「ヴォーカル・エフェクトを音源どおりにライブで再現するのは難しい」そんなふうに思っているヴォーカリストは意外と多いのではないだろうか? あるいは「ヴォーカルにエフェクトをかけたいけれど、何を使えばいいのかわからない」とも。せっかく書いた歌詞を、メロディを、オーディエンスにきちんと伝えたい - そんな悩みをもつヴォーカリストにとって強い味方となる新製品がヴォーカル・エフェクター専門メーカー、TCヘリコンから登場した!
TC-Heliconから発売されたばかりのヴォーカル・エフェクター「VoiceLive Play GTX」は、既発の人気モデル「VoiceLive Play」を後継する最新機種だ。既に国内外のアーティストや現場から高い評価を得ている「VoiceLive Play」の機能を拡張させ、TC Electronicを擁するTCグループのブランドならではの良質なギター用エフェクトとアンプシミュレーターが加わり、かつて存在しなかったユニークなペダルに仕上がっている。シンガーソングライター系ミュージシャンやバンドのギターヴォーカルなど、声とギターを軸にしたミュージシャンにベストマッチのエフェクターであり、ステージでも路上でも自作曲を自分のイメージ通りに再現することが可能になる。もちろん自宅録音派にとっても頼れる存在だし、幅広いジャンルのプレイヤーの要求にも応えてくれるだろう。
さっそく、トム・ラング(Tom Lang)氏によるデモ・パフォーマンスをご覧いただこう。トム氏はTC-Helicon社のプロダクト・マネージャーであり、マルチ・プレイヤーのミュージシャンでもある。VoiceLive Play GTXを知り尽くしたトム氏による変幻自在のサウンドメイクに注目だ。なお、トム氏の足元にあるVoiceLive Play GTXが、背後にあるスクリーンに映し出されている。エフェクトのチョイスや切り替えのタイミングなど、演奏とあわせてチェックしてほしい。
まずは有名曲を織り交ぜつつ、ベーシックな活用法だ。VoiceLive Play GTXの機能のごく一部しか使用していないが、これだけでも驚かざるをえない。とても1人とは思えない演奏だ。個人で活動するシンガーソングライターにとって強い味方になることは間違いない。バンドで使用しても演出の幅を飛躍的に広げてくれるはずだし、スタジオでは曲の完成イメージを的確にメンバーに伝えることができそうだ。また、「やってみた」系のパフォーマーにも即戦力だろう。
▲搭載されているヴォーカル・エフェクトはμModモジュレーション、エコー&ディレイ、リバーブ、ハーモニー、ダブリング、ハードチューン&ピッチ補正、トランスデューサー(ディストーション、メガフォン・ボイス、ラジオ・ボイスetc.)。昨今のシーンでお馴染みのいわゆるケロケロ・ボイスも簡単に作れる。そしてそれらにルーパー、ギター用のエフェクト群&チューナーが加わる。
トム氏は解説中に「fun(楽しみ)」という言葉を口にしているが、VoiceLive Play GTXがもたらす演出はまさしくその印象であり、歌うこと、プレイすることがもっと楽しくなりそうだ。
▲高品位なTC Electronic社ギター用エフェクト群&アンプシミュレーション機能を搭載。
先述のように、TC-HeliconとはTCグループの1ブランドであり、高品質なサウンドで世界中のギタリストを魅了するTC Electronicと同系列にあたる。VoiceLive Play GTXに豊富に内蔵されたギター用エフェクトおよびシミュレーターは、そのTC Electronicによるものなのでギターの音色も充分に作り込むことができる。ギター用エフェクトはディストーション/フランジャー/コーラス/ディレイ/リバーブ/デチューン/ロータリー/3バンドイコライザーで、TC Electronicから単体で発売されていたペダルを踏襲したハイ・クオリティなものばかりだ。加えて11種類のアンプ・シミュレートとスピーカーのシミュレートも装備している。さらにはチューナーも搭載。
ここでは、トム氏が用意したMP3音源を既発のヴォーカリスト専用タイプ、TC-helicon「VoiceLive Play」に接続している。ソロ・ヴォーカリストで楽器を持たないスタイルの場合、エフェクトでハーモニー・ボイスを加えるためには、本体でキーやスケールを設定するか、何かしら機材を接続して、それらを検知させる必要がある。このデモの通り、VoiceLive Play(またはVoiceLive Play GTX)は、音源をMP3プレイヤーから流し込めば、楽曲のキーを自動検知する機能が働き、リアルタイムでハーモニー・ボイスを生成してくれる。まるで魔法のようなシステムだ。
デモ・パフォーマンスの1曲目ではハーモニー機能にフォーカスしている。コーラス・ボイスや内蔵プリセットの応用などのシンプルな活用法だが、ナチュラルに美しく楽曲を盛り上げてくれている。続く2曲目は、ハードチューンやフランジャーをフィーチャーしたエフェクティブなスタイルだ。足もとのスイッチ操作だけでヴォーカルのインパクトを飛躍的に高めている。
また、既成概念にとらわれないヴォーカル・スタイルを目指すプレイヤーにもVoiceLive Play GTXの機能は応えてくれる。次に紹介する動画は、クリエイティブで刺激的な活用法だ。
▲TC-Helicon MP-75。超単一指向の設計で、ハウリングを起こしにくい。ライブ使用に最適だ。
楽器を持たないヴォーカリストでも、ループで声を重ねていくだけでインパクト充分な音楽に。口笛やハープ(ハーモニカ)でも面白そうだ。オーガニックな音でも前例のないサウンドにできるだろう。
そしてトム氏が操るハンドマイクにも注目だ。これはTC-Helicon MP-75という製品で、グリップ部にあるスイッチによって、VoiceLive Play GTXをコントロールすることができる。この機能はVoiceLive Play GTXだけではなく、TC-Helicon製エフェクターでUSB端子を装備しているモデルの多くに対応しており、高品位な音質と利便性を併せ持ったマイクだ。その機能によって、ご覧のとおり、VoiceLive Play GTXの位置にとらわれることなく縦横無尽にステージを動き回るパフォーマンスが可能になる。“エフェクターは足もとで操作するモノ”という概念を覆すシステムであり、VoiceLive Play GTXという製品名が示すようにライブでの取り回しの良さが際立っている。
動画をご覧になっておわかりだろうが、オーディエンスの観点からは、トム氏がVoiceLive Play GTXの操作のために特別な動作をしているようには見えない。このシンプルな操作性も大きな魅力だ。プリセット作成時の操作もやはりシンプルで、例えばチョイスが「2声ハーモニー」ならば、本体ディスプレイに人物2人のイラストが表示される。そしてハーモニーのオート機能を使えば、ユーザーは何も設定する必要がない。また、本機のユーザー・フレンドリー性を強く感じさせるのがGENRE(ジャンル)ボタンの存在だ。VoiceLive Play GTXには既存のヒット曲をイメージしたプリセットが内蔵されており、GENREボタンでそれとわかるプリセットを瞬時に呼び出すことができる。
▲この画面では「Let's get it started」(Black Eyed Peas)風のプリセット。
ひとつ例を挙げると、U2風のサウンドを狙いたければプリセット名「I STILL HAVEN'T」をチョイス、といった具合だ。「あのアーティストの、あの曲みたいな」というイメージを、すぐに音にすることができる。プリセットは235種類も用意されているので、あらゆるジャンルに対応できるはずだ。楽曲のジャンルからだけではなく、使いたいエフェクトの種類から検索することもできる。
▲イラスト的でわかりやすいアイコンが本体ディスプレイに表示される。
しかも、プリセットは内蔵されているものだけではない。毎月「voice support」に追加されるプリセットを無償ダウンロードできるのだ。
▲VoiceLive Play GTXとPCで、最新スタイルのヴォーカル・エフェクトが手に入る。
本体のUSBポートを使用して、オーディオ・インターフェイスとしての使用が可能なのも本機の特徴。voice supportにはプロ・ミュージシャンが作成したプリセットもアップされ、ユーザーはそれをダウンロードして自作曲に反映させることができる。つまり、ほぼリアルタイムで最新のプリセットが手に入るのだ。このあたりは、プロの現場との連携を大切にしているTC-Heliconならではの展開と言えるだろう。
気に入ったプリセットや自分で作成したプリセットは、FAVORITE(フェイバレット)に登録しておけば瞬時に呼び出すことができて便利だ。まさに「お気に入りに追加」という感覚で、簡単に自分用にカスタマイズできる。ヴォーカル・エフェクター初心者でも安心できる、わかりやすい設計だ。
▲使用頻度が高そうなボタンだけに、使いやすい位置にレイアウトされている。
マイクから入力された声の信号は高精度ピッチ検出アルゴリズムによって瞬時に解析され、そのデータをもとにエフェクト処理が行われる。つまり、リアルタイムでのピッチ補正が可能なのだ。また、ピッチ検出機能は「PRACTICE(練習)」モードにも反映されるので、ピッチをシビアに鍛える練習ができる。弱点を客観的に教えてくれる機能と言えるものでもあり、実力アップを目指すヴォーカリストにとって、うれしいポイントだろう。
▲PRACTICEモードでは、ピッチの情報がディスプレイに表示される。
キーを検出する「Auto Key」機能は、AUXに接続したMP3プレーヤーなどからの楽曲のキーを検知するもの。そうして自作曲を流し込めば、VoiceLive Play GTXが曲に最適なハーモニーを生成してくれる。また、既存の曲を流し込んで「Sing Along」(ボイス・キャンセリング機能)を使えば、楽曲からヴォーカルのみ取り除くことができる。好きな曲をカラオケにして練習するのも楽しいだろう。
さらに本機は、側面にステレオコンデンサーマイクを装備しており、録音対象によってハンドマイクと使い分けることができる。ライン外の音を取り込めるので、意外と重宝する装備だろう。また、このマイクで収音したバンドアンサンブルを元にハーモニーを生成することも可能。編成にもよるだろうが、アコースティックギターのデュオなど、シンプルな構成であれば十分実用可能レベルだ。
▲左右に振り分けたマイク配置で、空間性のあるステレオ収録ができる。
欲しい音をすべて自分でコントロールできるよろこび。そして、新しい音を創り出す快感。それらの大きな魅力に加えて、プロ仕様の機能をシンプルにまとめたデザインも刺激的だ。多機能で高品質ながらも高いコスト・パフォーマンスで、ヴォーカル・エフェクター初心者の“最初の1台”に最適とも言えよう。
かゆいところに手が届くような仕上りを見せるVoiceLive Play GTX。続いてpart2では、この斬新かつユニークなエフェクターをリリースしたTC-Heliconというブランドに迫ってみよう!
VoiceLive Play GTX
[SPECIFICATIONS]
●搭載エフェクト:μMod、ディレイ、リバーブ、ハーモニー、ダブリング、トランスデューサー、トーン補正、ハードチューン&ピッチ補正、VLOOPルーパー、ギター用エフェクト各種、チューナー●コントロール:プリセット235種類、プリセットUp/Down、及びHITボタン、グラフィックLCDディスプレイ、マイクレベル調整ツマミ、デュアルカラー・バックライト付きボタン、エフェクト・ブロックOn/Offボタン●寸法:W200 x D156 x H45 mm●重量:0.95kg
●価格:オープン・プライス
●[アナログ入力] マイク:XLR/AUX:1/8" ステレオ・ミニジャック/ギター:1/4インチPhone●[アナログ出力] XLR、ギターthru:1/4インチTRS●[コントロール] USB:USB-B(コントロール、MIDI、及びオーディオI/O)/外部ペダル:1/4" TRSフォーン/MIDI In:5ピンDIN
VoiceLive Play
[SPECIFICATIONS]
●搭載エフェクト:μMod、ディレイ、リバーブ、ハーモニー、ダブリング、トランスデューサー、トーン補正、ハードチューン&ピッチ補正、VLOOPルーパー、ギター用エフェクト各種、チューナー●コントロール:プリセット235種類、プリセットUp/Down、及びHITボタン、グラフィックLCDディスプレイ、マイクレベル調整ツマミ、デュアルカラー・バックライト付きボタン、エフェクト・ブロックOn/Offボタン●寸法:W200 x D156 x H45 mm●重量:0.95kg
●価格:オープン・プライス
●[アナログ入力] マイク:XLR、AUX:1/8" ステレオ・ミニジャック●[アナログ出力] XLR●[コントロール] USB:USB-B(コントロール、MIDI、及びオーディオI/O)/外部ペダル:1/4" TRSフォーン