商品の説明

1902年の発表とGibson社における最古のアコースティックシリーズである、Style 0とStyle L。そのLシリーズの中でもPre-Warモデルとして扱われるのはL-00、L-0、L-1、L-2、L-3、L-C、Nick Lucasの僅かなモデルのみとなります。Lシリーズの歴史の変移としては、1902年にアーチトップスタイルのL-1、L-2、L-3の3機種を発表、1926年にはフラットトップのL-0、1932年にはL-00モデルの販売開始、1942年にはL-00モデルがLG-2とLG-3へとモデル名が変わり、翌年LG-1が発表されます。1962年にはLG-2とLG-3がお馴染みのB-25のモデル名へ変更されます。また1994年より復刻したL-00モデルはBlues Kingのモデル名へ変更されて再販を開始します。

今回ご紹介させて頂くのはそのLシリーズが発表された1902年の最上位モデルとしてラインナップされたL-3モデルの1919年製。1900年代初頭のGibson社ではバンジョーやマンドリンを主力製品として作っており、こちらもジャズ以前の楽器としてマンダリン・オーケストラの為に生まれたモデルにて、13 1/2”の後のレスポールに近い小さめなボディサイズ、クランプ固定のピックガード、筆記体スラントのThe Gibsonロゴ等々、初期Gibsonの歴史を感じさせる一本となっております。更にこちらはテイルピースのみ交換されておりますが、その他はフレット＆ナットを含め当時から変更歴の無いフルオリジナルコンディションと、その価値で言えばミュージアムグレードとなる奇跡の一本になります。

まずそのスペックとしては、ボディトップには単板のアディロンダックスプルースが採用されておりますが、現在出回る材とは異なり杢目間のニュアンスや滲み加減、また横方向にも薄っすらながらクォーターフラワーのギラつきが見受けられます。続いてボディサイド＆バックにはバーチ（樺の木）材が採用されますが、こちらは各所にフィギュアドも見られる良質な材にて、一見してメイプル材かと思う杢目ながら、当時の文献内容（ボディサイドにメイプル材が採用されるのは1920年代後半から）を優先して判断しております。続いてネックには杢目の詰まり方が強烈過ぎるマホガニーを、指板材には、当時より高級材として知られ上位モデル等に採用されたエボニー材が使用されておりますが、近年のエボニーとは似ても似つかない程に素晴らしい材となっており、杢目の詰まり加減やツヤ感が圧倒的に異なります。フィニッシュカラーは当時のマンダリン、バイオリン、チェロ等のクラシック楽器を彷彿させるRed Mahoganyカラーにて、そこまでのグラデーションはありませんがサンバースト仕上げとなっております。またフィニッシュされた際の塗料は、その後のラッカーと異なり特別なニスにて仕上げられております為、その発色やツヤ感、また経年による変化も大きく異なります。その他としてはボディトップ＆バック＆指板サイドそれぞれにシングルバインディング、指板インレイはパールドットマーカー、ヘッドストックには筆記体スラント（斜め）のThe Gibsonロゴ、また併せて美しいフローラルモチーフのインレイが施されております。サウンドホールはラウンドタイプにてヘリングボーンを含むマルチロゼッタとなります。エボニーで製作されたブリッジも特徴的なスタイルにて歴史が感じられます。ピックガードはセルロイドの鼈甲柄にて、指板サイドとブリッジにピンアンカーで固定、更にクランプ固定する独特なスタイルとなっており、ピックガード＆クランプにはそれぞれに対応するパテントナンバーが入れられております。ペグはウェイバリー社製のオープンバックチューナー＆アイボリーボタン、テイルピースはオリジナルではストラップピン一体型のトラピーズとなりますが、こちらのみ交換されていて、後年（1924年以降）のストラップピンとセパレート型のトラピーズに交換されております。（併せてエンドピン追加）またこの時期の特徴として615mmのショートスケール、ナット幅約47mmの極端に太いトライアングルシェイプとなっております。

そしてその気になるサウンドですが、軽くストロークを鳴らしただけで本能的に涙ぐんでしまうような、古き良き歴史を感じさせる枯れたトーンに酔いしれます。ピックアップの無かった当時は他のバンドサウンドに埋もれないように太いゲージの弦を張って力強く掻き鳴らす為にネック自体も太く設計されておりましたが、実際には弾き手の加減ひとつで様々なキャラクターへと変化します。音が大きい、音がキレイという次元ではなく、本能に直接訴えかけてくるギターの声が聞こえてくるかのようなミステリアスなトーンで、プロギタリストである森田大地氏が『音色は、新しいギターには決して真似できない美しいトーンをもつ。』と表現されておりますように、まさに唯一無二の極上のヴィンテージサウンドとなっております。アンティーク楽器としてのコレクションだけではなく、ジャズやブルース、ラグタイム系の演奏には特にマッチする、他には出せないユニークさを持った一本です。

そして最後に状態としては、パーツ類に関しては上述の通りテイルピースを除けばフレット＆ナットを含め全て当時からのフルオリジナルコンディション。ピックガードサイドに演奏による若干の塗装剥がれ、その他スレや打痕、スクラッチ、ネック裏の塗装剥がれ等のダメージこそあるものの、半世紀を超えた105年前の製作品という事を考慮すれば、十分過ぎる程に美品と感じ去るミュージアムグレードの一本です。その他としてはピックガードピン（指板部分）の折れ、ボディバック上部にクラックがございますが、光も殆ど透過しない状態です。またネックセット部、ヒールキャップ側の部分的に薄い紙が入る程度隙間があります。演奏面としてはネックコンディションは良好で、特段演奏に支障が出るレベルの問題もなく、フレットも元々細く背の低いタイプですが、まだまだそのままご使用頂けるコンディションです。またオリジナルのハードケースが付属しているという点も大きく、こちらのケースは単体でも１５万円以上で取り引きされるレアアイテムとなっております。