価値を求めるユーザーに斬新なアイデアで応える
純国産ブランドのニューカマー

Violet Moon
[エレクトリックベース編]
JB-33 / PB-33 試奏インプレッション

試奏&文:伊藤 大輔 撮影:伊藤 大輔


新進気鋭の純国産ブランド、Violet Moon。こだわりの多いブランドで、まだまだ生産本数が少ないため、今のところ一般の認知は決して高くはないが、要注目のブランドである。Violet Moonのベースは他のブランドとどう違うのか──その秘密を、試奏動画とインプレッションとともに解き明かしていこう。

 Violet Moonのベース・モデルは2種類をラインナップ。ジャズ・ベース・タイプのJB-33と、プレシジョン・ベース・タイプのPB-33となる。いずれもディンキー・シェイプのボディや33インチ・スケール、面取りを施したヘッド・シェイプなど、随所に独自のスペックを盛り込んでいるのがポイントだ。ボディ・マテリアルはJB-33がアッシュ、PB-33はアルダーを使用し、指板には耐久性にすぐれたパーフェローをセレクト。エレクトロニクスは同社オリジナルのピックアップに加えてプリアンプはグロッケン・クラングを採用。2バンドEQを搭載することで幅広い音色に対応する。

Violet Moon / JB-33

33インチ・スケール&ディンキー・シェイプによる取り回しの良さがポイント

 楽器を手にとってみるとディンキー・シェイプのボディのせいか、楽器自体が少し軽く感じられる。ディンキー・サイズのボディはエッジ部分に特徴があることが多いが、本器はレギュラー・サイズのボディと同じように滑らかに仕上げられているため、体へのフィット感も良好だ。33インチのスケールはロー・ポジションへアクセスがしやすく、特に小柄なベーシストには大きなアドバンテージになるだろう。スケールはミディアムだが、弾き心地やテンション感はほとんどレギュラー・スケールと変わらない。このあたりにはネックの仕込み角度をはじめ、楽器としてのバランスの良さを感じることができた。

 実際にアンプにつないで鳴らしてみると、パッシヴ・モードでは落ち着きのあるアタックに、少し乾いたヴィンテージっぽいニュアンスを感じる。ボディにアッシュ材を使用していることもあり、イメージ的には1970年代のジャズ・ベースを彷彿させる。

 音作りの肝はバランサーで、リアのピックアップ主体で粒立ちの良いサウンド、フロント主体なら暖かみのあるサウンド、両方のミックスではコシのあるジャズベ・サウンドが得られた。時としてアクティヴ・ベースはパッシヴのサウンドが貧弱な場合もあるが、本器にその印象はまったく無い。アクティヴに切り替えるとサウンドはグッとモダンになり、2バンドEQはかなり大胆に効くため、自在な音色作りができる。ライブからレコーディングまで重宝する1本と言えるだろう。

ピックアップはViolet Moonオリジナル・モデルを使用。コントロールは左からボリューム(アクティヴ/パッシヴ切り替えスイッチ)、バランサー、トレブル、ベースで、プリアンプにはグロッケン・クラング製のものを搭載する。

指板には耐久性に優れたパーフェローを採用。月の模様が入ったムーン・インレイが個性的だ。

ヘッドは1弦側が面取りされた独特の形状になっている。

ジョイント部分の接続は4点止めボルト・オン。JB、PBともに共通のスペックだ。

Violet Moon / JB-33
オープン・プライス(市場実勢価格248,000円)

[Specifications]
●ボディ:アッシュ(ディンキー・シェイプ)●ネック:柾目ロック・メイプル●指板:パーフェロー ●スケール:33インチ●フレット数:20●ピックアップ:オリジナル×2●コントロール:ボリューム(アクティヴ/パッシヴ切り替えスイッチ)、バランサー、トレブル、ベース●ペグ:ゴトー●ブリッジ:ゴトー ●カラー:3トーン・サンバースト、オリンピック・ホワイト、ブラック

デジマートで在庫と価格をチェック

Violet Moon / PB-33

使い勝手の良い硬質なサウンドでビンテージからモダンまで幅広く対応

 本器もディンキー・シェイプだが、こちらはプレベ・サイズのため、よりコンパクトで取り回しやすい印象。JB-33と共通してネックには柾目模様が入ったロック・メイプルを使用し、剛性を高めているのもポイントだ。

 ポジション・マークはオリジナルのムーン・インレイで、外見上はベーシックなフェンダー系の楽器に近いが、柾目のネック材とインレイでさりげなく高級感を出しているあたりにセンスの良さを感じる。ジョイント部分は4点止めのボルトオンで、スケールは33インチのミディアム仕様だが、弾き心地はJB-33と同様にフル・スケールとほぼ変わらない。

 アクティヴとパッシヴの切り替えはボリューム・ノブのプッシュ&プルで行うが、パッシブ・モードでもJB-33と同様に素晴らしい音色が得られた。ちなみに本器はボディ材にアルダーを採用しており、プレベらしいブリっとした中域に加えて適度に枯れた雰囲気があるので、R&Bやロックなどのオールド・テイストな音楽にも非常にマッチする。

 搭載されたグロッケン・クラングのプリアンプは色づけの無さに定評があるが、まさに楽器本来の響きが持つ良いところを引き出すような効き方。もちろん“補正的”な使い方に加えて、大胆にイコライジングした攻めの音色作りもできる。アクティヴ・モード時は若干硬質な音ヌケの良さは格別で、プレシジョン・タイプの弱点でもある音色幅の狭さをうまくカバーしている。ビンテージはもちろんモダンな音楽にも対応するマルチなプレベ・タイプだ。

コントロールは写真手前よりボリューム兼アクティヴ/パッシヴ切り替えスイッチ、トレブル、べース。

ピックアップはViolet MoonオリジナルのPタイプをマウント。

ロック・メイプルのネックはジョイント部分からヘッド側に向けてまっすぐ伸びた柾目柄が確認できる。

フレット数はフェンダーと同じく20フレット仕様で、JB-33も共通の仕様となる。

Violet Moon / PB-33
オープン・プライス(市場実勢価格248,000円)

[Specifications]
●ボディ:アルダー(ディンキー・シェイプ)●ネック:柾目ロック・メイプル●指板:パーフェロー ●スケール:33インチ●フレット数:20●ピックアップ:オリジナル×2●コントロール:ボリューム(アクティヴ/パッシヴ切り替えスイッチ)、トレブル、ベース●ペグ:ゴトー●ブリッジ:ゴトー ●カラー:3トーン・サンバースト、オリンピック・ホワイト、ブラック

デジマートで在庫と価格をチェック

Violet Moon・ブランドコンセプト

 成熟期に入った日本の楽器市場。日本の“エレキ”の歴史が始まった1960年代から現在に至るまで、多くのギター・キッズが夢を持って、たくさんのエレキ・ギターを手にしてきた。

 しかし、彼らが成長し、上達し、ギター・ブランドの持つ特徴やクオリティを十分に理解した結果、満足感を得た人もいれば、“何かが足りない”と感じるようになった人もいるだろう。Violet Moonは、後者のためのギター、ベースだ。“今までのものとは異なる特徴を持つギターが欲しい”──そう願う全ての人へ、新しい価値を届ける。それがViolet Moonのコンセプトだ。

 Violet Moon の公式ラインナップは現在、ホロウ・タイプのギターが2機種と、フェンダー・タイプのベースが2機種。一見、オーソドックスなラインナップだが、ホロウ・タイプのギターはボディ内部に独自の“セミフルアコ”といえる構造を採用したり、ベースには“33インチ”というロングとミディアムの中間的なこだわりのスケールを採用したりと、ぱっと見てもわからないような部分まで考え抜いて制作されている。今後も、一見スタンダードな楽器を装いながら、思いもよらない機能や構造を持つ斬新なギター、ベースが発表される可能性が高い。Violet Moonが楽器市場に吹き込む新しい風に要注目だ。


■Violet Moon製品に関する詳しい情報は、ヒビキコーポレーションのHP(http://www.hibikimusic.co.jp/)をチェック!
■ギター・マガジン2013年6月号(リットーミュージック刊)に吾妻光良氏によるVersion-S / Version-R試奏レポートを掲載!ギター・マガジンの詳細・購入はこちら