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- 2024/11/16
Mesa/Boogie / King Snake Carlos Santana Signature
キース・リチャーズやラリー・カールトンなど、多くの名ギタリストに愛されてきたメサ・ブギーのMark Iが、カルロス・サンタナの要望を取り入れ、シグネチャー・モデルとして復刻! King Snakeと名づけられた本機は、小さな筐体に最大100Wの出力を備えた、セッティング次第ではまさにサンタナを彷彿させる極上の“ブギー・サウンド”を誇る。ここでは、若手ギタリストの中でも屈指の実力を持ち、自らもメサ・ブギーを愛用する菰口雄矢に本機を試奏してもらった。
70年代にカルロス・サンタナやキース・リチャーズ、ラリー・カールトンの使用により、その名を世界に轟かせた小型アンプの名機Mark I。このたびサンタナの熱烈なリクエストにより、King Snakeというモデル名で復刻を果たした。オリジナルMark Iを忠実に再現しつつも、新たなテクノロジーが数多く盛り込まれている強力な1台で、1チャンネル/2インプット仕様。インプット1はハイゲインのオー バードライブ用で、インプット2はゲインが抑えめのトラディショナルなサウンド用となっている。ボリュームが2つ用意されており、インプット2ではボ リューム2のみ、インプット1ではボリューム1と2の両方が作動する。MID/BOOSTは本機の大きな特徴の1つで、これはオリジナルのMark Iで採用されていたゲイン・ブースト・スイッチとミドル・コントロールを一体化したもの。0〜5では通常のミドル・コントロールとして機能し、5〜10で はゲイン・ブーストとなる。3段階のパワー・セレクト・スイッチはメサ・ブギーが特許を取得した技術で、各モードによりパワー管の使用本数や動作が切り替 わり、小音量から大音量まで、会場の規模に応じた使い方ができるようになっている。バックパネルには2種類のプレゼンス・サーキットを備えたスイッチャブ ル・プレゼンス・サーキットの他、オールチューブのリバーブ・コントロールやチューブバッファー搭載のセンド・リターン端子を装備。往年のロック・サウン ドを指向するプレイヤーにぜひオススメしたい1台だ。
──King Snakeを鳴らしてみての第一印象は?
菰口:リード・トーンが抜群にいいですね。ミドルが非常に豊かで、倍音もとてもスウィートです。サンタナのシグネチャーということもあって、ハムバッカーとの相性は最高ですね。
──普段、愛用されているメサ・ブギー製品と比べると?
菰口:会場や音楽のスタイルに合わせて、僕はローンスターやレクチファイヤーを使い分けていますが、それらと比 べるとより幅広い音作りができる気がします。そのあたりは、この後のクリーン系やエフェクト・ペダルを絡めた動画も見てもらうとわかりやすいと思います よ。このハイゲイン・セッティングでは、良い意味で音が暴れる感じです。ローンスターよりはゲインが高め、レクチファイヤーよりは低めで、ガッツを入れて 弾くスタイルが似合いますね。
──(映像途中から)10Wモードでも弾いていただきました。
菰口:はい、10Wモードを選択するのでヘッドルームが狭くなる分、歪みやすくなる印象ですね。マスターを上げ て、パワー・アンプで歪ませる感じです。チョーキングやビブラートをかけると、まさにサンタナのサウンドという感じで気持ちがいいですね。フロントで弾く と、最強です。実は、僕は初めてエレクトリック・ギターで弾いたのがサンタナの曲なんです。その意味では、これは僕のルーツの音なんですよ。
──クリーン・トーンの感想は?
菰口:フェンダー・アンプのようなキラッとしたブライトさと、扱いやすさがありますね。フェンダーより少し音が太い印象です。プリンストンの改造アンプから発展していったというメサ・ブギーの歴史から考えても納得のサウンドです。シングルコイルとの相性がとてもいいですね。
──愛用の他メサ・ブギー製品と比べて?
菰口:レクチファイヤーは一般的な“メタル専用”というイメージと違って、クリーンやクランチも素晴らしいアン プなのですが、King Snakeはそのレクチやローンスターと比べて、よりクリーンな部分を強調しているアンプという感じです。クリーン・トーンが良いのはもちろん、歪ませた 時もクリーンなニュアンスがあるというか……。あとは、スピーカーの違いを感じますね。ローンスターやレクチファイヤーのスピーカーは指向性が強くて、音 が前に飛ぶ感じですが、これは横にいても非常にモニタリングしやすい。
──クランチ・トーンについては?
菰口:タッチによってごく軽くクランチします。非常にセンシティブなアンプですね。ピッキングのニュアンスもしっかり表現できます。エフェクターを使う場合にも、このクリーンの良さって重要なんですよ。ちょっと、エフェクターも試してみましょう。
──エフェクターを使って演奏していただきました。
菰口:ペダル・ボードにはいろいろと乗っていますが、ここで使ったのは歪み系としてVEMURAMのJan RayとKaren、それと空間系としてstrymonのEl Capistan とOla Chorusです。空間系もあえてリア・パネルのセンド/リターンを使わず、ギターから直列でインプットに入れていますが、やはりアンプのクリーン・トー ンが良いのでキレイにかかりますね。オーバードライブの乗りもいいです。
──エフェクターを使った時のKing Snakeの印象はいかがでしたか?
菰口:エフェクト乗りもいいですね。結局、アンプ自体の音が良くないと、エフェクターは何をかけてもダメなので……。その意味で、King Snakeは元の音が良いのでエフェクターを使った積極的な音作りにも向いていると思います。
菰口:僕がメサ・ブギーのアンプを使い始めたのは、好きだったミュージシャンが皆それらを使っていたからです。実際に 使ってみると、機種によっていろいろな音色や機能はありますが、同時に一貫したメサ・ブギーのトーンがあるとわかりました。それは、太いミドルやサステイ ンのあるリード・トーンなどで、今回のKing Snakeにもそれを感じました。
King Snakeはタッチに対して非常にセンシティブですね。シビアなくらい反応がいいですから、その意味では中〜上級者向けかもしれません。ただしその分、タッチやニュアンスを大切にする人には最高の1台になるはずです。
ミッド/ブースト機能は、ミドルというよりゲインが大きくなる感じですね。帯域もミドルより少し上、ハイ・ミッド辺りがキラッとしてくる感じで面白かっ たです。他にも、インプットの選択、出力の選択、リア・パネルの2種のプレゼンス・サーキット(Tweed/Blackface)などで音が変わるので、 かなり幅広いサウンドメイクができますね。自分で使うとしたら、音作りを追いこんでいけるレコーディング環境で使ってみたいです。
僕は、アンプはギターと同じくらい大事だと思っていますし、音作りの面で最も変わるのはアンプだと思っています。足下で変えられることには限界がありま す。アンプの音が、自分のトーンになるんです。ですから、できるだけいいアンプを使ってもらいたい。King Snakeは、タッチやダイナミック・レンジのコントロールなど、ギターを弾く上で大切なことを学べるアンプだと思います。チャンスがあればぜひ試してみ て下さい。
カルロス・サンタナの熱い要望にこたえて、限定生産で復刻を果たしたスネーク・スキンのメ サ・ブギーMark I。70年代のロック黄金期を駆け抜けた輝かしい名機のひとつだ。まずはメサ・ブギーとサンタナの関わりや、オリジナルMark Iの誕生経緯、そして復刻モデルKing Snakeの概要について触れてみたい。
メサ・ブギーの創業者であり、現役のアンプ・デザイナーであるランドール・スミスは父親がクラリネット/サックス奏者だったこともあって、幼い頃 から音楽や楽器に親しんでおり、一時期はドラマーとして音楽活動をしていたこともあった。そんなある晩、キーボード・アンプが故障して炎と煙が上がってし まう。電気工作の心得があったランドールはこれを自力で修理。するとバンドのキーボーディストから“一緒に楽器店を始めないか”と誘われ、67年、サンフ ランシスコに小さな楽器店をオープンすることになった。67年と言えば、ロック黄金期の幕開けの時期。音楽のメッカ、サンフランシスコに集まってきた多く のミュージシャンから楽器の修理依頼がひっきりなしに入り、店は大いに繁盛したようだ。店内にはいつもミュージシャンがたむろし、その中には無名時代のサ ンタナの姿もあった。サンタナは当時、アンプにサステインが足りないことを悩んでおり、“掻き鳴らす”ような音ではなく、バイオリンやサックスのように “歌う”ような サウンドを求めていた。そこでランドールは、カントリー・ジョー&ザ・フィッシュのローディに依頼されて、大出力に改造したフェンダー・プリンストンを薦 めてみると“なんてこった。このちっぽけなアンプは思いっきりブギーしてるぜ!”と大絶賛。この“ブギー”がブランド名の由来となったことは有名な話だ。
それからしばらくはこの改造プリンストンの製作を続けるが、そのうちにランドールはオリジナルのアンプ作りを決意する。
“オリジナルMark Iのコンセプトは、私が開発してきた3つのアイディアを1つのコンボ・アンプにまとめることだった。小さなサイズ、大きなパワー、そしてハイゲインの3つ だね。そこでまずはフェンダー・プリンストンの改造から始め、大きなトランスと2本もしくは4本の6L6管を乗せて、出力を60Wから100Wへとブース トさせてみた。さらに慎重に改造を行なえば、小さなキャビネットに12インチのハイグレードなスピーカーがギリギリ搭載できることがわかり、また、アンプ のゲインを高めるための良い方法を2つ発見した。こうして実際に「ラウド」に鳴らさずとも「ラウドかつオーバードライブした」サウンドを作り出すことに成 功したんだよ”。
サンタナがMark Iに出会うきっかけとなったのは弟のホルヘだ。手持ちのアンプに不満をこぼしていたサンタナは、ホルヘから“これを試してみたら”とMark Iを薦められ、いざプラグインしてみると、そこからまさに思い描いていたようなサウンドが飛び出してきた。結局、そのMark Iはホルヘに返さず、ツアーに持って行ってしまうことに(ちなみにMark Iの名前はMarkⅡが発表された時に付けられたもので、当初は正式なモデル名ではなかった)。
以来、メサ・ブギーのアンプを愛用し続けているサンタナだが、さて、時は移り、昨年サンタナがたまたま73年の自身の武道館ライブの映像を観ていた時の こと。思わず1台のアンプに釘付けになる。“古い友人に再会したような気分だったよ”とサンタナは回想する。“はじけるようなトーンなんだ”。彼はすぐさ まランドールに連絡を取り、Mark Iの魅力を熱っぽく語ったあと、7台の復刻モデルを注文。その時のオーダー品かは定かではないが、昨年の日本公演のステージにはMark Iがセットされていた。
“カルロスがそのアンプを我々のショップに持ってきた時、私も過 去に失った友人に再開したような気分だった! 当時を振り返っていたら、金属製のシャーシの作り方、フロントパネルのシルクスクリーンのプリント、そして 私が実際に組み上げとエッチングを行なったサーキット基板までをも思い出すことができたのさ。もちろん最終的なハンドワイヤリング作業もね。オリジナルの 個体を詳細に分析し、Mark Iに宿っていたマジックを確実にキャプチャーしたわけだよ”。
こうしてサンタナのリクエストから発展して実現した今回の復刻モデルKing Snake。オリジナルMark Iを踏襲しながらも、ただ忠実に復刻するだけでなく、ワット数の切り替えスイッチや、新開発のミッド・ブースト・コントロール、2種類のプレゼンス・サー キット切り替え、レトロな味わいのリバーブなど、こだわりの新たなスペックが盛り込まれている。
“すべてのミュージシャンが武道館でプレイできるわけではないこ とは知っているよ。King Snake には10Wの出力モードがあって、小さいボリュームでもパワー部をオーバードライブさせることが可能になっている。オススメのセッティングは、ギターをイ ンプット2につなぎ、ボリュームは2、ミッド・ブースト・コントロールは10、10Wモードにして、音量はマスター・ボリュームで調整する。この前、カル ロスと彼のギター・テクニシャンのスタビーが我々の店に来て、初めてこのセッティングの音を聴いた時、スタビーは「ワォ! 梱包してくれ! 持っていくか ら!」って叫んでね。するとカルロスは「いや、梱包しなくていいよ。ここで弾き倒してやるから!」って言ってたよ”。(ランドール・スミス)。
──73年に日本武道館で行なったライブのサウンドを思い出したことが、今回の復刻に至ったということですが、当時のメサ・ブギーMark Iはあなたにとってどのあたりがスペシャルだったのでしょうか?
サンタナ:今年に入ってすぐ、73年の日本武道館のDVDを観てね。その音を聴いた瞬間に“古い友人にまた会い に行かなくてはならない!”と感じた。あのサウンドは僕にとって長らく会っていない親友であり、実際にもう一度鳴らしてみたら、その間何事もなかったかの ように簡単に扱うことができたよ。とてもダイナミックなアンプだ。あれに通せば、まるで泡のように“はじける”サウンドを奏でることができるし、B.B. キングの『ライブ・アット・リーガル』やピーター・グリーンの『スーパーナチュラル』のような音像も得られる。僕のために、ランディ(ランドール・スミ ス)があのトーンを見つけてくれたことを本当にうれしく思うよ。フルートやバイオリンのようなサウンド……望めばいくらでも得られるサステインを僕は求め ているし、King Snakeはまさにあのサウンドをキャプチャーしていると思うよ。
──あなたが求める理想のアンプ・サウンドを教えて下さい。それはサステインの美しさなのか? 心地の良いクランチ・サウンドなのか? それとも低域〜高域までバランス良く出力するレンジの広さなのでしょうか?
サンタナ:トーンのスペクトルを大切にしている。それはお気に入りのレストランのメニューのようなものと言える ね。僕のアンプからは、頭、胸、腹、下半身までの各トーンを得ることができる。このメサ・ブギーは、他のアンプにはない抜きん出たサステインを生み出して くれるよ。本来、そのサステインを得るためには醜いしかめっ面をしながらプレイする必要があるけど、このアンプは美しい音を生み出すためだけに作られてい る。最高の表現ができるね。
──King Snakeは、2つのインプット(1、2)、ワット数切り替えスイッチ(100W/60W/10W)、ミッド・ブーストのコントロール、 Blackface/Tweedの選択、リバーブなど、多くの機能が備わっていますが、あなた自身はどのようなセッティングで使用していますか?
サンタナ:ライブではインプット2と60Wのセッティングでプレイし、リハーサル・ルームでは10WにBlackfaceトーン、そしてリバーブは10時にセットしているよ。ミッド・ブースト・コントロールは10、プレゼンスは12時だね。
──アンプの音色決定はギターとの相性も関係してくると思いますが、King Snakeはどのようなギターにマッチすると考えますか?
サンタナ:それは何とも言えない質問だね。誰もが違う指紋を持っているものだ。ジョン・マクラフリン、エリッ ク・クラプトン、ジェフ・ベックが同じギターとアンプを使っても、彼らが感じていること、それがハートと指を通じてどのように発せられるのかによってまっ たく異なるサウンドになってしまう。僕にとっての理想のトーンはPRSを通して演奏した時で、自分のハートに訴えかけるレンジとサステインを持っていると 思うよ。
──King Snakeを使用したいと考えている日本のファンにメッセージをお願いします。
サンタナ:日本に住む僕の兄弟姉妹たちよ、King Snakeという美味なる狂気を楽しむ機会へと招待したい。僕らはすぐにでもそっちに行きたいし、君たちが飛び跳ねているところを目にしたいよ。
価格:オープン
菰口雄矢(こもぐち・ゆうや)
1988年2月27日生まれ。10代の頃より卓越した演奏と楽曲で注目を集め、プロとしてのキャリアをスタート。2008年、バンド TRI-Offensiveでメジャー・デビュー。2011年、TRIXに加入後、『IMPACT』『POWER』『DELUXE』『Re:TRIX』『TRIX DELUXE LIVE 2013!!!!(DVD)』を発表。2014年6月新譜『TRICK』をリリースする。監修した教則本ではその革新的なアイディアがギター界に衝撃を与えている。ジャンルを問わず数多くのアーティストのレコーディング、ライヴを重ね、たくさんの信頼を得ているギタリストである。