商品の説明

Gibson社においてレスポールモデルと共にフラッグシップモデルとなるESシリーズ。その歴史はレスポールよりも遥かに深く、エレクトリック・スパニッシュを意味するESモデルは1936年のES-150より始まりました。その翌々年1938年に発表されたES-100モデルは1941年にはES-125のモデル名へとリネームされ、1956年にはGibson社唯一のノンカッタウェイ＆シンボディのエレクトリックアーチトップとしてES-125Tモデルが発表されます。そして1962年にはその派生モデルとしてピックガードマウントＰＵ＆Ｆホール仕様のES-120Tモデルが誕生します。（正確にはカタログ掲載前となる1961年に1本だけ製作・出荷のシッピングデータがあります。）こちらはGibsonカラマズー工場にて製作され元々はエントリークラスとして149.5ドルにて販売されており、派手なインレイワーク等はございませんが、当時ならではの希少材と高いクオリティにて製作されており、またフィンガーレスト兼用となる特徴的な厚みを持たせたピックガードとMelody Makerモデルにも搭載されたPU-380ピックアップを採用するなど、1960’s Vintage Gibsonを象徴する素晴らしいサウンドを誇ります。

今回ご紹介させて頂くのは、そのES-120Tモデルのカタログ掲載初年度である1962年製の一本。1964年までの初期仕様となるハカランダ指板＆ブリッジにレギュラーネック＆17度ヘッドアングルの人気スペックかつ、電装系のオーバーホール以外はフルオリジナルとなるGibson社の歴史的にも価値のある一本になります。

まずそのスペックとしては、アーチドトップ＆アーチドバック、そしてノンカッタウェイのシンボディスタイルと他には無いスタイルにて、ボディトップ＆サイドはメイプルが採用されておりますが、こちらは各所にフィギュアドライクなギラつきも確認出来るヴィンテージならではの素晴らしい材が採用されております。またボディはフルアコ構造となっておりますが、元モデルとなるES-125Tとは異なり片側にFホール、片側にはフィンガーレスト兼用となる特徴的な厚みを持たせたピックガードを採用し、そこにピックアップやコントロール類の電装関係がマウントされております。フィニッシュは1950年代から続く伝統的なサンバーストカラーが採用されておりますが、経年により赤が抜けた2トーンカラーとなっており、ヴィンテージならではのグラデーションが非常に渋いルックスです。またボディトップ＆バック共にバインディングが施されており、ボディサイド（リム）はホンジュラスマホガニー材となっております。続いてネックにはこの時期ならではの良質なホンジュラスマホガニーを、コントラストの強いハカランダ指板が採用されている点も、近年のモデルとの大きな格差となってサウンドへも大きな恩恵を与えます。その他としては、1964年までの初期仕様となるレギュラーネック（実測にて約42mmナット幅）＆17度ヘッドアングル、ハカランダブリッジ＆サドル、パールドットマーカー、シルクスクリーンロゴ、1Pのベルスタイル・トラスロッドカバー、トラピーズテイルピース、チューナーはKLUSON DELUXE刻印のシングルライン3連×2のアイボリーボタン、24 3/4インチのミディアムスケール、14Fジョイントの20F仕様等が挙げられます。

そしてその気になるサウンドとしては、ES-125ＴのP-90ピックアップとはまた違う、ES-120Tモデルならではの”いなたい”トーンをアウトプットします。約2.38kgと軽量なシンボディとは思えない迫力のアコースティックサウンド。フルボディと比較してもボリュームがあり、62年という歳月によって熟成されているだけあって、甘く芳醇な空気感のある素晴らしいアコースティックトーンを奏で、アンプを通さずにアコースティックとしても素晴らしい鳴りを誇る本機。出力面でも所謂メロディーメーカーPUと呼ばれるPU-380ピックアップを搭載し、ハムバッカーともドッグイヤーP-90とも違う、本モデルならではの素晴らしいサウンドが十二分に堪能できます。キャラクターとしては軽快ながら、サウンドそのものにシッカリと輪郭を持ち、煌びやかさと甘く心地よく広がるトーンをレスポンス良く再現してくれます。特にFender系アンプのクリーン～クランチ時の気持ち良さは半端じゃありません。味わい深く、それでいて引き締まったトーンはゆったりとした時間を演出し、ジャズやブルースにはこの上なくマッチ、スライドバーを使ってのボトルネック奏法での相性も良く、またハイが抜けきれないニュアンスは1950～1960年代を感じさせるカントリーやラグタイムなシーンにもお使い頂けるかと思います。

最後に状態としては、このサウンドの良さを裏付けるべく、62年間しっかりと弾き込まれてきた貫禄のルックスとなっております。ビッシリと入ったウェザーチェックに始まり、バックルスクラッチを始めとした使用感、また軽量の取り回しが良い個体が故にヘッド部に塗装剥がれに至るダメージが見受けられます。とは言え大きく塗装が露出している箇所もなく、ボディトップのダメージは比較的少なく、1960年代初頭のヴィンテージギターとしては美品と呼べる良好なコンディションとなっております。またパーツ類に関しても、前オーナー様が演奏にあたっての不具合になりそうな部分を全てオーバーホールしており、ポット（ノブを含む）やジャック、配線類の修正・交換、フレットの擦り合わせが施され、非常に快適なプレイヤーズコンディションとなっております。その他のパーツはフレット＆ナットを含め全て当時のままとなるオリジナルをキープ。ピックガードはビス付近にクラック手前の軽微なものがございますが、ありがちな割れ等はございません。ブリッジの一部にクラック修復歴がありますが、こちらも使用に問題の無いよう丁寧に補修されております。演奏面としてもネックコンディションは良好でトラスロッドの余裕もあり、オリジナルフレットも6部山程とまだまだ現役で、電装関係の不具合はもちろんございません。弦高は12F部にて1弦側約1.5mm、6弦側約1.8mmと低めのセッティングにて演奏性は上々です。ケースは前オーナー様にてボディサイズにマッチした新品購入のハードケースが用意されております。