-1の上位機種として、トーン回路を搭載してリリースされたSD-1。OD-1直系の非対称オーバードライブ回路が生み出すマイルドな歪みと表情豊かなトーンはもちろん、ブースターとしても定評があり、エディ・ヴァン・ヘイレンやザック・ワイルドなどが愛用したモデルだ。そのWAZA CRAFT版であるSD-1Wは、オペアンプICを用いず、厳しく選定されたパーツを組み上げたフルアナログのディスクリート回路を採用。SD-1を再現したS(スタンダード)モードと、よりワイドレンジなC(カスタム)モードを選択可能で、後者は従来のモデルよりもゲイン・レベルが高く設計されている。音が抜けやすい独特のレンジ設定や、手元のボリュームへの追随性も健在、リード/バッキング問わず活躍してくれる1台と言えるだろう。
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[Specifications]
●コントロール:LEVEL、TONE、DRIVE、モード・スイッチ(S / C)●入出力端子: インプット、アウトプット、DC IN端子●電源:9V電池、ACアダプター(別売り)● 外形寸法:73(W)×129(D)×59(H)mm●重量:430g(乾電池含む)
SモードはSD-1そのままの感じで、それほどギュワーンと言わずにナチュラルなトーンを出してくれますね。確かにレンジは狭いんだけど、音の押し出しは強いですし、ソロとかには向いていそうです。一方のCモードは、オンにするだけで隙がない音になります。普段はハイワットのアンプを少し歪ませる感じで使っていて、それに歪みエフェクターを合わせるんですけど、レンジが狭めのエフェクターだと、ハイワットの男気のある中域がさらに男気あふれるものになってしまう。その点、Cモードのレンジ感は相性が良さそうですね。ハーモナイズド・チョーキングとか、複音で弾いた時も音がにじまずに抜けてくれるし、ライブ対応からレコーディング対応になったような感じがしますよ。音の押し出しなど、基本精神はSモードと変わらないまま、48kHzから96kHzになった感じですかね。
古い良いアンプを使った時の、かかってこい感がありますね(笑)。これなら良い音が出せるっていう安心感というか、無敵感です。SモードもCモードもレンジが絞られたイメージで、ソロの時とかに使うと音が前に出てくる感じがありますね。ただ、レンジが絞られているぶん、玄人好みというか人を選ぶかもしれません。俺だったら、BD-2Wのゲインを12時ぐらいでメインの歪みを作り、ソロとかのブーストはSD-1WのCモードでゲインを12時ぐらいにして使いますね。
BOSSの定番歪みペダルとして一世を風靡したBD-2 Blues Driver。チューブ・アンプのアタック、コンプレッション感を表現する歪みを目指して開発されたモデルで、クリーン〜クランチ〜強めのオーバードライブというサウンド幅の広さと、ピッキング・ニュアンスへの追随性が多くのギタリストを虜にした。今回、それをディスクリート回路で再設計したのが、WAZA CRAFTシリーズのBD-2Wである。オリジナルBD-2を再現したSモードに加え、Cモードを新たに追加。こちらは中域の押し出しがさらに強くなり、モデル名通りのブルージィな粘り感や太さ を強調したサウンドが魅力となっている。もちろん、BD-2特有の切れの良さはキープしており、従来よりビルドアップされたBD-2サウンドを楽しめるだろう。モディファイBD-2とは一線を画する決定版だ。
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●コントロール:LEVEL、TONE、GAIN、モード・スイッチ(S / C)●入出力端子: インプット、アウトプット、DC IN端子●電源:9V電池、ACアダプター(別売り)● 外形寸法:73(W)×129(D)×59(H)mm●重量:430g(乾電池含む)
Sモードも当然良いんですけど、Cモードにするとワイドレンジになるっていうわけではなく、基本的な音色自体はそのまま3〜4弦に粘りが出てくる感じで、弾いていて気持ちいいですよ。演奏も、自然とそのあたりを弾く感じに変わってきますね。その上でハイ・ポジションでも太さがあるっていうのが良いです。BD-2自体はすごく好きでよく使っていたんですけど、チョーキングをした時に少しクリップするというか、コンプをかけたような感じになるのは気になっていたんです。ここまで行きたいのに行けないっていう感覚ですね。それがBD-2Wでは改善されているのは嬉しいです。アクセルを踏み込んだだけ加速してくれる感じというか、イメージ通りに音が出てくれますね。改良したなっていうのがすごくよくわかります。あまり歪まないアンプでも威力を発揮すると思うし、これ1台で十分いけそうっていうのは心強いですよ。
まずノイズの少なさに驚きました。それと、Sモードでもオリジナルよりレンジが広く感じますね。歪みを上げ目にすると、これまでのは1弦がややピーキーな感じだったんですけど、これはそんなこと全然ない。ただ、ワイドレンジの一言では片づけたくないな。1本1本の弦をしっかり鳴らした感じがそのままちゃんと出てくるっていうイメージですね。逆に歪みを抑えてブースター的に使っても、ちょっとだけ噛みつき感が出るというか、少しだけ相手に届きやすくなる感じがあって良いです。歪みの幅も広いですし、手元のボリュームでそれをコントロールすることもできる。ステージの端まで行っちゃってボードまで戻れない時とかに便利なんですよ、これは(笑)。確かにこれまでのBD-2は、歪ませ過ぎると引っ込みがちになるとか、粘りを出そうとすると少しイヤな倍音も出ちゃうとか、気になる部分はあったんですけど、BD-2とはそういうもんだと思って使っていました。ただ、BD-2Wではそれがしっかり改良されていると感じましたね。すぐ現場で使える感じですよ。
81〜84年までという短期間の発売で、幻の名アナログ・ディレイとしてエフェクター好きの垂涎の的だったDM-2が、DM-2Wとして復活。復活のきっかけは、生産中止の一番の理由であった良質なBBD遅延素子の確保が可能となったため。バケツリレー方式で音を遅らせるBBD素子はもちろん、クロックノイズの処理など回路全体のデザインも徹底的にやり直すこだわりぶりは、まさにWAZA CRAFTの言葉に偽りなしと言える。本機はそのBBD素子を3つ組み込み、従来のSモードでは300mSec、クリアな音質を追求したCモードでは、800mSecのディレイ・タイム(REPEAT RATE)を実現。独特の丸みを持ったディレイ音や、フィードバック(INTENSITY)を操作することによる発振など、アナログ・ディレイの醍醐味を十分に堪能できる。外付けのEXPペダルを使えば、REPEAT RATEを足下で操作することも可能だ。
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[Specifications]
●コントロール:REPEAT RATE、ECHO、INTENSITY、モード・スイッチ(S/C)●入出力端子:インプット、アウトプット、ダイレクト・アウト、RATE端子、DC IN端子●電源:9V電池、ACアダプター(別売り)●外形寸法:73(W)×129(D)×59(H)mm●重量:430g(乾電池含む)
やっぱりアナログ・ディレイっていうのは独特ですね。これでしか出せない音がありますし、一生遊んでいられちゃう(笑)。これもCモードが素晴らしいですね。アナログ・ディレイの長所である温かい音っていうのは、ともすればこもりがちにもなるというか、ローが飽和しがちになるんですけど、Cモードはその具合が程良いんです。Sモードと比べて音もクリアになりますし、今回の3モデルの中では一番モードによる音の変化が感じられるものかもしれませんね。もちろんアナログらしさはしっかりありますし、痒いところに手が届く感じです。それから、僕はディレイのうしろに歪みをつないで使うことも多くて、実際それも試してみましたけど、これも良いですね。うまくにじんでくれるし、醍醐味である発振も気持ちよいです。
普段、ディレイはDD-20を使っているので、Sモードは確かにレトロな感じがします。往年の名機ならではの温かみや丸さがありますね。ただ、正直に言えばこのモードだとストレイテナーで使うのは難しいかな。トリオ・バンドとかでメロウなソロとかを弾くにはピッタリですけど、爆音系バンドだとちょっと埋もれちゃいますね。でも、その点Cモードなら、アナログ・ディレイらしさはありつつクリアなサウンドなので、俺らみたいな爆音バンドでも大丈夫だと思います。多少優しい感じにはなると思うけど、なんていうかギタリストが好きなディレイって感じがします。このサウンドを最大限に生かす新しいバンドを組みたくなっちゃう(笑)。60年代のストラトをつないでみたいなあ、とか(笑)。発振させるのもおもしろいし、レディオヘッドごっこをやりたくなりますね。これを家に持って帰ったら、延々遊んじゃいそうです(笑)。
▶ギターは現行のギブソンSGカスタムと、同じく現行のフェンダー・ジャズマスター、アンプは弊社所有のマーシャル(JVM210H/1960A)を使用した。西川は2本のギターを何度も持ち替え、シングルコイルとハムバッカーの違いをじっくりと確認しながら試奏していた。
▶大山は3台を直列につなぎ、BD-2WとDM-2Wを同時に鳴らしたり、すべてONにするなど、さまざまな組み合わせで本製品をチェックしてくれた。ギターはフェンダー・ジャズマスター(エルヴィス・コステロ・モデル)、アンプは弊社所有のフェンダー68カスタム・デラックス・リバーブを使用した。
見た目は従来の機種とほぼ同じだが、内部は大幅に変更が加えられたというWAZA CRAFTシリーズ。具体的にはどのような点がアップデートされているのだろうか? WAZA CRAFTの正体を探るべく、開発チームにメール・インタビューを行なった。
●まずはWAZA CRAFTシリーズを立ち上げるに至った経緯、コンセプトを教えて下さい。
○BOSSは長年、世界中のプロからアマまで多くのギタリストに愛用されてきました。非常に多くのフィードバックがあり、音に関する膨大なノウハウの蓄積があります。本製品の最終目的は、こだわりのサウンド。我々の現在持っている技術を生かしてフルアナログで設計し、さらに音にこだわった製品を新たに作れるのではないかという考えから生まれた製品です。
●新製品としてBD-2W、SD-1W、DM-2Wの3機種が発売されます。DM-2は廃盤になって久しいですが、プロ・ギタリストにも愛用者がたくさんいますよね。なぜ、今回のタイミングで再設計することになったのでしょうか?
○当時BOSSとしてはDM-2、DM-3の生産をやめたくはなかったのですが、良質なBBD(遅延素子)の入手が困難になったため、泣く泣く生産完了になってしまいました。BOSSとしての品質を保証できるBBDの入手の目処が立ったため、アナログ・ディレイを再び製品化できました。それ以外のパーツもすべて見直し、厳選したパーツを使用しています。
●BD-2、SD-1もベストセラー・モデルですが、今回のWAZA CRAFTシリーズに選ばれた理由は? ほかのモデルも検討されたのでしょうか?
○もちろん、検討していました。2機種を選定した理由として、SD-1は81年デビュー、BD-2は来年で20周年と、ともに長い間多くのギタリストに愛され続けてきたオーバードライブの代表的なモデルだったからです。サウンド・キャラクターも確立されており、他社によるモディファイも多い機種です。逆に言えば、それだけこの2機種のサウンド・キャラクターが大勢の方に愛されている証だと思います。
●完全ディスクリート(トランジスタ、抵抗、ダイオードなど個別の部品で構成すること)のフルアナログ回路設計が大きなポイントとなりますが、その設計手段を選んだ理由は?
○当初はパーツを変更するレベルで行なうつもりでしたが、やり始めたら結果としてすべてをやり直して、まったく別の回路を作ることになりました。進めていくうちに、既製のオペアンプICを使うのではなく、設計者の思い通りにできるディスクリート・アンプ構成にしたわけです。
●すべての回路を見直したとのことですが、オリジナルと比べるとまったく違う回路になっているのでしょうか?
○オリジナルのキャラクターを変えたくないので、基本的にはオリジナルの回路をもとにしていますが、設計し直して別回路になっている部分があります。
●DM-2は、オリジナルにも個体差があると言われています。最終的な音色の決定はどのような基準で決まっていったのでしょうか?
○BOSSで所有している、調整も含め完全な状態のオリジナルDM-2を音色の基準にしました。
●アナログ回路ということで、ノイズ問題で苦労した部分はありましたか?
○BD-2W/SD-1Wはゲインが高いので部品の配置に慎重を期し、オペアンプを使用しないディスクリート・アンプ構成を採用したことでノイズを減らすことができました。DM-2WでもBBDのクロックノイズが漏れないようにするため基板にさまざまな工夫がされています。
●シリーズに共通する仕様としてS(スタンダード)モードとC(カスタム)モードが用意されていますが、Sモードは、既発のモデルと同じサウンドが出ると考えて良いのでしょうか?
○基本的に同じサウンドが出ますが、まったく同じではありません。耳の良い人には気づいていただけると思います。少し弾き心地が良く感じたりするかもしれません。
●BD-2W、SD-1W、DM-2Wそれぞれに追加されたCモードは、どのような点にこだわって設計されたものですか?
○BD-2Wはキレやアタックは維持したまま、太さや粘りを足しました。SD-1Wはレンジを少し広げ、少しゲインも上げています。DM-2Wはオリジナルよりもディレイ音を少しHiFiにし、かつ最大ディレイタイムを800msに伸ばしています。
●最終チェックはすべて国内で行なわれるということですが、具体的にどのような作業となりますか?
○国内の設計開発チームと同じ建物で、すべての機能のチェックをします。音のチェックはもちろん、衝撃を与えて異常がないかや外観の品質までをチェックして出荷します。国内でチェックされた証として、“INSPECTED IN JAPAN”と連番のプレートを貼り、シリアル・ナンバーが付けられます。WAZA CRAFTシリーズだけの特別対応です。
●今度、WAZA CRAFTシリーズを使っていきたいと考えているギタリストたちにメッセージをお願いします。
○このWAZA CRAFTシリーズは、わかりやすい部分というより、非常に微妙な箇所にまでこだわっています。もしかしたら万人向けというわけではないかもしれませんが、音のわかるギターの弾けるギタリストに試していただいて、我々がWAZA CRAFTシリーズに込めたクラフツマンシップを感じてほしいです。
リットーミュージック刊『ギター・マガジン』2014年10月号においても、「BOSS WAZA CRAFT〜アナログ設計にこだわったBOSSペダルのスペシャル・エディションが新登場」のタイトルで、SD-1W、BD-2W、DM-2Wを特集している。西川、大山のインプレッション、詳細な製品解説も必読の特集だ!
定価:823円(本体762円+税)
仕様:A4変形版/258ページ
発売日:2014.9.13
価格:オープン
価格:オープン
価格:オープン
西川進
にしかわ・すすむ。滋賀県出身のギタリスト/プロデューサー。86年にSCOOPでメジャー・デビュー。90年代後半以降、スタジオに活躍の場を移し、椎名林檎や矢井田瞳を始め、数えきれないほど多くのヒット作品に携わってきた。ソロ活動にも積極的で、今年5月にはインスト作品『奇跡のカケラ』をリリース。
大山純
おおやま・じゅん。78年、群馬県出身。ART-SCHOOLのギタリストとしてデビュー。03年にバンドを脱退したあとはしばらく音楽から離れていたが、08年にストレイテナーに正式加入。10月には待望のニュー・アルバム『Behind The Scene』をリリース。