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- 2024/11/16
KORG / SDD-3000 PEDAL PROGRAMMABLE DIGITAL DELAY
U2のTHE EDGEやTHE SMITH時代のジョニー・マーをはじめ、
数あるディレイの中でも、SDD-3000はそのディレイ・
また、ディレイ音に4種のモジュレーション(三角波、矩形波、ランダム、エンベロープ)を加えて、コーラス、フランジング、ワウ・フラッター等のエフェクトを表現できる。セッティングによっては6弦ギターを12弦ギターのように聞かせる事ができるほどの幅広い表現力で、アイディアを持つミュージシャンを虜にした。さらにディレイ・タイムが確認しやすい大型デジタル・カウンターの使いやすさなどもあり、発売当初から爆発的にヒットした。
しかし、SDD-3000の特徴はそのディレイ音だけではなかった。様々な機材とのレベル・マッチングを図るため、インプットとアウトプットにアッテネーターと呼ばれる3段階のゲイン切り替えが用意された。さらに、インプット側にはレベルを正確にアジャストする為のボリュームとインジケーターも持たせている。この回路を通った信号は、バッファー効果とブースト効果を持つ事で耳アタリの良い「太いトーン」に変化する。SDD-3000ユーザーの筆頭とも言えるTHE EDGEはこの機能に着目し、レベル・アジャストをわざとオーバーロードさせてJC-120アンプやVOX・AC-30アンプをブースト。SDD-3000のディレイ音と共に、オリジナルの音色と表現方法を手に入れた。
THE EDGEは現在でも数台のSDD-3000を自身のメイン・ラックに納めている。ではなぜ複数台のSDD-3000が必要なのか? インプット・アジャスターはプリセット・メモリーできないため、使用するアンプとのマッチングを計って決められる。EDGEは通常使用するディレイとしてのSDD-3000の他に、レベルをブーストしたSDD-3000を2台使用する事があると言う。例えば1台のAC-30をソロ用にブーストしたSDD-3000を用意し、もう一台はランドールのアンプをブーストするSDD-3000、と言う様にセッティングしているのだ。
そこまでこだわる程、このブーストにより生まれる「心地よい歪み」がある。これは60〜70年代に多くのレジェンド・ギタリスト達がエコー・マシンをアンプの手前に配置して、アンプをブーストしていた事とまるで同じ理由だと言える。特にジャズマスターやグレイ・ボビンのストラトで弾くと、その耳アタリの良い音に驚く。ハムバッカーをヴィンテージ・マーシャルにプラグインして弾く事が好きなギタリストには、ぜひSDD-3000を通した状態でアンプを少しだけブーストした音をチェックしてもらいたい。ロックのお手本とも言えるサウンドが手に入るだろう。
この回路まで「完璧に」仕上げたSDD-3000はペダル・タイプに姿を変え、さらにオリジナルにはない機能も持って現代に蘇った、単なるディレイ以上の存在感を持った存在。どんなギタリストであっても一度はじっくりチェックして欲しいペダルだ。
※使用アンプ:Fender 68 Custom Deluxe Rever
※使用ギター:Crews Maniac Sound / Bottom’s Up Quarter Sawn
価格:¥50,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。